著者
金子 薪 本地 弘之 川建 和雄 水野 信二郎 増田 章 三井田 恒博
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.75-79,81, 1986

対馬暖流に重なる潮流により誘起されたと思われる内部波列が, 超音波探知機を用いることによって七里ケ曽根 (日本海対馬海峡東水道) の上流側で観測された. 同時に, 内部波列上の海面も内部波の波長の間隔で波立っているのが観測された.
著者
高橋 大介 南條 悠太 大山 淳一 藤井 直紀 福森 香代子 武岡 英隆
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1-19, 2010-01-05
被引用文献数
2

四国西岸に位置する法花津湾において2005年から2007年の夏季にビデオモニタリングを行い,湾内表層で形成されるミズクラゲ集群出現頻度の時間変動について調べた。ミズクラゲ集群出現頻度には,8月中旬から増加し,9-10月に減少する長周期変動と,10-15日周期で増減を繰り返す短周期変動が存在した。特に,短周期変動の強弱の経年変化は,四国西岸域で生じる急潮の強弱の経年変化と一致していた。そこで,急潮とミズクラゲ集群出現頻度の短周期変動との関係を明らかにするため,2007年の夏季法花津湾において係留観測と海洋観測を行った。法花津湾へ到達した急潮は湾内に暖水流入を引き起こすとともに,湾スケールの海水交換を励起した。この暖水流入にともなって湾外の既存水塊中にいたミズクラゲが湾内へ輸送され,湾内表層で受動的に集群することによって,夏季法花津湾表層ではミズクラゲ集群出現頻度が10-15日周期で変動していると考えられる。
著者
柳 哲雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.93-95, 1993-04-25 (Released:2008-04-14)
参考文献数
3

Tide and tidal current at the central part of the Seto Inland Sea on 29 March 1185, when the war between Genji and Heisi was carried out, are reproduced. The reproduced tide and tidal current well coincide with the description in "Heike-Monogatari".
著者
渡慶次 力 柳 哲雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.13, no.5, pp.475-491, 2004-09-05
被引用文献数
2

瀬戸内海沿岸と太平洋沿岸の潮位記録,人工衛星から得られた海面高度偏差記録,黒潮流轄の位置記録,四国沖の水温・塩分鉛直断面観測記録を用いて,2001年9月17日から20日に広島で発生した冠水被害を伴う高潮位の原因について研究した。その結果,近年広島における年平均潮位は地盤沈下により上昇(5.0mm y^<-1>)しているため,潮位の季節変動が最大値をとる夏季から秋季に高潮泣か発生しやすい傾向にあることが判明した。特に,2001年9月に広島で発生した冠水被害を伴う高潮位は,これらの要因に瀬戸内海を含む太平洋沿岸の+10cm程度,約4か月周期を持つ海面上昇が重なったために発生した。高潮位に影響を与えた約4か月周期の海面上昇は,四国沖約250kmの海面高度偏差が負であり,四国沖の黒潮の接岸傾向時に発生していた。四国沖の海面高度偏差の変動は,中規模渦によるものと類推され,それが四国沖の黒潮離接岸に影響を与えて,瀬戸内海を含む四国沿岸における約4か月周期の海面昇降をもたらした可能性がある。近年の広島における年平均潮位は地盤沈下に伴い上昇傾向にあるために,夏季から秋季の大潮時に太平洋から瀬戸内海へ偏差10cm程度の海洋擾乱が加わると,通常の満潮面から約30cm 高いところに建造されている厳島神社においては,冠水被害を伴う高潮位が今後も頻繁に発生する可能性がある。
著者
MURTY T.S. TAYLOR J.D.
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.203-214, 1970

風によるセント. ローレンス湾の定常的な表面循環を, 地形を考慮に入れて, 1940-49及び1951-60の各10年間の平均各月について数値的に計算した. このモデルは海面の氷層を考えていないので, 冬の月に対してはあてはまらないが, ガスプでの流れを除いて, ほぼ観測された循環の模様を満足に再現している.
著者
宇多 高明
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究ノート (ISSN:09143882)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.159-168, 1992-02-29

モルディブのサンゴ礁上の砂浜におけるウォーターフロント利用を紹介し,熱帯リゾートとして良好に利用されている海浜も時として高波災害を受けることがあり,利用と保全の両立がかなり難しいことを示す.次に,我が国における海岸の現状について述べ,その中で我が国の海岸では種々の開発に伴って海岸侵食が著しく進み,砂浜が消失しつつある状況を明らかにする.そして我が国の海岸状況は,砂浜におけるウォーターフロント利用を盛んにする方向の議論と正反対の方向へと推移しつつあることを明らかにする.また,それらの真なる解決には,単に技術的な問題の解決のみではなく,海岸の管理体系自体の改革が必要であることを示す.
著者
浅 勇輔 広瀬 直毅 千手 智晴
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.39-50, 2007-01-05
被引用文献数
12

