著者
山田 沙奈恵 沼尻 幸彦 和田 政裕 山王丸 靖子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.109-120, 2018-10-01 (Released:2018-11-06)
参考文献数
32
被引用文献数
2

【目的】我が国の健康食品について,医療従事者を含む消費者が持つ知識・認識等について調査し,表示認識およびニーズの実態を明らかにすることを目的とした。【方法】2015年1月~8月に一般消費者,薬剤師,管理栄養士,助産師を対象(合計有効回答数:1,502名)に,健康食品に対するイメージ,知識・認識等に関する無記名自記式質問紙調査を実施し,集団間の違いについて包括検定および対比較(χ2 検定,steel-dwass法)により検討した。本調査における健康食品とは,「健康の維持向上を目的としたすべての食品」と定義した。【結果】健康食品の知識は,一般消費者よりも医療従事者の正答率が高い傾向を示し,一般消費者と管理栄養士との間では有意な差が認められた。一般消費者と比較して医療従事者のポジティブイメージは有意に低い項目が多く,ネガティブイメージは有意に高い項目が多かった。どの集団でも,健康食品の認可機関としては「国」を希望する者が最も多く,機能性表示としてふさわしい段階は「健康増進に効果があること」,「病気のリスクを低減すること」の順となった。安全性に関するニーズは助産師が高い傾向を示した。【結論】一般消費者と医療従事者及び,医療従事者間にも健康食品に対するイメージ,知識・認識等には差が見られ,医療従事者であっても知識は十分ではなかった。表示の認可機関と機能性表示に対する期待の程度は,医療従事者の専門性により異なる傾向を示した。
著者
赤松 利恵 衛藤 久美 稲山 貴代 神戸 美恵子 岸田 恵津 中西 明美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.89-97, 2018-08-01 (Released:2018-09-21)
参考文献数
11

【目的】学校における食育の計画並びに評価の実施状況と関連する知識を把握し,管理栄養士免許の有無と免許取得時期による比較検討を行うこと。【方法】2016年5~12月,栄養教諭・学校栄養職員(1,406人)を対象に,食育計画と評価と関連する知識について,横断的調査を行った。記述統計後,管理栄養士免許の有無,および旧カリキュラムと新カリキュラムでの免許取得で,各項目の回答の違いをχ2 検定およびMann–WhitneyのU検定で検討した。さらに,属性等を調整し,各項目を独立変数,管理栄養士免許または免許取得時期を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った。【結果】904人(回収率64.3%)が回答した。食育計画の実施状況では,約半数が実態把握の実施や行動目標の設定を行っている一方で(各々45.5%,49.1%),7割以上の者が評価指標や数値目標の設定を計画時に行っていないと回答した(各々70.9%,73.3%)。また,数値を用いた目に見える形での子どもの変化を評価している者は14.1%であった。群間の比較では,管理栄養士免許所有者および新カリキュラムでの取得者で,知識はある者が多かったが,実施状況に違いはなかった。ロジスティック回帰分析でも同様の結果であった。【結論】学校における食育の計画と評価の実施状況を調査した結果,目に見える形での子どもの変化を評価している者は約1割であった。また,新カリキュラムでの管理栄養士免許取得者の知識は高かったが,実践している者は少なかった。
著者
坂手 誠治 柳沢 香絵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.13-19, 2016 (Released:2016-04-06)
参考文献数
22
被引用文献数
1

