著者
中村 圭祐
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

光線力学療法を応用した殺菌技術により非常に効果的に黄色ブドウ球菌を殺菌できることを実証した。さらに光線力学療法において生成される一重項酸素の定量法を確立し、一重項酸素生成量と殺菌作用の強さの相関性を検証した。一重項酸素測定には環状アミンを用いた電子スピン共鳴法の応用が適していることを実証し、光照射時間や光感受性物資の濃度に依存して一重項酸素が生成されることを示した。
著者
菅野 新一郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

我々はDNA修復機構であるNHEJに関わる新規DNA修復酵素PALFの発見からCYR domainを発見した。このCYR domainをもつ遺伝子を調べたところショウジョウバエで未知タンパク質を発見し、そのヒトオルソログ(APNX)を発見した。ショウジョウバエとヒトオルソログタンパク質がDNA修復酵素である可能性を前提にこれらのタンパク質の活性を調べた。その結果AP endonucleaseの活性をつこと、また、アセチル基転移酵素活性の二つの活性をもつ稀なdual fanction enzymeであることがわかった。
著者
秋山 正幸 大屋 真
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

広視野補償光学を実現するトモグラフィー波面推定の新しいアルゴリズムとして、複タイムステップ・トモグラフィック波面推定の手法を、すばる望遠鏡の持込み装置である多天体補償光学実証機 RAVEN を用いて実証した。RAVEN の波面センサーの解析により、各高さの大気揺らぎが風向きにより時間と共に移動していること、相関のピークの強度は100ms程度までは強く、この時間間隔では大気揺らぎの各層が「凍結して移動している」と見なせることがわかり、複タイムステップ・トモグラフィック波面推定の有効性が実証された。
著者
黒石 智誠 菅原 俊二 田中 志典
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ビオチンは水様性ビタミンB群に属し、細胞内において5種類のカルボキシラーゼの補酵素として機能する。これまでに、アトピー性皮膚炎患者における血清中ビオチン濃度の低下が報告されている。本研究では、マウスモデルを用いて、アトピー性皮膚炎発症に対するビオチン摂取量の影響を解析したが、その影響は認められなかった。一方、ビオチン欠乏マウスでは、ビオチン充足マウスに比較して肝臓中のアミノ酸(メチオニン、システインなど)含有量が低下していた。さらに、ビオチン欠乏に伴う抗酸化能の低下も認められた。
著者
平原 聡
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

1、研究の目的携帯電話による地震観測のデータ伝送を可能として、地理的制約を少なくする。大地震発生直後から本震に近い場所にオンラインの地震観測点を設置することが可能となり、重要な観測データを即時に解析可能になると期待される。また、ソーラーパネルによる太陽光発電を可能として、保守作業の負担を軽減する。大地震の発生により道路が寸断されて保守が実施できない場所において、メンテナンスフリーで長期間の地震観測が可能になると期待される。さらに、月額約6千円の定額制料金プランを利用可能として、低料金での連続観測を可能とする。また、複数の携帯電話網を利用可能として、通信エリアの拡大とアクセス回線の冗長化を図る。2.研究の実績2-1.携帯電話データ伝送システムの開発組み込み用小型ボードコンピュータをベースとして、下記手順でデータ伝送装置を開発した。(1)携帯電話データ通信モジュールのハードウェアを認識させるための改修を行う。(2)リモートログインに必要なソフトウェア機能を追加する。(3)データロガー内部の観測データをデータ収集サーバへ送信するプログラムを開発する。(4)データ伝送装置と携帯電話アンテナの『屋外設置用ケース』を設計・製作する。(5)DC 12Vの電源で駆動するための『外部変圧回路』を設計・製作する。(6)鉛蓄電池とソーラーパネルを充放電コントローラに接続して、データ伝送装置とデータロガーに電源を供給して、屋外での連続観測を1ヶ月以上実施する。(7)受信したパケットの時間帯別の欠落状況を調査して、データ伝送装置の設定を最適化する。2-2.研究成果連続観測のために常時接続を行っていると、一定時間が経過すると携帯電話会社によって通信を切断されることが分かっていた。そのため、約12時間に1回の頻度で再接続する必要がある。既製品の携帯電話対応ルータでは再接続に対応できなかった。本研究の臨時地震観測点用のデータ伝送装置では、タイマー機能を搭載することで再接続を自動化し、さらに商用電源に頼らないシステムとすることで、機動性を向上できた。
著者
三浦 一朗
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

