著者
粟田 主一 鈴木 一正 島袋 仁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.日本語版WHO-5の有用性を地域在住高齢者の自殺念慮検出という文脈で評価した.70歳以上高齢者696人に一連のアンケート調査を実施Chronbach α係数は0.87,Loevinger係数は0.64.WHO-5合計点は,同居家族数,身体疾患数,身体機能,手段的ADL,抑うつ症状と有意に相関.自殺念慮をもつ高齢者ではWHO-5合計点が有意に低い.ROC曲線分析は自殺念慮のある高齢者を有意に識別.主観的ソーシャルサポート(PSS)欠如と組み合わせ,WHO-5合計点12点以下またはいずれかの項目で0点または1点であることをカットオフにすると,より適切に自殺念慮を識別できた(感度87%,特異度75%,陰性的中度99%,陽性的中度10%).日本語版WHO-5はPSSとの組み合わせで地域在住高齢者の自殺念慮を効果的に検出できる.2.高齢者のうつ病早期治療と自殺予防を日的とする都市型地域介入プログラムを開発するために、ポピュレーション戦略とハイリスク戦略を組み合わせた総合的地域介入プログラムの効果を,自殺念慮と精神的健康度を転帰の指標として調査した.普及啓発,保健相談,地域活動強化,スクリーニング型介入は地域住民のソーシャルサポートを高め,保健専門職による訪問・ケースマネジメント型介入がうつ病高齢者の精神的健康度を高め,自殺念慮を軽減した.また、2002年にスタートした本研究および2004以降に仙台市でモデル事業化されている総合的地域介入事業が高齢者の自殺率に及ぼす効果を検証するために、仙台市における高齢者の自殺死亡数の推移を調査したところ、1990年〜2001年までは80歳以降の後期高齢期に自殺率のピークが認められていたが,2002-2005年の4年間で後期高齢期の自殺率ピークが消失した.後期高齢期の自殺率ピークの消失は,男女いずれの群にも認められた.高齢者の自殺率減少が最も目立つ区は,モデル事業として介入事業をスタートさせた宮城野区であった.うつ病高齢者を対象とする総合的地域介入事業は,高齢者の自殺予防に有効である可能性が高い.
著者
長 哲郎 松岡 英明 内本 喜一朗 鳥居 滋 野中 勉 鈴木 周一
出版者
東北大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

本研究は重点領域研究「有機電気化学の新展開」の総括班としての機能を有し、実施グループ5名と評価グループ6名から構成され、評価グループの助言を得ながら、4つの班相互の連絡を緊密にして研究計画全体の効果的推進を計った。1.研究項目と成果電子移動反応場の設計と制御(A01)、超活性反応種の創成(A02)、メディエーター反応の展開(A03)と錯体電子移動系の展開(A04)の4研究項目を設け、計画班員29名(3年間同数)、公募班員平成7年度91名(平成5年度55名、6年度87名)により研究の推進を計った。平成8年10月の総括班による評価では、各研究項目は何れも顕著な成果を挙げ、有機電気化学の格段の発展に繋がるとともに、他の方法では実現できない有機反応系を発展させ、さらに錯体化学、生物電気化学と有機電気化学との境界領域を築く成果も得られ、当初の目的を充分達成した。2.全体会議、公開シンポジウム等の開催6回の全体会議、5回の公開シンポジウム(第2回全体会議から全体会議に続けて実施)、11回の総括班会議、17回の実施グループ会議、10回以上の班会議、4回の班組織を越えた横断的研究会議を開き、班員相互の情報交換、班員同士の協力研究や横断的研究の実施、研究計画全体の効果的推進、報告書の作成打ち合わせ等を進めた。3.印刷物の発行各年度未に研究成果報告書(各班員和文2ページ、英文2ページ)および3年間の研究成果報告書(各班員英文4ページ)を刊行した。また、全体会議、公開シンポジウムの際には要旨集を、さらに12回のニュースレターを班員等に配布し、研究の目的、研究の進行状態等の周知徹底を計った。平成10年2月には英文図書“New Challenges in Organic Electrochemistry"を出版するべく一般学術図書の補助金申請を行い準備を進めている。
著者
町田 好男 森 一生 田村 元
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

