著者
松島 肇
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.825-828, 2009
被引用文献数
1

我が国の砂浜海岸は古くから生活の場として利用されていたが、レクリエーションの場として海水浴の利用が定着したのは明治期(19世紀後半)とされている。以来、海水浴場を中心とした海洋性レクリエーションは国民の代表的レクリエーションとなり、現在に至っている。今井によると、海水浴場が立地可能な砂浜海岸は約6,900kmと我が国の海岸総延長の21%に相当し、うち約777km(1400カ所)が海水浴場として整備されている。一方、海水浴場に指定されていない砂浜海岸においても、海水浴場のようなレクリエーション活動は確認されており、安全管理上、たびたび問題となっていた。本研究では札幌市近郊に位置する砂浜海岸である石狩海岸を対象地とし、ほぼ同じ環境条件を有しながらも管理形態の異なる、隣接した3つの海岸区域について、利用者を対象とした意識調査を行い、各区域の有する課題を抽出し比較することを目的とした。さらに対象地域の持続的な利用を行ううえで、求められる適正な利用管理手法について検討した。
著者
山本 紀久
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.15-19, 2002-08-31
参考文献数
3
被引用文献数
1

ランドスケープの役割りの原点は、人類のために「限りある地球上の自然資源」を「衰退させることなく持続的に使いつづける」ための「賢い土地利用(WISE USE)」のプランを提案することである。ランドスケープデザインは、そのために地球上に一つとして同じところはない「多様な土地を読み込み」「目的とする土地利用との整合性を検討立案」して、具体的な下図を作ることである。その際に不可欠な情報が、その土地の持つ「自然の資源(POTENTIAL)」であり、その中でも特にグランドデザインによる土地の改変の対象となる「地表面の情報」である。
著者
立入 郁 武内 和彦
出版者
日本造園学会
雑誌
環境情報科学. 別冊, 環境情報科学論文集 = Environmental information science. Extra, Papers on environmental information science (ISSN:03896633)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.107-112, 1998-11-16
参考文献数
10
被引用文献数
3

旧日本軍が作成した1930年代の地形図と中国科学院が作成した1980年代の砂漠化類型園を比べた結果,中国内蒙古自治区奈量旗でも,周辺で報告された結果にほぼ一致する約1.8倍の流動砂丘の拡大がみられた。 1980年代における砂漠化程度は,地形では砂丘,低位段丘,氾濫原の順に大きく,土壌では風積砂土が湿草地を上回った。大半のカテゴリでは, 1930年代に砂漠化地域だったところのほうがそうでなかったところより1980年代の砂漠化の度合いが大きかったか,例外的に逆の結果になるものもあった。
著者
村松 保枝 赤坂 信
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.459-464, 2009
被引用文献数
1

町並み保存は、地域の歴史的・文化的資源を保存し活用しようとする取り組みである。1970年代以降の妻籠にはじまり、地方小都市や農山漁村における愛郷運動や地域振興としての観光化によるまちづくりの源流として広がり、現在では全国的な展開を見せている。こうした町並み保存によるまちづくりの特徴として、住民主導か地方自治体主導かによらず地域の運動であることが挙げられる。そのため、地域の歴史経緯に基づく物的・人的資源の実態に即した工夫が試みられ、各地域で特色ある町並み保存が展開されてきたと言えよう。本研究では、地域の町並み保存団体の設立年代と保存の対象と動機に着目し、地方自治体や国による制度や条例の制定を含む社会背景とともに展開してきたプロセスを明らかにすることを目的とした。
著者
松木 吏弓
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, 2009-04

