著者
加藤 直三
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

エスキモーロールのなかのショートロールの運動機構の解明を行なうために、まずプールにおいて、被験者の左右の関節部(手首、肘、肩、額)にマーカーを取り付け、運動を水中2台、空中2台のCCDカメラにて撮影を行なった。またカヤックには傾斜計を取り付け、ロール角を計測した。この実験解析から、ショートロールはロングロールに比べ、起き上がる時間が約倍速いことや三次元的なパドルの動きと体の姿勢の変化との関係を明らかにした。次に、エスキモーロールのヒューマン・ダイナミックスの解析を行なった。腰、肩、手の部分にジョイントを設け、その間を直線上のリンクで置き換え、また手から先のパドルをリンクとした。またリンクの先端(エンドエフェクター)にはブレードを置いた。これらのジョイントとエンドエフェクターの位置変化からそれらの速度、角速度を求めた。エスキモーロールの理論解析では、運動系を浮遊物体とリンク機構で置き換えることで、浮遊状態のマニピュレータ付き水中ロボットの運動と等価になる。ロングロールはほぼ2次元平面内での運動と見なされるので、二次元の運動方程式を扱う。逆運動力学および逆運動学を同時に扱い、作業腕の先端の位置の加速度を与えて、各関節の運動を求めた。また、パドラーの腰から肩までを一つのリンクと考え、質量をパドラーの全質量の半分と考え、中性浮力とした。その付加質量は円柱近似で求める。パドルは円柱、ブレードは平板として付加質量を求めた。リンク機構に加わる流体力は各リンクの移動速度から得られる円柱または平板の流体力で近似した。数値シミュレーションはMATLABを用いて0.01sec.毎に行った。数値計算では1.2秒でほぼカヤックは起きあがることがわかる。さらにマニピュレータを模型カヤックに搭載してその復原の制御が可能かどうか試みた。実験で用いた模型カヤックは観察で用いたリバーカヤックの約1/3の大きさである。マニピュレータは3つのリンクとジョイントからなり、ジョイント部には-5.00(V)〜+5.00(V)の電圧により-90°〜+90°まで回転するサーボモーターとポテンショメーターの内蔵されている。重量は電源コードを含み空中重量約1.5kgf(水中では約1/3)。実験では各リンク部に発泡スチロールをつめて水中で中性浮力になるように行った。模型カヌーの時々刻々の角度を調べるためにポケンションメーターを模型カヌーの先端に取り付けた。カヤックモデルとマニピュレータの系について、マニピュレータ先端の加速度および角加速度を与えて、それによって得られる各ジョイントの角度を求め、それらを設定値とした。フィードバック制御則にはPD制御を用いた。マニピュレータの運動を制御することによって、カヤックを転覆状態から復原させることがわかった。
著者
角谷 直彦 豊倉 穣 古川 俊明 小山 裕司 石田 暉
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

健常者と嚥下障害者の咽頭期嚥下音と舌骨上筋群の表面筋電図による嚥下評価我々は嚥下障害を呈した脳血管障害者20名と健康成人20名を対象者としてインフォームドコンセントを施行した。脳血管障害者20名は、男性10名女性10名で平均年齢が69.5歳であった。Control群である健常者20名は、男性2名女性18名で平均年齢が26.6歳であった。検査は頚部を軽度屈曲位にした座位姿勢にて液体(1ml,3ml,5ml,7ml,10ml)と固形物(丸呑み嚥下,咀嚼後の嚥下)に分類し、嚥下した時の咽頭期嚥下音と舌骨上筋群の表面筋電図で嚥下評価を施行した。健常者の評価では舌骨上筋群の持続時間は食形態や量に関わらず平均400msec以内となり嚥下音の高振幅が出現する時間は平均240msec以内になった。嚥下音の最大振幅は液体と固形間で有意差を示し、特に液体の3ml,5ml,7mlが嚥下障害の診断に有用と考えられた。MEMは液体7ml以上また固形物の嚥下で平均1000Hz以上の高周波を認めた。以上から嚥下障害を診断する為のparameterを検討した。parameterは舌骨上筋群の1)持続時間、2)平均振幅、3)嚥下音の持続時間、4)舌骨上筋群の大振幅を呈した筋活動の開始から嚥下音の第II成分が出現するまでの時間、5)嚥下音の周波数特性をControl群(健常者)と嚥下障害者で算出した。1)舌骨上筋群の平均持続時間(msec)はControl群で442(3ml),605(5ml),430(7ml)を示し嚥下障害者は986(3ml),1100(5ml),823(7ml)と有意な遅延を示した。2)平均振幅はControl群と嚥下障害者の間で有意差がなかった。3)嚥下音の持続時間はControl群で平均500msec以内で嚥下障害者との間で有意差を認めた。4)筋電図と嚥下第II成分までの時間はControl群で平均240msec以内、嚥下障害者は液体3ml,5mlの間で有意差を認めた。嚥下音の周波数特性では3ml,7mlで有意差を生じた。この検査は簡便であり、嚥下障害を診断するのに非常に有効であると考えられた。
著者
川野 美砂子
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要 教育研究所 (ISSN:13403125)
巻号頁・発行日
no.14, pp.21-41, 2006

