著者
黒田 一紀
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.37-53, 2020-03-15 (Released:2020-03-27)
参考文献数
38

「海洋學談話會」は,農林省水産試験場の宇田道隆の発起により,海洋学に関する論著の紹介,試験研究成果の発表,および各職場の会員間の交流を目的として,1932年4月に開始された。東京・月島の水産試験場で月2 回木曜日の例会は1941年2月の172回まで続き,実講演者は80名,延べ話題提供数は506件に達した。この実績に伴う海洋学への情熱と連携の高まりによって提唱された日本海洋学会の創立は,海洋気象台(神戸)に既存していた「海洋学会」と話合いが行われたが,1937年前半に不調に帰した。その後,1939年末における標準海水準備委員会の立上げを切掛けとして,「海洋學談話會」と「海洋学会」との間に妥協が成立し,1941年1月28日に創立に至った。ここでは,「海洋學談話會」の発起,内容,切掛けおよび母体から日本海洋学会創立への紆余曲折の経緯を調べたので,関係科学者の役割も含めて報告する。キーワード:海洋 學談話會,海洋学会,日本海洋学会,宇田道隆,日高孝次
著者
諏訪 僚太 中村 崇 井口 亮 中村 雅子 守田 昌哉 加藤 亜記 藤田 和彦 井上 麻夕里 酒井 一彦 鈴木 淳 小池 勲夫 白山 義久 野尻 幸宏 Ryota Suwa Takashi Nakamura Akira Iguchi Masako Nakamura Masaya Morita Aki Kato Kazuhiko Fujita Mayuri Inoue Kazuhiko Sakai Atsushi Suzuki Isao Koike Yoshihisa Sirayama Yukihiro Nojiri 京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所 九州大学付属天草臨海実験所 琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設 琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設 琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設 琉球大学大学院理工学研究科 琉球大学大学院理工学研究科 東京大学海洋研究所 琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設 産業技術総合研究所 琉球大学 京都大学フィールド科学教育研究センター瀬戸臨海実験所 国立環境研究所地球環境研究センター Seto Marine Biological Laboratory Field Science Education and Research Center Kyoto University Amakusa Marine Laboratory Kyusyu University Sesoko Station Tropical Biosphere Research Center University of the Ryukyus Sesoko Station Tropical Biosphere Research Center University of the Ryukyus Sesoko Station Tropical Biosphere Research Center University of the Ryukyus Graduate School of Engineering and Science University of the Ryukyus Graduate School of Engineering and Science University of the Ryukyus Ocean Research Institute The University of Tokyo Sesoko Station Tropical Biosphere Research Center University of the Ryukyus Geological Survey of Japan National Institute of Advanced Industrial Science and Technology(AIST) University of the Ryukyus Seto Marine Biological Laboratory Field Science Education and Research Center Kyoto University Center for Global Environmental Research National Institute for Environmental Studies
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.21-40, 2010-01-05
参考文献数
102
被引用文献数
3

産業革命以降の二酸化炭素(CO_2)排出量の増加は,地球規模での様々な気候変動を引き起こし,夏季の異常高海水温は,サンゴ白化現象を引き起こすことでサンゴ礁生態系に悪影響を及ぼしたことが知られている。加えて,増加した大気中CO_2が海水に溶け込み,酸として働くことで生じる海洋酸性化もまた,サンゴ礁生態系にとって大きな脅威であることが認識されつつある。本総説では,海洋酸性化が起こる仕組みと共に,海洋酸性化がサンゴ礁域の石灰化生物に与える影響についてのこれまでの知見を概説する。特に,サンゴ礁の主要な石灰化生物である造礁サンゴや紅藻サンゴモ,有孔虫に関しては,その石灰化機構を解説すると共に,海洋酸性化が及ぼす影響について調べた様々な研究例を取り上げる。また,これまでの研究から見えてきた海洋酸性化の生物への影響評価実験を行う上で注意すべき事項,そして今後必要となる研究の方向性についても述べたい。The increase of the atmospheric carbon dioxide (CO_2) concentration after the industrial revolution caused global climate change. During the last several decades, coral reef ecosystems have been devastated by the mass-scale coral bleaching events caused by abnormally high seawater temperature in summer. In addition, increased atmospheric CO_2dissolves in the ocean, acts as an acid and finally decreases the pH level of seawater. This phenomenon, known as ocean acidification, is now being considered as a future threat to the calcifying organisms in coral reef ecosystems. In this review, we summarize basic backgrounds of ocean acidification as well as its potential impacts on coral reef calcifiers. Together with the distinctive mechanisms of calcification among specific groups, we review the impacts of ocean acidification on major reef-builders such as scleractinian corals, calcareous red algae and reef-dwelling foraminifera. Finally, we point out some recently-recognized problems in acidified seawater experiments as well as the future direction of this research field.
著者
轡田 邦夫
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.68-80, 1988
被引用文献数
4

