著者
平野 浩
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.60-72, 2011 (Released:2017-06-12)
参考文献数
25

本稿は,2009年衆院選の前後に実施された2波の全国パネル調査データに基づき, この選挙時におけるメディアへの接触が有権者に対してどのような影響を及ぼしたのかを明らかにし,それを通じてメディアと選挙との今日的関係について考察することを目的とする。分析の結果,(1)政治的知識への効果に関しては,特定のテレビ番組や対人ネットワークが知識の3次元のすべてにプラスに働くのに対し,新聞やインターネットの効果は限定的である,(2)メディア接触は内閣への業績評価・期待,政党リーダーへの感情に対しては一定の影響を及ぼしているが,経済状況認識や争点態度に対する影響は僅かである,(3)投票方向に対するメディア接触の影響は,一部のテレビ番組視聴を除いてほとんど見られない,などの点が明らかとなった。これを受けて,メディアの影響力に関する有権者の実感と上記の知見との架橋について考察する。
著者
増田 正
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.19-29, 2015 (Released:2018-03-23)
参考文献数
30

本稿では,フランスの選挙制度改革に関する最近の議論を整理する。フランスの選挙制度と言えば,最初に思い出されるのが2回投票制であろう。2回投票制は,フランスの選挙制度を理解するための最も重要な概念である。大統領選挙でも使われている2回投票制は,名簿式とも組み合わされながら,様々なレベルで活用されてきた。最近,第二の重要な概念としてパリテがこれに付け加えられた。2000年以降のあらゆる選挙制度改革は,多かれ少なかれ,パリテを巡って展開されてきたと言える。パリテは,2015年3月実施の県議会議員選挙から2回投票制にまで結びつけられるに至った。しかしながら,結論的には,これらの特殊フランス的な制度が,他国へ波及する可能性は現時点ではあまりないと考えられる。
著者
白崎 護
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.5-22, 2009 (Released:2017-02-06)
参考文献数
70
被引用文献数
1

1993年総選挙を対象とする本研究は,有権者の政治的な意識や行動に影響を与える対人接触とマスメディア接触に関しての計量分析である。政党のマスメディア対策が精緻化する今日,その端緒となった本選挙におけるマスメディアの役割を再確認する。同時に,ソーシャル・キャピタルの一環として近年注目が高まる対人環境の果たした役割を検証する。以上の目的に最も適合したデータは,対人接触とマスメディア接触に関する質問項目が豊富なCNEP(Cross-National Election Project)データであり,これを使用する。 各党に対する感情温度,および投票を従属変数とする回帰分析により得られた知見は以下の通りである。既成政党(自民党・社会党)に関しては,対人接触に一貫した影響を認めた。他方で新党(新生党・日本新党)に関しては,マスメディア視聴に一定の影響力を検出したが,対人接触の影響力をほとんど確認できなかった。
著者
小宮 一夫
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.19-34, 2016

中選挙区制下の静岡第2区は,伊豆半島以東の静岡県東部地域を区域とし,戦後は石橋湛山や社会党の勝間田清一の選挙区であった。本稿は,石橋や勝間田と競合した保守政治家・山田弥一の選挙戦を検討する。熱海の大月旅館/大月ホテルの経営者でもあった山田は,つるや旅館/つるやホテルの経営者であった畠山鶴吉と国政選挙で同士討ちを繰り広げた。 熱海を畠山と二分する山田は,山田会という個人後援会を組織し,沼津をはじめとする静岡県東部に進出を図った。山田は,当選を重ね,入閣を果たすことで,「熱海の山田」 から「静岡2区の山田」をめざした。しかし,宿敵畠山の参院選に絡む公職選挙法違反と, 河野一郎の秘書を務める伊東出身の新人・木部佳昭に強固な地盤の伊豆半島や静岡東部に根付きかけた地盤を侵食され,「黒い霧解散」にともなう第31回総選挙で落選し,政界から退場することになるのである。
著者
長富 一暁
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.102-114, 2010 (Released:2017-05-08)
参考文献数
43

イギリスでは近年,選挙区割りについての研究が発展している。とりわけジョンストン,パティー,ドーリング,ロシター(Johnston, Pattie, Dorling & Rossiter, 2001)が提起した選挙区割りの分析の枠組みは画期的であった。この枠組みは国会や地方議会の選挙区割りに適用されている。このような研究の発展の背景にイギリス政治およびイギリス政治学の展開がある。現実の政治の側面で重要なのは,イギリス政治の多党化によって小選挙区制の不公平性についての認識が広まったことである。政治学の側面で重要なのは,イギリスの選挙研究に特徴的な選挙地理学の影響である。選挙区割りの研究の発展はイギリスの政治や政治学の現状を如実に反映しているわけである。このように,イギリスの選挙区割りの研究を理解することを通して,イギリス政治やイギリス政治学への理解を深めることができる。
著者
飯田 健 松林 哲也
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.101-119, 2011 (Released:2017-07-03)
参考文献数
51

