著者
湯上 浩雄 齋 均 金森 義明 佐多 教子 圓山 重直
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

我々は、熱光起電(Thermo-Photo-Voltaic : TPV)発電に関する研究を行っていく過程で、フォトニック結晶と類似の表面ナノ構造により熱放射スペクトルが制御できる可能性が有ることを見出した。本研究では、この量子共鳴効果を用いた熱放射スペックトル制御機能の発現原理の解明と、TPV以外の熱工学応用分野への適応性に関して研究を行う。本研究では,熱放射スペクトルの制御を行うことにより,より高効率な熱利用システムを構築するとともに、作製したナノ構造エミッタの熱・光学特性を評価し、機能性発現原理と応用について考察する。前年度行った、Maxwell方程式の厳密解を求めるRigorous Coupled-Wave Analysis(RCWA)法に基づいた解析プログラムコードによる、最適な微細構造の決定、微細領域の放射スペクトルを測定するための放射測定装置の設計と製作に引き続き、以下の研究を行った。・可視領域の輻射スペクトルを選択的に放射する表面ナノ構造体を高融点金属に作製し、高温耐性を有する構造を実現するために、単結晶タングステン金属を用いて表面微細構造を製作し、1400Kにおいても安定な構造を得ることができた。・実際の試料の製作に当たっては製作誤差が不可避であり、それを考慮して改めて設計を行い、周期1.0-1.2μmの試料を作製した。これにより可視〜2.0μmの放射率が増大し、波長特性が改善された。・開発したRCW法に基づく数値解析と、微細構造のパラメータを変化させた試料の放射特性の比較から、今回得られた熱放射特性の変化は、主としてマイクロキャビティ効果に起因することが実験的に示された。
著者
中井 未生 北村 勝朗
出版者
東北大学
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.105-108, 2003-03

