著者
荒木 貴之 江藤 由布 齋藤 玲 堀田 龍也
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.13-24, 2018 (Released:2019-01-08)
参考文献数
20

1人1台タブレット型PCの学習環境を有する高等学校において,学習用SNSを通年利用した.本稿では,この通年利用による高校生の学習態度の変化を調べた.このとき,生徒全員に協調的課題遂行にあたっての他の生徒の貢献度を評価させることで,彼らを貢献群と一般群に分けたうえで,学習態度の変化を分析した.その結果,貢献群においては,教師との交流による自己効力感やライティング方略に特徴が見られるとともに,ネットワーク上の交流を楽しむことに,経年で変化が生じていることが示された.一方,学級の担任教師へのインタビュー調査から,彼女は批判的思考が発揮できるようなグラウンド・ルールを設けていることが確認された.これらの結果から,学習用SNSの通年利用による生徒の学習態度の変化の特徴,および生徒が学習用SNS上で学習を進めていく際の教師による生徒支援の工夫についての示唆を得た.
著者
伊藤 大河
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.30, pp.202-203, 2014-08-09

高等学校において,Twitterのような簡易SNS機能を備える「ツイキャス(TweetCasting)」を用いて,音声を含む中継動画だけでなく,文字によるコミュニケーションを活用し,遠隔地のスマートハウスを教室で模擬的に見学する授業実践を実施した。その結果,言葉による発言よりも意見を述べやすい点,感情表現をしやすい点,思ったことをその場で書き留められる点など,多数の利点が生徒から挙げられた。
著者
高山 草二
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.11-19, 2000-03-31 (Released:2017-05-27)
参考文献数
15

ビデオゲームの面白さとその個人差を実証的に検討するため, ゲームで遊ぶ動機とメディア嗜好性を小学生について調べた.因子分析の結果, 道具的な動機である「暇つぶし」「逃避」の他に, 「挑戦」「コントロール」「空想」「好奇心」など, 内発的動機づけ理論において提案されてきたすべての側面がみられた.これらの動機が重なることで面白さが増していた.個人差の分析の結果, 内発的動機または道具的動機が中心の類型, どの動機も低い否定的な類型など, 多様な類型がみられた.一対比較法によるメディアとの嗜好の比較から, ビデオゲームは双方向性をもったテレビとしてとらえられており, 特に, ビデオゲーム特有の面白さとして「コントロール」と「空想」がメディアの双方向性から生ずることが示唆された.ゲーム様式のCAIに関して, これら結果の意義を検討した.
著者
渋井 二三男 高橋 三雄 柿岡 明 石井 宏
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.49-56, 1995-07-31 (Released:2017-05-31)
参考文献数
5

企業における情報処理教育(本調査では,「OA・情報関連教育」の語を使用)の現状を把握し,企業における情報処理教育の在り方を調査研究することにより,今後の施策形成の一助とすることを目的に実施した.分析の結果,(1)OA・情報関連教育は,73.4%の企業で実施されているが,その目的・内容は,伝統的な「OA教育」の範疇に従うものであり,情報の高度利用を念頭に置いたものとはいえない.(2)取締役・部長クラスに対する教育を実施している企業は少数であるが,今後は,かなりの企業が重視する意向を示している.(3)OA・情報関連教育を実施中の企業では,教育の効果に疑問を呈する意見が強く,非実施企業では実施すべき教育内容が不明確であることを問題視する意見が強い.(4)14項目の知識・能力分野によって(注)「情報リテラシー教育」観を質問した結果,(I)理系-文系軸(II)SE-プログラマー軸,(III)実務家-理論家軸の3つの因子で58.8%まで説明できることが分かった.
著者
米田 謙三
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.31, pp.142-145, 2015-08-29