【目的】水中運動実施者の運動時の発汗および水分摂取の実態を明らかにするとともに,より安全な水中運動実施のための基礎資料を得ることを目的とした。【方法】調査は,公共の室内プール2か所で実施した。水中運動前後に体重,鼓膜温,口渇感,飲水量の測定を行った。発汗量は{=(運動前体重+飲水量)-運動後体重-尿量},発汗率は{=(発汗量/運動前体重)×100}の式より,それぞれ算出した。尿量は排尿前後の体重差より算出した。実施種目間での各測定項目の比較,実施種目別等にみた運動中の水分摂取状況,各測定項目間の関係について検討した。検討対象は男性34名,女性22名の計56名(60.6±16.6歳)とした。【結果】発汗量は 155.0 g(60.0・365.0),発汗率は0.3%(0.1・0.6)であった。水泳(p<0.01),水泳および水中歩行実施者(p<0.05)の飲水量はアクアビクス実施者に比較し有意に少なかった。水分摂取率(=飲水量/発汗量×100)も同様の結果であった。運動中に全く水分摂取を行わない者は全体の76.8%であり,水泳実施者で多くみられた。運動前の口渇感と飲水量との間に有意な正の相関関係(rs=0.392,p=0.003)がみられた。【まとめ】公共の室内プールでの運動実施者では,運動中に水分摂取を行う者が少なく,特に水泳実施者で多かった。運動前口渇感は運動時の発汗による脱水に影響する可能性が示唆された。健康増進を目的とした水中運動時においても,脱水予防のための適切な水分摂取の必要性が示された。
著者
安井 有香 東山 幸恵 永井 亜矢子 久保田 優
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.213-218, 2012 (Released:2012-06-29)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

【目的】入院患者の食物アレルギー対応食の実態を調査し,その課題を検討する。【方法】食物アレルギー対応食に関する調査用紙を作成し,2010年7~9月に近畿圏の60総合病院に郵送した。【結果】回答は34病院から得られた(回収率57%)。患者自身の申告に基づいたアレルゲンは,全体(小児+成人)では1位魚類(67%),2位甲殻類(33%),3位そば(22%)であり,小児では1位鶏卵(96%),2位乳製品(82%),3位小麦(24%)であった。病院毎に作成しているアレルギー確認用紙が送付された9病院を比較したところ,小児のアレルゲンに頻度の高い鶏卵・乳製品・小麦は9病院全ての確認項目に含まれていた。一方,成人に頻度の高いアレルゲンである甲殻類・そばは1病院(11%),魚類は2病院(22%),果物類は7病院(89%)で確認項目に含まれていなかった。アレルギー患者への管理栄養士の訪問は90%以上の病院で実施されていたが,他職種との月1回以上の話し合いは4病院(13%)でしか行われていなかった。ヒヤリ・ハットの報告は,誤配(59%)や調理過程でのアレルゲン混入(41%)が多かったが,その対策の面からは誤配に比べ調理過程への混入の対策が十分でないことが窺われた。【結論】食物アレルギー対応食に関して,確認用紙は小児だけでなく成人にも配慮した確認項目を作成する,他職種との話し合いの機会を増やす,調理過程でのアレルゲン混入への対策を進める,等の改善対策が必要と思われる。
著者
寺本 民生
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.3-13, 2013 (Released:2013-03-15)
参考文献数
78
被引用文献数
4 5

【目的】わが国は,戦後急速な経済復興と共に,生活習慣の欧米化が進み,それに伴い肥満,脂質異常症,糖尿病などの心血管疾患の危険因子が増加している。わが国では,血圧コントロールと共に,脳血管疾患による死亡率は減少し,最近はほぼ心血管疾患と肩を並べるところまで減少した。これは食塩摂取制限により,高血圧の頻度が減少し,それゆえに脳出血が劇的に減少したことによる。このような動脈硬化性疾患の危険因子として,高血圧に変わって問題になったのがコレステロールや肥満・糖尿病の問題である。わが国では,生活習慣の欧米化に伴い,コレステロールレベルは増加の一途をたどり,ほぼアメリカ並みになった。重要なことは,心血管イベントの発症には数十年を要するということであり,それゆえ,わが国のガイドラインは心血管イベントの増加を予防するためのガイドラインと位置付ける事ができる。心血管イベント予防のためには,血圧,糖尿病,喫煙などの包括的管理が重要であるが,脂質異常症は冠動脈疾患予防のためには最も重要なことである。わが国の食形態は,動脈硬化予防のためには適していると考え,わが国の疫学研究をもとに動脈硬化予防のための食事について検討した,その結果,動物性脂肪摂取を抑え,魚類などのn3系多価不飽和脂肪酸摂取を多くし,大豆,果物,野菜などを中心とした伝統的日本食が動脈硬化予防のためには適しており,推奨されるものと考えられた。
著者
伊藤 至乃 天野 幸子 殿塚 婦美子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.39-52, 1993 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10
被引用文献数
7 3