吐葛喇海峡における黒潮の流量の指標と考えられる名瀬・西之表間の水位差および遠州灘沖の黒潮流路の指標と考えられる串本・浦神間の水位差の経年変動と北太平洋上の海上風変動との間の関係を調べた.<BR>串本・浦神の水位差には直進流路と大蛇行流路の間の流路変動に対応する約7年周期の変動と3~4年周期の変動が卓越する. 約7年周期の変動は, 紀伊半島の約2, 400km東方の海域における海上風応力の回転 (curl) と相関が高く, 黒潮の大蛇行流路の発生時期に対応する水位差の低下は, この海域の応力の負の回転が弱まってから約2年後に起きる. また, 3~4年周期の変動は赤道域東部を含む広域の海上風変動と相関が高く, 大規模な大気変動と関係あることが示唆された.<BR>名瀬・西之表の水位差の経年変動は, 串本・浦神の水位差との間に有意な相関を示さず, 遠州灘沖の黒潮流路の変動と関係ないことが示唆された. また, 北緯30度付近におけるスヴェルドラップ輸送の東西積分値との間に高い相関を示し, 海上風に対する順圧的な応答によって, 吐臈劇海峡における黒潮流量の経年変動が説明されることが示唆された.
著者
永田 俊
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-18, 2019-01-15 (Released:2019-01-24)
参考文献数
63

溶存有機物を起点として細菌から原生生物やウィルスへとつながる微生物食物連鎖(微生物ループ)は,海洋の炭素・窒素循環の駆動システムとして重要な役割を果たしている。しかし,中・深層における微生物ループの変動や制御機構については未解明の点が多く,海洋生物地球化学モデルへの微生物過程の組み込みは依然として初歩的な段階にある。筆者は,1990年代に,深層における細菌の地理的分布に着目した研究を行い,粒子の沈降フラックスと,深層の細菌生産が共役していることを見出した。その後,この研究は,南北太平洋と南大洋を含む広域的な南北断面観測や,外洋域の定点での時系列観測へと発展した。その結果,表層からの炭素輸送と中・深層の細菌生産の応答の間に,時間的なずれが生ずる場合があることや,中・深層の微生物プロセスが従来考えられていた以上にダイナミックであることなどが明らかになってきた。本稿では,海洋の中・深層における微生物ループ研究の歴史的な流れを概説するとともに,ウィルスや細菌が関与する炭素循環制御システムの実験的な解析についてのいくつかの研究事例を紹介する。また,今後の課題として,表層から中・深層への炭素鉛直輸送の主要媒体である,凝集体(マリンスノー)の形成と崩壊に関わるメカニズムを解明することの重要性を指摘する。
著者
日本海洋学会海洋環境問題委員会 日本海洋学会
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 = Umi no Kenkyu (Oceanography in Japan) (ISSN:21863105)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.631-636, 2002-11-05
参考文献数
12
被引用文献数
8 3

