著者
伊藤 敞敏 菅原 弘 北澤 春樹
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

発酵乳用乳酸菌のもつ免疫賦活化能を調べる目的で実験を行った。まず、乳酸菌細胞壁の特徴を明らかにするため、L.bulgaricusとL.acidophilusの細胞壁成分を酵素的に可溶化させ、分画し、構成成分を調べることにより、両菌株の細胞壁の特徴を明らかにしました。次に、L.acidophilus グループ乳酸菌は、腸内で生育し、種々の生理的効果を示すことが知られているので、その生理的効果を追求する目的で、L.acidophilusとL.gasseriについて、マクロファージの腫瘍細胞障害活性に対する高揚効果およびインターフェロン誘起能について調べた。L.acidophilus9菌株の全菌体で刺激した場合、細胞障害活性は2菌株において高い値を示し、さらに4菌株に有意の活性がみられた。インターフェロン誘起能は、細胞障害活性の高かった2菌株を含む4菌株で高い値を示した。一方、L.gasseri13菌株のインターフェロン誘起能を調べたところ、5菌株が比較的高い値を示した。L.acidophilus9菌株については、有効成分を明らかにする目的で、菌体および細胞壁成分の免疫賦活化能を、マウス脾臓リンパ球に対する幼若化作用を指標として調べた。菌体全体を用いた場合は、有効性のみられたのは1菌株のみであったが、細胞壁成分では6菌株に有効性が認められた。そこで、特に活性の高かった1菌株の細胞壁成分をイオン交換クロマトグラフィーで分画し、各成分のリンパ球幼若化活性と組成の特性を調べた。有効成分はグルコース、N-アセチルグルコサミン、グリセロール、リンおよびムラミン酸を含んでおり、グルコースに対するN-アセチルグルコサミンの割合の高い画分の活性が高かった。これらの結果、L.acidophilusグループ乳酸菌の中には、腸内において免疫賦活やインターフェロン誘起などの生理活性を示すもののあることが示唆された。
著者
前田 吉昭 森吉 仁志 佐古 彰史 栗原 将人 井関 裕康 小谷 元子 綿村 哲 大森 英樹 池田 薫 勝良 健史 亀谷 幸生 坂内 健一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

数論、代数幾何学、微分幾何学、トポロジー、それに数理物理、素粒子論を中心として、非可換な対象物を扱い、新しい幾何学の流れを構築することを目標に置いている。本研究の特徴は、基軸となる研究である変形量子化問題と非可換幾何学を推進し、これによる微分幾何学の非可換化(量子化)手法を確立させ、それを発展させるというまったく新しい立場からの研究を行うことにある。特に、Non-formal deformation quantizationの手法を用いて、数学および素粒子物理学との融合研究を進め、この分野の国際的なネットワークを構築することを目的としている。
著者
畑井 小虎
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
1948

博士論文
著者
盛田 伸一 西澤 精一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

現在,生細胞の局所のラマンスペクトルを計測できるようになっている.生細胞に光を当てラマン散乱スペクトルを計測できるようなバイオラマン顕微鏡を開発し,数理解析することで,造血細胞HL60・HeLa細胞の内部状態について実験的な知見を得ることができた.細胞を顕微鏡ステージで飼育しながらラマン計測を行った.造血細胞HL60において,未分化状態から分化・アポトーシスに移行するダイナミクスは,未分化細胞の内部状態に依存することが,ラマン計測により明らかになった.任意の分化状態へ誘導しようとする再生医療の観点からも,得られた情報は重要である.複雑で大量なラマンスペクトルを数理解析する新規な方法を開発した.
著者
平 重道
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
1968

博士論文
著者
小泉 政利 安永 大地 木山 幸子 遊佐 典昭 行場 次朗 酒井 弘 大滝 宏一 杉崎 鉱司 玉岡 賀津雄 金 情浩 那須川 訓也 里 麻奈美 小野 創 大塚 祐子 矢野 雅貴 八杉 佳穂 上山 あゆみ
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究プロジェクトの目的は,マヤ諸語とオースロネシア諸語のなかのOS言語(特に,グアテマラのカクチケル語と台湾のタロコ語)を対象に,談話内での1.文理解過程,2.文産出過程,3.言語獲得過程,ならびに4.言語の語順と思考の順序との関係を,聞き取り調査やコーパス調査,行動実験,視線計測,脳機能計測などを用いて,フィールド心理言語学の観点から多角的かつ統合的に研究することである。より具体的には,1~4における個別言語の文法的要因と普遍認知的要因が文脈に埋め込まれた文の処理に与える影響を明らかにし,脳内言語処理メカニズムに関するより一般性の高いモデルを構築することを目指す。本年度は特に以下の研究を実施した。[文法理論部門]タロコ語の文法調査を行った。[理解部門・神経基盤部門]文脈と語順が文処理に与える影響を調べるために事象関連電位を用いたタロコ語の実験を実施した。[産出部門・思考部門]タロコ語の文散出時に動詞のレンマがどのようなタイミングで活性化されるかを調べる実験の準備(予備実験を含む)を行った。また,タロコ語話者の思考の順序やタロコ語の文産出に与える非言語的文脈や話者自身の動作の影響を調べるためのジェスチャー産出実験と文産出実験を行った。[全部門共通]トンガ語の調査・実験の実行可能性を調べるためにトンガ王国で現地見分を行った。また,ジャワ語の専門家を招いて,ジャワ語の調査・実験の実行可能性についての検討会を開催した。
著者
和田 仁 小林 俊光 高坂 知節
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