史学史ないし史学思想史において従来空白期間として扱われてきた近世中期について、読本を視座として、歴史観より外延を広げた歴史意識という概念に基づいて再検討し、そこに、歴史や記録に残らない庶民の過酷な生に目を向けようとしたり、人間の生をめぐる理不尽さや不条理さを歴史の中に見出したりするような関心のあり方が窺えることを明らかにした。本研究ではその一端を示したに過ぎないが、こうした関心のあり方が、近世歴史意識に対する一般的な認識としてある鑑戒史観や皇国史観という枠に収まらないものであることは明らかである。本研究の成果は、そうした近世歴史意識に対する従来の見方を相対化し、修正するための第一歩として位置づけられる。
著者
佐藤 英明 三木 敬三郎 久和 茂 内藤 邦彦 塩田 邦郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

胚性幹細胞を介した遺伝子導入による形質転換動物の作出法は、標的遺伝子改変ができることなどから、従来の前核へのマイクロインジェクション法(染色体のどの位置に導入遺伝子が挿入するかコントロールすることがむずかしい)に比べてきわめて有効であり、方法の確立が望まれているか、ブタおにいて研究を進めるためには胚性幹細胞、特に生殖系列キメラを形成する肺性幹細胞の樹立が必要である。本研究では生殖系列キメラを形成する胚性幹細胞の樹立を目的として実験を行ったが、成果は次の通りである。(1)卵母細胞の体外成熟、体外受精、体外発生により、成熟未受精卵、胚盤胞期胚を安定して作出する培養敬を開発した。(2)体外で作出した胚盤胞期胚からマウスの胚性幹細胞と形態の一致する多分化能をもつ細胞株を樹立した。(3)樹立した細胞株は脱出胚盤胞に接着させるとキメラを形成した。(4)胚性幹細胞の維持に必要な生理活性物質(白血病抑制因子誘導体など)を同定した。(5)胚性幹細胞を除核未受精卵に移植する方法を開発し、再構築胚の培養法を考案した。
著者
佐藤 英明 佐々田 比呂志 柏崎 直巳 梅津 元昭 星 宏良 舘 鄰 松本 浩道
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

1)トランスジェニックブタ作出の基礎技術、すなわち卵成熟・体外受精・受精卵の体外発生、核移植、胚凍結、胚移植などの技術を確立した。特に体外で作出した脱出胚盤胞がフィーダー細胞に接着して増殖し、胚由来細胞のコロニーを形成することを明らかにした。作製した胚由来細胞は凍結保存している。また、ブタ体外成熟卵子から核を除く顕微操作法を確立した。2)ブタ卵母細胞において減数分裂の再開始においてmitogen-activated protein kinase(MAPK)が減数分裂再開始誘起シグナルを細胞質から核に移行させる仲介作用をもつことを明らかにした。3)ヒアルロン酸の体外生産ブタ胚の発生への影響は卵の成熟・受精における条件によりその影響が異なることを明らかにした。4)脱出胚盤胞から作成したブタ胚由来細胞は長期間体外で維持することが可能で、除核未受精卵への核移植により脱出胚盤胞期胚まで発生した。5)緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を含むベクターを作成し、報告者が開発した胚由来細胞に導入し、導入細胞を選別する方法を開発した。GFP導入細胞は現在、凍結保存している。6)GFP発現胚由来細胞を除核成熟卵子に導入し、融合させ、活性化させる条件を明らかにした。現在、脱出胚盤胞期胚まで発生させることに成功している。
著者
堀江 佐知子 小玉 哲也 小野 栄夫 森 士朗
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は、ナノバブルと超音波を用いた新しいワクチン接種法のためのドラッグデリバリーシステムを開発し、これまで治療が困難であった感染症などの予防や治療に貢献することである。これまで我々は、ナノバブルの体内分布の超音波画像でのモニタリングや生体細胞への遺伝子導入効率、さらには、超音波照射とナノバブル破砕時の組織障害の程度、それにともなう炎症性細胞浸潤の程度などを検討した。その結果、静脈注射によりナノバブルがリンパ節に流入し、リンパ節内の樹状細胞に抗原タンパクや遺伝子の導入が可能であること、ナノバブル破砕時の超音波の強さを調節することにより、照射部に適度な炎症性細胞の集簇を促し、ナノバブル破砕によるアジュバント効果が期待できること、ナノバブル表層への抗体の組み込みが可能なこと、バブル内への抗原タンパクや遺伝子、あるいはアジュバント分子の封入が可能であることなど、本研究を推進する上で極めて重要な知見を得ることができた。しかし、ナノバブルと超音波を用いた分子導入法においては、導入効率の低さが問題になる可能性が考えられた。そこで、1回のトランスフェクションで100日以上もタンパク発現が可能な長期発現プラスミドDNAをナノバブルと超音波を用いて導入するシステムを開発し、従来の分子導入法の導入効率の低さの問題を解決することが可能となった。しかしその一方で、生体内での持続的なウイルス抗原の産生は、高グロブリン血症や免疫複合体病等の誘発の可能性も考えられることから、今後は、タンパク発現量の増大のみならず発現タンパクの制御法の検討も必要かと思われる。
著者
清水 翔太郎
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、近世大名家の儀礼、藩主家族構成員の役割、大名家同士の交際に注目し、政治権力世襲の体制を支えた仕組みやジェンダー構造を明らかにすることを目的とした。本年度は、前年度十分に検討することができなかった近世前期の大名家の婚姻成立過程の分析をまとめ、中・後期の事例を含め、その変遷を通時的に解明することができた。この成果は国史談話会大会で口頭報告し、前期の事例については学術雑誌に投稿することができた。なお、昨年度口頭報告を行った幼少相続時の「看抱」の刊行に関する論考は、「近世大名家における「看抱」」(『歴史』第126輯)として採録が決定している。また、幕末・維新期の動向についても分析を進める予定で、秋田県公文書館において史料の調査・収集を行った。その分析の核となる「御日記」について、史料学的な分析をする予定であったが、想像以上に多くの量が残されていたため、すべて収集することができず、また類似した「申伝帳」という史料が残されており、それも合わせて分析する必要があることから断念せざるを得なかった。幕末・維新期のこうした史料が多く残されているのは、佐竹家に限ったことではなく、他家の史料の残存状況を把握するなど、史料学的な分析を進めた上で近世大名家と大名華族家の「家」の問題を連続した視点で分析する必要があることがわかった。最終年度であった本年度は、これまでの成果をまとめ、ロシア、ノボシビルスク国立大学にて口頭報告し、研究成果を海外に発信することができた。
著者
小倉 協三 小畑 充生 古山 種俊
出版者
東北大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