本稿は選挙研究における因果推論の方法を概観する。まず因果関係とは何を意味するのかについて日本の社会科学研究における代表的な知見をまとめ,その応用における問題点を指摘する。次に近年主流となりつつある潜在的結果にもとづいた因果的効果の定義を紹介し,その枠組みの中で観察データを用いた回帰分析の問題点を指摘する。次に厳密な因果推論を行うために必要となる方法とその応用例を紹介する。第一に,サーベイ実験やフィールド実験などの実験アプローチ,第二にイベントを利用した自然実験などの疑似実験アプローチ,第三にマッチングを用いた統計学的アプローチの特徴とその応用研究についてまとめる。
著者
大村 華子
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.26-42, 2011 (Released:2017-07-03)
参考文献数
70

政治代表をめぐる実証分析は,1980年代後半にアメリカ政治に関する一国研究として本格的に始動したが,2000年以降は多国間比較研究として,ヨーロッパ諸国を対象としながら研究が進展しつつある。本稿は,そうした有権者と政府・政党間の応答関係をめぐるマクロ次元での比較分析が発展してきた経緯を,その分析対象国の拡張,分析内容の変化,そして方法論上の深化に注目しながらリヴューするものである。またそうした比較研究において,日本の事例は分析に組み込まれてこなかった。本稿では,その理由の考察に加え,関連のマクロ次元での日本政治分析の動向を整理しながら,日本政治における有権者と政府・政党の連関を今後の比較分析に取り込んでいく意義や,応用上の課題について論じる。
著者
和田 淳一郎 坂口 利裕
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙学会紀要 (ISSN:13488783)
巻号頁・発行日
no.7, pp.27-35, 2006
被引用文献数
1
著者
境家 史郎
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.57-72, 2013 (Released:2017-11-03)
参考文献数
7

本稿では,月例ウェブ調査の分析を通し,東日本大震災が日本人の政治的意識・行動に与えた影響について包括的に検討する。分析の結果,女性,低学歴層,低所得層において震災による社会的被害が比較的深刻に捉えられている一方,東北地方以外においてはこの「社会的被害認識」が時間とともに弱まりつつあることが示される。社会的被害認識の政治行動論的影響という面では,震災被害を深刻に受けとめている有権者ほど一般に政治に対する関心を高め,多くの個別的政策争点について意見を変化させていること,また有権者の意識上で,経済や外交面での近年の日本の置かれた多重的危機状況が震災危機と関連付けられていることを明らかにする。他方,有権者の社会的被害認識は,2012年衆院選での投票参加および投票先の選択にはほとんど影響していなかったことが示される。
著者
勝又 裕斗
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.72-85, 2021 (Released:2023-11-16)
参考文献数
14

日本で長期間にわたり用いられている中選挙区制は,同一政党内の候補者間で得票の移譲ができないため,大政党は獲得議席最大化のために候補者数を適切に調整し,その間で得票を適切に配分する必要がある。既存研究ではこの戦略の失敗を候補者数に注目して分類してきたが,この分類は票割りの失敗および共倒れという戦略の失敗の理由による分類と一致しないという問題がある。本稿は戦略の失敗を票割りの失敗と共倒れによって新たに分類し,戦後衆議院議員総選挙における自民党の戦略の失敗を分析する。その結果,票割りの失敗と共倒れはともに減少したが,それは環境の変化と戦略の向上という異なる要因によることが分かった。さらに,候補者数抑制により共倒れは減少したが,その選挙区では票割りの失敗が続いた。戦略の失敗の減少は,戦略の向上ではなく,失敗が起こりにくい競争環境の増加によるものであった。
著者
森 裕城
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.18-32, 2018 (Released:2021-07-16)