圧縮センシングMRIとは、情報技術を用いて少ない計測データから画像を取得する新しいMR高速撮像法である。技術開発が進展する中、臨床応用の立場から見た画像の得失を見極めることが重要であり、適切な画質評価指標が求められている。今回種々の条件で画質評価実験を進めた結果、個々のアプリケーション固有の評価も重要であることが分かった。本研究では特に、臨床上重要なMR血管描出法(MRアンギオ)について、脳血管を模擬した数値モデルを用いて血管描出能の再構成およびノイズ条件依存性を半定量的に評価する方法を提案した。
著者
角館 俊行
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

研究目的 : 本研究では、軟X線顕微鏡の開発を進める中で課題として浮上した、軟X線ミラー基板の形状測定の高精度化を目的とし、新たな基板保持方法の開化を目指した。具体的には、基板回転機構の導入などにより、測定誤差(標準偏差)0.10nm以下のレーザー干渉計測を目標とした。研究方法 : 研究代表者が従事するレーザー干渉計による軟X線ミラー基板の形状測定では、ミラー基板の位置及び姿勢を精密に調整し、それを保持することが重要となる。測定では、測定用ホルダにセットしたミラー基板を90°または180°回転させる必要があるが、従前、この回転はホルダに直接手を触れ行っていた。本研究では、既存のピエゾ駆動精密XYZステージに、コンピュータからの指令が可能な基板回転機構を導入することにより、面内回転・X・Y・Zの全ての軸の調整及び保持を遠隔操作で行えるよう改良し、回転角精度の向上と実験室内での移動や入退室に伴う測定環境変化の回避を図った。また、経年劣化による動作不良が生じた干渉計の拡散板を改良した。上記改良に必要な部品は本研究所の機械工場の協力を得て作製した。全システムの完成後、測定を繰り返し行い、データの取得・解析を行った。研究成果 : ミラー基板の形状測定における測定誤差(標準偏差)は、従来、0.15-0.20nmであったが、本研究では目標であった0.10nm以下まで低減させることに成功した。また、一部作業を除きミラー基板の位置及び姿勢の調整と干渉計測を全て遠隔操作で行えるようになり、測定の高精度化だけでなく簡便化・効率化にもなった。
著者
金 鉉哲
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度の研究は韓国の近代劇の先駆者である洪海星と築地小劇場の影響関係を中心に行った。洪海星(1894-1957)は韓国最初の演出家であり、韓国近代演劇の先覚者として非常に重要な人物である。特に洪海星は1924年-1929年の間、直接築地小劇場の俳優としても活躍した。そのために洪海星の演劇理論と演出作品に築地小劇場の影響が非常に大きかった。本年度の研究では、洪海星が本格的に韓国近代劇運動を始めた1930年一1935年を中心に、築地小劇場との関係を三つのポイントに基づいて明らかにした。第一は「実際公演と築地小劇場の関係」である。洪海星は韓国の近代劇運動の基盤を築きあげるために築地小劇場の演目をそのまま継承して公演した。洪海星の演出は当時の演劇人たちから肯定的な評価を受けたが、築地小劇場の反復に過ぎないという否定的な評価も少なくなかった。殊に第一回築地小劇場の公演でも話題になった表現主義劇である『海戦』の演出は洪海星の演出方式に関する賛否両論の論争の争点になった。第二は「築地小劇場と洪海星の演出方式」である。洪海星が築地小劇場の演目の中で最も高い評価を得た作品は『検察官』である。しかし、当時の演劇評を詳しく調べれば高い評価の根拠には築地小劇場の方式をそのまま生かした演出方式があげられる。即ち、洪海星の演出方式はただ築地小劇場の演出方式を紹介する程度で満足していたことである。第三は「劇芸術研究会の評価」である。洪海星の演劇活動中にいまだに解けない謎は突然劇芸術研究会を離れて大衆劇の劇団として有名な東洋劇場へ移動したのである。今までは経済的な問題が一番重要な原因として提起されているが、経済的な問題一つだけでは説明されない部分が多い。しかし、洪海星が参加した近代劇運動団体である劇芸術研究会における彼の位置を考えたら非常に簡単に釈明される。劇芸術研究会で洪海星は独創的な演出力を持っている演出家という評価とは程遠かった。単に、築地小劇場の体験を韓国に紹介する役割に過ぎなかった。結局、自由な演劇運動ができない劇芸術研究会を離れて東洋劇場へ移ったのである。
著者
玄 英麗
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

