著者
渡辺 優奈 善方 裕美 石田 裕美 上西 一弘
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.Supplement1, pp.S26-S38, 2013 (Released:2013-05-24)
参考文献数
33
被引用文献数
4 1

【目的】妊娠期を通じた横断的および縦断的な鉄摂取量と鉄栄養状態の実態を明らかにし,妊娠期の鉄摂取基準の妥当性を検討した。【方法】妊娠5~12週の妊婦160名をリクルートし,妊娠初期,中期,末期,出産時,産後1ヵ月の調査で身体計測,出産時および新生児調査,鉄剤投与の有無,血液検査,食事記録調査のデータがすべてそろった103名に対し,鉄摂取量と鉄栄養状態を評価した。【結果】妊娠期の鉄摂取量において妊婦の鉄の推奨量を下回った者の割合は妊娠初期71.8%,中期98.1%であった。一方,鉄栄養状態は妊娠初期と比較して中期,末期では赤血球数,ヘモグロビン濃度,ヘマトクリット値および血清鉄濃度は有意に減少したが,産後1ヵ月までに初期と同様の値まで回復した。また妊娠貧血(Hb<11.0 g/dl,Ht<33.0%)の割合は妊娠初期4.9%,中期41.7%,末期53.4%であったが,MCV,MCHの中央値は基準範囲(MCV: 79.0~100.0 fl,MCH: 26.3~34.3 pg)の下限値を下回ることはなかった。なお,低出生体重児は3名,早産児は1名のみであった。【結論】本研究で明らかになった鉄の摂取量で十分であったとはいえないが,鉄需要の亢進にともなう鉄吸収の亢進の可能性が示唆され,現在の妊婦の鉄の摂取基準ほど多くの鉄を摂取せずに鉄栄養状態が維持された。また,鉄の吸収がどの程度亢進しているかまではわからず,体内の総鉄量も評価できなかった。今後は妊婦の体内総鉄量の動態を評価することなど,さらなる検討が必要である。
著者
湯面 百希奈 土居 陽菜 髙山 祐美 能瀬 陽子 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.246-255, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
21

【目的】モンゴル国では,幼児のう蝕罹患率が9割以上と高い。そこで,同国幼児のう蝕予防用食育教材を開発し,現地幼稚園での実践と関係者による評価から,教材の利用可能性を検討することを目的とした。【方法】現地におけるアセスメントの結果より,優先課題を「う蝕予防のためのおやつの選び方と食べ方の知識が十分でないこと」に決定し,学習目標を「おやつの選び方・食べ方の知識習得」として,幼児向け演劇教材と保護者・教師向けハンドブック(モンゴル語)を開発した。公立A幼稚園5歳児クラス(52名)で単回の食育を行い,同日に園児の保護者と教師(13名)にハンドブックを配布した。教材の利用可能性(ニーズや幼児の理解度に合っているか,等)を検討するために,演劇教材では食育参観者7名(幼稚園教師,歯科医師等)に,ハンドブックでは幼稚園教師13名に質問紙調査を行った。また,録画映像の観察から食育実施時の園児の反応と参加度(学習への積極的態度)を評価した。【結果】演劇教材に対し,参観者の8割以上が教材名,内容共にニーズや幼児の理解度に合っていると評価し,今後も活用したいと回答した。ハンドブックに対しては,「保護者の役に立つ」「保護者へ配布したい」が共に84.6%と高かった。食育のまとめのクイズにほぼ全員の園児が回答し,参加度は良好と評価された。【結論】結果より,開発した教材は,現地関係者から一定の評価が得られたため,今後同国で利用できることが示唆された。
著者
北村 真理 中西 尋子 堀内 理恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.265-272, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
18