中等度好熱性細菌B.stearothermophilusのファルネシルニリン酸(FPP)合成酵素については 1.部位特異的変異の導入 2.耐熱性変異型FPP合成酵素の大腸菌内での大量産生 3.熱処理と2段階のクロマトグラフィーによる精製の系を確立した。この系を用いてプレニルトランスフェラーゼに特徴的な7つの保存領域ミ内のアノ酸について変異型酵素を作成し、それらの触媒機能の変化を精査し、新規なC-C結合形成反応の触媒機能獲得の有無を調べた。領域VIIに保存されているArg-295をValに置換した変異型酵素R295Vの酵素活性はほとんど変化しなかったが、非アリル性基質イソペンテニルニリン酸(IPP)に対するKm値が野生型のFPP合成酵素のそれの約1.5倍に増大した。同様の変化がC末端のHisをLeuに換えたH297Lでも認められた。この変化はプライマー基質をジメチルアリルニリン酸(DMAPP)にした場合さらに顕著になり、変異体のKm値は約3倍となった。さらにCys-289をPheに換えたC289Fでは10倍になった。領域VIに保存さているモチーフDDXXDのAspの変異体、D224A、D224E、D-2251、D228Aはいずれも触媒活性が激減したが、反応速度論的解析では、基質に対するKm値はIPP、GPPのいずれに対しても大きな変化はなかった。D288Aのみが例外で、IPPに対するKm値が野生型の10倍にもなった。領域VIの下流に保存されているLys-238の変異体酵素K238AおよびK238Rはいずれも触媒活性には大きな変化はなかったが、IPPに対するKm値がそれぞれ4.2倍5.1倍になった。これらの変異体酵素はいずれもIPPに対するKm値が増大しているのでホモアリル性の基質に対する特異性が特に変化している可能性がある。これらの変異体酵素の人工基質ホモログに対する基質特異性の精査は今後の課題である。
著者
平野 伸夫
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