1)屋外温熱環境の質(Quality)を評価するための新たな指標の提案ある計画敷地を対象として、その屋外環境の質を屋外物理環境と社会的便益の面から評価するため、昨年提案した指標(Index1と2と3)に新たな指標(Index4と5)を追加し、検討を行った。Index1:計画敷地内でSET*(新標準有効温度、温熱快適性を表す指標)が許容上限値以下となる領域の面積Index2:Index1の値を計画敷地面積で基準化した数値Index3:Index1の値を敷地内のオープンスペースの面積で基準化した数値Index4:計画敷地内に住んでいるすべての人たちが楽しめる熱的に許容できる面積を計画敷地面積で基準化した数値(Index4=Index2*計画敷地における容積率)Index5:計画敷地内に住んでいる人たちの一人当たり楽しめる熱的に許容できる面積を計画敷地面積で基準化した数値(Index5=Index2/計画敷地における容積率)気候特性に適合した最適な建物配置はIndex4と5の値により決定される。2)広州と仙台における最適な隣棟間隔広州と仙台を対象として、建物隣棟間隔(D)と建物高さ(H)の比(D/H)を系統的に変化させた解析を実施し、1)で考案した評価指標を用いた評価を行った。この結果、広州と仙台でのD/Hの最適値は0.71となった。3)鉛直壁面が屋外温熱快適性に与える決定的な影響緯度の変化による屋外温熱環境の変化を把握するため、広州と仙台における表面温度の分布と平均放射温度の分布を比較した。この結果、広州における太陽高度が仙台に比べより高く、より多くのオープンスペースが日差しを受け入れるが、広州における平均放射温度がより低かった。これは、広州における太陽高度が高いため、鉛直壁面が受け入れる日射が仙台より少なく、表面温度が低かったためだった。これにより、鉛直壁面が屋外温熱環境に決定的な影響を与えることを明らかにした。
著者
譽田 正宏
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、画像から形状の特徴を抽出する技術及びその特徴を用いた認識技術の確立を目指して実施された。例として、原子オーダで平坦化されたシリコン表面を原子間力顕微鏡で測定した画像から原子ステップとテラスを形状認識し分離するアルゴリズムについて検討した。"方向"・"大きさ"などの特徴に注目し、候補間で相関をとることが認識するには有効であることが分かった。その結果、測定された画像から原子ステップとテラスを形状認識するため基本技術が確立した。
著者
森 悦朗
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