我々はこれまで、主に耳小骨連鎖離断・固着の診断を目的とする診断装置MIDDLE EAR ANALYSER(MEA)の開発を行ってきた。しかし、従来型インピーダンスメータ同様外耳道に挿入したプローブで測定するため、測定結果に及ぼす鼓膜の影響が大きく、アテレクタシスや鼓膜が薄い場合にはMEAによる耳小骨連鎖異常の診断は難しい。そこで本研究では、超音波を利用した、鼓膜物性値および厚さの測定手法を開発し、鼓膜物性値および厚さを定量的に測定することを試みる。これまでに1.外耳道に挿入できる超小型センサを試作し、内視鏡付きのマニピュレータ、カメラおよびモニタを組み合わせることにより、外耳道内を観察しながらセンサを自在に動かし、測定が行えるシステムを構築した。2.物性の異なる境界面での、超音波の反射と透過の割合を求めることができる、インピーダンス理論を適用し、システムの出力に対する式の導出を試みた。その結果、鼓膜密度を既知とすることで、鼓膜の厚さおよびヤング率を求めることが理論上可能であることが明かとなった。今後の計画1.構築したシステムを用いて、人工中耳モデル、側頭骨標本、正常者および鼓膜疾患例を測定する。2.測定および数値計算結果より、鼓膜物性値および厚さの定量的測定可能性について検討する。
著者
青木 栄一 北村 亘 村上 裕一 河合 晃一 曽我 謙悟 手塚 洋輔
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

(1)研究代表者、研究分担者、連携研究者が参加するグループウェアを十二分に活用し、研究活動に関する情報共有や連絡調整を行った。また、研究会を年度内に3回開催した。第1回(5月)では今年度の研究活動の方針を決定し、前年度に実施したサーベイ調査の分析作業を今年度の研究活動の柱とした。第2回(8月)では分析結果の報告を行った。第3回(11月)では研究成果の公表方針の打ち合わせ、分析結果の報告を行った。(2)研究課題に関連する先行研究をレビューし、必要な文献を収集した。第1に、国内外の官僚制に関する書籍、論文を収集した。第2に、国内外の教育・科学技術行政担当機構に関する書籍、論文を収集した。(3)文部科学省の課長以上の幹部職員全113人に対するインタビュー形式のサーベイ調査(中央調査社への委託、一部留置式、回収率約7割)の分析を行った。政策過程に関する認識、弘道、各関係者との接触態様に関する分析結果が得られた。これは本課題研究の中核に位置づけられる成果であり、本年度の研究実績として特に強調したい。(4)『文部科学省 国立大学法人等幹部職員名鑑』を用いて、文部科学省幹部職員のキャリアパスの電子データ化を行い、一部分析作業に着手した。さらに、文部科学省から地方政府への出向人事のデータベースを構築し、分析結果の一部を学内紀要に投稿した(印刷中)。(5)庁舎配置からみた旧文部省と旧科学技術庁の大臣官房における融合の状況、科学技術行政に関する聞き取り調査等を行った。
著者
坂本 修 大浦 敏博 植松 貢
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

分岐鎖ケト酸脱水素酵素キナーゼ(BCKDK)欠損症は自閉症にてんかんを合併する。罹患者の血中分岐鎖アミノ酸(バリン、イソロイシン、ロイシン)は著明に低下する。今回の研究は同症の生化学スクリーニング系、遺伝学的診断系の確立を目的とした。1) BCKDK欠損症の遺伝子診断系の確立:従来型のサンガー法によるダイレクトシークエンスによる診断系を確立した。包括的診断系は全遺伝子のエクソーム解析を実施した。2) 生化学的スクリーニング系の確立:新生児マススクリーニング集団(13万件)でロイシン+イソロイシンが45 nmol/L以下が3件あった。再検にて回復していたためいずれも栄養性の低下と考えられた。
著者
張 準浩
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