Sloboda等の研究により、音楽表現能力は獲得可能な能力であることが明らかにされている(Sloboda,1996)。本研究の目的は、指導者の表現指導観と指導行動の分析を通じて、表現指導構造を解明することである。2人のフィギュアスケートコーチと、3人のヴァイオリン指導者を対象とし、インタビューと指導場面の観察を行った。彼らの選定基準は次の通りである。1)指導者経験が10年以上、2)専門家集団によって優秀な指導者であると評価されていること、3)優秀な演奏家や選手を育てていること、および4)ヴァイオリンの場合、指導者自身も演奏家であること。深層的インタビューは各指導者がスポーツや音楽の表現についてどのように考えているかを探るために行った。また、組織的行動観察は指導行動を明らかにすることを目的として行われた。その結果、表現指導はFormling(生徒のイメージを形成する段階)、Performing(そのイメージを技術によって表現する段階)、そしてDeveloping(フィードバックによってさらに発展させる段階)の3要素から構成されていることが明らかになった。指導者は特にFormingで生徒が自ら具体的なイメージを持つために、単に自分のイメージを教えるのではなく、自分のイメージに基づいたアドバイスをすることを目指していた。そのために指導者は、比ゆ的な言葉と身振りを多く用いていた。
著者
安元 健 KASPAR H.F. 佐竹 真幸 大島 康克
出版者
東北大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究ではニュージーランドで発生した(1)神経性貝毒(2)カキの新奇毒成分(3)麻痺性貝毒の3種の貝毒を対象として情報の交換、試料の収集、原因毒の解明についての共同研究を実施した。研究実績の概要は下記の通りである。1。神経性貝毒1992年12月から1993年の1月にかけて発生した食中毒について、疫学調査、発生プランクトンの種類、及び毒の薬理作用についての予備試験結果から神経性貝毒であろうと推定し、原因毒の単離・構造決定を実施した。共同研究者の協力により約270kgのイガイ中腸腺を入手した。原因プランクトンとしてはGymnodinium breveまたはその近似種が示唆されていた。本種はブレベトキシン類を生産することが知られているが、イガイからは既知のブレベトキシン類は検出されなかった。代わってブレベトキシンの新奇類縁体3成分が単離された。成分1はC_<53>H_<79>NO_<17>S(MW:1033)の分子式を有し、ジアステレオマ-4成分の混合物と推定された。成分2では42位炭素がカルボキシル基に酸化され、さらにD環が開環しており、新たに生じた10位の水酸基に脂肪酸がエステル結合していると推定された。成分3はブレベトキシンBの基本骨格を保持し、側鎖に修飾を受けた新奇物質と推定された。現在立体配置を含めた構造の確認を進めている。成分1と3ではマウス致死毒性およびNaチャンネル活性化作用が確認された。2。カキの新奇毒成分1993年に南島南端のFoveaux海峡周辺でカキが毒化した。原因プランクトンはGymnodinium cf.mikimotoiと推定された。毒化したカキの試料約60kgを入手し、その30kgをアセトンで抽出して原因毒の単離・精製を行った。その結果、原因毒は分子式C_<32>H_<45>NO_4(MW:507)を有する新奇イミンであることを確認したのでジムノジミン(gymnodimin)と命名した。ジムノジミンは分子内に16員の大きな炭素環、6員環イミン、ブテノリド環を含む特異な構造を有する。既に平面構造を確定し、現在は絶対構造の確認を目指して誘導体の調製を行っている。ジムノジミンのマウス腹腔内投与による最少致死量は450μg/kgを示した。小型淡水魚のアカヒレを用いた魚毒性試験で求めた最少致死濃度は0.10ppm(20nM)であり、魚類に対して強力な毒性を示すことが明らかになった。細胞毒性や溶血性は認められず、培養細胞を用いたNaチャンネル活性試験でも顕著な活性は検出されなかった。共同研究者から提供を受けたG.cf.mikimotoiを培養し、その抽出物をLC/MSで分析したところジムノジミンが検出され、本種が毒の起源であることが確認された。3。麻痺性貝毒麻痺性貝毒を生産する渦鞭毛藻としてはAlexandrium属、Gymnodinium属、及びPyrodinium属が知られているが、ニュージーランドではA.minutum及びA.ostenferdiiの出現が確認されている。同国内で採集されたA.minutumの1株及び異なる地域で採集されたA.ostenferdiiの5株について、培養を行い毒生産能の確認及び毒組成の分析を行った。その結果、A.ostenferdiiの1株は無毒であり、この無毒株も含めて5タイプに区別され、多様な毒組成を示した。同国内のA.minutumはほぼ同じ組成を示したが、著量のサキシトキシンとネオサキシトキシンを生産する点に特徴が見られた。
著者
大塚 康夫 王 野 庄司 一夫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、二酸化炭素を酸化剤として用いて、天然ガスの主成分であるメタンを、エタンならびにその二次的分解生成物であるエチレンに、低温で選択的に直接転換する方法の開発を目指した。さまざまなランタナイド酸化物を触媒とし、固定床石英製反応器中でCH_4とCO_2の反応を行ったところ、プラセオジムやテルビウムの酸化物上では、CH_4からC_2H_6への選択的変換が450〜650℃の低温で極めて速やかに進行することを見いだした。W/Fの増加にともない、C_2H_6収率は増大し最大で8C-mol%に達したが、触媒活性はいずれも反応時間の経過とともに緩やかに低下した。これらの酸化物は上記の反応温度域では容易に酸素を放出するので、その過程で生成した格子欠陥が反応に関与しているものと推論される。次ぎに、耐久性のある高性能複合触媒の開発を目的として、酸化還元能を持つCe、Cr、またはMnの酸化物粉末を、塩基性のCaOを与えるCa硝酸塩水溶液に含浸して焼成したところ、いずれの二元系酸化物触媒も、C_2生成に対して相乗効果を示すことを見いだした。C_2炭化水素の選択率と収率はともにCO_2分圧の上昇に従い増加し、前者は70kPaの分圧で65〜75%に達した。これらの3種の触媒は、ガス流通時間が8〜10hにおいても、安定な性能を示した。TPD、XRD、XPSを用いる触媒解析の結果より、CO_2はまずCa^<2+>サイトに吸着し、吸着CO_2は隣接するCe^<3+>、Cr^<3+>またはMn^<2+>のサイトで活性化されて表面酸素種を与え、この化学種がC_2炭化水素の選択的生成の酸化剤として機能することが明らかとなった。本研究で得られた成果は、多量のCO_2を含む低品位天然ガスの直接転換利用プロセスの発展に貢献するものと期待される。
著者
渡辺 孝男
出版者
東北大学
雑誌
環境科学特別研究
巻号頁・発行日
1985

