著者
小林 隆
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

日本語の方言形成にあたって中心的な役割を果たしたと考えられる「中央語の再生」現象について検討し、その特徴を明らかにするとともに、方言形成の一般原理としての理論的整備を行った。日本語の方言形成は、中央語の単純な伝播によって起こるのではなく、中央語を受容し、再生する地域独自の作用が大きい。特に、言語の運用面など、社会的背景が方言形成に関わる場合には、地域の社会構造の違いによって、東西差などの顕著な地域差が生じることになる。
著者
温 笑トウ
出版者
東北大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2015-08-28

本研究は、支配株主の行為規制をめぐり、とくに支配株主との利益相反が問題となる不公正ファイナンスの場面を取り上げ、日本、アメリカ及び中国の現状規制とその背景にある諸社会条件を分析した。日本における支配株主の行為規制は、少数株主の自己救済に求めることを伝統とするアメリカと、国家や行政による審査・認可に委ねることを伝統とする中国の中間に位置付けられるが、いずれの面においてもうまく機能していない可能性があり、資本主義の本質と日本の現状法体制など観点からすると、救済手段の拡大とその前提となる開示情報の充実がより適切な解決方法ではないかと考える。その具体的な方法、本研究の各論文の中に議論されている。
著者
久利 美和 村上 祐子
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

初年度初年度は,研究機関およびその助成金を活用しての直接的または間接的に科学普及活動に従事する人材の意識調査、就業形態、また実施される企画の有償かの可能性について聞き取り調査を行い、キャリアパスとして必要な視点が、報酬体系の確立と評価手法についてであることが明らかとなった。次年度は、研究管理の観点で関連業務者の報酬体系の実態に焦点を当てるとともに、報酬体系の根底にある概念についても意見抽出を行った。また、海外の事例を含めた検討会を国際会議の場で行った。
著者
東ヶ崎 祐一
出版者
東北大学
雑誌
東北大学文学部日本語学科論集 (ISSN:09174036)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.61-70, 1993-09-30

万葉仮名の音表記と、中古漢字音との間には、一定の対応関係があるが、それにはずれる例も散見する。本稿ではそういった例のうちの一つである、エ列甲類を示すはずの「斉韻字」の一部がエ列乙類の表記に用いられる問題に焦点をあわせ、これが例外ではなく、もともとエ列乙類に用いられていたのが、漢字音自体の変化によりエ列甲類を示すようになったものであることを論じる。
著者
陶山 佳久 中澤 文男 牧野 能士 松木 悠
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

山岳氷河から得られた雪氷試料中に存在する花粉のDNA分析によって、過去に分布した樹木の遺伝的情報を直接取得し、樹木個体群の分布変遷史を時空間的に明らかにしようとする研究のための基礎技術開発を行った。まず、花粉一粒ずつに含まれるゲノムDNAを全ゲノム増幅法によって増幅して、ゲノム内の複数領域のDNA分析に用いるための技術を完成させた。また、次世代シーケンサーを用いてゲノム全体から網羅的に塩基配列を得る新たな手法を開発し、MIG-seq法として発表した。これらの技術を氷河から得られた花粉の分析に応用した。
著者
箕浦 幸治 今村 文彦 今泉 俊文
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,砂の堆積現象が最も広範囲に現われた869年貞観仙台沖地震津波による堆積物運搬の様式を粒度組成及び堆積相から類推し,津波による流れの水理学的実体を理解するための初期条件を求める堆積学的検討を行った。また,静岡県南伊豆町入間において東海地震津波によって形成された丘陵状の集積土砂堆積物も研究対象とし,堆積物運搬過程の検討を行った。申請設備備品であるレーザー回折式流度分析装置による粒子組成解析結果からは,貞観津波堆積層を構成する砂層の明瞭な陸側細粒化現象が検出された。この現象は堆積物の移動と集積を試行する水槽実験装置の再現結果と調和しており,堆積層の細粒化様式が溯上津波のエネルギー散逸を反映する重要な基準として扱い得る可能性が示されるとともに,水理学的結果と堆積作用の理解から,我が国において特に顕著な災害を及ぼした貞観地震津波・東海地震津波による破局的な流れの堆積学的作用が明らかにされた。この基準は,海岸とその後背平野の成り立ちを理論的に理解する自然地理的条件を与え,更に海岸平野に於ける都市・産業基盤整備に不可欠の知識を与えるものと期待される。また,タイ南西部海域において採取した堆積物試料を用いて古生物学的解析を行い,津波前後での底生有孔虫群集の変化を明らかにするとともに,引き波によって生じた混濁流が海底に津波の痕跡を残しうることを示した。したがって,海域における堆積物掘削により,津波発生の履歴を知ることが出来る。平成19年7月にイタリア・Perugiaで開催されたIUGG総会において,これらの結果を津波災害と堆積現象の実例として紹介し,注目を集めた。
著者
渋谷 雅弘
出版者
東北大学
雑誌
法学 (ISSN:03855082)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.1-31, 1997-04
著者
北村 勝朗
出版者
東北大学
雑誌
教育情報学研究 (ISSN:13481983)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.77-87, 2003-03

