著者
中森 亨
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

沖縄県石垣島、鹿児島県奄美大島、高知県大月町で現生造礁サンゴ群集の観察と写真撮影を行い,そこに生息する造礁サンゴのリストを作成した。同じ海域において,海水を採取し,海水のpH,全炭酸,全アルカリ度と自動センサーを用いて水温と光量子フラックスを測定した。これらの化学成分の変化を元に群集の有機,無機炭素生産速度を計算した。これらの二つの生産を、水深と緯度の関数としてモデル化した。
著者
亀田 裕見
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.25-36, 1993-09-30

音韻論的型の体系記述研究を目的とする読み上げ式調査による音調の結果と、実際の談話における音調は必ずしも同じではない。東京語と同じ体系をもつ静岡県清水市方言の名詞のアクセントについて、読み上げ式と談話における音調相の比較をし、そこに見られる上昇位置の相異や、弁別的特徴の破壊について考察した。その結果、当該方言の談話には特定の情意表現と結び付いた4種類の文音調、「標準調」「高起調」「頭高調」「遅れ上がり調」が存在していることが分かった。これらの文音調が担う表現性は、新たに生じた音調形式が在来の音調形式に対して結果的に強調性を持つという相互関係において相対的に付与されるものであると考えられる。
著者
畠山 力三 金子 俊郎 加藤 俊顕
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

シリコン基板上への高品質グラフェン直接合成法を開発することに成功した. 拡散プラズマを利用して, シリコン基板表面に薄膜状に堆積させたニッケル内部の炭素拡散を促進させることで, ニッケルとシリコン基板界面に高品質グラフェンを直接合成することを実現した. また, 同様の拡散プラズマを利用することで, グラフェンエッジのみに選択的に窒素原子をドーピングすることに成功した. これにより, グラフェンの電気伝導特性をp型からn型に自在に制御する手法を確立した
著者
大滝 精一 NGUYEN Chinghia 王 疆
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

農村開発や地域の振興は社会状況に対する不満(Strain)から引き起こされるが、貧しい生活に対する人々の不満だけで社会企業活動が始まるわけではないことも明らかになっている。社会的課題のプロセスは意識・問題との対話・解決案の創造・評価という4つの段階で捉えることができる。課題を解決していく中、起業活動は、農村地域の住民(女性とか)の地域コミュニティー運営参加への内発的動機づけを高めるという傾向が見て取れた。また、コミュニティーにおける創業活動の拡散を促進するうえで,模倣が重要な役割を果たした。
著者
李 敬淑
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究は、最近発掘された植民地地域の映画を研究対象に含め、戦時下の東アジア映画の全体像を把握するものである。そして、1931年満州事変から1945年第二次世界大戦終戦に至るまでの時期において日本、朝鮮、満州の映画界に現れた文化史的現状を「女優」という一つの軸を中心に分析することで、東アジア映画界のネットワークの在り様を明らかにすることを目的とする。その中で特に主眼を置いている課題は、既存の一国的な観点からではなく、帝国の中心(日本、内地)と植民地周辺(朝鮮・満州)との間で起こる統合/分離の緊張関係の中で、東アジア地域における戦時下映画を捉えることである。そのため、本研究は田中絹代、原節子、文芸峯、金信哉、李香蘭といった戦時下の東アジア映画界における重要な女優たちを対象にし、今年度は彼女らの表象比較に重点をおいて研究活動を行った。その結果、各々の表象を日本と朝鮮・満州映画史に結びつけつつ、しかし個別的女優史としてではなく、映画産業や国家政策、言説、言語、欲望、またその時代の社会的・文化的環境との関係といった複数のレベルの要素が複雑に関わり合った重層的な歴史的変容として描き出すことができた。今年度の研究は個々の女優を演技者として検討する方法よりも、帝国と植民地の間(in-between)と彼女らがどのように接合されていたかという戦時下の映画と女優との構造的な相関関係や帝国―植民地の影響関係を浮き彫りにしたことに意義がある。
著者
福永 久雄 胡 寧 跡部 哲士
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では,運用中の航空機CFRP構造に小石等が衝突するときの荷重位置・荷重履歴を,異物衝突時の放射音を用いて非接触・実時間でモニターする手法を確立するとともに、同定した最大衝撃荷重および荷重~時間関係より,CFRP構造の衝撃損傷の有無・大きさを実時間で評価する手法を開発することを目的とした。すなわち、異物衝突時のマイクロホンへの放射音到達時間から異物衝突の位置を判定し、音圧情報より荷重履歴を推定するとともに,同定した荷重履歴より衝撃損傷を評価する非接触・実時間の異物衝突・衝撃損傷モニタリング法を開発し,CFRP積層板およびCFRPサンドイッチ板により本手法の有効性を検証した。
著者
徳山 道夫 寺田 弥生
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