仙台市では冬季(12月-3月)にスパイクタイヤの使用によって道路粉塵が多量に発生し、ことに都心部での汚染が著明で、環境問題となっている。本研究は仙台市内および対照地区である田尻町下より得たハトの肺、高度道路粉塵汚染空気中で飼育したラットの肺を対象にSi.Al.Ti.Pb.Ca等道路粉塵関連の最素を中心に、環境粉塵濃度と吸入量との対応、生体反応を観察し、長期人体影響の予測を試みた。1)土鳩による道路粉塵曝露調査;1984年3月と1985年2月に捕獲した曝露群と対照群の合計120羽の土鳩の肺の元素分析の結果、曝露群に有意に高値を示すのは、Al,Pb,Ti,Caの4元素であり(P<0.01)、また 遊離珪酸と相関するSi濃度も同様に高い傾向を認めた(P=0.06)。曝露群の肺中の各元素濃度の相互関係では、Si,Ti,Alの3元素間と、Ti,Al,Fe,Cdの4元素間では、相互に有意な相関関係を認めた。以上の所見は、道路粉塵曝露による、Si,Al,Ti,Ca,Pb等の肺内への侵入・蓄積を示す。また、道路粉塵の長期慢性曝露の生体影響の観察に、土鳩による生体学的モニタリングの有用性が明らかとなった。2)動物曝露実験による道路粉塵の生体影響; ラットを用いて、冬季間(12月-3月)の道路粉塵曝露の結果、曝露群ラットの肺中元素濃度が対照群より高値を示したのは、Al,Siの2元素であった。なお、ラットの肺中元素濃度は土鳩のそれに比してかなり低レベルであった。道路粉塵曝露による生体影響では、曝露群で若令期の体重増加の抑制傾向を認めた。しかし、加令とともにその差は小さくなり、曝露中止後はその抑制傾向を回復し、曝露群と対照群、非曝露群との間で差を認めない。臓器重量および一般血液、血清生化学性状では、3群間に特定の有意な変動を認めない。なおラットの道路粉塵曝露実験は、1年1期間の短期間であり、道路粉塵の生体への慢性影響の観察には、さらに長期の継続的道路粉塵曝露実験が必要かつ重要である。
著者
芳賀 満 岡田 文男 内田 俊秀 エドヴァルド ルトヴェラゼ ジャンガル イリヤソフ
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

地中海文明、イラン文明、インド文明と中国文明が出会う中央アジアにおいて、特にアレクサンドロス大王遠征の実証的研究を目的として、バクトリア地方のアム河河畔のギリシア・クシャン系の都市カンピール・テパを発掘し、その遺構や遺物から前4世紀から後2世紀までの同都市の変遷を解明した。ギリシアの神々ディオニュソスとアリアドネが表されたテラコッタ製遺物からは、この地までディオニュソス教が伝播しその信者が存在したこと、図像からはギリシア文明とインド文明が融合していることを明らかにした。
著者
黒崎 輝
出版者
東北大学
雑誌
法学 (ISSN:03855082)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.94-130, 2000-04
著者
石幡 直樹
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

フェミニズムの鼻祖とされるウルストンクラフトのテクストから、「進歩」を共通項として成立する国家と女性の類似性を抽出して、その意味と相互の影響関係を分析した。未開状態から文明社会への「進歩」は、豊かで不安のない生活と高度な精神活動による文化を生み出す。しかし、『北欧紀行』に見られるように、スウェーデンやデンマークの自然と接したことで、彼女は、単純な進歩史観には疑問を呈するようになる。彼女の逡巡は、近代国家の成立と自らの女性としての表象とを重ね合わせつつ、「進歩」の功罪を問い直す懐の深い思索を重ねたことの証であり、ラディカルな女権論者としてのウルストンクラフト像の別な側面を示している。
著者
西山 学 金山 喜則
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

