著者
亀田 卓彦 藤原 建紀
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.59-68, 1995-08-31

瀬戸内海の灘部の底層には夏季に低温・低酸素の水塊が形成される.本報ではこの水塊を底層冷水と呼ぶ.この中で,別府湾の底層冷水についてその形成過程と,交換時間・酸素消費速度を求めた.8月の交換時間は1700日であり,水塊の存在時間よりも長い.この交換時間を用いて,底層冷水内の海水の年齢組成を求めた.9月になってもその体積の70%以上が,成層ができる以前(4月)の水である.このことは,別府湾の底層冷水は冬季の海水が水温上昇期に加熱から取り残されてできたものであることを示している.底層冷水はまた貧酸素水塊でもある.この水塊中の酸素消費速度は0.5〜1.0gm^<-2>day^<-1>であった.別府湾底層での強い貧酸素化は,底層冷水と外部との間の海水交換が少なく,外部からの酸素の供給が少ないために起こる.
著者
宇野木 早苗
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.637-650, 2002-11-05
被引用文献数
2 1

河川およびその流域で行われるさまざまな事業が,河川が注ぐ沿岸海域にどのような影響を与えるかが,4項目を取り上げて考察された。一つは川からの取水の問題で,取水によって海域の流れ,特に鉛直循環が著しく弱まり,海域の環境が悪化することが豊川用水事業を例に説明された。二つは川と海を断ち切る河口堰の問題で,ここでは特に諫早湾干拓事業の潮受堤防は長大河口堰であるとの認識の上に,潮汐・潮流の減少と膨大な千潟・浅瀬の喪失のため,また巨大汚濁負荷生成システムが機能して,有明海の顕著な環境悪化が生じたと解釈された。三つは沿岸の地形,自然,漁業環境を破壊する川からの砂供給の減少の問題で,球磨川を例にしていかに減少量が莫大であるかが示された。四つには流域の森林破壊の影響が議論された。河川事業の海域への影響は,河川内と異なって一般に緩やかに時間をかけて顕れ,また開発が進んだ内湾においては他の人為的影響と重なって判別が難しく,取り返しがっかない状態が生じやすい。事の重大性を認識して,研究の推進の必要性,および川と海を一体とした発想と管理が特に河川関係者に必要であることが,強調された。
著者
石田 明生 中田 喜三郎 青木 繁明 沓掛 洋志 岸 道郎 久保田 雅久
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, 2002-03-05

北太平洋における水塊とフロンの分布と特徴を,海洋大循環モデル(GCM)によって調べた。さらにGCMの実験によって得られた移流と拡散場を用いて,海洋による人為起源のCO_2の取り込み量を見積もった。GCM実験において用いられる拡散のパラメータ化と海面外力の違いが,CO_2の取り込み量に与える影響を,三つの実験によって調べた:すなわち,これまでの多くのモデルで用いられてきた水平・鉛直拡散過程による実験(RUN1),等密度面拡散を導入した実験(RUN2),等密度面拡散とともに,水温と塩分に冬季の海面境界条件を与えた実験(RUN3)である。水塊とフロンの現実的な分布は,等密度面拡散モデルによって再現された。水平・鉛直拡散のモデルは塩分極小や現実的なフロンの侵入を再現できなかった。塩分極小層の深さは冬季の外力のもとで,よりよく再現された。これらの結果は等密度面拡散と冬季外力の両者が,モデルによる水塊とフロンの再現に必須であることを示唆している。RUN3で得られた移流と拡散場を用いた人為起源のCO_2の海洋による取り込み量は,1990年において19.8Gt Cであった。この値は水平・鉛直拡散過程を用いたRUN1の結果より約10%大きい。これまでのモデルが,人為起源のCO_2の吸収源と考えられている中層の水塊構造をよく再現できなかったことから,本研究の結果は,これまでのモデルが海洋による人為起源CO_2の取り込み量を小さく見積もっていたことを示唆している。
著者
都司 嘉宣
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.159-168, 1998-02-25

インドネシアは国土が日本と同じような列島弧からなっており,地震,津波火山災害の多い国である.1992年以後今日までの5年間に4回もの津波が発生しており,津波による総溺死者数は1,500人を超えると見られる.1992年のFlores島地震を始め,近年にインドネシアで起きた津波4例を検証し,この国に津波警報システムを構築する構想について考察する.
著者
趙 棟梁 鳥羽 良明
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, 2002-03-05