コロイドガラス転移現象を理論およびスーパーコンピュータを用いた大規模計算機実験の両面から研究し,下記の成果を得た.1)中性コロイド分散系のガラス転移近傍において,コロイド粒子間に働く流体力学的相互作用が如何に重要な役割を演じるかを研究代表者が提案した分子場理論および二種類の計算機実験(分子動力学およびブラウン動力学)を通して間接的に示唆し,その相互作用無しではガラス転移は起こりえないことを初めて理論的に明確にした.2)研究代表者は,コロイドガラス転移を理解するモデルとして,第一原理より密度揺らぎに対する非線形確率拡散方程式を2001年に提案した.その式を数値的に解くことにより,ガラス転移近傍では,時間スケールに応じて異なった不均一空間パターンが形成され,そのクラスター形成過程のダイナミクスが密度揺らぎの非線形緩和に影響を与え,従来知られている,二段階緩和(α,β緩和)の原因となることを初めて示した.3)理論的に提案された非線形確率拡散方程式を数値的に解くことは,現段階では近似的にしか可能ではなく,密度揺らぎの全緩和時間スケールでの議論には到底使用出来ない.そこで研究代表者は,非線形確率拡散方程式を分子場近似の下で平均し,平均二乗変位に対する新たな非線形方程式を導いた.この式には,未定の静的構造因子に起因する自由長が含まれており,その意味で分子場方程式である.この自由長は,粒子同士が相互作用するまでに自由に動ける距離を表し,実験やシミュレーションのデータから決定されるべき重要な物理量である.実際,ガラス転移点近傍では,どのような体系においても,自由長,長時間拡散係数,特性時間(代表例,α,β緩和時間)などのパラメーター依存性には類似性および普遍性が存在することを,この分子場理論を用いて示すことができ,ガラス転移の理解に必要な枠組みを見出した.実際,この理論は原子・分子系でのガラス転移のダイナミクスの研究にも有効であることが示され,これからのこの分野での発見科学としての役割を演じて行くものと確信する.
著者
大島 吉輝
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

エピジェネティックな遺伝子発現に関与する酵素であるHDACやDNAメチル化酵素を阻害する低分子物質を用いて、昆虫寄生糸状菌、植物内生糸状菌、Chaetomium属糸状菌を培養することにより新たな二次代謝物を創出した。本法は、糸状菌に潜在する二次代謝物生産に関係する未利用生合成遺伝子を発現させ、多様性に富む新規天然物を創生するための新たな手法であることを示した。加えて、新規医薬品リードの探索源としての天然物ライブラリーを拡充することができた。
著者
名嶋 義直
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