有明海の環境悪化機構の解明とその問題解決のために,現時点で早急に実施が求められる調査課題をここに提案する。1.潮位・潮流の変化諫早湾堤防締め切りを始めとする沿岸開発によって有明海内部の潮位・潮流がどれほどの影響を受けたのか依然として明らかにされていない。この問題は有明海の生態系を考えるとき極めて重要な問題であり,早急に結論が得られるようにすべきである。2.水質浄化機能の喪失と負荷の増大諫早湾潮受け堤防締め切りによる浄化機能の喪失の影響と調整池の汚濁負荷源としての役割を明確にすることが肝要である。特に,第三者委員会が提案している中・長期開門調査はこれらの問題解決ばかりでなく,潮汐・潮流問題の解明のためにも必須である。3.ノリ不作と赤潮の発生ノリ不作と関連した赤潮の発生に関して様々な要因が提起されている。個々の要因を精査するとともに,有明海への栄養塩負荷量の増大や組成比の変化及び潮流変化など諫早湾干拓事業を含めた総合的な解析が必要である。4.貧酸素水塊の発生汚濁負荷量の増加や潮流の減少などにより大規模な貧酸素水塊の頻発化が危倶される。汚濁負荷の影響の強い諫早湾における貧酸素水塊の形成機構とこの貧酸素水塊が有明海全体に及ぼす影響解明が必要である。5.底質の変化諫早湾の堤防近傍を中心に底質の細粒子化・浮泥の堆積が報告され,有機汚濁の進行が認められる。底質の変化は貧酸素水塊の形成,潮汐・潮流問題,二枚貝の漁獲量の減少などにも深く関連した問題であり広範囲にわたる調査が重要である。6.有明海の物質循環過程有明海の生態学的特徴を明らかにして,環境悪化を克服する方策を得るために,陸,干潟,海域全体の変化を総合的・長期的に解析した有明海の物質循環過程の解明が急務である。
著者
黒田 一紀
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.251-258, 2017-11-15 (Released:2018-04-09)
参考文献数
26
被引用文献数
1

気象庁が1967年に始めた東経137度線の海洋観測は,2016年に50年目を迎えた。フィリピン海中央部に位置する観測線は,亜熱帯循環の主な海流系を横切り,その半世紀にわたる観測資料は,海況や物質循環および気候の長期変動に関わる有用な成果を産出してきた。本総説では,増澤譲太郎博士による137度線の創始を可能にした条件を3つ挙げ,それらに関わる経緯を詳述することにより,今後の本観測線の継承および海洋モニタリングのあり方に資することを目指す。3つの条件とは,黒潮研究に造詣深い増澤博士の指導力と先見性,気象庁が待望していた「凌風丸Ⅱ世」の代船建造,そして1965年に開始した国際黒潮共同調査の対象海域にフィリピン海が含まれたことである。付加する必須事項として,米国のMontgomery博士が留学中の増澤博士に,赤道海流系の重要性と大洋規模の定期的海洋環境監視の必要性を示唆した点がある。これらの条件が1966年に出揃った結果として,1967年1月の第1回137度線の定期海洋観測が実現した。
著者
村上 虞裕美
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.224-239, 1986
被引用文献数
1

定常な鉛直2次元エスチャリーの力学的構造に関する研究を解析的に行なった.水深, 幅が一定の矩形エスチャリーで, 渦動粘性係数, 渦動拡散係数が空間的に一様な場合を取り扱った.エスチャリーの代表的な水平スケールが内部状態に依存すること, およびプラントル数が鉛直成層強度に依存することを考慮すれば, かなり広範なパラメタレンジで運動量のバランスが線型になることが示された.「線型状態」を, 運動量のバランスが線型な状態と定義すると, 線型状態は塩分輸送のバランスからさらに拡散段階, 中間段階, 移流段階に分けられる.上流向き塩分輸送は, 拡散段階では主に水平拡散に担われるが, 移流段階では鉛直循環流による移流に担われる.線型状態はいわゆる強混合および緩混合状態に対応するが, 線型状態の移流段階は, 緩混合状態の中でもかなり弱混合状態に近い状態であると考えられる.また鉛直平均塩分の縦 (主軸) 方向の分布は, 拡散段階ではexponential, 移流段階ではほぼlinearになることが明らかになった.
著者
南日 俊夫
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.171-177, 1955-12-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
6

On July 28th 1955, while 200 schoolboys and 188 schoolgirls were training in swimming at Nakagawara beach, Tu city, about 76 girls were drowned, and 36 girls of them died.At that place, it is expected that if the seaconditions were normal, the speed of the tidal current would be only 5.0cm/sec or less. On the other hand, the speed of the current which caused the tragic case was estimated at about 15-30cm/sec or more.This abnormal current can be explained as the longshore current, having the speed of 23-32 cm/sec, produced by the swell coming from the Typhoon No. 13.
著者
南日 俊夫
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.171-177, 1955

On July 28th 1955, while 200 schoolboys and 188 schoolgirls were training in swimming at Nakagawara beach, Tu city, about 76 girls were drowned, and 36 girls of them died.<BR>At that place, it is expected that if the seaconditions were normal, the speed of the tidal current would be only 5.0cm/sec or less. On the other hand, the speed of the current which caused the tragic case was estimated at about 15-30cm/sec or more.<BR>This abnormal current can be explained as the longshore current, having the speed of 23-32 cm/sec, produced by the swell coming from the Typhoon No. 13.
著者
太田 秀
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.65-73, 1976
被引用文献数
7