受験者数・入学者数の激減と学科の定員割れ, これによって迫られる大学改革の中で強調される資格取得と専門教育, 産学協同と教養教育不要論, 「スキル教育」への要請は, 東海大学だけでなく日本の大学の間で広く見られるようだが, 開発工学部では特に顕著な形で現れているといえる。学科・学部ひいては大学の存続の危機に際して, 大学は, そして開発工学部は何を実現するべきなのか。専門教育と資格取得に徹底し, 教養教育あるいはリベラルアーツ教育はそのための「スキル教育」であるべきなのだろうか。あるいはリベラルアーツの深い水脈の中に他の可能性を捜し求めることができるか。法哲学者の土屋恵一郎は, アメリカにおける教育思想の歴史とリベラルアーツ論争を辿り, デューイやナスボースに従って, 共同体の価値や文化から自由になり, 自由な経験の交流を可能にする場所であると考える。またドイツ文学者の柴田翔は, 人間が自己と自己の属する文化だけが世界のすべてだと妄想することなく, 世界の広さと多様性を知り, 自己を相対化するための知の方向性として教養を再定義した。開発工学部のためのリベラルアーツを考えるとき, デューイの教育思想は現実的である。彼は職業や社会的使命が位置している社会的, 道徳的, 科学的, 経済的, 市民的コンテクストを理解し, 教育する職業教育の内にリベラルアーツ教育の本来の意味があると主張した。土屋は大学という世界市民的な関係へと開かれた場所で, 家族や仲間の関係の中で育まれてきた価値観や文化の組み換えを教えるのが教養教育の本質的な役割であり, この中で学生は将来の職業を選択し, 将来の生き方の暫定的な決定を行っていくのであるという。開発工学部における専門教育とリベラルアーツ教育について考えるとき, すでに1世紀近くにわたって行われてきた議論の蓄積から学ぶべきものは多い。
著者
松木 秀明 榎 悦子 小川 哲平 瀧脇 収二
出版者
東海大学
雑誌
紀要 (ISSN:13474162)
巻号頁・発行日
no.7, pp.53-58, 2001

ブラジルには100万人以上の日系人が在住し、そのうち約70%の日系人がサンパウロに居住している。本研究はサンパウロの日系移民を対象とし、食事、喫煙、飲酒等のライフスタイルと健康状態との関連について調査を行った。調査はサンパウロ市内の日系病院の簡易人間ドックを訪れた301名(男性:130名、女性171名)を対象に、食事・喫煙・飲酒などのライフスタイルに関する質問調査を実施し、同時に身長・体重・血圧・総コレステロール・中性脂肪等の血液検査を実施、対照群は性・年齢をマッチさせた日本在住の日本人とした。その結果、日系人の体重・BMI・最高血圧・最低血圧・総コレステロール・中性脂肪が日本人に比べ有意に高レベルであった。また日常の肉類・卵類の摂取レベルも日本人より多量であった。日系人は日本人に比べ、虚血性心疾患などが高率であると報告されている。本調査からも、ライフスタイルの変化が生活習慣病の成因として関与している可能性が示唆された。
著者
大塚 正人 和田 健太 佐藤 正宏 三浦 浩美
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

従来のゲノム編集マウス作製法では、(1)受精卵の回収、(2)CRISPR関連試薬の顕微注入、(3)注入卵の偽妊娠マウスへの移植、という熟練した技術と高価な設備を要する3つのステップが必須であった。今回、受精卵を有する妊娠メス卵管へのCRISPR関連試薬の注入、続く卵管全体へのin vivo電気穿孔を行うことで、上述した3つのステップ全てを省いてゲノム編集マウスが作製できる新手法「GONAD」の開発とその応用を進めた。
著者
飯塚 浩一
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 文学部 (ISSN:05636760)
巻号頁・発行日
vol.67, pp.39-54, 1997