能登半島東岸では,台風通過後に度々強い海流(急潮)が発生し,強い振動流が1週間以上継続したとの報告もある。本研究では,急潮の全体像を把握するため,3次元海洋モデルを用いた数値実験を行なった。沿岸観測で捉えられた2004年の急潮の特徴,例えば台風通過後の位相差,1ms^<-1>を超える流速や周期性などを,モデルでよく再現することができた。さらに,能登半島北東沖で発生する吹送流が強い移流効果を伴って沿岸部の急潮を引き起こし,富山湾内ではその急潮が線形的な内部ケルビン波として反時計周りに伝播していくことが判明した。2004年の台風15号,16号,18号の場合を比較し,南西風によって励起される吹送流の強さに比例して,半島北部の水塊が富山湾のより奥まで輸送されることが示された。
著者
渡慶次 力 柳 哲雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.395-405, 2003-07-05
被引用文献数
1

沖縄本島では夏季台風が接近するため高潮の被害が深刻な問題となっている。一方, 2001年7月20日から23日に那覇において,観測史上初めて低気圧の通過や強風のない状況でも道路冠水の被害が発生して社会問題となった。そこで沖縄本島の那覇で観測された潮位記録と衛星から得られた海面高度偏差記録を用いて,台風通過のあった1997年8月17日の高潮位と,低気圧の通過や強風を伴わない状況で発生した2001年7月22日の高潮位の原因について調べた。その結果,高潮位を発生させた潮位の長期変動において,1997年と2001年は近年における那覇の経年的な年平均潮位の上昇と,夏季に最大値となる季節変動であるSa潮の振幅が大きかったことから,冠水被害を伴う高潮泣か発生しやすい傾向にあったことがわかった。さらに那覇において高潮位を発生させた潮位の短期変動の要因に関して,1997年8月17日においては台風通過に伴う海面上昇, 2001年7月22日においては直径を200kmから500kmと変化しながら,西の方向へ約6.3 cm s^<-1>の移動速度で北緯29度,東経157度付近から沖縄本島まで到達した中規模渦(10cm以上の正偏差域で定義される)による海面上昇が,主な要因であったことが解明された。
著者
大田 啓一 半田 暢彦
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.25-32, 1985
被引用文献数
8

西部北太平洋上で粒径別に採集したエアロゾル試料の有機炭素, アルカンおよび多環芳香族炭化水素 (PAH) を分析した結果, 次のことが明らかとなった. すなわち, これら有機物の大気中濃度は, 日本あるいはユーラシア大陸からの距離が遠くなるにつれて減少しており, 減少の度合いの大きさは, PAH>>アルカン>有機炭素の順であった. またこれら有機物は, 粒径1μm以下の小粒子に主として含まれていた. アルカンとPAHについての分析結果は, 日本の沿岸海域のエアロゾルに含まれる炭化水素は陸上の人間活動に由来するものであり, その寄与は, 日本から約1,000kmの海域におよんでいることを示した. 一方, 遠洋のエアロゾルについては, 1μm以下の粒子の炭化水素は陸上の自然源起源であり, それより大きい粒子中のそれは海洋起源であることが明らかになった.
著者
本田 聡 志田 修 山村 織生
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.39-47, 2003-08-26
被引用文献数
3

スケトウダラ太平洋系群は,親潮および沿岸親潮の影響が及ぶ北海道〜東北太平洋岸の陸棚および陸棚斜面域に分布する重要漁獲対象資源である.主要な産卵場は冬季の噴火湾口部周辺海域に形成される.春季に孵化した着底前0歳魚の多くは日高湾のごく沿岸域に沿って東進し,秋季までに0歳魚の成育場と考えられている道東海域に到達する.この移動は春〜夏にかけての動物プランクトン豊度の移動と一致する.成熟までを主に道東陸棚域で過ごした未成魚は,3〜5歳の冬に初回の成熟を迎え,噴火湾口部へ産卵回遊する.産卵後の成魚は再び道東海域へ移動し,摂餌を行う.以後,成魚は夏の索餌期には道東,冬の産卵期には噴火湾口部へと,襟裳岬を挟んでの季節回遊を繰り返す.本資源は,北海道太平洋岸に隣り合って位置する二つの異なる海域,噴火湾口部周辺海域および道東海域の特性をそれぞれ有効に活かす生活史を持つに至ったと考えられる.
著者
秦 克己
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.193-201, 1965-11-30 (Released:2011-06-17)
参考文献数
7
被引用文献数
10