日本語学習者がノダ文をどのような点に着目してメタ的に理解しているかを明らかにするため,韓国人学習者・中国人学習者に対し質問紙調査を実施した。調査結果を分析したところ,双方の学習者に共通の特徴として「ノダと文脈との関連」を充分に理解していない点,語用論的な理解の欠如という点が明らかになった。両学習者群を対照してみると,韓国人学習者の方が語用論的な理解が相対的に強く,中国人学習者は意味論的・構文論的理解が強いことが明らかになった。このことは学習者に応じてノダ文の教え方を考慮する必要があることを意味する。
著者
畠山 裕康
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、細胞内の任意の分子の一分子計測を容易に可能にする材料と手法の提供を目的とした。そのために、極めて安定で明るい蛍光ナノ材料、量子ドットに対して、低分子リガンドと特異的共有結合を形成するタグタンパク質を利用した目的分子との特異的結合能の獲得と細胞膜透過性ペプチドを利用した細胞膜透過性の獲得の2点を試みた。前者については目的を達成したものの、後者は導入効率等に課題があったため断念した。しかし、エレクトロポレーション法により低い細胞毒性にて高効率な細胞内導入を可能にすることができた。これにより細胞内におけるミオシンの一分子計測を行うことができ、本研究の目的を達成することができた。
著者
篠 憲二 清水 哲郎 座小田 豊 野家 啓一 戸島 貴代志 荻原 理 川本 隆史 熊野 純彦
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、規範概念である<幸福>の具体的内実を、人間についての自然科学的・社会科学的諸事実から「導出」し得るとは考えないが、他方で、人間存在の成立諸条件の考察を通じて幸福の所在を或る程度まで突き止める余地のあることを認める。実際、人間存在の生物学的基底に人間のネオテニー性が存し、これが文化のマトリクスとして機能し続けていることが解明されたのは、本研究にとって大きな一歩であった。現代社会において広く共有されている幸福観・幸福感の多くが、それぞれ、それを抱いているひと自身が深くコミットしている態度・立場に照らしても、実は問題含みであることが明らかになった。それは一つには、「生を物語る」という視点が鍛え上げられていないからである。本研究によって、well-beingに関わる情緒とことばを研ぎ澄ませるためのモラリスト的考察が豊かに結実した。哲学史的には、プラトン、アリストテレスが「このひとの生」をいかに問題化したか、フィヒテ、ヘーゲルの説く、普遍性への志向が人間の完成の課題遂行の要であること、レヴィナスの<享受>と<傷つきやすさ>の概念が新たな倫理学の地平を拓きつつあることが明らかになった。本研究の具体的・実践的場面への適用は多岐にわたるが、そこで明らかになった主なことは以下の通り。第一に、医療の倫理の現場で、患者の意向の把握は、患者の生の物語りの総体的理解を実は背景にせざるを得ないこと、そして患者の生の物語りが患者を取りまく人々の生の物語りと絡み合っていること。第二に、農村風景をいかに修景するかを考える上で、農村風景を一種の物語りとして捉え、<享受>と<傷つきやすさ>を考慮する必要性。第三に、科学技術はこれに直接は携わらない人々を含む社会全体のwell-beingに深く関わるが、それは技術がもつ見えにくい政治性によってであること。
著者
島袋 梢
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究では、デング熱感染症の発生に影響を与えると考えられている気象を解析し、影響を与える特定の気象パターンを見つけだす事を目的としている。特に、デング熱媒介昆虫の生態学的特徴から、本研究では新たに、無降水も影響を与えていると考えている。本年度は、昨年収集したデング熱が流行しているアジア地区を中心とした気象データを解析した。最初に参照した気象データ(日本の気象業務支援センターのデータ・アメリカ海洋大気庁(以下:2次データ))は欠損値が多く、予想に反して2次データを用いての解析が難しい事が分かった。そのため、デング熱患者の疫学データと同地域から直接データを入手し、最終的にはカンボジア国の7地域最大15年の気象データ(降水量・温度・湿度)を用いて解析をおこなったところ、月や年平均の降水量・気温・湿度の大きな相関は見られなかった。特に、本研究で仮定している無降水との関連性も、月別の無降水日数で検討したが大きな影響は見られなかった。その結果を元に問題点を検討したところ、降水量の観測地点と患者発生地点の距離が影響している可能性が考えられた。その仮説をもとに、降水量がどの程度の距離間まで同じ降水パターンを示すか検討することとした。国内の詳細なアメダスデータを基に、平坦な地域で降水量が類似パターンを示す限界が約30キロ圏内であることが推定された(地理的特徴などによっても異なる)。一方で、国内でのデータが海外でも同様の傾向がみられるかを検討するために、シンガポール国にて実際に雨量計で計測を行ってみたところ、30キロ以内のシンガポール国内の観測データを比較したところ、類似性がみられないことが分かった。その原因は熱帯の気象変化が亜熱帯地域と比較してより多様性があることが考えられたことから本研究のように降水量のパターンを調べていく場合、観測地点は30キロマスより小さいレベルで参照することが今後必要になるとの新たな課題が考えられる結果となった。
著者
齋藤 昌利 松田 直 菅原 準一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