イチゴのように,同一種内で短日性と長日性の系統が利用されている植物は,生産上および学術上,貴重である.本研究では,2倍体のワイルドストロベリーをイチゴ属のモデル植物として供試した.四季成り性の系統を供試し,自家受粉や交雑して得られた実生の中には長日条件で開花に至った個体があり,これらの個体は四季成り性である可能性が示唆された.
著者
小口 理一
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

本研究では、2次元クロロフィル蛍光装置を利用し、光阻害耐性に変異を持つ植物の探索を目的とした。薬剤処理で変異を誘発した個体とcontrolの野生型とを、2次元でのクロロフィル蛍光が測定可能なクロロフィル蛍光測定装置を用いて比較することで、光阻害の程度が有意に野生型と異なるものを探索した。これまでに約7000個体で、スクリーニングを行い、118個体の変異体候補が探索されてきた。この得られた変異体候補を用いて、詳細な形質評価を行う事で、どのような遺伝子が光阻害耐性に関わっているのかを明らかにし、光阻害および光防御のメカニズムをより詳細に明らかにして行く事ができると考える。
著者
亀山 充隆
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

細粒度ダイナミックリコンフィギャラブルVLSIの小型化,高性能化,低電力化のため,多値Xネット,マイクロパケット転送方式,多値電流モード回路技術,不揮発ロジックなどを駆使したアーキテクチャを検討した.これにより,メモリ・演算部の転送に伴う遅延や消費電力の減少やコンフィグレーション/コントロールメモリサイズの減少を達成することができた.さらに,より少ないハードウェアリソースにより任意の論理関数を実現でき,マルチプレクサを用いたラッチ機能を活用することにより記憶要素としても動作できるという特長を有する,2入力マルチプレクサを構成要素とする新しいセル構成も提案することができた.
著者
荻原 理 神崎 繁 納富 信留 FERRARI Giovanni BRISSON Luc
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

G. Ferrari, S. Obdrzalekを招き、東北大学にてシンポジウム「プラトンの神話」を開催した。『国家』第10巻の「エルの神話」における<あの世での、これから生きる生の選択>についての英語論文を国際プラトン学会大会(慶應義塾)で発表し(審査有)、改訂版を電子ジャーナル誌PLATOに掲載した(査読有)。『法律』第10巻の、死後の魂の再配置の話についての日本語論文をギリシャ哲学セミナー大会(専修大学)で発表し、同セミナー『論集』に掲載した。『法律』のこの話が置かれた文脈(宗教法)についての英語論文をシンポジウム「自由と国家―プラトンと古典的伝統」(オクスフォード大学)で発表した。
著者
小林 俊雄
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