母子を組 (429) にして児童及び母親の食事に対する意識や態度を調査した結果, 次のことが明らかになった。1) 児童の家の食事と給食の満足, 不満足の主な要因は, 食事の内容と食卓を囲む人間関係や食事をつくる人とのコミュニケーションの問題であることが明らかにされた。家族や友だちと一緒に食べることや食事づくりの手伝いは, 満足度を高める要因である。ただし給食当番は, 家庭での手伝いほど満足度に影響を与えていなかった。2) 食事に満足している母親は, 家族と密なコミュニケーションがあり, 食事づくりにかける時間が長い。3) 子どもの意識や態度を通しての母親の意識や態度の観察では, 次の3点に違いがみられた。(1) 家の食事に満足している子どもの母親は, 献立に子どもの嫌いな物を考える時に工夫をし, 食事づくりに時間をかけていた。(2) 手伝いをよくする子どもの母親は, 手伝いの期待が高かった。(3) 食べ物の好き嫌いが少ない子どもの母親は, 献立に子どもの嫌いな物を考える時に, 好き嫌いは考えないと工夫しているとに分かれた。好き嫌いを考えない母親は, 家族とのコミュニケーションが親密であり, 互いの期待に応えようとする態度がうかがわれた。(4) 母親の意識・態度を通しての子どもの意識・態度の観察では, 子どもの嫌いな物に対する態度にのみ違いがみられた。子どもが嫌いな物を食べ残した時に何もいわない母親の子どもは, 家の食事に不満足で好き嫌いがあり, 食事も残す。このような母親の子どもに対する消極的な態度とコミュニケーション不足が, 子どもの食事に対する意識や態度に反映されていた。

2 0 0 0 OA スポーツ栄養

著者
樋口 満
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.1-12, 1997-02-01 (Released:2010-11-26)
参考文献数
21
被引用文献数
1
著者
森田 みすゑ
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.204-213, 1973-09-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
16

The dietary attitude which is so good as to maintain life and active energy at old age needs desirable management of nutrition as well as the proper management of life.The dietary habits of long existing from the past have close relations with man's span of life, and under the influence of both natural and social environments, they have deep relations with man's life and regional environments.The subjects of this survey were long lived persons, 52 men and women, over seventy years old of Oki island, Shimane profecture.The results of their nutrient intake are summarized as follows.The relations between dietary habits and longevity, and the background produced remarkable results were discussed.1) The caloric intake was considerably different among individuals. The protein intake of the men reached the target intake. The energy value of both sex and the protein intake of the women nearly reached the target intake.2) It was made clear that all subjects consumed animal protein by taking fresh-mild taste fishery products. Therefore, the tendency to ward the consumption of animal protein and fat can be said to be desirable.3) On the contrary, the intake of micronutrient elements was fairly low on the whole. A considerable intake is needed.4) There was a marked tendency to eat fish shellfish, seaweeds, vegetables, and pulses, together with a large quantity of rice.5) Consequently, it was revealed that longevity has close relations with both natural and social environments.
著者
山内 有信 稲井 玲子 東元 稔
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.25-29, 2008-02-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
15
被引用文献数
2 4