ノウサギは日本に広く生息する代表的な草食動物であり、また大型猛禽類や肉食哺乳類の餌動物として、生態系の食物連鎖を支える重要な役割を果たしている。これらの生態系に注目した場合、餌となるノウサギの分布と個体数の情報は、食物連鎖関係を解明する上で重要となる。ノウサギの個体数推定には、調査地内に排泄された糞数より推定する糞粒法、あるいは雪上に残された足跡の総延長より推定するINTGEP法が主に用いられてきた。しかし、どちらの推定法も地域や植生、行動などの条件で変動が大きく、精度の向上が課題となっている。近年、野生動物の糞や体毛からDNA配列を解読し、種や個体の情報が取得できるようになりつつある。この技術を利用して個体数が推定できれば、効率的で精度が高い手法として期待できる。本報では、このDNA解析技術を利用したノウサギの個体数推定について紹介する。
著者
服部 保
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.90-93, 2010-08
被引用文献数
1

里山林は弥生時代以降に照葉原生林や夏緑原生林を伐採して、薪炭供給用に育成された半自然林(二次林)である。古い里山林では3000年に達する歴史を持ち、九州北部より全国に広がり、明治時代には沖縄県から北海道までの大半の丘陵、低山地が里山林化された。服部ほかは里山林の定義を「里山林3原則」とよんでいる。その3原則は以下のとおりである。(1)その地域のもつ伐採周期(8年〜25年程度)に合わせて、里山林が定期的に伐採され、更新(再生)されていること。(2)伐採周期に合わせて輪伐が行われ、その結果として伐採年の異なる林分がパッチワーク状に配列されていること(パッチワーク状植生景観)。(3)柴刈りが行われていること(燃料採取の柴刈りはつる植物や雑木の管理にもなり、良好な里山林維持のための管理作業でもあった)。昭和30年代に始まる燃料革命によって薪、柴、炭の利用が激減し、30年から50年以上里山林は放置され続けている。里山林は、かつての「低林」から「中林」もしくは「高林」に遷移し、種組成・種多様性も大きく変化し、上述の里山林3原則を満足する樹林は兵庫県と大阪府の府県界を流れる猪名川上流域(川西市黒川など)を除いてほとんど絶滅してしまった。このように放置されて変化した樹林を里山林と区別するために里山放置林とよんでいる。
著者
篠沢 健太 武内 和彦
出版者
日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.403-408, 1994

Development process of large-scale urban parks since the establishment of the Urban Park Law in 1956 is outlined in Greater Tokyo and Osaka, wherein greenbelt zoning was unsuccessfully applied. Urban parks with the area of 10ha or more are investigated regarding methods of park construction, geomorpholic location and the contents of park development. For each category, trends of park developments are studied. Through this study, the following findings are obtained: 1) There are two types of park construction, park construction only for the park and that associated with the other development plan. 2) In both areas, the parks on hilly lands have been increasing and that on lowlands decreasing. 3) The conservational ways of park developments increase, particularly on hilly lands and the transforming way increased in riverside area.
著者
永瀬 節治
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.796-803, 2010-03
被引用文献数
2

世俗領域から樹林地を擁する聖域へのアプローチである神社参道は、並木やモニュメントを備える等、他の道とは異なる独自の空間概念で捉えられてきた。さらに近代の国家神道体制のもとで、神社は天皇制と結びついた参拝施設として位置づけられ、特に重要な神社においては、境内の森厳さとともに、参道にもそれに相応しい空間像が求められた。一方、欧米を範とする都市計画の展開の中で、近代都市が備えるべき要素として、ブールヴァールと呼ばれる並木を備えた広幅員街路の概念が導入された。大正期に造営された明治神宮への参宮道路として、市区改正事業により計画された明治神宮表参道(以下、表参道)は、国家的な参拝施設のための大規模な参道であると同時に、ブールヴァールとしての素質を有する街路空間を実現し、今日も東京を代表する並木道となっている。本研究は、このような表参道の空間を成立させるに至った背景や、計画をめぐる一連の経緯を検証し、当初の表参道が備えていた意味と成立空間との関係を明らかにすることを目的とする。
著者
鹿内 京子 石川 幹子
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.715-718, 2009
被引用文献数
3 1