海中垂下機器-海底間距離測定器材としてピンガーがよく使用される. 従来直達音と反射音の到達時間差をCRT, PDRなどで読みとっていたが, 近距離の測定には精度が不足であった. ピンガー発信音を受信後, パルス群を両波整流し, R-Cフィルターで平滑化する極めて単純な検波回路を介在させ, エレクトロニックカウンターで時間間隔を測定する方法で, 海底上1.5から10m程度の範囲の機器-海底間距離をcm単位で連続的に求めることができた. このシステムを淡青丸 (KT-73-15; KT-74-14), 白鳳丸 (KH-74-3) 航海での海底写真撮影に利用し, 100mから4, 250mにおよぶ深度で約2万枚の海底写真を効率よく撮影することができた. 種々の較正を行った結果, 実用上±2.5%以内の誤差で距離がモニターできることから, シングルカメラでも海底面の物体のサイズを測定でき, 従来最も困難とされてい た表在性メガロベントスの定量化が容易となった.なお, このシステムは底層採水, 採泥, コアリングなど広範な利用が考えられる.
著者
菅 夏海 柴沼 成一郎 山田 俊郎 檜垣 直幸 門谷 茂 Natsumi Suga Seiichiro Shibanuma Toshiro Yamada Naoyuki Higaki Shigeru Montani 北海道大学大学院環境科学院 北海道大学大学院環境科学院 株式会社西村組研究開発室 北海道立総合研究機構地質研究所 北海道大学大学院環境科学院 Graduate School of Environmental Science Hokkaido University Graduate School of Environmental Science Hokkaido University Nishimuragumi Co. Ltd. Geological Survey of Hokkaido Graduate School of Environmental Science Hokkaido University
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 = Umi no Kenkyu (Oceanography in Japan) (ISSN:21863105)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.19-36, 2011-01-05
参考文献数
28

北海道道東に位置する火散布沼(ひちりっぷぬま)はラムサール条約登録湿地の一部でありながらも, 沼内ではアサリをはじめとする様々な漁業生産活動が行われている非常に特異な汽水域である。本研究ではこの火散布沼にて, 潮位, 流速などの物理環境を調査するとともに, 水温, 塩分, 栄養塩, クロロフィルα濃度の時空間分布を詳しく示し, 火散布沼の水理構造と, その生物過程の基盤となる栄養塩の起源について考察した。一日に供給される淡水量は沼容積の0.9~8.0%であったのに対し, 一潮汐周期にて沼に流入する外海水は沼容積の34~59%であったことから, 火散布沼は淡水供給よりも潮汐による外海水の流出入の方が卓越した系であることが確認できた。また, 試料中の窒素/リン(N/P)比, ケイ素/窒素(Si/N)比は, 火散布沼はNが制限的に作用しやすい環境であることを示していた。塩分と栄養塩類の相関関係, および潮汐による栄養塩類の流出入フラックスから, 火散布沼への無機態Nの供給源として外海水及び沼内生物による再生産の重要性が示唆された。河川(淡水)からの栄養塩供給が汽水域の基礎生産を支えるという報告例が多いが, 淡水供給量が小さい火散布沼のような汽水域においては, その基礎生産は外海水や再生産によって供給される栄養塩に支えられており, 本稿は火散布沼を淡水から供給される栄養塩に支配されない汽水生態系システムの典型例として報告する。Monthly field observations and a 36-hour survey were conducted in the brackish lagoon of Hichirippu in the eastern part of Hokkaido, Japan (43°02'N, 145°00'E). The lagoon covers an area of 3.58km^2 and has a mean water depth of ca. 70cm. It is inhabited by many animals and benthic plants (e.g. short-necked clam, swan, and the Japanese red-crowned crane), and is designated as a wetland under the Ramsar Convention. The rich natural environment of the lagoon, with a catch yield of fish, shellfish and seaweeds of about 90ton/yr, should therefore be preserved as a fishery area. In Hichirippu lagoon, we investigated the spatial and temporal distribution of nutrients and physical properties. The daily volume of freshwater input was 0.9~8.0% of total volume of the lagoon, while the volume of water entering the lagoon on the rising tide per half tidal day was 34~59%. The N : P and Si : N ratios were nearly below 16 and higher than 1, respectively, indicating nitrogen limitation. Plots of nutrients vs. salinity suggested nitrate+nitrite supply from the adjacent sea (Pacific Ocean), while the origin of ammonium was neither the adjacent sea nor freshwater. The results of the 36-hour survey showed that tidal nitrate+nitrite influx and outflux was 4.3 and 3.1kmol/half tidal day, respectively. It implicates 1.2kmol/half tidal day was supplied to the lagoon. Tidal ammonium flux values are nearly conserved. This suggests that ammonium is mainly regenerated by clam excretion in summer. Previous studies generally have shown that the freshwater input plays an important role in controlling estuarine primary production. Our results suggest that in Hichirippu lagoon both the nutrient import from the adjacent sea and the processes of nutrient regeneration within the estuary have an important effect on the primary production rather than the freshwater input.
著者
市栄 誉
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.169-182, 1977
被引用文献数
2