温暖化対策の一つとして考えられているCO_2の地中貯留に関連して,秋田県奥奥八九郎温泉を対象に,現在でも活発に生じている炭酸カルシウム堆積物の 1)微生物代謝による生成2)溶液化学反応による生成 について検討した.その結果,1)に関しては微生物の存在は認められたものの,それが炭酸カルシウムの生成に結びついている確証は得られなかったが,2)に関しては温泉水中のFeイオンが炭酸カルシウムの生成に影響をおよぼしている可能性を見いだした.このFeおよび炭酸カルシウムに必要なCaはと地下の安山岩-玄武岩から供給されていると考えられ,このような岩質の場にCO_2貯留をおこなえば岩石化が促進される可能性がある.
著者
MATSUZAKI Kenji
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

本年度では本近海沖(北日本、南日本)の海洋コアのデータ出しが終了し、約200万年間の黒潮暖流と親潮の流れの方向、強さ、そして当時の古水温の復元ができました。約200万年から100万年前の時代では南日本の結果によりますと黒潮の影響が弱く全体的に南日本から北日本までは寒い気候を示していることを復元しました。100万年前からは黒潮暖流の強さがとても強くなったことが本研究で分かりました。100万年前から現在までは黒潮の影響はさらに強くなり日本列島に温暖な気候がもたらされたことが本研究で復元しました。そのなかで約30万年前からは北日本のデータによりますと、親潮の影響が強くなったことを復元しました。北日本ですと30万年前からは黒潮と強い関係を持っている津軽暖流は親潮と同時に影響が強くなったことが分かりました。この設定は湧昇な海洋設定を作り地方に高い生産性の海水になったことを復元しました。現在の北日本の海洋設定は約30万年前につくられたことと考えています。黒潮が約100万前から影響が強くなり少しずつ現在の設定になったことを復元しました。本研究で復元しました古海洋復元、とくに暖流の影響の強さの変化は地球が太陽からもらうエネルギー、そして北半球の氷床の面積が広がったことによって行った環境変動ではないかと現在は考えています。今後の研究の課題にすることを考えています。現在は結果を3つの国際ジャーナルに投稿中です。一つはレフェリーの結果待ちです。
著者
滝澤 紗矢子
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

第一に、Oliver Wendell Holmes, Jr. "Common Law" 第6講 'Possession'の中で、ホームズがどのように19世紀後半のアメリカで隆盛していた自然権的思考と対峙し、私的取引に対して競争政策の観点から政府規制を行う道を切り開いたかを、具体的に検討した。第二に、ホームズが、裁判官として、どのように自らの法思想を実現していったのかを、Dr. Miles Medical Co. v. John D. Park & Sons Co., 220 U.S. 373 (1911) におけるホームズ反対意見を通じて具体的に検討し、その今日的意義を確認した。
著者
小笠原 康悦 石井 智徳
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

自己免疫疾患は、遺伝的要因、環境要因、時間要因によって引き起こされると考えられる。しかし、環境要因や時間要因を含む診断方法は確立されていない。NK細胞は、自然免疫系の細胞群として知られている。NK細胞は、腫瘍、感染防御の除去の観点から、細胞表面分子と受容体が検討されてきた。したがって、今まで、NK受容体およびNK細胞は自己免疫疾患に関与しているかどうかは不明であった。本研究では、NKレセプターおよびNK細胞が自己免疫疾患に関与するというオリジナルのアイデアに基づいて実験を行った。私たちの目的は、全身性エリテマトーデス(SLE)やI型糖尿病などの自己免疫疾患に対する診断指標のための新たなバイオマーカーを探索することであった。本研究では、自己免疫疾患モデルマウスにおいて、正常組織でほとんど発現しないNKG2Dリガンドが異常発現することを見出した。また、自己反応性T細胞がNKG2D分子を異常に発現していた。したがって、これらの結果は、NKG2Dリガンドは、I型糖尿病の新しいバイオマーカーとして利用可能であることを示唆している
著者
福村 裕史 西尾 悟 福村 裕史 KUDRYASHOV Igor
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、ナノ領域の振動スペクトルを空間選択的に得ることを目的とし、測定システムの開発を行うと同時に、システムの動作確認のための分子系の開発も行った。測定システムは、走査型プローブ顕微鏡とラマン分光計を組み合わせたものである。ラマン励起は488nmの半導体レーザーにより行い、検出器には冷却型電荷結合型素子を用いた。走査型プローブは、白金イリジウム合金ワイヤーを機械的に先鋭化させ、その表面に化学的還元反応により銀をめっきして作製した。プローブ先端の銀粒子の大きさは電子顕微鏡観察により100-300nmであることを確認した。空間分解能を調べる標準試料を検討するため、レーザーを用いたナノ構造体作製に取り組んだ。最初にペリレン誘導体に355nmのパルスレーザーを照射しナノ構造体の作製を試みたが、ポリインなどの副生成物が生成することが明らかとなった。チオフェン誘導体を用いた場合には、光重合反応によって空間選択的高分子化が起こることを確認した。これを利用して導電性ポリチオフェンからなるグレーティング構造体を355nmのレーザー光の干渉パターン照射により作製した。最適条件では線幅約2μm、間隔約3μm、高さ平均200nm程度の格子ができた。この構造体について、表面増強ラマンスペクトルの測定を行った。チオフェン環の伸縮に帰属される1400-1550cm^<-1>の平均シグナル強度について10x10点のスペクトル強度マッピングを行ったところ、グレーティング構造を明瞭に確認できた。最終的に50nm程度の分解能があるということを示唆するデータが得られた。
著者
米田 忠弘 道祖尾 恭之 高岡 毅
出版者
東北大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