高校生熟議は,2011年度に「高校生熟議in大阪〜ケータイ・インターネットの在り方&活用法〜」としてスタートし,昨年で4年目となりました。昨年から大阪・東京に加え,札幌、大分、奈良でも開催しました。最後は,5か所の代表者10名プラス特別参加沖縄の高校生による「高校生熟議サミット」を閣催し,提言をとりまとめました。この提言は,2名の高校生が最終的に集約し「高校生の意見を中央に」と考え,内閣府,総務省,文部科学省でプレゼンテーションも実施しました。
著者
山本 健一 山田 善久 武田 康雄 大橋 真由美
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.16, pp.258-261, 2000-11-11

本学英語英文学科では、英語運用能力のレベルアップのための具体的な達成目標として、英検、TOEFLまたはTOEICなどの検定試験受験を学生に奨励している。英語力判定の基準として英単語はこれら検定試験の基本であり、英語英文学科学生の英語運用能力向上に少しでも資するため、英検2級用英単語学習ソフトを共同開発した。開発後、英語英文学科1年生の学生を対象に、本ソフトを利用して英単語のプレテストを実施した。約一ヶ月の学習後、ポストテストを行い、どの程度学習効果が向上したかを中心に分析した。また本ソフトの使用に関するアンケート調査を実施し、その調査結果を併せて考察した。
著者
奥村 信夫 森 康夫
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
vol.31, pp.32-35, 2015-08

2014年11月6日・7日の2日間にわたり第47回全国中学校社会科教育研究大会(滋賀大会)が開催された。大会2日日(7日)には,守山市立守山南中学校において社会科3年(公民的分野)の授業を公開した。単元「くらしを支える地方自治」のなかで,タブレット端末(SHARP「10.1型手書き学習端末」)と電子黒板(SHARP「BIG PAD Campus」),リモコン型レスポンスアナライザ(内田洋行「EduClick HE」)を使って,グループ・学級討議を行い,討論の活性化を図ろうと試みた。本授業を通して,生徒がどのように積極的に討論し,生徒の思考が深まったのかを検証し,携帯情報端末や電子黒板を活用した授業の効果や課題等について考察を深める。
著者
及川 浩和 加藤 直樹
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.31-37, 2009-09-15

日本語を学ぶために別科に入学した中国人留学生を対象として,コンピュータの漢字変換機能に着目し,正確な読みの指導を中心とした読解・聴解能力を育てるための5つの学習活動を取り入れた日本語学習指導法を提案する.第I報では,コンピュータに対する不安度,読みの誤り,文字を手がかりにした意味の理解度について実態調査を行い,学習が成立するための基礎資料とし,学習プロセスモデルを構築するまでの過程を述べた.本稿では構築した学習プロセスモデルにおける学習状況を明らかにするため,これまでに授業実践した結果と評価について述べる.授業実践の結果,漢字変換機能を活用した学習には成果が見られ,学習者にとってこの学習活動は肯定的に受け止められた.
著者
及川 浩和 加藤 直樹
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.24, pp.256-257, 2008-08-19

日本語を学ぶために別科に入学した中国人留学生を対象として,コンピュータの漢字変換機能に着目し,正確な読みの指導を中心とした読解・聴解能力を育てるための5つの学習活動を取り入れた日本語学習指導法を開発した.学習プロセスモデルに基づき授業実践した結果,漢字変換機能を活用した学習には一定の成果が得られ,学習者にはこの学習活動に対し肯定的な意見が多く聞かれた.
著者
佐々木 祐輔 久世 均
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.27, pp.34-37, 2011-08-20

平成23年3月11日(金)14時46分に発生した,東日本大震災に関する「震災デジタル・アーカイブ」を事例として,震災情報の記録・収集・保存の問題を考察した.戦後の地域資料のデジタル・アーカイブの展開の中では,歴史的資料から地域の生活に密着した現代資料へという流れがあるが,1990年代末以降現われるようになったデジタル・アーカイブの動きは今のところ歴史的・郷土誌的資料にとどまっている.また,多くのデジタル・アーカイブズでは情報の蓄積・検索方式に対する考慮が稀薄で,検索システムを備えているものは多くない.今回の東日本大震災で進められている「震災デジタル・アーカイブ」の多くのは,大量でかつ多様性に富んだ現代資料のデジタル化という点て,現時点では他にほとんど例のないものであるが,主にメタ情報(二次情報)構築における標準化がとられてないことから,独自性の強い組織化手法という現状がある.まず,今回の「震災デジタル・アーカイブ」の現状と収集資料の特色,「震災デジタル・アーカイブ」のメタ情報とその課題について述べる.
著者
陰山 英男
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.25, pp.160-163, 2009-08-22