円形の暴風が一定速度<I>c</I>で上層だけにある西岸海流の上を通過する時の傾圧反応を取扱った.線型の慣性項を考えると, 流れの影響はcが10ms<SUP>-1</SUP>より小さい時には大きくきいてくる.慣性項のため暴風の通過後境界面には, 幅は暴風域の大きさで長さはπ (<I>c</I>-ν) <I>f</I><SUP>-1</SUP>の上昇下降域が交互に現われる, ここでνは流れの速度である.流れの左縁に強い渦度がある場合, 暴風の下流で境界面の擾乱は流れの左に向って進行するが, 流れの左側のくさび状の区域だけに限られる.1971年の台風Trixの際におこった日本の南岸の日平均水面の数日周期の振動をこの理論によっておこる黒潮の蛇行又は境界面の擾乱と解釈することができる.
著者
秦 克己
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.6-15, 1963-04-30 (Released:2011-06-17)
参考文献数
6
被引用文献数
1 3

1) 北西太平洋において投入した海流瓶は1932年以降, 北米に漂着したものは22本 (太平洋上4本を含む) であって, 1958, 59年に投入した海流瓶の拾得率は約2%となっている。 (北東太平洋では3%となっている)2) C海域 (黒潮域) で投入した海流瓶は僅か4本だけより拾得されておらず, そのうち2本がハワイ周辺で拾得された。 (北東太平洋におけるHOLLISTERの報告では拾得された816本の海流瓶のうち1本だけがハワイに漂着している)3) 亜寒帯海流の中心部における平均表面流速 (150°E~150°W間) は1日に4海里で, 一方この海流にのって北米に漂着した海流瓶17本の平均速度は1日に4.7海里となっており, 両者の差は約20%前後であった。4) 親潮沖合域に投入した海流瓶は50°N以北のカナダ・アラスカ沿岸に,混合水塊に投入したものはの40~50°N北米沿岸に, 黒潮域に投入したものは40°N以南の太平洋上に, 親潮接岸分枝域に投入したものは北日本沿岸へと水塊別に漂流先が決定付けられていたのは注目される。5) AとB海域, BとC海域の境はそれぞれ親潮前線,黒潮前線に相当している。6) 投入結果から春夏季三陸沖に南下する親潮表層水の北限は北得撫水道と考えられる。7) 日本海で投入した海流瓶はそれぞれA・B・C区に分散して拾得されている。
著者
石坂 丞一 田島 清史 岸野 元彰 Joji Ishizaka Kiyofumi Tashima Motoaki Kishino 長崎大学水産学部 長崎大学大学院生産科学研究科 理化学研究所 Faculty of Fisheries Nagasaki University Department of Science and Technology Nagasaki University The Institute of Physical and Chemical Research
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 = Umi no Kenkyu (Oceanography in Japan) (ISSN:21863105)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.235-241, 2002-03-05
参考文献数
18
被引用文献数
2