本稿の目的は,小選挙区比例代表並立制における政党競合の展開を,共時的・通時的の両面からトータルに叙述することである。本稿における主な発見は次の3点にまとめられる。①中選挙区制時代の政党競合のあり方が,新しい選挙制度のあり方を規定しており,それが自民党に有利に働いたこと,②小選挙区比例代表並立制導入後の巨大政党の誕生は,予言の自己成就としての性格を有しており,それが非自民勢力に多大な負荷を与えたこと,③異なる原理を有する小選挙区制と比例代表制を足し合わせた制度である小選挙区比例代表並立制は,政治過程に複雑な力学をもたらしており,それが現在の野党分断現象を生んでいること。同じ小選挙区比例代表並立制であっても,小選挙区の数(比率ではない)がいくつになるかで,政党競合のあり方が大きく変わることを,本稿の内容は示唆している。
著者
上神 貴佳
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.26-37, 2010 (Released:2017-05-08)
参考文献数
25

政治的リーダーシップとは,個人的な資質から生まれるものなのか,それとも構造に依拠するものなのか,いずれが正しいのであろうか。日本においても,小泉首相が発揮した(とされる)強力なリーダーシップをめぐって,政治改革や行政改革など,制度的な要因の帰結なのか,「ポピュリスト」的なスタイルの産物なのか,様々な議論がある。本稿も同様の問題意識に立ち,二つの要因の役割について考察する。具体的には,自民党総裁選における党員投票を分析の対象とする。党員投票とは,党内民主主義を促進するための制度であるだけではなく,党首が指導力を発揮するために必要な政治的エネルギーを調達するための装置でもある。そこで,選挙制度改革が党員投票を伴う総裁選の常態化をもたらすメカニズムを検証し,構造的な変化と政治家の個性が果たす役割について,インプリケーションを得ることを目標とする。
著者
石間 英雄
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.47-57, 2018 (Released:2021-07-16)
参考文献数
39

なぜ,政党は議会提出前に法案の実質的な審議をするのだろうか。本論文では,日本とオーストラリアの主要政党を題材に,議会政党による法案の事前審査を,対称的な二院制のもとでの調整メカニズムとして捉え,その説明を試みる。具体的には,対等な二院制による制約のため,議会内でなく政党内政策組織で議員間の調整が行われると主張する。対等な二院制である両国の政党の活動を調査したところ,議会提出前に政党が法案を審査しており,党内の政策委員長に上院議員も就任していた。加えて,日本の自民党の部会活動を分析したところ,野党議員が参議院の委員長職に就いた場合,委員会と対応する部会の活動が増加することが明らかとなった。以上の結果からは,上院の存在が政党組織に影響を与えており,旧来の下院中心的な政党観を脱する必要が示唆される。
著者
逢坂 巌
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.44-59, 2011 (Released:2017-06-12)
参考文献数
10

2009年総選挙におけるテレビの選挙報道を振り返ると,報道時間は少なかったものの,マニフェストが多く採り上げられていたということがわかった。しかし,マニフェスト報道で採り上げられていた争点が,民主党が設定したものに近似していたこと,また,政策が「全体像」においても個別争点においても厳しく問われず,取材VTRに写る困窮する人々の姿(イメージ)が中心的に伝えられたことで,結果として,報道全体が民主党のパブリシティに化していた。民主党は,テレビの議論においても政権獲得後の「全体像」を正面から問いかけることはなく,CMでは人々の「不安」や「不満」に訴えるキャンペーンに回帰した。それは流動化する選挙市場への適合という面もあったが,選挙後の政策の「引渡」の段階での困難を準備するものだった。
著者
境家 史郎
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.5-17, 2010 (Released:2017-03-31)
参考文献数
12

本稿の目的は,候補者レベルの選挙公約が決定されるメカニズムについて,現代日本政治の保守化の問題と関連させながら論じることである。1990年代後半以降,国旗国歌法制定,首相の靖国神社参拝,防衛「省」昇格,教育基本法,国民投票法制定など保守的傾向の強い政策実施が目立つが,こうした日本政治の保守化傾向を説明する要因のひとつとして選挙過程が機能しているというのが筆者の立場である。すなわち,近年の「小選挙区制+左翼政党候補の出馬+公明党の自民候補推薦」という選挙競争の文脈において,自民党,民主党候補が「選挙民の選好分布とは独立に」より保守的な公約を訴えるインセンティブを持つことを理論的に示し,実証するのが本稿の主題である。
著者
秦 正樹
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.45-55, 2016