幻視はレビー小体型認知症(DLB),パーキンソン病(PD)においてよく認められる症候であるが,種々の幻視の中で顔の幻視が高頻度に生じる.顔の錯視は「心霊写真」のように時に健常者でもみられる現象だが,DLBでは高頻度に生じ,PDでもよく見られ,顔の幻視との関係が推測できる.顔の誤認はCapgras妄想が代表的で,DLBやADで時に見られる症候である.日常生活場面における幻視,錯視を臨床場面で再現する目的で錯視誘発課題(パレイドリア課題)を作成し,DLB,アルツハイマー病,健常高齢者を対象に12個の刺激を用いて,誘発された錯視の総数,および錯視を誘発した刺激数を指標として顔の錯視の出現と,その神経心理学的背景を検討した.健常高齢者では全く錯視は誘発されなかったが,12個の刺激に対して誘発錯視数および錯視誘発刺激率(平均±SD)は,DLB(9.4±3.7個,54.4±18.5%),PD(3.1±2.6個,18.7±15.2%), AD(1.1±1.0個,14.4±9.2%)であった.いずれの疾患 でも錯視内容は,動物 ,人物,物体の順であり(図2),動物,人物の錯視では約半数が「動物の顔」,「人物の顔」と顔に特定されていた.本課題における錯視の内容,およびDLBで錯視が誘発されやすい点から日常生活場面での錯視,幻視の類似性が示唆される.次いでPDにおける錯視の出現についても検討し,DLBほどではないが,ADと比較すると高頻度に出現することを確かめ,その神経基盤をFDG-PETを用いて検討し,視覚連合野のブドウ糖代謝低下と関連していることを見いだし,現在論文を準備している.顔の錯視が高頻度であることから錯視における顔の重要性,あるいは一般的に顔認知の特殊性が示唆され,顔領域以外の視覚連合野の機能低下が関与していることが示唆された.
著者
澤入 要仁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、二年間にわたって、19世紀中期のアメリカの詩と音楽の接点に光を当てて考察した。まず、平成17年度には、19世紀アメリカを代表する国民的詩人ヘンリー・ワズワース・ロングフェローと、同時代に活躍したコーラス・バンド、ハッチンソン・ファミリーとの関わりを中心に研究をおこなった。とくに、ハッチンソン・ファミリーがロングフェローの詩「イクセルシオ」にメロディを付してうたった歌がどのような歌であったのか分析した。その結果、歌「イクセルシオ」は、きわめて素朴な旋律の歌であって、「単調」な「詠唱」という評価もあったにもかかわらず、広く歓迎されていたことが分かった。すなわち19世紀中期には、メロディやリズムよりも詩を重視した歌が受け入れられていたのである。大衆詩という文学が広く受け入れられた当時は、音楽の分野でも詩が大きな位置を占めていたことが分かる。さらに平成18年度には、学生歌に注目し、学生歌と大衆詩との関係について考察した。とくに19世紀の中頃から20世紀初頭にかけて、ハーバード大学で人気のあった歌「ユパイディ」に焦点を合わせて研究した。「ユパイディ」は、同じくロングフェローの詩「イクセルシオ」を使った歌だった。原詩の「イクセルシオ(いや高く)」というリフレインを、「ユパイディ、ユパイダ」という、意味不明の剽軽なサビに置き換えていた。元来、この歌は、特定の同級生や教員を即興的にからかう歌だった。したがってつねに流動的な歌詞で歌われていたが、その詩を固定化したいときに使われたのが、詩「イクセルシオ」だった。この歌は、その後、イェール大学やプリンストン大学で、さらに南北戦争中には南軍でもうたわれるようになった。大衆詩は、まさに広く知られているが故に、口承的で流動的な大衆歌を固定化させるためにも利用されていたのである。
著者
大渕 憲一 佐藤 弘夫 三浦 秀一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

仏教、儒教、神道等の伝統的思想は慣習、習俗、処世訓として日本人の生活に深く浸透し、現代日本人の価値観にも影響を与えているとの仮定のもと、伝統的価値観を測定する質問紙尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討するとともに、日本と同じ東アジア文化圏に属する中国と韓国、それにこれとは異なる文化圏に属するアメリカにおいてこれを施行し、伝統的価値観の国際比較を試みた。その結果、この価値観が多様な側面を包含する多元性を持つものであること、東洋に固有のものではないこと、神道に類似の価値観が日本以外の国にも見られること、年代差は4カ国に共通で、概ね、年長者ほど伝統的価値観が強いことなどが見いだされた。
著者
新谷 尚弘 五味 勝也 藤田 翔貴 竹越 祐太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