In the 1980s, the Thatcher government tried to introduce the principle of the free market into the sphere of public service. The British broadcasting has also experienced the great change under the pressure from the Thatcher government. The structure of the British broadcasting from the 1950s has been described as the 'regulated competition' or the 'comfortable duopoly' by the Annan Committee and the Peacock Committee respectively. This 'comfortable duopoly' has consisted of both the British Broadcasting Corporation (BBC) which has been financed by the licence fee, and the Independent Television (Channel 3) which has been constituted by the various companies financed by the advertising. The Thatcher government hoped to change this situation and introduce the competition into the British broadcasting. From their viewpoint, the licence fee was to replace it with advertising on BBC television, and Channel 3 franchises would be awarded by a process of competitive tender. By the Broadcasting Act 1990,the franchise auction for Channel 3 was held in 1991. It might be said generally, when the government talk about the reform of the media system, they must hope to influence the journalism of the media. Accordingly I would like to deal with the influence of the broadcasting reform by the Thatcher government on the British broadcast journalism, especially focusing on the 'impartiality' which has been the guideline for the British broadcast journalism so far.
著者
吉川 政夫 菊地 真也
出版者
東海大学
雑誌
東海大学スポーツ医科学雑誌 (ISSN:09153659)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.47-54, 1996

The purpose of this study was to examine the relation between the degree of anxiety and the sway of the center of gravity in the standing posture. Subjects were 58 undergraduates. Both state anxiety and trait anxiety of each subject were assessed by the STAI test. The sway of the center of foot pressure in the standing posture for 20 seconds was measured as postural sway by a stabilometer. Results were as follows : (1) The average magnitude of sway of the high trait anxiety group was significantly larger than that of the low trait anxiety group. On the other hand, such finding was not found in state aniety. Postural sway was related to trait anxiety rather than to state anxiety. (2) Such relation was detected not in the postural sway with eyes open but in that with eyes closed.
著者
花澤 佳代 喜多 祐荘
出版者
東海大学
雑誌
東海大学健康科学部紀要 (ISSN:13474162)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.103-107, 1997

今回、精神病院に勤務する若い世代の精神医学ソーシャルワーカー(以下、PSW)を対象に、業務内容・専門職としての意識について調査を実施した。精神保健福祉士の国家資格化が図られようとしている状況の中で、国家資格に対する意識を通じPSWの専門性の意識に焦点をあてた。調査結果からは以下の点が明らかになった。1.国家資格化の実現により、PSWの社会的な身分の保証がされると考えられていること。2.PSWの国家資格化が図られることで、クライエントに対して、何らかのプラスになる援助が可能になると考えているPSWが多いこと。3.各精神病院においては運営上の格差があり、それによりPSW業務に違いが大きくあること。4.現状におけるPSW業務は、個別援助の割合が高いこと。5.PSWの専門性は知識であると考えられていて、国家資格化により社会福祉に基盤を置いた共通の専門性が生まれてくると考えているPSWが多いこと。
著者
末野 利治
出版者
東海大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

実験1: 白内障患者血清中のヒト水晶体上皮蛋白に対する抗体価目的、方法;白内障患者血清中の抗水晶体蛋白抗体が何であるのか確かめるため、白内障患者より採取した水晶体上皮蛋白を抗原とし、患者血清と正常人血清とをウェスタンプロット法にて検索し、患者血清で反応性の高い抗体を調べた。結果;ヒト血清との反応は非特異性のバンドが数多く検出されるが、約70kDa及び30kDaの位置のバンドは、患者血清でより濃く染まり、正常人血清と比べ有意に検出された。結論;正常人血清に比べ上記分子量蛋白に対する抗体価が白内障患者血清で高く、白内障患者に特異的な抗体と思われた。今後の研究計画;上記の抗体に対する抗原を抽出し、実験動物に免疫し、産生された抗体が水晶体上皮細胞に毒性があるかを調べる。実験2: 水晶体器官培養下での抗体の水晶体嚢透過性目的、方法;昨年度は抗水晶体上皮蛋白抗体添加した水晶体器官培養下で、水晶体上皮細胞の障害度をトリパンブルー染色法にて検索し、間接的に抗体の嚢透過性を証明したが(国際白内障研究会(平成9年11月)および日本眼科学会総会(平成10年4月)で報告)、本年度は、同じく抗水晶体上皮蛋白抗体を添加したラット水晶体器官培養後、凍結切片を作成し、酵素抗体法を用い水晶体嚢を透過した抗体を検出し、抗体が水晶体嚢を通過することの直接的な証明を試みた。結果;現在までのところ培養後の水晶体上皮細胞に抗水晶体上皮蛋白抗体の存在が認められない。現在条件を変え、また、酵素抗体法に工夫を加え、検索中である。
著者
浅井 さとみ 宮地 勇人 良原 栄策 大島 利夫
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