分子の組織化とそれによる機能創製の土台となる表面の設計と計測・物性制御が目標とし、特に分子スピンと分子電流の相互作用の学理探求と、その応用展開を目指し研究を行った。成果として、磁性分子における単一スピン物性評価手法として、近藤共鳴を用いた検出手法を開発、脱水素化による2層ポルフィリン・テルビウム錯体を用いた単一分子磁石特性のON/OFFに成功し、また銅コロール分子のスピンの空間分布を可視化した。原子レベルで磁気特性を測定可能なスピン偏極走査トンネル顕微鏡(SP-STM)の手法を開発、ナノ磁性材料に関する最も重要な特性である磁気異方性エネルギー(MAE)をナノ構造と同時に可視化・測定に成功した。
著者
石田 清仁 大沼 郁雄 貝沼 亮介 及川 勝成 山内 清 須藤 祐司 貝沼 亮介 及川 勝成 山内 清 須藤 祐司
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

Co基合金の状態図について実験ならびにCalphad法による熱力学解析を行い、Co基熱力学・状態図データベースを世界に先駆けて構築した。このデータベースを基に新しいL1_2化合物γ' 相Co_3(Al, W)を利用したCo基スーパーアロイの合金設計を行い、800℃で10万時間のクリープ推定強度が100MPa以上を期待できる鍛造用合金を開発し、また鋳造合金の応用としてFSW(摩擦撹拌接合)用ツールに適用し、商品化に成功した。また磁性材料としてCo基磁気材料としてCo-W基合金薄膜とCo基ホイスラー合金が磁気記録材およびスピントロニクスとして有望である事を示した。さらに生体材料としてCo-Al基合金のγ (fcc)/β (B2)層状組織を利用したポーラス化を行ない、そのための最適組成、熱処理条件を明らかにした。
著者
熊谷 幸博
出版者
東北大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,河川水生昆虫の遺伝子レベルの生物多様性を低下させている環境因子を解明するために,膨大なDNA塩基配列の中で環境選択が起きている領域(遺伝子座)を検索することである。研究方法として,まず宮城県の6水系(名取川水系等)の源流から下流まで分布する計62地点の主要な水生昆虫4種(ウルマーシマトビケラ,ヒゲナガカワトビケラ,シロズシマトビケラ,フタスジモンカゲロウ)のDNAサンプルを得た。そして,個体間の遺伝的変異の大きさを定量化するAFLP法を用いて計1793個体のDNA多型分析を実施して129-473遺伝子座/種をジェノタイピングした。そして,ソフトウェアBayeScan等による遺伝シミュレーション解析に基づき,環境選択が働かない(中立)仮定下で出現する集団遺伝構造を確率論的に予測した。このシミュレーションでは,まずランダム予測を繰り返し,中立下における遺伝的分化係数Fstの理論出現分布を導く。そして,上記AFLP分析によるFstの観測値を,この理論分布の95%パーセンタイル値よりも極端に大きなFstを示したDNA領域を環境選択的領域として決定する。通常,環境選択を受けた領域の遺伝的分化は中立領域よりも大きくなる。以上の解析の結果,7-23遺伝子座/種が環境選択を受けていることを突き止めた。現地調査等で得た環境データ(標高,流速,BODや栄養塩類等の各種水質,河床材料,GISに基づく周辺土地利用状態等)とこれら環境選択遺伝子座の相関分析の結果から,ウルマーシマトビケラとヒゲナガカワトビケラは標高,シロズシマトビケラは河川水中クロロフィルa濃度,フタスジモンカゲロウはアンモニウム性窒素濃度が最も強く遺伝的選択を起こしている環境因子であることを推定した。