1) 親潮接岸分枝の流量は1~4×106 m3/secで変動し, その年変動は1953~1954年と1960~1961年に極大が, 1956~1957年と1962~1963年に極小があらわれていて, 約7年の周期が見られる。2) 北海道東方および三陸沖における黒潮系水の北上が顕著な年に親潮接岸分枝の南下流量が大, 逆に黒潮系水の北上が弱い年に親潮接岸分枝の南下流量が小となっていて, この現象は黒潮の補償流が親潮であることを示す一例と考えられる。3) 春季では, オホツク水が北得撫水道を通過して太平洋に流出して, 南千島列島に沿い南西流し, その主流は親潮接岸分枝としてさらに南西流している。4) 西部北洋中央水の南限は1963, 64年の夏季に44°N付近で, これより南に達していない。又その南下流量は2×106 m3/sec前後 (1200 db基準でもほぼ等値)で, 平野が算出した値 (6~9×106)よりもかなり小さい。5) 千島近海の親潮について, その流路は春季・夏季とも同じであるが, その水塊は春季にオホツク海水が直接太平洋側に流出しているが, 夏季に宗谷暖流系水の影響を受けてやや高かんとなっている。
著者
中井 俊介
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.117-128, 1998-04-05
著者
上 真一
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.283-299, 2010-11-05
被引用文献数
1

生物海洋学における研究目的の一つは,植物プランクトンから魚類などの高次栄養段階動物に至る食物連鎖の中でのエネルギー転送過程や物質循環過程を解明することであるが,人間活動の高まりが海洋生態系の変化を引き起こしている現在では,食物連鎖構造に及ぼす人間活動の影響を解明することも主要な研究テーマとなる。本稿は著者がこれまで行ってきた動物プランクトン(特にカイアシ類)の生産生態研究とクラゲ類大発生機構解明研究を概説し,魚類生産が持続するための沿岸生態系の保全と修復の必要性について述べる。食物連鎖の中枢に位置する動物プランクトンの生産速度の推定を目的として,まず分類群別に体長-体炭素重要関係を求め,動物プランクトン現存量測定の簡素化を図った。次に最重要分類群であるカイアシ類の発育速度,成長速度,産卵速度などと水温との関係から,本邦沿岸産カイアシ類の平均日間成長速度は冬季では体重(あるいは現存量)の約10%,夏季では約40%であることを明らかにした。瀬戸内海全域を対象とした調査航海を行い,現場のプランクトン群集の生産速度を求めた。その結果,植物プランクトンから植食性動物プランクトンへの転送効率は28%,さらに肉食性動物プランクトンへの転送効率は26%と,瀬戸内海は世界トップレベルの単位面積当りの漁獲量を支えるにふさわしい優れた低次生産構造を示した。1990年代以降瀬戸内海の漁獲量は急減し,一方ミズクラゲの大発生が頻発化し始めた。さらに2002年以降は巨大なエチゼンクラゲが東アジア縁海域に毎年のように大量発生し始めた。両現象に共通するのは人間活動に由来する海域環境と生態系の変遷(例えば,魚類資源の枯渇,富栄養化,温暖化,自然海岸の喪失など)であり,両海域はいわゆる「クラゲスパイラル」に陥っているようだ。クラゲの海からサカナ溢れる豊かな「里海」の創生に向けた海域の管理が必要である。
著者
中井 俊介
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.4, no.5, pp.433-440, 1995-10-30
著者
中井 俊介
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.399-408, 1997-12-05
著者
小松 輝久 三上 温子 鰺坂 哲朗 上井 進也 青木 優和 田中 克彦 福田 正浩 國分 優孝 田中 潔 道田 豊 杉本 隆成
出版者
日本海洋学会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.127-136, 2009-02-27

海面に浮遊している藻類や海草のパッチは流れ藻と呼ばれ,世界の海で見られる.日本周辺では,ホンダワラ類がそのほとんどを占めている.ホンダワラ類は,葉が変形し,内部にガスを貯め浮力を得ることのできる気胞を有しており,繁茂期には数メートルにまで成長する.沿岸から波などにより引き剥がされた後,その多くは海面を漂流し,流れ藻となる.東シナ海の流れ藻の起源を,固着期と流れ藻期のアカモクの分布調査,遺伝子解析,衛星位置追跡ブイ調査をもとに推定した.その結果,中国浙江省沖合域の島嶼沿岸から流出している可能性が示された.ホンダワラ類の流れ藻は,漂流中も光合成,成長などの生物活動を行っている.伊豆半島下田地先のガラモ場での現地調査および陸上水槽実験を通じて,流れ藻の発生時期とその量,成長,成熟,光合成速度,浮遊期間を調べた.最後に,ホンダワラ類にとっての流れ藻期の生態的意義について議論した.
著者
大塚 攻 西田 周平
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.6, no.5, pp.299-320, 1997-10-05 (Released:2008-04-14)
参考文献数
147
被引用文献数
11 24