ひとの学びに関わる教育情報は、明示的なシグナルとして扱われる情報とは異なり、情報のもつ意味性、作用力を含めた解釈が必要となる。本稿では、教育情報を「教え学ぶ過程で作用する、意味を帯びた知」と定義づけ、スポーツ・音楽・芸術領域における熟達化過程で教育情報がどのように作用しているのかについて定性的分析によるモデル化を試みた。調査はエキスパート指導者9名を対象とし、半構造的・自由回答的調査面接により実施した。その分析枠組みとして、生田(1987)による「わざ」の概念を用いた。考察の結果、スポーツ・音楽・芸術領域における熟達化に及ぼす教育情報の作用は、「スキル」、「意味形成」、「志向性」、及び「身体性」の4つのproperty(特性)によって構成されることが明らかにされ、それぞれのpropertyに注目した教育情報の位置づけが検討された。
著者
呉 繁夫 大浦 敏博 鈴木 洋一
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

グリシン脳症は、グリシン解裂酵素系の遺伝的欠損により引き起こされる先天代謝異常症の一つで、体液中グリシンの蓄積を特徴とする。本症には、新生児期にけいれん重積や昏睡などの症状を示す古典型と乳児期以降に精神発達遅滞、行動異常、熱性けいれんなどを主な症状とする軽症型が存在する。本研究では、軽症型グリシン脳症モデルマウスを用い、治療法の開発を行った。軽症型モデルマウスは、野生型であるC57BLマウスと比べ、多動、攻撃性の亢進、不安様行動の増加、及び易けいれん性の亢進などの行動の異常を示す。本研究では、多動と易けいれん性を指標として有効な薬物を検索した。薬物としては、抑制性グリシン受容体のアンタゴニストとNMDA型グルタミン酸受容体のグリシン結合部位のアンタゴニストの2種類を検討した。これは、グリシンは、中枢神経系で大きく分けて2種類の神経伝達に関わっていおり、一つは、抑制性グリシン受容体を介した神経伝達で、もう一つは、NMDA型グルタミン酸型受容体のグリシン結合部位を介したこの受容体の興奮調節である事に基づいている。これらの薬剤をモデルマウスに腹腔内投与し、多動の改善を検討した。その結果、NMDA受容体のアンタゴニストでは、野生型の行動量を変化させない薬量で、増加していた行動量を正常化した。次に、けいれん抑制効果を電気ショックを与えた後の誘発されるけいれんの長さを指標に検索した。その結果、モデルマウスで延長していたけいれん持続時間が治療で正常化していた。この結果は、NMDA受容体のグリシン結合部位のアンタゴニストがグリシン脳症の治療に応用可能であることを示している。
著者
中橋 和博 大林 茂
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、亜音速場でよく用いられる縦渦導入による境界層剥離制御法が超音速流中の境界層剥離に対しても有効かどうかを数値解析でもって調べること,およびそのための効率よい数値計算手法の構築を目的とし,研究を以下のように進めて大きな成果を得た.1.超音速流中のボルテックスジェネレーターまわりの詳細な数値計算を効率よく行うための数値解法の開発を進めた.従来の差分法計算法に生じる計算特異点等の問題点を解決するため,非構造格子法によるナビエ・ストークス計算コードの開発を進めた.その結果,計算特異点等の問題が解決されたことにより計算時間は従来の計算法に比べ数分の1に減らすことが可能になり,その有効性を確認した.この計算法は,世界的に現在主流の差分法に基づく計算法に取って代わりうる能力があり,数値流体力学研究への貢献は非常に大きい.2.平板上に三角錐状の突起をつけた場合および同様の形状の空洞を設けた場合について,それらが超音速流中において誘起する流れ場をナビエ・ストークス数値計算により調べた.その結果,突起形態および空洞形態ともその後流に対の縦渦を誘起することを確認し,かつその誘起渦度の強さは三角錐の開き角と一様流のマッハ数との関係で大きく変化することを見いだした.また,空洞型ボルテックスジェネレーターは超音速場での衝撃波発生および空力加熱問題点で有利であるが,生成された縦渦が下流では壁面へと進んで平板境界層と融合し,境界層外の運動量を境界層に導く効果は弱くなってしまうこと,また,三角錐開き角とマッハ数との関係も上流境界層が厚い場合は明確ではないとの結果を得た.以上の研究において,備品として購入したコンピュータはプログラム開発および計算前処理と後処理端末として非常に有効であった.
著者
湯上 浩雄 金森 義明 井口 史匡
出版者
東北大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究では,高温物体の表面に波長と同程度の周期構造(回折格子)を形成することにより、熱放射スペクトルの制御を行い、熱光発電システムや化学反応プロセス等の高効率な熱利用システムを構築することを目的としている。昨年度の研究において、Maxwell方程式の厳密解を求めるシミュレーションコードにより、各システムに最適な微細構造の決定を行うとともに、可視領域の輻射スペクトルを選択的に放射する表面ナノ構造体を高融点金属に作製するためのプロセス研究を行ってきた。この成果にもとずき、本年度は以下の研究を行った。1.昨年度までに整備したフーリエ赤外分光器を中心とした熱放射スペクトルの絶対値を測定する装置により,単結晶および多結晶タングステン試料表面に製作した表面回折格子からの熱放射を測定し、キャビティ深さと熱放射スペクトルについて系統的に調べた。その結果、キャビティ深さが浅い場合は、表面プラズモンポラリトン共鳴による放射が観測されるが、キャビティ深さの増大とともに、孤立したキャビティ内部の電磁波モードからの放射が支配的となることが分かった。2.光学定数が複雑な分散関係を示す材料に適応可能なFDTDプログラムコードを開発して,構造との共鳴効果による熱放射スペクトルへの影響を定量的に解析すると共に、実験結果との比較を行った。その結果、開発したFDTDコードにより、熱放射スペクトルが再現でき、実験と定量的な比較が出来る事が分かった。3.これまでの研究成果の取りまとめを行と共に、今後の研究の方向性や更に研究すべき課題について検討した。