典型的内湾である大村湾で,衛星海色データおよびその水中アルゴリズムが適応できるかどうかの検証を行った。OCTSバージョン4およびSeaWiFSバージョン2は,いずれも大村湾のクロロフィルa濃度を約10倍程度過大評価した。水中分光放射計のデータから計算した海表面射出輝度にSeaWiFS OC2水中アルゴリズムを適応して推定したクロロフィルa濃度は,現場クロロフィルa濃度が3μgl^<-1>以下で過大評価,3μgl^<-1>以上で過小評価した。その誤差は衛星データと比較すると小さかったことから,大気補正にも問題があることが明らかとなった。大村湾の海面射出輝度スペクトルは,外洋域のスペクトルと比較すると,短波長側で小さく,有色溶存有機物の存在によって,外洋用の水中アルゴリズムが適応できなくなることを示唆した。また,長波長側の輝度は大きく,これまでの大気補正での仮定が成り立たないことを示した.沿岸域で利用の可能な海色アルゴリズムを早急に開発する必要がある。Satellite ocean color remote sensing data and an in-water algorithm for the data were verified in a typical semi-closed bay, Omura, Bay. Chlorophyll a data of OCTS version 4 and SeaWiFS version 2 overestimated chlorophyll a concentrations from the middle part of Omura Bay by about a factor of ten. Chlorophyll a concentrations were estimated by SeaWiFS OC2 algorithm with water leaving radiances calculated from underwater spectral radiometer data. The optically derived concentrations were overestimated for concentration of below 3μgl^<-1> and underestimated for above the value. The smaller error of optically derived concentration compared with satellite data was indicating that the atmospheric correction algorithm was also a problem. Water leaving radiance at the shorter wavelength for Omura Bay was lower than the value for the outer ocean, indicating that the colored dissolved organic materials affect the in-water algorithm. The higher value at the longer wavelength conflicted with the assumption of the present atmospheric correction algorithm. It is required to develop specific ocean color algorithms for coastal waters.
著者
大久保 隆
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.279-286, 1981
被引用文献数
3

瀬戸内海の表面水中の<SUP>228</SUP>Raの濃度を測定した. 瀬戸内海中央部の燧灘や備後灘で採水した表面海水は655-811 dpm/1000 lの<SUP>228</SUP>Raを含んでおり, 太平洋の表面水と比べて100倍も高濃度であった. この高い<SUP>228</SUP>Ra濃度は, 0.16dpmcm<SUP>-2</SUP>y<SUP>-1</SUP>以上と見積もられる堆積物からの<SUP>228</SUP>Raフラックスに支えられているものと考えられる. 海水中の<SUP>228</SUP>Ra濃度は, 塩分の増加及び瀬戸内海中央部からの距離の増加と共に著しく減少していた. 紀伊水道や豊後水道では, <SUP>228</SUP>Ra濃度は約18dpm/1000であった. <SUP>228</SUP>Raを使って瀬戸内海に単純な箱モデルを適用した結果, 瀬戸内海の海水の平均滞留時間は少くとも10年以下, おそらく数年程度と推定された.
著者
池田 勉
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.261-272, 1990
被引用文献数
21

ニホンウミノミを1°, 5°, 8°, 12℃で飼育し, 脱皮間隔 (<I>IP</I>) と脱皮毎の体長増加 (△<I>BL</I>) を測定した. その結果, <I>IP</I>はニホンウミノミの体長が大きくなるほど, 水温が低いほど長くなった. △<I>BL</I>は体長によって変化したが水温による影響は見られなかった. 飼育実験で得られた同一個体についての連続した脱皮殻の観察から, 脱皮によって腹肢内・外葉の節数が脱皮によって1節ずつ増加することが分かり, 従って野外標本にもとつく△<I>BL</I>の推定が可能となった. このようにして, 飼育実験によるIPと, 野外標本による△BLから水温を変数とするニホンウミノミの成長モデルを提出した. この成長モデルから, 雌の育児嚢より放出された仔虫 (体長31.31mm) が仔虫を放出する雌 (体長: 10-17mm) に成長するのに要する日数は1℃で333-593日, 5℃で195-347日, 10℃で118-210日, 15℃で82446日となる. またこの成長モデルから計算される体重ベースの成長速度は同水温において同体重を有するオキアミのそれに匹敵する. 日本海におけるニホンウミノミの摂餌状態について若干の論議をした.
著者
市栄 誉
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.105-120, 1980-05-30 (Released:2011-06-17)
参考文献数
30
被引用文献数
1