The feeding ecology of marine pelagic copepods has been intensively studied since the 1910's. Recently, many new techniques, such as high-speed cinematography, deep-sea ROV, and SCUBA, have been introduced for direct observatios of their feeding behavior. These have clearly revealed that particle-feeders employ suspension feeding but not filter-feeding and that appendicularian houses are important food items for some pelagic calanoid, harpacticoid, and poecilostomatoid copepods. Particle-feeders commonly utilize microzooplankton such as ciliates and copepod nauplii and fecal pellets. Detritivory, strict selective predation, and gorging have been found exclusively in oceanic copepods. Five calanoid families Diaixidae, Parkiidae, Phaennidae, Scolecitrichidae, and Tharybidae with special sensory setae on the mouthparts and the poecilostomatoid Oncaea are considered to be adapted for feeding on detrital matter such as appendicularian houses. Some heterorhabdids probably inject a venom or anesthetic into prey animals to capture them. In the laboratory, predation on fish eggs and larvae by copepods, rejection of some dinoflagellates by calanoids, developmental inhibition of copepod eggs by feeding on some diatoms, and copepods' reactions to fecal pellets were demonstrated. Pelagic copepods constitute an assemblage of evolutionarily different groups. Among the 10 orders, calanoids supposedly first colonized the marine pelagic realm, and, at present, are most successfully adapted of any order to this environment by a wide variety of feeding mechanisms. They have developed a wide variety of feeding mechanisms. On the other hand, poecilostomatoids have secondarily become adapted to pelagic environments and are loosely associated with fish larvae and pelagic invertebrates, such as salps and appendicularians, for feeding. The calanoid family Heterorhabdidae consists of 2 particle-feeding, 3 carnivorous, and 2 intermediate genera. A phylogenetic analysis showed that the carnivores could have originated from the particle-feeders through the intermediate conditions, and that the mouthpart elements of the carnivores could be derived from those of the particle-feeders with modifications of the original elements and no addition of novel structures. Recent studies demonstrate that some copepods such as scolecitrichids and Oncaea can efficiently feed on nanoplankton trapped in appendicularian houses, and also suggest that suspension-feeders may transport diatom resting spores into the sea-bottom in the epipelagic zone and metals in the deep-sea bottoms through their feeding behavior, and that epipelagic carnivores may compete with fish larvae for copepod nauplii and dinoflagellates.
著者
稲津 大祐 木津 昭一 花輪 公雄
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.57-69, 2005-01-05
被引用文献数
1

日本沿岸の85か所,および,韓国の日本海側の3か所の水位データを用いて,気圧変動に対する水位の応答とその海域特性を研究した。その結果,従来提唱されてきた静力学的なInverted Barometer (IB)応答(-1cm hPa^<-1>)が成り立つ海域は,水深の浅い内湾を除く,太平洋沿岸に限られることが明らかになった。一方,日本海やオホーツク海沿岸の水位は,総観規模の気圧変動に対して,最大半日程度の遅れを伴いながら応答することがわかった。日本海沿岸における応答時間の遅れは,対馬,津軽,宗谷海峡からの距離にほぼ比例していた。これらの結果に基づき,場所によって異なる水位の応答を仮定して,新しい気圧補正法を提案する。この補正によって,IB応答を仮定する従来の補正よりも確からしく気圧起源の変動成分を除去することができ,また山陰海岸に発生する陸棚波の信号をより確からしく抽出することができた。
著者
横田 華奈子 勝又 勝郎 山下 幹也 深尾 良夫 小平 秀一 三浦 誠一
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.317-326, 2010-11-05
被引用文献数
1

マルチチャンネル反射法地震探査(Multi-Channel Seismic survey,MCS survey)は,これまで地震学において地下の構造探査に用いられてきた手法である。2003年にこのMCSデータを用いて海洋中の密度構造を可視化できることが指摘されてから,地震音響海洋学(Seismic Oceanography)と呼ばれるMCSデータを用いた海洋物理学が発展してきた。この新しい研究分野を本稿で紹介する。MCSデータとは人工震源から発振された音波の反射強度を記録したものである。ノイズが多いなどの難点はあるが,従来の海洋観測法では様々な制約から取得することが難しい水平・鉛直ともに高解像なデータである(水平分解能6.25〜12.5m,鉛直分解能0.75〜3m)。観測は船舶を停止せずに行われるため,約200kmの測線を前述の分解能で1日で観測できる。MCSデータを用いると広範囲の海洋中のファインスケールの密度構造を可視化することができる。ここでは一例として,伊豆・小笠原海域の1測線に見られた反射強度断面上の低気圧性渦を挙げる。