著者
大久保 一良 岩淵 せつ子 浅野 三夫
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

大豆サポニンはその薬理作用が明らかにされて以来、注目されている成分であり、我々のこれまでの研究結果、Aグル-プサポニンとしてAa〜Afの6種類、Bグル-プとしてBa、Bb'、Bc、Bc'の5種類、Eグル-プとしてBd、Beの2種類、計13種類のサポニンを明らかにすることができ、その遺伝性、植物体における分布等多くの知見を得、大豆の食品加工上考慮すべき重要な成分でることがわかった。最終年度である本年度は、大豆サポニン各成分の量的調製を試み、動物実験、物性実験、ウイルス実験等への試料の供給を行った。醤油粕と胚軸にサポニンが濃縮していることに着目し、宮城県醤油醸造共同組合の協力を得て、サポニン分離プラントを試作することができた。得られた。粗サポニンからのサポニン各成分を単離し、山口大・医・山本直樹教授の協力で、エイズの原因ウイルスであるHIVへの影響を調べた結果、いずれのサポニン画分でもHIV増殖抑制効果がみられ、特にBグル-プにその活性の強いことがわかった。さらに、コレステロ-ル食を与えたラットへの影響を調べた結果、血中トリグリセライドの低下、すなわち、抗脂肪血作用のことも追認できた。大豆食品は胃癌、大腸癌等の低リスク食品であることから、サポニン等の配糖体成分の生理作用を追求することは今後も重要な課題であることがはっきりした。また、サポニン組成と遺伝との関係が明らかにばったことから、植物の分類マ-カ-としても有効であり、さらに品種の改良と判別にも応用され、新たな展開が期待される。
著者
大河内 眞也
出版者
東北大学
雑誌
産学が連携した研究開発成果の展開 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP) 探索タイプ
巻号頁・発行日
2012

我々は間葉系幹細胞(MSC)が分泌する液性因子STC1(Stanniocalcin-1)が、1過酸化ストレス軽減、ミトコンドリア機能改善を介して肺胞上皮細胞を保護すること、2STC1の気管内投与が間質性肺炎動物モデルの線維化を軽減すること、を見出し特許出願した。しかしいくつかの癌でSTC1高発現例が報告されており、投与による癌化誘発の懸念がある。MSCが障害局所に集積する作用を持つことに着目し、STC1過剰発現MSCを作成、投与し、肺障害局所への効率的STC1デリバリーと癌化リスク低減を可能にすることを本課題の目的とした。今回我々はSTC1過剰発現MSCを作成し、動物モデルにおける研究より上記目的をほぼ達成した。今後、臨床応用に向けた研究、技術移転などを展開する予定である。
著者
茂木 淳
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

体内時計は生物にとって、昼夜の光環境の変化に代表される、周期的な外部環境の変化に対応し、自らの行動や生理活性を最適化するうえで重要な機構である。多くの生物では、安定性と柔軟性を兼ね備えた、体内時計の計時メカニズムは「内因性の自律振動の発振」と「外部環境への同調」という二つの要素によって形成されている。照明条件は養殖魚の生残率、成長量に関わる要因の一つである。一般に長日照明飼育は成長を促進させるが、それによって形態異常を持つ割合が増加する魚種も多く知られている。照明条件は、現在までのところ、養殖業者の経験に基づいて設定されている。本研究では、魚類の体内時計と照明条件の関係を理解し、養殖魚の健苗性の向上において最適な照明条件を魚種ごとに予測することを目的とした。これまでの研究で、ヒラメでは、ゼブラフィッシュとは異なる、これまで魚類では知られていなかった視交叉上核を介した体内時計の制御機構が働いていること、中枢時計の同調因子としてコルチゾルが働いていることを示唆した。当該年度では、当初の計画にあった、ヒラメ以外の魚種(カンパチ、フグ、メダカ)における時計遺伝子per2の発現解析をおこなった。カンパチではヒラメと同様に視交叉上核特異的な発現が見られた。それに対してフグでは染色が見られたが他領域の染色と差はなく、組織特異的に強く発現しているとはいえない。これはゼブラフィッシュの染色パターンに類似している。メダカでは、染色が見られなかったため、発現量がISH法の検出可能レベルよりも低いと考えられる。これらのことから魚類の視交叉上核のリズム発信には魚種間で種差があることが推測される。
著者
瀬戸 文美
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究は生活空間内において人間を支援するロボットの実用化に向けたより効果的な人間とロボットとの協調作業系の実現を目的として,ロボット自身,環境に存在する物体,協調作業の相手である人間の構造・運動の情報からそれぞれSelf-model,Object-model及びPartner-modelという構造・運動モデルを構築し,それらのモデルに基づく人間協調型ロボットの制御システムを提案することを目的にしている.本年度は,協調作業中においてロボットがSelf-Modelに基づいて自己衝突を回避するだけではなく,ロボットの周囲の物体の構造・運動情報から構築されるObject-modelに基づき,協調作業中における障害物回避,及び障害物回避と自己衝突回避を同時に実現する手法を提案し,実機を用いた実験を行うことによってその有効性を確認した.また,ロボットの関節可動範囲から構築したSelf-Modelに基づいて,ロボットが人間との協調作業中において関節の可動範囲限界等の問題を回避可能とする手法を提案し,実機を用いた実験を行うことによってその有効性を確認した.
著者
飯島 澄男
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
1968