海底摩擦および水平渦粘性を考慮した順圧モードの南極周極流 (以下A. C. C. と略す) に対する無次元方程式を導いた. 流線に沿って渦度方程式を積分すると, 水深をコリオリパラメーターで割った量の値にのみ依存する0次の流線が得られる. 流線に沿って運動方程式を積分すると, 風の応力による運動量の入力と海底摩擦および水平渦粘性による運動量の消散との間の関係式が得られる.この関係式により得たA. C. C. の全流量はKAMENKOVICH (1962) が鉛直粘性102cm2s-1を用いて得た値の1/3であるが, この式からBRYAN and Cox (1972) が求めた全流量がモデルによって異っている原因を説明できる.彼らは水深が一定であるモデルと変化するモデルを用いて, 鉛直粘性係数1cm2s-1の場合, それぞれ650×106m3s-1と32×106m3s-1の流量を得ている. 高い流量は主にA.C.C.の幅が大きくなることによって生じる. 一方, 低い流量は流れの幅が細くなって蛇行することにより (A. C. C. の両側で生じる摩擦による) 水平渦粘性が増加し, さらに風による応力の入力が一定水深に対するほとんど帯状流の流れの場合より小さくなることによって生じる.付記では地衡流を与えて海底の摩擦応力の大きさを正しく推定するための海底境界層の力学を考察した. さらにその理論をフロリダおよびサン・ディエゴ沖の海峡における海底境界層内の流れの最近の観測結果と比較した.
著者
稲葉 栄生 安田 訓啓 川畑 広紀 勝間田 高明 Hideo Inaba Kuniaki Yasuda Koki Kawabata Takaaki Katsumata 東海大学海洋学部 東海大学海洋学部 東海大学海洋学部 東海大学海洋学部 School of marine science and technology Tokai University School of marine science and technology Tokai University School of marine science and technology Tokai University School of marine science and technology Tokai University
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 = Umi no Kenkyu (Oceanography in Japan) (ISSN:21863105)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.59-67, 2003-01-05
参考文献数
20
被引用文献数
4

1992年3月上旬,駿河湾口東部および同湾奥西部沿岸の2係留観測地点で,約5.5日間に約5.5℃に及ぶ顕著な水温急上昇が観測された。この水温急上昇は同湾沖の黒潮系暖水の流入による影響であり,さらに流入した暖水は同湾沿岸を反時計回りに伝播することが分った。両係留観測地点の水温急上昇の時間差と距離から求めた暖水の伝播速度は0.79m s^-1である。この値は暖水の移動を沿岸密度流の先端部の速度(Kubokawa and Hanawa, 1984)と見なして計算した値0.93ms^-1におおむね等しい。同様な現象は相模湾でも発生することが知られていて,それは急潮と呼ばれていることから,今回観測した水温急上昇は駿河湾の急潮と呼ぶことが出来る。また,今回の急潮をもたらした黒潮系暖水の流入の原因は黒潮の接岸であり,それには石廊崎沖での黒潮の小さな蛇行の発生が関係している可能性が考えられる。なお,同湾内各地の水位変動には急潮に伴う水温急上昇の効果はほとんど現れなかった。In early March 1992, a steep temperature rise of about 5.5℃ for 5.5 days was observed in the eastern part of the mouth of Suruga Bay and the western part of the bay head. The warm water in the eastern part of the bay mouth was influenced by an intrusion of the Kuroshio warm water. The intruded warm water moved cyclonically along the bay coast. The propagation speed of the warm water estimated from the time lag of the steep temperature rise and the distance between two mooring stations is about 0.79 m s^-1. The estimated speed is similar to that of the coastal density current in a rotating fluid, 0.93 m s^-1, theoretically derived by the same method as Kubokawa and Hanawa (1984). As a similar event that previously occurred in Sagami Bay was called kyucho, the steep temperature rise in this case is also called kyucho. The intrusion of the Kuroshio warm water into Suruga Bay as kyucho is related to a northward shift of the Kuroshio path. This northward shift seems to be related to the occurrence of a small scale meander of the Kuroshio off Irosaki. The temperature change induced by kyucho, has a little effect on the sea level change in the bay.
著者
MURRAY C.N. RENFRO W.
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.249-252, 1976

海産多毛類<I>Nereis diversicolor</I>による堆積物からのプルトニウムー239のとりこみの研究結果を報告する. <I>Nereis</I>のプルトニウム負荷量に対する, 堆積物と海水からの経路の相対的な重要度の比較を行なった. この比較研究に用いた実験条件下では, <I>Nereis</I>は, 体内の放射能の98%以上を海水からとりこむようにみられる.