近代化の過程のなかで、かつて存在した都市近郊の用水路は、都市化の進展に伴いその役割を失い、消失の一途を辿ってきた。しかしながら、21世紀を迎えた今日、用水路は親水空間を求める動きのなかで再び着目されるようになった。これらの用水路によって形成される親水空間は、その形状のネットワーク性や連続性から、防災・景観・環境面で重要な役割を担う可能性がある。東京の東端、葛飾では、江戸期に農業用水路が灌漑を目的として開鑿され、近郊農業により都市を支えてきたが、今日では周囲の土地利用も大きく変化し、灌漑用水としての意味を失い、多くの用水路は埋設されている。現在、北部地域に水元公園が、南部地域には親水緑地が所々に見られるが、用水路はこれらの場所をつなぎ、北部地域から南部地域へと水を供給していた。本稿では、現在、一部を大規模な都市計画公園とともに残しつつも、その大半は暗渠・埋没している上下之割用水区域を対象とし、残存箇所や歴史的変遷を分析することで、江戸期より270年の歴史をもつ用水路を、社会資本として維持・活用するための、新たな手立てに関する知見を得ることを目的とする。
著者
小野 佐和子
出版者
日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.235-250, 1982
被引用文献数
4 5

江戸時代後期に江戸に住む一般民衆のレクリエーションのあり方を考察した.<BR>その結果, 寺社を核とし, 寺社門前の料理屋, 花の名所, さらには囲周の風景をとりこんだ広い地域に及ぶ遊覧地の存在が明らかになり, そこに, 寺社参詣, 料理屋での遊興, 郊外の逍遙が結びついた娯楽のモチーフを認めることができた.
著者
小木曽 裕
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.561-564, 2009
被引用文献数
3 1

21世紀になり地球環境への関心は、急速に高まっている。その中で都市緑地の重要性の認識もされてきていて、公共において保全、整備する緑地は基より、民有地の緑地についても期待が寄せられている。今日、環境共生や生態学的な配慮をする上で、ビオトープの創出が行われているが、都市再生機構においても団地空間の中にビオトープの整備を行ってきていて、平成4年に高槻・阿武山団地(大阪府)で実施したのが最初である。高槻・阿武山団地のビオトープは事業地区の公共施設である調整池を整備したものである。団地内に整備した団地は、首都圏において平成17年度末で15団地ある。その中で山崎団地(建替後:レーベンスガルテン山崎)は、平成8年度からコンセプトワークを始め、環境共生型住宅として整備を行ってきた。そして、レーベンスガルテン山崎における、地域環境と連携した計画・設計及び調査や効果については、平成13年から20年までの間、継続して報告している。そこで、本研究では、今日期待される居住環境に身近な場所での生態系への配慮や、居住者の利用としての緑地整備の一手法であるビオトープに関して、継続して報告しているレーベンスガルテン山崎において、利用者である居住者の認識と評価を把握し、居住者の求めるビオトープの姿を明らかにすることを目的とした。
著者
佐藤 留美
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.204-207, 2009-12

みどりの中間支援組織NPO birthは、平成18年度から東京都立公園の指定管理者となった。NPO birthが管理運営している都立公園は、アニメ映画「となりのトトロ」の舞台として描かれた狭山丘陵にある。この地域一帯には縄文時代から人々が住み着き、人と自然が一体となって里山の風景を作り出してきた。狭山丘陵には、4つの都立公園がある。NPO birthは、これらの公園の管理運営を企業や他のNPOとのパートナーシップで行っている。NPO birthの担当業務はソフト事業であり、中でも力を入れているのが市民との協働である。市民の力を活かすための専門部署である都民協動部を設置し、公園ボランティアの活性化に力を注いでいる。本論では、市民力を活かしながらランドスケープマネジメントを行う中間支援組織の取り組みを紹介することで、ランドスケープづくりの主役である市民力の可能性を展望したい。
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.8-9, 2011-04

ゴルフ場は都市近郊に多くあり、広大な面積の緑地として管理されていることから、生物多様性の実態と、それにもとづく保全のあり方について議論する必要があると考えている。本稿では、そのような目的で、ゴルフ場の生物多様性の一例を紹介して、議論の端緒としておきたい。
著者
國村 周平 伊藤 弘 小野 良平 下村 彰男
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.845-848, 2009
被引用文献数
3