【目的】保育所から配付された印刷型,オンライン型の食育教材の家庭での活用状況を調べ,閲覧,活用に繋がる提供方法を検討する。【方法】A保育園に子どもが在籍する74家庭を対象とし,6種類の野菜の「含まれる栄養素」「保存方法」「新鮮さの見分け方」「レシピ」を紹介したオリジナルの食育教材をオンライン型と印刷型で配付した。介入期間は6週間とした。調査開始前にオリジナルの教材専用ホームページ(HP)へのアクセスに必要なQRコード,パスワードなどを記載した書面を園より配付し,閲覧をお願いした。1~3週目は前述のHPにオンライン型教材を1週間ごとに計3回アップした。4~6週目は印刷型教材を1週間ごとに計3回,園より配付した。介入終了後,配付した食育教材の活用状況についてのアンケート調査を実施した。【結果】教材の閲覧率は印刷型で93.7%,オンライン型で37.5%であった。印刷型教材の使用状況は理論値との間で有意な差がみられた。配付した食育教材の良かった点はオンライン型,印刷型ともに「閲覧のしやすさ」が一番多かった。印刷型教材の使いやすさは,紹介したすべての項目において,使いやすそう,使いやすかったと回答した人の割合が多く,理論値との間で有意な差がみられた。【結論】保育現場からの家庭向けに教材を作成し配付する際には,印刷型教材の利点を生かし提供することで,教材の閲覧率は高まると考えられた。
著者
信田 幸大 曽根 智子 衛藤 久美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.256-264, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
28

【目的】野菜摂取動機付けセミナー及び野菜飲料提供による環境サポートに加え,野菜摂取量推定装置による自己モニタリングを取り入れた栄養教育プログラムが,勤労者の野菜摂取量に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】勤労者男女を対象に層別化無作為比較試験を実施した。解析対象者は145名(介入群74名,対照群71名,平均年齢42歳)であった。両群に,管理栄養士による野菜摂取動機付けセミナー及び野菜飲料提供による4週間の環境サポートを実施し,介入群のみに野菜摂取量推定装置の測定を試験開始から10週間実施した。介入前,環境サポート終了後,及び野菜摂取量推定装置の測定期間終了後に食物摂取頻度調査票を用いた野菜摂取量,及び野菜摂取に関する行動変容ステージを調査し,群内比較及び群間比較を行った。【結果】介入前と比較した野菜摂取量の変化量を群間で比較した結果,介入4週目では有意差は認められなかったが,介入10週目では対照群よりも介入群の方が,有意に変化量が大きかった。行動変容ステージは,介入群では介入前と比較して各期間で有意な前進が認められたが,群間差は認められなかった。【結論】動機付けセミナー及び環境サポートに加え,野菜摂取量推定装置による自己モニタリングを実施することで,環境サポート終了後も野菜摂取に関する行動変容ステージの前進が維持され,それに伴い野菜摂取量の減少も抑えられる可能性がある。
著者
江田 真純 河嵜 唯衣 赤松 利恵 藤原 葉子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.239-245, 2022-08-01 (Released:2022-09-17)
参考文献数
22

【目的】女子大学生の野菜摂取量増加に向けて,居住形態別に野菜摂取量,栄養素等摂取量を比較し,野菜摂取量と野菜摂取のセルフ・エフィカシー(以下,SE)の関連を検討すること。【方法】女子大学生218人を対象に行った簡易型自記式食事歴法質問票による野菜摂取量,栄養素等摂取量と,属性,野菜摂取のSEの回答を使用した。χ2 検定,Mann-WhitneyのU検定を用いて,居住形態別に属性,野菜,栄養素等摂取量を比較し,Spearmanの相関係数を用いて,野菜摂取量と野菜摂取のSEの関連を検討した。【結果】一人暮らしの者は80人(36.7%),家族・その他と同居の者は138人(63.3%)であった。一人暮らしの者は野菜,栄養素等摂取量のほとんどの項目で家族・その他と同居の者より摂取量が低かった(すべてp<0.05)。居住形態別にみた総野菜摂取量と野菜摂取のSEの関連は,一人暮らしの者では中程度の正の相関がみられ(rs=0.60,p<0.001),同居の者では弱い正の相関がみられた(rs=0.27,p=0.032)。【結論】一人暮らしの女子大学生の野菜摂取量と栄養素等摂取量は家族等と同居の者と比較し,低かった。また,野菜摂取のSEを高めることは,一人暮らしの者の野菜摂取量の向上に活用できる可能性が示唆された。
著者
吉村 亮二 野村 秀一
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.194-200, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
25