早産の主要原因である子宮内炎症がどのように胎児に波及し、どのように影響するかは未だ不明な部分が多いが、我々は妊娠ヒツジを用いて子宮内炎症モデルを作成し、子宮内炎症環境下に胎児皮膚組織が炎症メディエータとして働くことを明らかにした。また、Polymyxin Bという抗生物質を用いて、胎児皮膚組織において炎症性サイトカインのメッセンジャーRNA発現が抑制されることを示した。この結果は、進行しつつある子宮内炎症を沈静化する治療方法の開発の一助になると思われる。
著者
玉澤 かほる 板垣 由美 井川 資英 米田 栄吉 福田 俊男 石幡 浩志
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は,高周波プラズマ状態のガス雰囲気中で,有機物を迅速に分解除去して滅菌効果を得ることを目的としており,研究した結果,以下の成果を得た.1)フォトレジストをウエハに塗布して酸素ガスにてプラズマ処理(アッシング装置:PACK-1,ワイエイシイ社)した.レジストの膜厚(膜厚計にて測定)は,ウエハを石英ラックに水平でなく垂直に設置した方が,また出力が大きいほど,放電方式が同軸電極より対向電極の方が,減少量が大きかった.2)細菌芽胞を塗布した試料を,対向電極方式でプラズマ処理した.試料をトリプトケース培地にて培養すると,ヒータ温度が高いほど,処理時間が長いほど,出力が大きいほど,芽胞の死滅効果は大となった.ヒーター温度60℃,10分間のプラズマ処理により,芽胞B.Stearothemophilus10^4を塗布した試料10例すべてが培養陰性を示した.非プラズマ処理群(ヒーター温度60℃,100℃,140℃)では,試料は全て陽性培養であった.これより,プラズマ処理時の殺菌効果は,熱効果でなくプラズマ本来の物理的効果に依存することが明らかとなった.3)過酸化水素・低温プラズマ滅菌装置(STERRAD^*100R,ジョンソン&ジョンソン,ST装置)の滅菌機序を検討した.チャンバ内にバイオロジカルインディケータ(BI,ジョンソン&ジョンソン)を置いて電源を投入し,表示パネルの処理完了時刻の25分前に故意に電源を切ってプラズマ行程をスキップした.培養されたBIは10検体すべて陰性であった.この結果は,ST装置では,プラズマ行程前に,滅菌処理が既に完了しており,滅菌の主体はプラズマではなく過酸化水素ガスの薬理作用に依存していることを示唆するものである以上より,本研究で開発した装置は,過酸化水素などの薬剤を併用しないで,プラズマのみで滅菌効果を得ることのできる新しい画期的な滅菌方法である.
著者
岡谷 貴之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