酵母はパンの製造やアルコール発酵に用いられる微生物である。酵母は環境中にグルコースが存在すると、乳酸やピルビン酸の取込みを制限する。その機構の一つにモノカルボン酸輸送体Jen1のグルコース誘導性のエンドサイトーシスを介した分解(グルコース不活性化という)が挙げられる。Jen1のグルコース不活性化はRsp5-Rod1ユビキチンリガーゼ複合体によるユビキチン化が引き金となり起こる。私たちは、Jen1のC末端の20アミノ酸の領域がRsp5-Rod1複合体によって認識され、膜輸送体のグルコース不活性化を引き起こすのに十分であることを明らかにした。
著者
藤井 義明 半田 宏 加藤 茂明 石井 俊輔 鍋嶋 陽一 山本 雅之 岩渕 雅樹 梅園 和彦
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

平成13年度の取りまとめの期間を除く実質4年間に発表された論文数は900報になり、一論文当たりの平均インパクト係数は8.3で、数値の上からも本研究は遺伝子発現の研究領域に実質的な貢献を果たしたものと考えられる。研究はA)転写因子間の相互作用と機能発現の分子機構。B)転写因子の標的遺伝子及び生物作用の個体レベルでの解析の2つの柱のもとに行われ、総括班はこれらの2つの研究の連絡、調整及び研究成果の発表等を行なった。主な研究成果は次の通りである。基本転写因子TFllH、TFllEなどの複合体のサブユニット構造をリコンビナントタンパク質より再構成により確立したこと。転写伸長反応にも正負の調節機構があり、その調節因子群を遺伝子クローニング法によって明らかにし、それらの作用機構を解明したこと。転写共役因子については新しい共役因子MBF1、UTF1を発見し、これまで癌遺伝子として知られていたSkiが抑制的な転写共役因子として働くことを示した。また広範な転写因子の共役因子として働くCBPについてはさらにGLl3、AhR/Arnt、HlF-12、lRF3などにも共役因子として働くことやβ-カテニンと結合してPML複合体に局在することやCBPとP53の相互作用をβ-カテキンが阻害して、P53の転写活性を抑制することを示した。転写因子と結合して、その活性あるいはタンパク質の濃度を調節する因子としてHSP90他にKeap1を発見し、Nrf2r転写因子の調節に働くこと、そのKOマウスを作り、機能を詳細に検討した。また、こと、幹細胞の末分化状態の維持に抑制性の転写因子Hes5、Hes3などが働いていること、多数の転写因子の構造と機能が遺伝子クローニング及び培養細胞での発現や遺伝子欠失動物の作製によって明らかにされた。
著者
藤井 義明 萩原 正敏 加藤 茂明 審良 静男 久武 幸司 半田 宏 大熊 芳明 上田 均 箱嶋 敏雄 梅園 和彦
出版者
東北大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本計画研究班の研究課題は、転写因子も含めて転写因子間の相互作用が最終的に遺伝子発現としてどのようにアウトプットされるかというメカニズムを分子のレベルで解明することを主な目的としている。Preinitiation complexの構成成分であるTFllHの9つのsubunitsをリコンビナントDNAを用いて発現させ、再構成に成功し、各々のサブユニットの機能を検討する系が確立された。またこの系を用いてERCC3のヘリカーゼ活性が転写活性化のプロモーターエスケープの段階に重要であることを示した。転写伸長反応もDSlFとNELFの抑制とpTEFbとFACTの活性化系によって精密にコントロールされていることが明らかにされた。DSlFの一つサブユニットp160のC末端の変異はゼブラフィッシュでは神経の発達異常を引き起こすことが分かった。広範な転写因子の共役因子として働くcbpについては、さらにgi3,AhR/Arnt,HlF-1α,lRF3などの共役因子として働くことやβ-カテニンが阻害して,P53の転写活性を抑制することを示した。2ハイブリッド法によってMBFl,UTF1,P68/P72が各々転写因子FT2-F1,RAR,ERα,βの転写共役因子として働くことを明らかにし、その構造を決定した。ノックアウトマウスを作製することによってAhR,AhRR,STAT3などの機能解析を行なった。
著者
佐野 健太郎
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