Phillipsの風波の平衡領域の概念と観測データを用いて,HasselmannのモデルとPhillipsのモデルからエネルギー散逸率を計算すると,二つのモデルの形は異なるにもかかわらず実質上一致することが分かった。どちらも空気の摩擦速度u_*の3乗に比例し,波齢に弱く依存することが分かる。白波面積率Wも砕波過程を表すので,エネルギー散逸率と同様と考えられ,従来のWの経験公式の多くはu_*^3に比例する形をとっている。今回,風波の情報を含む過去の種々の観測データを最小二乗法を用いて再検討した。Wは,波齢や波周期より,風速や風の摩擦速度との相関が高い。さらに,u_*^2と風波のピーク角周波数を含む無次元の「砕波パラメータ」R_Bを導入すると,データのばらつきが著しく下がることが分かった。ちなみにR_Bは,u_*^3と波齢の積で表される。現在のエネルギー散逸モデルは,上記の砕波の特性を表現すべく修正される必要がある。
著者
西岡 純
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.19-36, 2006-01-05

サイズ分画測定法を用いて外洋海域における鉄の存在状態を研究した。その結果, 従来"溶存態"と定義されてきた画分中にはコロイド状鉄が含まれており, 海水中の植物プランクトンによる鉄の利用過程や地球化学的鉄の循環を理解するために重要な画分であることを示した。また, 国際共同プロジェクトとして, 北太平洋亜寒帯域の西部および東部で現場鉄散布実験を行ない, 大気から供給される鉄が他海域より多いと考えられる西部海域においても, 鉄の不足が生物生産を制限する要因であることを明らかにした。さらに, 西部海域が鉄制限海域になるプロセスとして, 供給された鉄が, 速やかに植物プランクトンが利用しづらい形態に変化してしまうことが重要であることを示した。海洋における鉄の生物地球化学的な研究は, 自然海域における生物生産の諸過程を理解するためには欠かせない分野と成りつつある。本稿では, 著者がこれまでに展開してきた, 海水中の鉄の存在状態と鉄が生物生産に果たす役割に関する研究の一部を紹介した。
著者
杉江 恒二 芳村 毅
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.101-148, 2011-09-15

海洋酸性化が海洋生物に及ぼす影響に関する研究が近年勢力的に行われている。本総説では,先ず,地球史における海水のpHの変遷と現代の海洋酸性化とを対比しながら植物プランクトンの動態について考察した。続いて,海洋酸性化の実験方法および植物プランクトンの生理生態と物質循環に及ぼす影響に関して近年の報告を中心にまとめ,以下の課題を抽出した。(1)過去の海洋酸性化の研究において亜寒帯や寒帯および外洋性の単離培養株が用いられていないこと,生息域や生活環に基づく実験が行われていないことは,自然環境における海洋酸性化の影響を把握する上での知識の欠如となっている。(2)pHの変化によって鉄と錯形成をする有機配位子の化学形態や2価鉄の濃度が変化するため,それらが生態系に及ぼす影響を評価する必要がある。(3)pHの低下により植物プランクトン細胞の有機炭素:リン比は増加する傾向,有機炭素:窒素比はほとんど変化しない傾向にある。一方では,pHの低下が溶存有機物およびケイ素の動態に与える影響には未解明な点が多いため,研究を促進させる必要がある。(4)pHの低下と鉄などの微量元素の利用性との複合作用がシアノバクテリアの窒素固定速度に及ぼす影響を明らかにし,窒素循環過程の理解を深化させる必要がある。
著者
上 真一
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.137-142, 2006-02-28
被引用文献数
1