エネルギー約300MeV/u、質量数約100の重RIビームを用いた不変質量法による実験では、同じエネルギー/質量領域の入射核破砕片の質量分離が必要不可欠である。この為には約0.1%の分解能を持つ全エネルギー検出器が必要であり、アルゴンにゼノンを少量混合した液体又は固体検出器を開発した。液体窒素を用いた冷却により、単体ガス又は混合ガスを液化/固化する試作機を製作し測定を行った。アルゴン単体の液化と部分的な固化の段階まで進んだ。
著者
深道 和明 佐久間 昭正 梅津 理恵 笹尾 和宏 佐々間 昭正
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、非常に高いネール温度を示しGMR, TMR効果を示す多層膜の反強磁性材料として注目されているγ-Mn系合金およびL1_0型Mn系合金の基礎物性と電子状態を実験および理論の両面から調べることを目的としている。得られた成果を以下に示す。1.γ-MnRh系合金に関する研究Mn_3Rh規則相合金ならびに不規則相合金において磁化、電気抵抗、熱膨脹および低温比熱測定ならびにバンド計算を行った。この合金は、電子状態密度においてフェルミ面近傍にディップを形成することで反強磁性状態を安定化し、高いネール温度を実現していることが明らかになった。また、ネール温度の圧力依存性ならびに体積弾性率を詳細に調べた。2.γ-MnIr系合金に関する研究実用材料として注目されているγ-MnIr不規則相合金の磁気相図を明らかにした。磁気構造と格子歪みが密接に関連していることが分かっているが、fct構造からfcc構造への構造相転移温度と2Qから3Qへの磁気転移温度が必ずしも一致しないことを理論および実験の両面から明らかにした。3.L1_0型MhTM (TM=Ni, PdおよびPt)合金に関する研究非常に高いネール温度を有するL1_0型MnTM (TM=Ni, PdおよびPt)合金について磁化、電気抵抗および低温比熱測定、ならびに理論計算を行った。これらの合金系はフェルミ面近傍に擬ギャップを有する非常に特徴的な電子状態を有することが判明した。また、デバイス特性に関わる電気抵抗率の組成依存性を理論計算の結果と併せて、定性的に説明できることを明らかにした。4.L1_0型MnIr合金に関する研究L1_0型MnIr合金の電気抵抗および磁化測定ならびに電子状態に関する研究を行い、他のL1_0型MnTM合金と同様に擬ギャップ型反強磁性体であること、そしてMn系合金のなかで最も高いネール温度を有することを明らかにした。また、この合金系は低温において大きな磁場中冷却効果を示すことが判った。5.交換結合に関する研究γ-MnおよびL1_0型反強磁性合金の交換結合を古典的ハイゼンベルグ模型を用いて解析し、それらの計算結果と実験結果が極めてよい対応を示すことを明らかにした。
著者
永沼 孝子 小川 智久 尾定 誠
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

4種のマベガイ外套膜レクチン(PPL-1~4)のうち、PPL-1は生体防御に関わること、PPL-2はカルシウム結晶化制御能、即ち貝殻および真珠層の形成に関与する他、生生体防御能も有することを明らかにした。PPL-4もカルシウム結晶化に関与することが分かった。このように、PPL群はマベガイ生体において、それぞれ異なる役割を果たし、健康な生体の維持に貢献していることが示唆された。
著者
一杉 太郎
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

超伝導体は金属光沢か黒色を呈する、というのが常識である。BCS理論に従うと、高い超伝導転移温度を有する物質はキャリア濃度が大きいため、可視光透明性が失われるはずである。しかし、我々は超伝導転移温度13.3 Kを示す、スピネル型LiTi2O4透明超伝導薄膜(可視光を透過する超伝導体)の合成に成功した。この物性を活用することにより、光エレクトロニクスと超伝導を組み合わせた新奇デバイスの構築が期待される。そこで本研究では、透明超伝導メカニズムの解明に取り組んだ。光学特性、電子状態評価、電子輸送特性評価を行い、高いキャリア濃度を有するにもかかわらず可視光透明性を示す理由を検討した。
著者
松井 有恒
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

口腔病原性細菌群に対する免疫応答評価ならびにバイオフィルム構築等の細菌の活動性を評価する際、円筒型のPDMS製チャンバー(Pore size100-200um)が最も効率良く細胞回収、評価ができることを確認した。本デバイスでは特に好中球の挙動観察に有利であった。チャンバー内部のバイオフィルムの形成状況を評価すべく、ホルマリン固定の上パラフィン包埋し評価を行ったところ、チャンバー内表面よりバイオフィルム様の構造を確認しそれらは24hの時点で4種の細菌を混合した系においては、コントロール群と比べ肥厚している傾向を呈した。定量化および安定した構造解析にはなんらかの内表面処理が必要なことが示唆された。
著者
菊谷 竜太
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

インド密教において観想法を説く成就法(sadhana)文献は、マンダラ儀軌(mandalavidhi)と密接な関わりをもつことが知られている。後期密教において最も長い法灯を維持し続けたジュニャーナパーダ流の伝統を、最初期のジュニャーナパーダ(ca.750-800)から最晩期のアバヤーカラグプタ(ca.1080-1120)の時代に至るまで『四百五十頌』を中心に個々の儀礼とがそれぞれどのように形成され伝承されていったのか、両実践を系統別に類型化し,さらに密教周辺の儀礼文献をも視野に入れ包括的に解析することによって密教儀礼の背後にある教理内容を明らかにしようと試みた。