Guava (Psidium guajava L.) has traditionally been used as a remedy for diabetes mellitus among people in the tropical and subtropical regions. To investigate the preventive effect of guava leaf tea (GLT) on the increase in blood sugar level, several studies were performed both in vitro and in vivo. An in vitro study showed some inhibitory effects of GLT on the activity of α-amylase, a group of starch-hydrolyzing enzymes. It was found that GLT markedly restrained the gastrointestinal transport and absorption of glucose in the small intestine after an oral administration of 1g of glucose to rats. GLT also suppressed the increase in blood sugar levels induced by the glucose administration. These results suggest that the inhibitory effect of GLT on the increase in blood sugar levels may be attributable to its inhibition of saccharolytic enzyme activity, as well as of the gastrointestinal transport and absorption of glucose in the small intestine.
著者
今枝 奈保美 徳留 裕子 藤原 奈佳子 永谷 照男 構 実千代 恒川 鈴恵 佐藤 信子 時実 正美 小出 弥生 宮井 好美 牧 信三 徳留 信寛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.67-76, 2000-04-01 (Released:2010-02-09)
参考文献数
26
被引用文献数
2 11

本報では, 107人の栄養士を対象に, 四季, 各季連続7日間の秤量法食事調査において, 記録原票の内容確認面接, 入力過誤修正の方法, 食品成分表の取り扱い, 食品のコーディング, 重量換算, 主要料理の標準レシピなどを検討したので報告した。延べ2,925日の食事記録は, 149,187行の食品コード・重量データとしてコーディングされ, 総出現食品数は1,160食品であった。成分表未収載食品や調理済み食品などのコード化が困難な事例は414食品あり, 今後の食事調査で参照するために分類整理して処理した。入力過誤の修正は, 目視により原票を照合した後, 各食品コードごとに生じやすい過誤の例を,“入力過誤検索用食品一覧データベース”にして, 食品コード・重量データを検索し修正した。その結果, 春期・夏期のデータでは, 73,266行中1,112行の過誤データが見つかり, 特に食品コードの修正に効果があった。大量の入力データの過誤修正にはコンピュータ検索が不可欠であった。食品コーディングや重量換算の精度を保つためには, 記録を確認する面接や詳細なマニュアルが必要であった。フォローアップ成分表未収載食品の取り扱い方法によって, 脂肪酸, 食物繊維摂取量を過小評価, あるいは過大評価する可能性があった。秤量法食事記録調査における入力過誤の修正と調査方法の標準化が必要であることが示唆された。
著者
大内 実結 赤松 利恵 新保 みさ 小島 唯
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.202-209, 2023-10-01 (Released:2023-11-23)
参考文献数
38

【目的】飲酒に関する教育の一助となることを目指し,飲酒状況と機能的,伝達的,批判的の3つのヘルスリテラシー(以下,HL)との関連を示すことを目的とした。【方法】2020年11月実施のインターネット調査のデータを用い,20~64歳の男性3,010人,女性2,932人を対象とした。HLは,機能的,伝達的,批判的の3つのレベルごとに用いた。飲酒状況は,「非飲酒・生活習慣病のリスクを高める飲酒量(以下,高リスク量)未満」「高リスク量」に分類した。HL得点は,男女それぞれの中央値で高群と低群に分類した。HLを独立変数,飲酒状況を従属変数として,ロジスティック回帰分析により各HL高群における「高リスク量」のオッズ比を男女別に算出した。【結果】属性を調整した結果,女性では飲酒状況とレベルごとのHLに関連はみられなかったものの,HL総得点高群に高リスク量の者が少なかった (オッズ比 [95%信頼区間]:0.69 [0.54~0.88])。男性において,属性を調整しない結果では,高リスク量の者が機能的HL高群に少なく,批判的HL高群に多かったが,属性の調整により飲酒状況と各HLに関連はみられなくなった。【結論】本研究では飲酒状況とレベルごとのHLの関連を検討したが,有意な関連はみられなかった。女性では,生活習慣病のリスクを高める飲酒量の防止に向け,総合的なHLを高める重要性が示唆された。
著者
髙泉 佳苗
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.210-218, 2023-10-01 (Released:2023-11-23)
参考文献数
27