本稿は,18・19歳の新有権者における政治関心の形成メカニズムについて,サーベイ実験を通じて明らかにした。若者の政治行動に関する先行研究では,主として政治的社会化理論を背景に議論される。しかし先行研究では,初期社会化と後期社会化の効果を独立に検証するがゆえに,各社会化の相互の影響については明らかにされていない。そこで本稿では,初期社会化が含意する政治規範の伝播と,後期社会化における政治利益の追及に関するシナリオを用意し,それぞれの情報が,新有権者(若年層)と既存有権者(年長層)に与える影響を明らかにすべくサーベイ実験を行った。実験結果より,新有権者は政治規範にのみ,逆に既存有権者は政治利益にのみ反応して政治関心を高める傾向が示された。以上の分析結果より,新有権者は利害に関わらず,政治システムそのものの在り方に関心を向ける傾向にあることが示唆された。
著者
三船 毅 中村 隆
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.83-106, 2010

衆議院選挙投票率が1996年以降に低水準で推移してきた一因を究明する。戦後日本の衆議院選挙投票率は1993年から急激に低下して1996年に最低投票率を記録した。その後の2000年,2003年の選挙でも投票率は低水準で推移しており,2005年の郵政選挙では有権者の関心も高く投票率は若干上昇したが,この間の投票率は1990年以前の水準とは大きく乖離している。投票率が1996年以降に低水準で推移した一因として,有権者のコウホート効果の存在が考えられ,コウホート効果の析出を行った。分析方法はコウホート分析における識別問題を克服したベイズ型コウホートモデルを用いた。使用したデータは,1969年から2005年までの総務省(自治省)による「衆議院選挙結果調」における年齢別投票率と,明るい選挙推進協会の「衆議院議員総選挙の世論調査」から集計した年齢別投票率である。分析結果から,およそ1961年以降の出生コウホートから投票率を低下させるコウホート効果の存在が確認された。
著者
日野 愛郎 山崎 新 遠藤 晶久
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.31-43, 2014 (Released:2018-01-05)
参考文献数
23

本稿は,人々が世論調査に回答する際に視覚的情報によってどのような影響を受けるのかという疑問を解明することを試みる。具体的には,順序効果,特に先に提示される選択肢が回答されやすくなるとされる初頭効果が生じる条件を検討し,アイトラッカー(視線測定器)を用いて回答者の視線を観察することを通して検証する。選択肢の提示順序を含む調査回答データとアイトラッカーから得られる視線追跡データの双方を分析した結果,回答者にとって事前知識があり選択肢が対立項目から構成される政党支持の質問においては初頭効果が生じない傾向にあることが明らかになった。一方,一般的に事前知識がなく選択肢がいずれも望ましい合意項目から構成される価値観を測定する質問においては,初頭効果が生じやすいことが確認された。以上の結果は,質問の内容によって順序効果の発生メカニズムが異なるとする本稿の仮説を首肯するものであった。
著者
松本 俊太 松尾 晃孝
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.84-103, 2011 (Released:2017-06-12)
参考文献数
37

本稿はこれまで研究が手薄であった,国会議員個人の委員会での発言を分析する。 委員会の研究は,議事手続の一部としての観点や,与野党の対決の場としての観点からのものが中心であったが,本稿は,議員個人にとっての委員会という観点を追加し,委員会で発言することは議員の再選・党内での出世・専門性の発揮にとって有用であることを論じる。このことを実証するために,まず,Perlスクリプトにより衆議院の各常任委員会の会議録を解析し,議員の発言量を委員会ごとに測定し,議員発言のデータ・セットを作成した。次に,その発言量の決定要因についてTobit modelによる計量分析を行う。分析の結果,議員個人,政党政治,議員の専門性の活用という3つの側面が発言の量を決定する要因として重要であることを示す。併せて,1994年の小選挙区比例代表並立制の導入に伴っ て,議員の発言量のパターンが変化していることも示す。
著者
小林 良彰
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.15-25, 2012 (Released:2017-09-29)
参考文献数
18
被引用文献数
1

定数不均衡が代議制民主主義の中でどのような歪み,すなわち機能不全をもたらしているのかを明らかにした。第一に,定数不均衡により,運輸・通信,農林水産,一般行政,地方自治などの予算増額が過剰代表され,社会福祉や生活保護,教育・労働などの予算増額及び後期高齢者医療制度や年金制度見直しの主張が過少代表されていた。第二に,定数不均衡により,当選後の国会における防衛や農林水産,国土環境などに関する言及が過剰代表される傾向をみてとることができた。第三に,定数不均衡が予算や歳出などの政策にもたらす歪みを分析した結果,特別交付税及び農林水産業費と普通建設事業費について,定数不均衡との間に関連がみられた。最後に,こうした定数不均衡の問題を解決するための提言を提示した。