博士論文
著者
服部 俊夫 仁木 敏朗 平島 光臣 HAORILE C.-Y. 久保 亨 児玉 栄一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

デングウイルス(DENV)感染者における新規バイオマーカーとしてのGalectin 9 (Gal-9)とOsteopontin (OPN)の臨床的な有用性を研究した。血漿Gal-9はDENV感染者では正常群と比べ有意に上昇し、ヒトでの報告された最高の値を示し、回復期では有意に減少した。Gal-9値はヘマトクリット値、血小板数、単球およびウイルスRNAのコピー数と相関していた。血漿OPNも9倍以上の増加を急性期で示し、回復期ではトロンビン切断型のOPNが上昇し、免疫と凝固のクロストークマーカーと思われた。故に、DENV感染における血漿Gal-9及びOPNが病態反映のマーカーである可能性を示した。
著者
末松 和子 黒田 千晴 水松 巳奈 尾中 夏美 北出 慶子 高橋 美能 米澤 由香子 秋庭 裕子 島崎 薫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

欧米豪で進む高等教育の「内なる国際化」とりわけ留学生と国内学生の正課内外国際共修に着目し、国内の実態調査、海外施策・実践比較研究、日本をはじめとする非英語圏の高等教育現場に適した国際共修教授法の開発、また国際共修の効果検証を通して日本やアジアに特化した国際共修や「内なる国際化」の在り方を明らかにするという本研究の目的に沿って、日本における国際共修の実践実態の把握、「内なる国際化」が進む海外主要国の施策および実践比較研究を通して理論構築を行い、日本やアジア独自の国際共修を考察するための基礎研究を進めた。また、発展的・包括的な国際共修カリキュラムおよび教授法を開発し、国際共修の効果検証を正課外にも拡大することで海外留学の準備や代替としての国際共修を「内なる国際化」の枠組みで捉え、その有効性の明示と政策提言を行うための準備として、論文・学会発表で基礎研究の結果をタイムリーに発信した。具体的には、文献調査やペダゴジー研究を中心とした基礎研究の成果を国内外の学会で報告し、ワークショップでは、国際共修を実践する上での授業やシラバスのデザイン、教育実践者に求められるファシリテーション・コンピテンシー、課題及びその対処法、評価、について有益な議論を展開することが出来た。ワークショップの運営についても国際共修の研究者、教育実践者より建設的なフィードバックを得ることが出来、今後の研究の発展に資する知識基盤の形成につながった。また、国内における国際共修実態調査を実施するためのパイロット事例調査も実施した。日本の高等教育機関における国際共修の実践状況と課題を明らかにするために実態調査を計画しているがその準備にも着手し、来年度の発展研究に向けた下地作りを行うとともに、本年度実施したワークショップの発展版を国内外で実施するための申請作業を集中的に実施した。
著者
齋藤 智寛 佐竹 保子 冨樫 進 川合 安 堀 裕 長岡 龍作 斉藤 達也
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