計算性能の低下をもたらすメモリウォール問題を解決するために、可逆データ圧縮をリアルタイムに行うバンド幅圧縮ハードウェアを提案し、実応用問題に適用可能な基盤技術を創出した。数値データの連続性を利用した予測に基づく圧縮アルゴリズムと複数のデータストリームを扱うための符号化方式、およびそのハードウェアを設計した後に、FPGAによる実装を行った。ベンチマーク問題として格子ボルツマン法に基づく流体計算を用い、実際に動作する高性能ストリーム計算システムを構築した。計算途中データのDDR3メモリへの読書きを圧縮したところ、正しい計算が行えることと、データストリームの実効バンド幅を向上できることを確認できた。
著者
佐藤 英明 西森 克彦 竹家 達夫 眞鍋 昇 星野 由美 佐々田 比呂志 松本 浩道
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2004

1個体からの受精可能卵子の大量生産を目標として卵子の細胞分化・死滅の調節系の解明を行い、新規調節因子を同定するとともに、これを踏まえ受精能・体細胞初期化能高発現卵子生産などの技術を開発した。さらに、直径70μm未満のマウス卵胞卵子由来の産子や家畜ブタ体外成熟卵子をレシピエントとする体細胞ミニブタ作出に成功した。
著者
月浦 崇
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009

顔から受ける印象には大きく分けて2つの側面がある.ひとつは顔の外面的な印象である顔の魅力であり,もうひとつは顔から受ける内面的な印象である性格面の善悪である.これらの2つの側面からなる顔の印象は,顔の記憶に対して影響を与えることが心理学的研究から知られている.すなわち魅力的な顔はそうでない顔よりも記憶に残りやすく,また性格的に「悪い」印象をもつ顔はそうでない顔よりも記憶に残りやすい.しかしながら,このような顔の印象と顔の記憶との間の相互作用を担う神経基盤については,未だに十分に理解が進んでいない.そこで本研究では,(1)顔の魅力と顔の記憶,(2)顔の第一印象の「悪さ」と顔の記憶,の2側面を担う脳内機構を機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて検証を行った.まず,(1)「顔の魅力と顔の記憶」についての研究では,行動データとして魅力的な顔は中程度の魅力や魅力的でない顔よりも良く記憶されることが示され,その神経基盤として報酬系の一つである眼窩前頭皮質と記憶に重要な海馬との間の相互作用の重要性が示された.(2)「顔の第一印象の悪さと顔の記憶」についての研究では,行動データとして第一印象が悪い顔は中程度の印象の顔や良い印象の顔と比較してより良く記憶されることが示され,その神経基盤として痛みや罰の処理に関連する島皮質と海馬との間の相互作用の重要性が示された.以上のことから,顔から受ける外面的な印象と内面的な印象の違いによって顔の記憶は異なった影響を受け,その神経基盤として顔の印象を媒介する領域と記憶情報処理に重要な海馬との間の相互作用が重要であることが示唆された.
著者
佐藤 弘夫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究においては、石塔や金石文を資料として、普遍的で民族固有の感覚とみなされがちな遺骨の重視が、実はこの列島で展開した長い歴史の中でしだいに形成されたものであったことを明らかにした。遺骨に対してまったく関心を払うことがなく、遺骸を放置して省みなかった古代の人々。火葬骨を大切に霊場まで運んだ中世の人々。家の墓を作って骨を収め、定期的に墓参を繰り返した近世以降の人々。この三者に、死者や霊魂についての共通する観念を見出すことはきわめて困難である。それは、「日本人の死生観」という形で総括されてきたこれまでの通説が、根本的に見直される必要性があることを示すものにほかならないのである。
著者
山下 英明 石塚 陽
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