立命館小学校を中心として、脳の力を最大限に引き上げることを中核とする学力の向上、ならびに人間力の向上を研究のテーマとしています。一連の研究の中で、生活習慣を早寝早起き朝ごはんに代表されるような人間本来の姿に戻すことによって、学力の向上が見られることが確認できました。また、読み書き計算の高速の反復学習によって、短期間に知能指数が向上するなど、学力向上に加速度をつける方法を確立できました。現在は、これらをICTを使ったものに移植したり、得られた高い学習能力を応用的な学習にどう活用できるかを課題としています。
著者
加藤 由樹 加藤 尚吾 竹内 俊彦
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.24, pp.236-237, 2008-08-19

本研究では、BBS、Blog、SNSの3つのネットコミュニケーションと対面における、"クラスメイトの風貌や体型(事実)について話す/書く"、"クラスメイトの珍プレーや失敗(事実)を話す/書く"など、7つの行為に関する意識調査を、情報科の教員を目指す大学生を対象に実施した。それぞれの行為に対して、"子ども達は、この行為をしてしまう可能性があると思う"、"子ども達は、クラスメイトからこの行為をされると嫌な気持ちになる"、"あなたは、この行為をネットいじめと考える"の3つの質問に5段階評定(全くそう思わない〜とてもそう思う)で回答を求めた。本稿では、これらの回答の集計分析結果を報告する。
著者
高田 英一 高田 悠二
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.3-14, 2012-11-30

現在,わが国の大学では,近年の大きな経営環境の変化に対応するために,教職協働の推進と,そのための大学職員の能力向上の必要性が叫ばれている.特に,国立大学では,大学評価への対応の重要性が増しているが,それに携わる職員に必要な能力に関する議論はほとんど行われていない.そこで,本稿では,法人評価における教育分野の達成状況報告書の作成業務を対象として,教育情報の収集・蓄積・管理・分析等の業務に必要な職員の能力に関する現状と課題を検討した.その結果,当該業務には,多様なレベルの教員・職員が多様な業務に関与しており,それら業務の遂行には,大学評価に関する専門的知識だけでなく,大学の活動全体に関する幅広い知識など重層的な知識・能力が必要であることが明らかとなった.
著者
大杉 成喜
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.28, pp.218-221, 2012-08-25

障害がより重度で身体をほとんど動かせない児童生徒を対象としたICT活用学習におけるエビデンスベースの実践研究(EBP:evidence-based practice)の方法を検討した.訪問教育担当教員への先行調査では,その実践において「スイッチ入力が随意なものか」「選択をどのように学習させるか」が問題として指摘されていた.アシスティブ・テクノロジー(Assistive Technology)先進国である米国ではスイッチ入力に関するアセスメント方法が開発されているが,より障害の重度の児童生徒については必ずしも十分とはいえない.これまで大杉・佐原(2006)はU-LAM(Universal Language Activity Monitor)を援用した日本語VOCAの使用記録フォーマット「J-LAM」によるAAC実証ベースの実証研究を提案してきたが,本稿ではより障害の重いスイッチ入力導入期の児童生徒に対して,その入力状況を詳細に記録する方法を提案し,その活用の方向性について論じた.
著者
武田 正則
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.26, pp.218-221, 2010-08-21

グループワークによる参画学習では様々なアクティビティが用いられている。本研究ではオブジェクト指向プログラミングとファシリテーション技法の共通性を探るために目標を「問題解決(プロセス)」,活動を「知識創造技法による作図作業(プロダクト)」とした参画学習のためのアクティビティ・プログラムを開発する.本発表では,このプログラミングにより構築した「ロジックツリー学習モデル」を提示し,学習および校内教員研修において実践する.
著者
沖 裕貴 井上 史子 林 泰子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
vol.28, pp.166-169, 2012-08