唐・道宣の編纂した中国の仏教史書『続高僧伝』玄奘伝について、テキストと内容の双方について総合的に研究する。テクスト研究としては宮城県の名取新宮寺一切経本について日本古写経諸本との関係を明らかにし、新宮寺一切経全体の解明の布石ともする。内容については、中国思想・歴史・文学、インド考古学、僧伝文学など分野横断的な記述をもつ玄奘伝の資料価値を最大限に発揮して考察をおこなう。
著者
瀬川 昌久 川口 幸大
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

宗族という古典的研究テーマの有効性について再考すべく、本研究課題では20世紀初頭以来宗族が直面した社会変化と、その間の研究者たちの視座の変遷という、2つのレベルの変化に焦点を当てた。そして、宗族の現状に関する客観的検討を通じ、今日の文化人類学者の多くが親族関係を極めて私的で局所的社会現象とみなす傾向があるのに反し、依然として現代中国社会の中でそれは重要な役割を果たしていると結論づけた。宗族こそは、親族関係が社会の公的な領域においてなおも効力と価値をもち得ることについての再考へとわれわれを導く重要な鍵なのである。なお、本研究課題の最終成果としての論文集が、2015年度中に刊行される予定である。
著者
小田 忠雄 高木 泉 石田 正典 西川 青季 砂田 利一 森田 康夫 板東 重稔 新井 仁之 堀田 良之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的および実施計画に沿って,研究代表者,研究分担者および研究協力者は,多様体に関する数理科学的諸問題を次のように研究した.1. トーリック多様体を代数幾何・代数解析・微分幾何の見地から研究し,交差コホモロジー,トーリック多様体への正則写像,トーリック・ファノ多様体の分類および複素微分幾何学的計量に関して新知見を得た.2. 多様体を数論・数論的幾何の見地から研究し,アーベル曲面等の有理点の分布,2次元エタール・コホモロジーに関するテート予想,クリスタル基本群・p進ホッジ理論に関して新知見を得た.3. 非アルキメデス的多様体の代数幾何学的研究を行い,剛性に関する新知見を得た.4. 可微分多様体,リーマン多様体,共形平坦多様体の大域解析的性質,双曲幾何学的性質,基本群の離散群論的性質を研究して数々の新知見を得た.5. 多様体上のラプラシアンやシュレーディンガー作用素のスペクトルの,量子論・準古典解析的研究および数理物理的研究を行うとともに,グラフに関する類似として離散スペクトル幾何に関しても興味深い数々の結果を得た.6. 生物等の形態形成を支配すると考えられる反応拡散方程式等の非線形偏微分方程式系を多様体上で大域的に研究し,安定性に関する新知見を得た.7. ケーラー多様体上のベクトル束の代数的安定性とアインシュタイン・エルミート計量に関する複素幾何学的研究を行い,いくつかの新知見を得た.8. 擬微分作用素・極大作用素・有界線形作用素・作用素環等を実解析・複素解析・フーリエ解析的側面から研究し,数々の新知見を得た.
著者
千田 佶 井上 千弘
出版者
東北大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