瀬戸内海の東側出入り口に相当する紀伊水道の生態系の経年変動を,徳島県水産試験場が1987-1999年の12年間に亘って行った海洋環境調査と動物プランクトン主要分類群の出現密度結果などに基づいて解析した.紀伊水道の水温や栄養塩濃度は数年周期で変動し,1995年以降,水温は上昇傾向,栄養塩濃度は低下傾向にあった.このような変動パターンを引き起こす要因として,紀伊水道への底層貫入の強弱が関与していることが明らかとなった.即ち,底層貫入が強力な年は,1)平均水温が低く,2)栄養塩濃度が高く,3)透明度が低く(即ち,植物プランクトン現存量が高く),4)植食性カラヌス目カイアシ類(特に大型カイアシ類のCalanus sinicus)の出現密度が高かった.底層貫入が強い年は,黒潮流軸は紀伊水道から離れた沖合に位置していた.一方,1995年以降,黒潮は接岸傾向にあり,底層貫入は弱体化し,紀伊水道は次第に貧栄養の外洋的な生態系に変化しつつあると考えられた.漁獲量も近年は顕著な低下傾向にあった.底層貫入水は大阪湾や播磨灘などの瀬戸内海内部海域にも及ぶので,外洋起源の栄養塩は瀬戸内海内部の生物生産過程にも影響すると考えられる.
著者
伊藤 敬 仲居 裕 稲野 俊直 田口 智也 前田 昌調
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.417-423, 2006-09-05
被引用文献数
1

本研究は,微生物間の拮抗作用を利用してアユ冷水病原因菌であるFlavobacterium psychrophilumの増殖を抑制することを目的としている。この研究の一環として,アユ飼育槽内や天然河川から細菌を分離し,F. psychrophilumの増殖阻害活性を測定した。分離した97細菌株において,水槽壁および水中に浸漬したスライドガラス表面から得た菌が,高い割合で活性を示し,中でも7株は強い病原菌の増殖阻害作用を示した。そして,これら7株の簡易性状試験を行なった結果,3株はPseudomonas I/II, 2株はMoraxella属の種と考えられ,残りの2株は同定することができなかった。なお、この同定に関しては16SrRNAの解析について考察した。この7株の各々を配合飼料に20%(v/w)の割合で混合した後,体重あたり3%量の本飼料を稚アユに8日間毎日投与した結果,4株についてはアユの初期減耗がみられたが,飼育4日目以降では,死亡個体はなかった。一方,他の3株については,この初期減耗は見られなかった。
著者
松岡 聡 吉松 定昭 小野 哲 一見 和彦 藤原 宗弘 本田 恵二 多田 邦尚
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.77-84, 2005-08-26
被引用文献数
13

2002年度冬季,香川県沿岸では例年にないノリの不作が起き,ノリの生産金額は,平年の6割にまで減少した.ノリの色落ちが認められた水域の分布を詳細に検討したところ,特に不作であった海域は小豆島の北部および南西部海域であり,この地区の生産金額は平年の3割程度であった.過去12年間における年間ノリ生産量と漁期中の積算降水量との間には,正の相関関係が認められ,陸上からの栄養塩の供給がノリ生産量に大きく影響していることが考えられた.ノリ色落ち被害が顕著であった海域を対象に海洋観測を行った結果,色落ち被害の発生直後の2003年1月では,対象海域の塩分は33psu以上と例年よりも高く,栄養塩濃度もNO_3濃度が例年と比較して,3μM未満と低かった.このことから,例年に比べて,対象海域への陸域からの栄養塩の供給が少なかったことが考えられた.一方,2003年の梅雨期の6月には,対象海域の塩分は低く,栄養塩濃度も高かった.さらに,ノリの生育がほぼ正常であった翌年の1月では,2003年1月に比べて塩分は低く,栄養塩濃度も高くなっていた.以上の結果から,2002年度にノリの色落ちは,秋期の降水量が少なかった事が主な原因と考えられ,ノリの色落ち被害が顕著であった海域のノリ生産には,岡山県側の旭川・吉井川河口域(岡山水道)からの栄養塩供給が重要な影響を及ぼしていることが考えられた.
著者
井桁 庸介 北出 裕二郎 松山 優治 Yosuke Igeta Yujiro Kitade Masaji Matsuyama 東京海洋大学海洋科学部 東京海洋大学海洋科学部 東京海洋大学海洋科学部 Departments of Ocean Sciences Faculty of Marine Science Tokyo University of Marine Science and Technology Departments of Ocean Sciences Faculty of Marine Science Tokyo University of Marine Science and Technology Departments of Ocean Sciences Faculty of Marine Science Tokyo University of Marine Science and Technology
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.441-458, 2005-05-05
参考文献数
17
被引用文献数
4