【目的】食生活リテラシーと食環境の認知(食品へのアクセス,情報へのアクセス)および食行動との因果関係を明らかにすることを目的とした。【方法】社会調査会社に登録している30~59歳のモニターから9,030人を層化抽出し,web調査による縦断研究を実施した。ベースライン調査は2018年10月に実施し,追跡調査は2019年10月に実施した。ベースライン調査と追跡調査を回答した解析対象者は2,331人(男性1,200人,女性1,131人)であった。食生活リテラシー得点,食品へのアクセス得点,情報へのアクセス得点,食行動得点の変化量(2019年-2018年)を算出し,因果モデルを作成してパス解析を行った。【結果】男性の食生活リテラシー得点は2018年から2019年で有意に減少していた(p=0.027)。食生活リテラシー得点の変化量は,食品へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.01)と情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.14,p<0.001),食行動得点の変化量(パス係数=0.07,p<0.05)に影響していた。女性の食生活リテラシー得点は有意な経時変化を認めず(p=0.47),食生活リテラシー得点の変化量は,情報へのアクセス得点の変化量(パス係数=0.10,p<0.01)と食行動得点の変化量(パス係数=0.13,p<0.001)に影響していた。【結論】食生活リテラシー得点の向上が食環境の認知得点と食行動得点の向上に及ぼす影響度は強くないが,食生活リテラシーは食環境の認知および食行動の促進要因の一つであることが示された。
著者
野末 みほ 猿倉 薫子 由田 克士
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.36-41, 2010 (Released:2010-09-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

エネルギー及び栄養素摂取量を把握するために食事調査が用いられる。ほとんどの思い出し調査の方法では,食事の記録の際,目安量が用いられる。そのため,目安量から実際に摂取した重量を推定する必要がある。しかしながら,各書籍や栄養計算ソフトに収載されている食品の目安量は様々であり,特に野菜,果物,魚,肉などの生鮮食品の重量についての研究は少ない。従って,本研究では,青果物の規格の面から,階級やその重量等が地域によって,どの程度異なるのかを明らかにすることを目的とした。さらに,食事調査において,青果物を目安量から重量に換算する際の問題点や課題等について検討した。青果物により階級の数及び名称は複数にわたり,なすでは13の階級,いちごでは28の階級があった。さらに,各階級における重量等にも幅があり,いちごのMにおいては,下限の最小値が7g,最大値が74gであった。これらのことから,食事調査において,目安量によって食品が記録された場合に,対象者と調査員,さらに調査員の間で,その目安量に関して共通の認識を持っていることが確認できることが望ましいと考えられる。実際の青果物の摂取量を過大あるいは過小に評価してしまうことを避けるためには,目安量の設定,つまりどの目安をどの重量で採用するのかを十分に配慮する必要がある。(オンラインのみ掲載)
著者
大澤 絵里 石川 みどり 曽根 智史
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.147-155, 2014 (Released:2014-07-19)
参考文献数
42

【目的】本研究の目的は,子どもに対する高脂肪・糖分・塩分(High in Fat, Sugar or Salt (HFSS))食品・飲料のマーケティング規制政策の国際的動向を把握し,子どもたちが健康的な食習慣を身につけるための政策開発の今後の課題を提示することである。【方法】WHO, Consumer International, International Association for the Study of Obesityの報告書に記載された各国の子どもに対するHFSS食品・飲料のマーケティング規制の政策を整理し,法的規制,政府のガイドライン,自主規制の3分類の一覧を作成した。法的規制政策を展開しているイギリス,韓国,および企業の自主規制が特徴的であるアメリカについて,上記報告書の引用文献を参考に,情報を収集し,規制主体,規制主体の権限,“子ども”の定義,規制内容,HFSS食品・飲料の定義について,3か国で比較検討した。【結果】12歳未満が,3カ国の共通するマーケティング規制対象の子どもの年齢であった。キャラクター使用や無料おまけの使用禁止や使用基準の作成,子どもの視聴が多い時間帯では,放送時間および広告内容の規制,規約の実施が明らかとなった。しかし,HFSS食品・飲料の定義については,3カ国で異なるものであった。【結論】12歳未満に対しては,購買意欲を抑えることが,規制政策の鍵となることが明らかとなった。HFSS食品・飲料の定義は各国で異なり,政策の子どもの食習慣への影響評価の早期実施,および健康増進等の他政策を考慮した検討が必要となる。
著者
上田 遥
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.129-137, 2023-06-01 (Released:2023-07-12)
参考文献数
27