ブロック生産方式のコンセプトを取り入れた生産システムをモデル化し,取り組むべき問題を明確にし,その問題の解析方法を構築した.具体的な成果は以下の通り.1.工場見学 ブロック生産方式を採用しているいくつかの工場を見学することによって,システムのスループット,平均仕掛品在庫,単位時間あたりに要する作業員のためのコストが重要な要因であることが判明した.2.ブロック生産方式のモデル化 少人数の多能工が複数の工程からなるブロックを担当するブロック生産方式と,各作業員が仕掛品を持ってすべての工程を順番に訪れて一人で完成まで仕上げる一人一品生産方式は,効率的に多品種少量生産を行う方式として注目を浴びている.本研究では,これら両方の方式を特殊な場合として含む,より一般的なシステムを待ち行列モデルによってモデル化した。このモデルを解析することによって,ブロック生産方式や一人一品生産方式の設計時における構成要素の設定に関する定性的な方式を得ることができる.3.最適化問題の定式化 (1)一定値以上のスループットの制約のもとで,平均仕掛品在庫を最小にするように,作業員数一定のもとでブロックの構成と作業員の割り当てを決定する問題,および(2)一定値以上のスループットの制約のもとで,単位時間あたりの作業員と仕掛品在庫のコストを最小にするように,ブロックの構成と作業員の総数およびその割り当てを決定する問題を定式化した.4.解析方法の研究 上述の問題を解析するためには,従来の待ち行列モデルの解析手法では問題の解析が難しいと考えられる.これに対して,我々は最近提案されたサンプルパス最適化の研究を進め,この方法が幅広いモデルに対して有効であることを明らかにした.5.最適化問題の解析結果 本研究によって,スループットと平均仕掛品在庫の間にトレード・オフの関係があるだけでなく,加工時間の変動係数の値によってシステムの最適な構成が大きく影響を受けることが判明した.
著者
吉川 昇
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

近年、薄型テレビの出現により旧来のブラウン管は廃棄される傾向にある。ブラウン管用ファンネルガラスは鉛を含むため、廃棄には脱鉛が必要である。本研究はマイクロ波加熱を利用した鉛の迅速酸浸出を行い、ガラスの廃棄/再利用を可能にする事を目的とする。本研究ではマイクロ波印加鉛ガラスの酸浸出速度に関する基礎的研究と、大気系での大量処理の可能性を調べた。
著者
七谷 圭
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

Synechocystis sp.PCC6803は、比較的環境変化の大きい環境に適応して生育することができる。申請者は、Synechocystisの塩耐性獲得機構に関する研究を進める過程で、塩ストレスによってバイオフィルム形成が誘導されることを見出した。この現象は、バイオフィルム形成によって外部環境から隔離することで菌自身を保護していると推察された。そこで、シアノバクテリアのバイオフィルム生合成の分子メカニズムと塩耐性獲得機構を解明することを目的とした。1.バイオフィルム構成成分の分析、生合成酵素の探索:Synechocystis sp.PCC6803の形成するバイオフィルムを構成する多糖の分析を行った。80%EtOH抽出、アミラーゼ分解、KOH抽出、72%硫酸によるセルロース分解を行った後、硫酸フェノール法により全糖量を定量した。塩ストレス下では、エタノール80%EtOH画分、アミラーゼ画分において糖量が増加した。トリフルオロ酢酸で加水分解した後、産物の中性糖組成分析を行った。その結果、80%EtOH画分、アミラーゼ画分においてグルコース(Glc)が増加し、Glcがバイフィルムが主要な構成成分である可能性が示唆された。2.バイオフィルム形成を誘導する浸透圧センサー(Hik)の同定:バイオフィルム形成は塩ストレスによって誘導されることから、ヒスチジンキナーゼのバイオフィルム形成への関与を推定した。Synechocystis sp.PCC6803は、47のヒスチジンキナーゼを有する。申請者は、ヒスチジンキナーゼ破壊株の塩ストレス下でのバイオフィルム形成能を解析し、塩ストレスを感知しバイオフィルム形成を誘導するヒスチジンキナーゼの同定を試みた。その結果、破壊によりバイオフィルム形成量が増加する株と減少する株が得られ、正と負のレギュレーターの存在が示唆された。