鉱山排水起源の集積培養菌による硫黄および鉄の酸化実験を行った。硫黄基質では、硫黄酸化細菌と原生動物が共存する硫黄酸化細菌による単体硫黄の酸化挙動と,純粋培養菌による酸化挙動を比較し,両者の挙動について検討するために,若干の酸化条件について実験を行い,また,鉄基質では鉄酸化細菌以外の微生物の存在を検討するために栄養塩無添加における酸化実験および有機物であるSDSを添加した実験を行った。また,高速液体クロマトグラフィーを用いて鉄基質集積培養における培養液中の物質の分析を行った。以上の結果,以下の結論を得た。(1)原生動物が生存する集積培養の場合,硫黄酸化細菌による酸化速度および増殖収率は純粋培養の場合よりも小さくなる。(2)Cu^<2+>を添加した集積培養において,硫黄酸化細菌は阻害作用を受けたにもかかわらず増殖したが,原生動物はCu^<2+>濃度100mgdm^<-3>以上では増殖できなかった。さらに,原生動物はCu^<2+>にたいする耐性を獲得しなかった。(3)鉄基質集積培養菌の栄養塩無添加における酸化挙動は,時間の経過とともに細菌によるFe^<2+>の酸化速度が大きくなり,細菌の増殖がみられた。(4)鉄基質集積培養において,SDSを添加した場合,鉄酸化細菌は1×10^<-5>moldm^<-3>以上の濃度で阻害された。しかし,この濃度で継代培養を行うと,鉄酸化細菌はSDSに対する耐性を獲得する。(5)鉄基質集積培養を行った培養液中からピルビン酸は検出されなかった。しかし,9K培地には含まれていない物質が検出された。栄養塩類無添加における鉄基質集積培養の実験結果と併せて考えると,それが鉄酸化細菌の栄養素となっている可能性がある。
著者
奈良 貴史 鈴木 敏彦
出版者
東北大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

アバクチ洞穴遺跡出土人骨は東北地方において初めての保存状態良好な弥生時代幼児人骨である。我々は、日本列島の人類史を解明する重要な手がかりになると思われるこの人骨の人類学的位置付けを早急に行わなければならないと判断し研究を着手した。弥生時代の日本列島には縄文人的な特徴を持つ人骨とアジア大陸からの渡来系の要素が強いとされる人骨の2系統が少なくとも存在していたことがこれまでの研究で判明している。研究分担者の鈴木の歯冠計測値による予備的な分析では、この人骨が渡来系弥生人に近いことが示された。これを踏まえて、その他の特徴においてもこの人骨に渡来系弥生人的な形質が認められるかどうかに主眼を置き、詳細な計測値および非計測的形質の記録を頭蓋骨、乳歯について行なった。また札幌医科大学、東北歴史資料館、東京大学、国立科学博物館、国立歴史民俗博物館、及び京都大学で比較対象となる縄文・弥生時代幼児人骨の計測、X線規格写真撮影等を行い、比較資料を収集した。その結果、眼窩ならびに鼻根部の形態および乳歯の非計測的な形質の一部に弥生人的な要素がみられることを確認し、弥生時代中期に、既に東北地方に縄文人以外の形質を持つ人々が流入していた可能性が示唆された。昨年11月に筑波大学で開催された第51回日本人類学会大会で、これまでの研究結果を「岩手県アバクチ洞穴遺跡出土弥生時代幼児人骨の形態学的検討」として発表した。来年度は縄文人と弥生人とでは四肢骨のプロポーションが違うとされていることから、アバクチ幼児人骨の四肢骨の計測を行ない、どの様な四肢のプロポーションを示したのかを明らかにする。また、顎骨内から摘出された形成途上の永久歯に関して、既知の縄文・弥生人の同様の幼若永久歯を用い、咬耗が進行した成人人骨の永久歯とは異なる視点からの比較を試みる。最終的に2年間で得られたデータの更なる統計学的検討を行う。
著者
筏津 安恕
出版者
東北大学
雑誌
法学 (ISSN:03855082)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.31-60, 2006-01-31
著者
佐々木 聡
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

一年半の研究期間の中で、天文五行占書を所蔵する国内外の機関を中心に、調査を実施し、テキストの伝存状況を把握すると共に、六朝から清朝までの勅撰系の天文五行占書の流れを整理することが出来た。また、民間占書との比較から、両者の比較の性格の相違も明らかとなった。勅撰系天文五行占書は、儒教理念を下敷きとしており、鬼神の祟りや呪術による凶兆の回避などはあまり言及されない。それに対し、民間占書では、鬼神の祟りや呪術による対応が豊富に説かれる。その他、調査では、勅撰占書と民間占書の中間に位置付けられる非勅撰系の天文五行占書の伝本も見つかっており、その成立背景や社会的意義の解明が今後の課題として見えて来た。