カメラで撮影した画像を元に,撮影対象の3次元形状をはじめとする幾何学情報を推定する問題について,その理論上最も高精度な方法を探求し,その応用を開拓した.研究成果は,行列因子分解の数値計算法,プロジェクタカメラシステムの校正法,高精度平面追跡法,車載カメラを用いた市街地の時空間モデリングと可視化の方法,車載ステレオカメラの校正法,光学的方法との融合に基づく高精度形状計測,マルコフ確率場の最適化計算法等である.
著者
関口 敦 佐藤 千穂 竹内 光
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、長期的予後の改善が著しい乳がん患者において、がん治療に合併する認知機能障害が注目されている。本研究では、閉経後乳がん患者の術前後および術後半年時点での脳形態変化、および認知機能を評価した。術直後で視床の体積減少および、注意機能の低下が認められ、麻酔薬の量との有意な相関が認められた。また、術後半年時点では、手術のみで治療が完了した群ではこれら変化は回復したが、術後内分泌療法を受けた群では回復していなかった。認知リハビリテーション介入研究は、ゲームソフトを利用したパイロット研究を健常群に対して実施したが、注意機能に対して有意な介入効果は認められず、患者群への介入は実施しなかった。
著者
狩野 充浩 市川 博之
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

筋萎縮症モデルマウスでは、頸部の筋肉に異常が発見された。一部の喉頭に付着する筋にエオジンの濃染が認められ、筋線維の萎縮も観察された。この筋肉は輪状甲状筋であることが同定できた。また輪状甲状筋の運動終板におけるCGRPの発現は非常に強く、この筋での運動終板の変性が確認された。一方、感覚神経の分布は正常マウスの分布と同様であった。また、ALSモデルや加齢マウス及びラットの軟口蓋、咽頭及び喉頭粘膜におけるP感覚及び運動終板の分布は正常動物と大きな変化は認められなかった。本研で観察された筋線維の萎縮や運動終板の変性の原因の同定は不十分であり、今後は、さらなる検討が必要とされる。
著者
杉本 周作
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

観測資料(Argoフロートによる水温・塩分観測資料,人工衛星観測海面水温資料・海面高度計資料,大気再解析資料等)解析を行うことで,黒潮再循環域の海洋構造(水温・塩分)の時間変動特性を調べた.その結果,水温の決定には,黒潮蛇行期に現れる四国沖の再循環流(高気圧性循環流)による熱輸送が重要な役割を果たすことがわかった.そして,形成された水温偏差が,直上大気場への熱放出源になることを指摘した.また,再循環域の塩分は,暖候期の降水量を反映しており,この降水量は再循環域上を通過する温帯低気圧によると結論づけた.
著者
古和田 雪 館 正弘 川上 和義 菅野 恵美
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

NKT細胞はT細胞とNK細胞の特性を併せ持つユニークな細胞であり、様々な疾患の制御に深く関わっている。本研究ではマウス創傷治癒モデルを用いて創傷治癒過程におけるNKT細胞の役割に注目し解析を行った。NKT細胞を欠損したJα18KOマウスでは、WTマウスと比べ創傷治癒が遅延した。この遅延は、WTマウス由来のNKT細胞を20~30%程度含む肝臓単核球集団(LMNC)を移植されたJα18KOマウスで回復した。また、WTマウスにNKT細胞を活性化させるα-GlaCerを投することにより創傷治癒が促進した。これらの結果より、NKT細胞が皮膚創傷治癒過程において重要な役割を担うことが明らかとなった。
著者
壁谷 典幸
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

量子臨界点(量子揺らぎによって引き起こされる臨界点)を2点持つ特異な希土類化合物について、その起源を明らかにするための研究を行った。量子臨界点への到達の方法として圧力の印加と元素の置換をを用いた。臨界揺らぎの情報を得る手段として圧力下物性測定手法の開発を行い、比熱測定装置を完成させた。圧力印加による量子臨界点へのアプローチでは、反強磁性転移と見られる電気抵抗の異常を見出した。また元素置換によるアプローチでは、量子臨界点の近傍に位置する単結晶試料の育成に成功し、低温で比熱が対数的に増大する振る舞いを見出した。