2012年3月に公表された中教審大学分科会の審議のまとめ「予測困難な時代において生涯学び続け,主体的に考える力を育成する大学へ」では,学士課程教育の質的転換を促進・強化するために,学位プログラムで育成する能力の明確化と各授業との関連性の明示化,学修時間の増加や学修成果を重視した評価の導入等を喫緊の課題として提示している。これらは2009年の中教審答申「学士課程教育の構築に向けて」で示された「3つのポリシーの明確化」をよりいっそう推進し,単位制度の実質化につなげ,教育評価の客観性・厳格性・公正性を担保しようとする提言に他ならない。欧米,とくに米国において大学教育に活用されているルーブリック評価は,科目の成績評価(総括的評価)の客観性・厳格性・公正性を増大させるのみならず,日常的な形成的評価やライティング・センター等の他機関との協働学習支援にも有効であると言われている。日本の初等中等教育や米国大学教育等のルーブリック評価の導入事例から,日本の大学教育に導入するために,どのようなルーブリック・テンプレートが利用可能か,あるいはどのような手続きや研修が必要なのかを具体的に検討するとともに,その課題を吟味したい。
著者
益本 仁雄 宇都宮 由佳 滝山 桂子
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.3-12, 2007

2006年度に,日本とタイで中学2年生の情報収集および情報活用能力に関する質問紙調査ならびに当該中学において情報教育の現状に関して聞き取り調査を実施し,比較検討をおこなった.その結果,発展途上国のタイでも情報教育に力を入れており,生徒のコンピュータリテラシーもかなり高いことがあきらかになった.また,日本に比べタイでは,職業に密接に関連するスキルを磨く教育を志向していた.日・タイの情報教育の今後について,次のように指摘した.日本では,批判的な目で情報メディアに接し,複数の情報メディアを比較して,必要かつ正しい情報を見つけ出す力を養成することを情報教育で徹底すべきであろう.また,タイにおいては,インターネットが犯罪に使われるケースは多くはないものの,今後,急速に増加していくと予想されることから,インターネット社会におけるセキュリティ教育によって,犯罪や事故に対して防衛力をつけるように教育することが重要である.
著者
槙場 政晴
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.25, pp.266-269, 2009-08-22

コミュニケーションツールとして開発されたPIC (Pictogram Ideogram Communication)のシンボル及びJIS絵記号を語彙の理解、文脈の理解を支援するツールとして利用し、LLブックの制作を試みた。本試みでは、単語にふりがなを付けるようにシンボル配置することにより、文字の固まり(単語)の意味の理解を促そうと考えた。その結果、文章の意味が捉え易くなった。また、注視や追視が苦手で、朗読がうまくできない対象児の読書に対する苦手意識を軽減することができた。
著者
平山 敏弘 長谷川 長一 やすだ なお 大西 荘一 井上 紀明 井上 善勝 三木 啓一郎
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-10, 2011-07-04

NPO日本ネットワークセキュリティ協会教育部会では,良質かつ社会のニーズに適合したセキュリティ人材育成のための実証を行い,会員ならび社会に還元することを目的とした活動を行っている.その中で,情報セキュリティ基本教育実証WGは,情報セキュリティ基本教育の普及と社会貢献への意識向上,および地域格差是正への取り組みを目指し,2006年度に設立された.具体的な活動としては,情報セキュリティ基本教育を実証するモデルケースとして大規模な産学連携では初となる,岡山理科大学と日本ネットワークセキュリティ協会との提携による東京からのリモート授業を平成19年度より実施している.当論文は,その実証を通じて得た経験と分析結果より,今後の講義形態の1モデルであるWeb環境における遠隔講義の方向性を検証するとともに,IT人材育成に向けての教育機関における実践力向上のための産官学連携の重要性と新たな取り組み例について提言するものである.