【目的】2022年に施行された「食農教育法」下における台湾の食育政策を明らかにする。【方法】WEB入手可能文献(主に政策文書)をもとに同法の背景・体系を分析する。【結果】台湾の食農教育法は,中央レベルでの推進委員会の組織,中央・地方の両レベルでの基本計画策定,食育に関する専門職業の養成,政府・食農産業・学校・地域社会の連携による全国運動としての食育推進という点で,基本的には日本の食育基本法と内容が共通している。しかし,農業の重視,家族・ジェンダーへの配慮,食文化の多様性と開放性など,いくつかの点で日本の課題を克服しうるものであった。【結論】日本や韓国から遅れをとったものの,台湾の食農教育法から学ぶべきことは多い。ただし同法における「食為先,農為本」の思想がどの程度現場で実践されるかについては,さらなる検証が必要である。
著者
長島 未央子 齋藤 和人 萩 裕美子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.107-111, 2009 (Released:2011-05-26)
参考文献数
18
被引用文献数
1

We investigated the effect of kurozu, a brewed vinegar, on the NK cell activity and peripheral blood cells in 18 university student cyclists. They were assigned to two groups, one of 11 drinking kurozu, and the other of 7 cyclists not drinking it. The drinking group was given 30 ml of kurozu a day for 80 days. Both groups performed an equal amount of training for 80 days. The NK cell activity was significantly decreased by 80 days of training in the non-drinking group (from 71.9 ± 15.9% to 61.9 ± 11.3%) (p < 0.05), but not in the drinking group. Kurozu therefore prevent the degradation of NK cell activity by intense training, suggesting its contribution to the physical condition of student bicycle racers.
著者
澤田 めぐみ 冨田 知里 原田 萌香 岸 昌代 田中 寛
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.273-284, 2022-10-01 (Released:2022-11-16)
参考文献数
40

【目的】女子大学生を対象に鉄欠乏の実態を調査し,血清フェリチン値正常群の赤血球関連検査値を明らかにすることを目的とした。【方法】成人女子大学生177人を対象に赤血球関連検査値からフェリチン低値群(フェリチン 12 ng/ml未満)のスクリーニングについて検討した。また食事調査(BDHQ)でフェリチン低値群と減少群(フェリチン 12 ng/ml以上,25 ng/ml未満)を合わせたフェリチン不足群の食生活の特徴を探索した。【結果】鉄欠乏性貧血は3.3%,鉄欠乏で貧血を認めない潜在性鉄欠乏は18.1%と高頻度であった。赤血球関連検査値から鉄欠乏をスクリーニングする場合のカットオフ値は,MCH28.6 pgとすると感度は89.4%,特異度は76.3%と最も良好であった。食事調査において,フェリチン減少群は充足群に比べ鶏肉の摂取量が有意に多かった。フェリチン低値群は充足群に比べハムの摂取量が有意に少なく,洋菓子の摂取量が有意に多かった。またフェリチン不足群を充足群と比較すると,脂ののった魚や納豆の摂取が有意に少なく,コーヒーの摂取が有意に多かった。1,000 kcalあたりの鉄摂取量は中央値で充足群,減少群,低値群の順に 4.83 mg,4.52 mg,4.42 mgであったが有意差はなかった。【結論】女子大学生の21.4%に鉄欠乏を認めた。MCH28.6 pgをカットオフ値とすると,感度,特異度とも高値で鉄欠乏をスクリーニングできた。フェリチン不足群は洋菓子やコーヒーの摂取が有意に多く,食生活のバランスを欠いている可能性が考えられた。