道路の高架下空間は従来その管理上の観点から、原則として、広場、公園、駐車場などの公共性の高い利用のみなされており、しかも周辺環境を必ずしも考慮せずに設置されてきたものが少なくない。過密な都市環境の中で高架下は現在においてもその空間の活用が一定度行なわれ、そこには公園や広場も存在する中で、その設置状況や利用の実態については把握されていない。これに関連しては鉄道の高架下に関しての研究があり、都心から15km圏内で盛んに活用され、都心から離れるに従って用途が変化していくことなどが知られている。また、道路では、高架下公園の構造上のタイプ分けに関する研究がある。しかしいずれにしても公園の具体的な利用状況には触れていない。そこで、本研究では調査対象地選定のために首都高高架下への公園等の設置状況を把握した後、地域住民による利用のされかたの特徴を明らかにし、特殊な空間である道路高架下環境とそこでなされる活動の関係を明らかにし、今後高架下の活用を考える際の一助としたい。
著者
林 まゆみ
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.829-834, 2009
被引用文献数
3

国内では、成熟社会を迎える中、地域の活性化を目指した公園の利活用や地方自治法の改正による指定管理者制度の導入を踏まえた管理運営のあり方等について、各地で模索が続いている。公園の管理運営を目的とした管理運営計画(以下PMPとする)は、現在では一元化した制度による位置づけはまだなされていない。PMPに関しての先進的事例として、筆者はニュージーランド(以下NZとする)に着目した。NZは日本の約3分の2(270,500平方km)の広さの国土に、2008年9月21日現在、人口が約427万87百人と我が国と比べると少なく、緑豊かな国である。人口密度は15.8人/平方kmであるが、オークランド、ウエリントン、クライストチャーチの3都市を合わせると約197万人になる。国全体としての入口密度は低いが、大都市に集中している。本論ではNZ独自の風土や背景のもと、多層的な法制度上に成り立つ『参画と協働』の仕組みによるPMPの策定を有用な情報として示し、今後我が国でもPMPの策定がより進展するための指針となることが重要な目的の一つである。

1 0 0 0 造園雑誌

著者
日本造園学会
出版者
日本造園学会
巻号頁・発行日
1934
著者
小林 優介 安岡 善文 沢田 治雄
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.763-766, 2009
被引用文献数
5 4

都市域における公園緑地は都市形態規制効果、環境衛生的効果、防災効果、心理的効果、経済的効果、自然環境保全効果、休養・休息の場、子供の健全な育成の場、競技スポーツ・健康運動の場、教養・文化活動等様々な余暇活動の場、地域のコミュニティ活動・参加活動の場等様々な役割を果たしている。しかし、公園緑地のもつ非市場財という性格上、その外部経済効果を市場価格から直接評価することはできない。そのため、環境経済学の観点から非市場財を評価するさまざまな手法が提案されている。本研究では、公園・運動場等内の樹林地の存在が周辺地域の地価に外部経済効果をもたらしているか、もたらしているならどの範囲にどの程度もたらしているかを明らかにすることを目的とする。
著者
飛田 範夫
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 : 日本造園学会誌 : journal of the Japanese Institute of Landscape Architecture (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.56-67, 1998-08-31
参考文献数
57
被引用文献数
1 1

庭園植栽は日本に庭園が誕生する以前の, 人間と植物との長い歴史が存在していたから可能になったといえる。旧石器時代から樹木の幹・枝は薪, 果実は食料となり, 縄文時代には樹木の管理栽培が開始され, 弥生時代には稲作・畑作や果樹栽培がなされている。古墳時代には薬草栽培・植林も行われていたであろう。こうした植物に対しての長い間の知識が, 庭園植栽に応用されたわけである。飛鳥・奈良時代の海洋風景式庭園にはマツが多く植えられ, シダレヤナギ・ウメ・モモなどが愛好されている背景には。中国文化の影響がある。また, 中国本草学の影響を受けて薬草栽培が盛んに行われ, 薬用植物が次第に庭園に利用されるようになったことも見逃せない