海岸・海底地形が沿岸捕捉波の伝播におよぼす影響について, 簡単な地形を用いた数値実験により研究した。狭い陸棚を持つ深い湾へ伝播する場合には, 岸に沿う風で発生した内部ケルビン波型の沿岸捕捉波は, ほとんど分裂せず湾内へ伝播する。一方, 陸棚が湾口の外側まで張り出す浅い湾へ伝播する場合には, 沿岸捕捉波は湾内へ進入する内部ケルビン波と, 陸棚に沿って湾口沖を伝播する陸棚波型沿岸捕捉波に分かれて, 波形が変化した。これらの特徴は, 沿岸捕捉波による日本南岸各地での潮位変動を良く説明している。陸棚幅が広い場合には, 岸に沿う風により陸棚波が発生するが, 浅い湾の湾口で分裂せずに陸棚端に沿って伝播した。また, 湾口の陸棚に沿って伝播する陸棚波型沿岸捕捉波は, 陸棚の途切れを跳び越えて伝播し, その振幅は途切れ幅が狭くなるに従い大きくなることが確認された。さらに, 湾の幅がロスビーの内部変形半径の2倍より狭い場合, 湾口で分離して湾内へ入射する内部ケルビン波の一部が湾口を跳び越えることが明らかになるとともに, その振幅は湾口幅が狭くなるに従い大きくなることが判明した。Numerical experiments using a two-layer model with simple topography were performed to investigate the scattering of a coastal-trapped wave (CTW) generated by alongshore winds. In the case of a narrow shelf with a deep bay, an internal Kelvin-type wave propagated into the deep bay without wave separation and mode conversion. However, in the case of a narrow shelf with a shallow bay, the internal Kelvin-type wave separated at the bay mouth into two types of waves, a shelf wave and an internal Kelvin wave. The shelf wave propagated along the shelf edge off the bay mouth, while the internal Kelvin wave propagated into the shallow bay. The sea level fluctuations along the southeast coast of Japan that were caused by typhoon 8818 were well explained by the separation and mode conversion process of CTW. In the case of a wide shelf with a shallow bay, a generated shelf wave was propagated along the shelf edge without separation at the bay mouth. In cases with a disconnection of shelf, the shelf wave was found to bridge over the disconnection of shelf and the amplitude of the bridged wave decreased exponentially with increasing disconnection length. Most of the internal Kelvin-type wave bridged over the bay mouth when the width of the bay mouth was shorter than twice the internal radius of deformation.
著者
田中 勝久 児玉 真史 熊谷 香 藤本 尚仲
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.163-172, 2004-03-05
被引用文献数
10

筑後川河口域において濁度とクロロフィル蛍光の連続観測をノリ施業期の2002年9月から2003年4月初旬まで約半年間にわたって実施し,潮汐変動との関連を調査研究した。クロロフィル蛍光強度は高濁度の大潮干潮時に増大し,濁度と対応した大きな短期的増減を示した。しかし,濁度の低下する満潮時のデータで比較するとクロロフィル蛍光強度から推定される植物プランクトン現存量は,日射量が極端に低下した2002年12月後半および小潮時に塩分が低下した2003年2月を除くと,小潮時から中潮にかけて増大するが大潮時以降には安定または減少する傾向が認められた.小潮時には,表層塩分の低下(弱混合化・成層化)が進み,表層へ高栄養塩濃度の河川水が影響するとともに透明度の上昇による光条件の好転などにより表層での植物プランクトンの増殖が促進されたものと考えられる。一方,強混合となる大潮時は淫祀の巻き上がりにより透明度が低下し,植物プランクトンは光量不足や物理的分散作用(鉛直混合および沖合水との混合),さらに淫祀による凝集作用により現存量の増大が抑えられると考えられる。
著者
武岡 英隆 村尾 肇
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.183-190, 1997-02-28
被引用文献数
5

陸域からの窒素や燐の流入負荷量を削減しても海域でのそれらの濃度は必ずしも削減率どおりには減少しない.この理由として,それらのbackground濃度,物質輸送の非線形性,負荷量変動の履歴,の3つの要因を考え,これらがどのように働くかを分析した.
著者
吉田 隆 下平 保直 林王 弘道 横内 克巳 秋山 秀樹
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.499-507, 2006-11-05
参考文献数
13
被引用文献数
2