イミペネム、アミカシン、シプロフロキサシンのうち2系統以上の抗菌薬に耐性を示す薬剤耐性緑膿菌とアシネトバクターにおいて、多剤耐性化と遺伝子変異の相互関係、耐性遺伝子獲得の関係を調査した。その結果、薬剤排出ポンプの発現亢進が薬剤耐性緑膿菌と多剤耐性アシネトバクターのほぼ全例に関与していることが分かった。その一方で、薬剤排出ポンプの構成蛋白質の気質となるペプチドを供給する複合体蛋白(Bam複合体)の発現亢進はわずかであった。薬剤耐性の緑膿菌とアシネトバクターにおいて、薬剤排出ポンプ発現のモニタリングは感染制御に役立つことが示唆された。
著者
大山 太 小島 善和
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、大災害時に医療サービスを展開する災害医療チームが、被災地で活動する際に使用するコミュニケーション手段を、特定小電力無線レピーターによって確立するシステムを研究した。その結果、太陽光発電を利用した独立型の中継器が完成した。このシステムを使用すれば、市町村規模での活動に十分利用できることが確認できた。
著者
錦戸 典子 坂本 光司
出版者
東海大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、中小企業における健康的な職場環境の普及推進に向けて、産業保健分野のみならず経営分野と協働することにより新たな知見を得て、革新的かつ実践的な推進モデルを開発することを目的に実施した。良好実践事例の分析により、職場のコミュニケーションの活性化や適切な労務管理・評価などについては経営分野でも重視されているが、健康診断結果の活用や健康を維持しながら働ける職場環境づくり、保健医療専門職・機関の活用などに関しては経営者等に殆ど認識されていないことが明らかとなった。中小企業従業員を対象とした質問紙調査結果からは、企業として健康と仕事の両立が可能な職場づくりに取り組む必要があることが示唆された。
著者
内田 匡輔
出版者
東海大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今年度の研究は以下のように実践した。1 授業分析のフィードバック昨年度得られた成果をもとに、聾学校の傾向をリーフレットにまとめ作成、配布した。授業担当教諭には、授業の結果を否わせて報告できた。興味を示した襲学校入訪問しこ授業研究を行った。その結果、聾学校で「良い体育授業」を行っている学校のモデルを挙げることができた。また、教材をこちらが準備して授業を実施する「出前授業」を2校において実践した。2 継続的な授業研究の実施結果最終的に、6校8教諭25授業の記録がてきた。また、形成的授業評価アンケートを作成実施し、125名の生徒の授業評価を収集することができた。まず授業映像を分析した結果、聾学校の授業においては、普通校の授業に比べてマネジメント(授業準備、片付け等)にかける時間が長く、生徒の運動学習時間を短くしているという結果を得ることができた。また、アンケートから、聾学校の生徒は、意欲・関心の項目が普通校よりも高く、運動量が少ないにもかかわらず、授業には満足しているということがわかった。最後に、モデルと考えられた学校は、マネジメントの割合が聾学校全体め平均よりも多いにも関わらず、授業評価は聾学校の中で最も高かった。これは、聾学校独自の教材研究の成果と考えられた。3 出前授業の実施神奈川県と北海道の聾学校で出前授業を実施する機会を得た。そこで、教材を工夫した授業の実践を試みた。いずれも、これまでの襲学校め授業分析と比較し、同様の期間記録の傾向が見られたものの、生徒の授業評価には、意欲関心が低くなるという違いが見られた。この原因についてに今後研究をすすめ、聾学校における授業評価の妥当性を継続して研究してゆく。4 結果のまとめと公表本研究結果を集約し、第6回日本発育発達学会において発表することができた。また、一部教材研究の結果を日本体育学会第58回大会で発表した。これらの研究結果をもとめ協力校に配布することができた。