我々はLC/MS分析法でTetrodotoxin(TTX)類を定量してフグ中での分布を調べたところ、フグ卵巣では5,6,11-trideoxyTTXはTTXと同程度に多量に含まれることがわかった。そこで、この類縁体が段階的な還元反応を経てフグ体内でTTXへ変換するのかどうか、あるいはTTXが還元的な代謝をうけてtrideoxyTTXへ変換するのかどうかを調べることとTTXの起源生物の再検索を目的にした。(1)TTX生産起源生物の検索-北里大学山森との共同研究であり、鬼沢漁港から採集したプランクトンからTTX類が検出され、現在は実験結果の再現性を調べている。(2)ミドリフグとハチノジフグの毒性分・含量の分析-我々が確立したLC/MS法を用いて東南アジアに棲息するミドリフグの毒成分と含量を調べた。特に日本産のフグに多く含まれているTTX、5,6,11-trideoxyTTXがミドリフグにも多く含まれていて、その毒量はTTXが0.6~293.7nmol/g、5,6,11-trideoxyTTXが0.4~150.6nmol/gであった。(3)韓国産のクサフグの毒成分及び含量の分析-韓国産のクサフグにも日本産と同じようにTTX類が多く含まれていた。TTX,5,6,11-trideoxyTTX,6,11-dideoxyTTXが卵巣、皮膚、内臓に多量含まれていた。卵巣で、TTXが129~263nmol/g、5,6,11-trideoxyTTXが289~603nmol/gそして6,11-dideoxyTTXが77~310nmol/gであった。
著者
高橋 亨
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究課題においては以下の研究を行うことにより,高温高圧水環境下における花崗岩の応力腐食割れ挙動に関する知見を得るとともに,岩石/熱水相互作用を考慮した花崗岩のき裂進展数値シミュレーションコードの基礎を構築した.平成17年度は前年度に引き続き,破壊特性に及ぼすひずみ速度の影響を観察するため,露頭花崗岩(飯館花崗岩)を用いて,ひずみ速度を変化させた3軸圧縮試験を実施した.封圧を変化させたときの破壊特性に及ぼす影響についても検討を行った.高封圧条件(100MPa)においては,特に超臨界水環境下においてはひずみ速度が減少するに従い,せん断破壊強度が小さくなることが示された.また,封圧が低い条件(50MPa)においてもひずみ速度の低下に伴うせん断強度の低下が観察されたが,高封圧条件で観察されたような顕著なせん断強度の低下は観察されなかった.本研究結果より,高封圧かつ低ひずみ速度条件において,き裂面近傍における応力腐食割れが促進されることを示唆する結果が得られた.また,得られた実験結果をもとに応力(封圧)とひずみ速度に関する破壊構成則を導き,き裂進展挙動数値解析コードの開発を行った.数値解析コードは従来のき裂進展モデルに上述の実験結果より得られた応力腐食割れの構成則を組込むことにより,実験室レベルの破壊現象を再現することができる.今後は地殻スケールの数100m規模での解析や,数年〜数100年単位でのき裂進展予測モデルの開発が必要となるが,本研究により得られた成果は,高温高圧環境となる地下岩体の力学挙動を解析するための重要な知見となる.
著者
鈴木 健弘
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

生体のエネルギー産生(ATP合成)と酸化ストレスの発生源として重要なミトコンドリアの機能異常によるミトコンドリア病は確立した治療法のない難病である。我々はミトコンドリア病患者細胞でATP産生を増加させて酸化ストレスを減少し、細胞の生存率を改善するミトコンドリア特異的機能改善薬 MA-5を開発した。MA-5はミトコンドリアの構造と機能維持に重要なミトコンドリア内膜蛋白質のMitofilinと結合してATP合成酵素の重合化を促進することでATP増加と酸化ストレス減少効果を発揮し、ミトコンドリア病マウスと急性腎障害モデルマウスで心臓と腎臓のミトコンドリア機能と腎障害を改善することが明らかとなった。
著者
首藤 伸夫
出版者
東北大学
雑誌
津波工学研究報告 (ISSN:09167099)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.101-136, 1992-03
被引用文献数
10
著者
森 一郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の初年度である平成29(2017)年度は、「世界への愛」という研究テーマが大きく進捗した一年であった。まず、2017年10月に、単著『世代問題の再燃――ハイデガー、アーレントとともに哲学する』を明石書店から出版した。これは『死を超えるもの 3・11以後の哲学の可能性』(東京大学出版会、2013年)のいわば姉妹編であり、世界への愛をめぐる試論集成である。世代という今日的問題を深く問い直そうとする本書に対する反響は大きく、朝日新聞などで書評に取り上げられ、出版二ヶ月後には増刷となった。また、2018年3月には、初めての書き下ろし単著『現代の危機と哲学』を放送大学教育振興会から公刊した。放送大学ラジオ科目の印刷教材であり、現代人にとっての哲学的思考の重要性を広く、分かりやすく市民に伝える内容でありつつ、ニーチェ、ハイデガー、アーレントについて独創的解釈を展開している。のみならず、年来の「世界への愛」著作構想の第一部という面をもち、「始まりの時間性」や「世界の存続」の謎に挑む大胆な思索の書である。4月から始まったラジオ放送とともに、今後の反響が期待される。論文としては、「ハイデガーからアーレントへ――世界と真理をめぐって」を、実存思想協会編『実存思想論集』第32号に、「『存在と時間』はどう書き継がれるべきか」を、ハイデガー研究会編『Zuspiel』に、「労働という基礎経験――ハイデガーと三木清」を、青土社の『現代思想』のハイデガー特集号に、「世代の問題――マンハイムと三木清」を、明治大学の『異境の現象学』に、それぞれ寄稿した。