黒潮の流路情報をもとに黒潮大蛇行を判定する基準を検討した。潮岬での黒潮の離岸を示す串本と浦神の潮位差が小さい値に安定していることに加えて,遠州灘沖での黒潮流軸の最南下点が北緯32度より南に位置することを,黒潮が大蛇行流路であるか否か判定する基準とした。さらに,大蛇行・非大蛇行流路と黒潮流路のA,B,C,D,N型分類との対応について整理した。
著者
寺田 一彦
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, 1964-06-25
著者
阿保 勝之 宮村 和良
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.161-169, 2005-02-25

麻痺性貝毒の原因となる渦鞭毛藻Gymnodinium catenatumの個体群増殖に及ぼす海水流動の影響を解明するため,2002年11月20日から2003年5月6日に大分県の猪串湾において潮流調査とプランクトン調査を行った.冬季には,海面冷却や黒潮系暖水の影響により逆エスチュアリー循環流が発生し,湾内上層では湾外から高温水が流入し,下層では湾内の低温水が湾外方向へ流出する傾向にあった.しかし,猪串湾は南東方向に開口しているため,北よりの季節風が吹いた場合には高温水の流入が妨げられ,残差流が小さくなり湾内の海水は停滞した.また,降雨時には一時的にエスチュアリー循環流が発生し湾内の表層水が流出した.G.catenatumの増殖速度は小さいため,湾内における個体群増殖は海水流動の影響を強く受けた.季節風が強い時には湾内の海水交換は小さくG.catenatumの増殖に適した物理環境であったが,逆エスチュアリー循環やエスチュアリー循環が発達した時にはG.catenatumは湾外へ流出し湾内の細胞数は減少した.また,密度流に伴ってG.catenatumが湾奥に集積され濃密度分布を形成することもあった.
著者
関根 義彦 陳 苗陽
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.277-289, 2003-05-05
参考文献数
41
被引用文献数
3

日本南岸の黒潮流路の変動特性を知るため,1975年から1995年までの都井岬から房総半島沖までの9点からの黒潮の離岸距離を海上保安庁水路部の海洋速報の黒潮流路の中央点との距離として求め,その時間変動を調べた。その結果1975年に発生した黒潮大蛇行は室戸岬から大王崎にかけて離岸距離が大きく御前崎以東で離岸距離が小さいのに対し,1980年以後の五回の大蛇行は室戸岬から潮岬では離岸距離が小さく御前崎以東で離岸距離が大きくなり,大蛇行の流路のパターンが1980年前後で大きく変化していることが示された。大蛇行期ごとの平均距離をみると,1975年発生の大蛇行は伊豆海嶺の三宅島と八丈島の間のゲート領域を通るのに対し,1980年以降発生の大蛇行は平均距離が伊豆海嶺のゲート部よりも南に位置し,C型流路かゲート部を通る流路の選択を強制されることが示唆された。このため1980年以降発生の大蛇行は流路に及ぼす伊豆海嶺の地形効果が大きく,低気圧渦である大冷水塊を伴う大蛇行が比較的短時間で消滅する可能性が示唆された。九州南の潮位差解析により黒潮の南側分流の流量が大きいと都井岬から室戸岬沖の黒潮離岸距離が大きくなり,御前崎から石廊崎沖では離岸距離が小さくなる傾向が示された。一方北部流量が大きくなると,都井岬から潮岬沖の離岸距離が小さくなり御前崎から野島崎沖で離岸距離が大きくなる傾向がある。また,犬吠埼沖では黒潮の離岸距離が九州南の潮位差と有意な相関を示さない。
著者
乙部 弘隆
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.493-494, 2004-09-05

2004年4月2日に岩手県の大槌湾で結氷現象がみられた。この観測された給氷現象は,夜半の降雨による淡水が河川から大量に流れ込み,表層を覆ったところへ明け方に気温が下がり,雨が雪に変わりシャーベット状の雪泥(Slush)からスポンジ氷(Shuga)になっていく過程と考えられる。東北地方では,たまに,このような現象がみうけられるが,公の記録としては残されていないようなので報告する。