【目的】脂質栄養において脂質の吸収,輸送過程とリポたんぱく質の機能を理解,学修することは,食事療法の計画,治療食品の選択,さらに脂質異常症や動脈硬化の病態理解などのために極めて重要である。そこで本研究では,長鎖脂肪酸を多く含有する大豆油と中鎖脂肪酸を多く含有するカプリル酸-カプリン酸トリグリセライド(CCT)を用いて脂質の吸収,輸送経路とリポたんぱく質の機能について考察,学修できる学生実験の条件を明らかにすることを目的とした。【方法】7週齢の雄性Wistarラットへ45%エネルギー脂肪含有高脂肪食を与え,摂食量,飼料組成及び大豆油の比重から大豆油摂取相当量(ml)を算出した。その摂取量を参考に 1 ml/100 g体重の割合で水道水,大豆油あるいはCCTを経口ゾンデにより摂取させ,3時間後に採血し,血漿を調製した。血漿の性状を確認し,トリグリセライド(TG)測定,セルロースアセテート膜電気泳動によるリポたんぱく質の検出を行った。【結果】水道水,CCT群の血漿は透明であったが,大豆油群は白濁した乳び血漿であった。大豆油群は血漿中TG濃度の上昇,およびリポたんぱく質のカイロミクロンの増加が確認されたが,CCT群では観察されなかった。【結論】本研究により,長鎖脂肪酸を多く含有する大豆油および中鎖脂肪酸を多く含有するCCTの吸収,輸送過程とリポたんぱく質の機能を目で見て学修できる実験条件が明らかとなった。
著者
新保 みさ 尾関 彩 草間 かおる 中澤 弥子 笠原 賀子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.177-184, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
10

【目的】本報告の目的は,管理栄養士養成課程におけるオンラインによる海外プログラムについて報告し,その評価を行うこととした。【活動内容】長野県立大学健康発達学部食健康学科の2年生30名に10日間のオンラインによる海外プログラムを実施した。研修先はニュージーランド(以下,NZ)で,プログラムの内容は英語,専門分野(Nutrition 1:NZの伝統菓子の講義・調理実演や調理実習,Nutrition 2:NZの管理栄養士とのセッション,Nutrition 3:栄養の基礎知識・NZの食文化や食生活指針等に関する講義),その他(学生交流など)などだった。プログラム終了後,目標達成度,国際的な視野の向上,NZの栄養・食の課題を説明できるか,海外プログラムの満足度を調査した。【活動成果】全日程に出席した者は27名(90%)だった。調査の回答者は26名(87%)で「海外の栄養士・管理栄養士の活動の現状を説明できる」という目標を達成できた・ほぼ達成できたと回答した者は23名(88%),オンラインによる海外プログラムに満足した・少し満足したと回答した者は23名(88%)だった。満足度に影響したことには現地の学生等との交流や調理実習や試食等の体験をあげた者が多かった。【今後の課題】今回実施したオンラインによる海外プログラムでは,機材や人員,時差,通信のトラブル等の課題があったが,プログラムの目標達成度や満足度は高かった。
著者
頓所 希望 赤松 利恵 小松 美穂乃
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.169-176, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
26

【目的】本研究は,飲食店における健康な食環境整備の推進を目指し,健康な食事は売れないと考える飲食店経営者の特徴および健康な食事提供に対する障壁と健康な食事に対する信念を検討した。【方法】2019年5月に外食事業者を対象にインターネット調査から得た387人のデータを用いた。健康な食事は「売れる」「売れない」の2群とし,対象者および店舗の属性の比較にはχ2 検定,健康な食事の提供に対する障壁と健康な食事に対する信念はMann-WhitneyのU検定,障壁と信念の関係はSpearmanの順位相関係数を用いて検討した(有意水準5%未満)。【結果】「売れる」群240人(62.0%),「売れない」群147人(38.0%)であった。「売れない」群は,「売れる」群に比べ,利用客の8割以上が勤務者の店舗(p=0.037),利用客に男性の方が多い店舗が多く(p=0.001),健康な食事提供は「商品単価が上がる」「味が落ちる」「作業効率が悪い」「ボリューム感がなくなる」と考える得点が高かった。健康な食事に対する信念は,「低エネルギー・低脂質・減塩」の得点が高かった(p<0.001)。【結論】健康な食事を売れないと考える飲食店経営者は,健康な食事に対して不合理な信念をもち,これらの信念は,各飲食店の顧客の特徴に影響されている可能性が示唆された。
著者
赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.185-193, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
18

【目的】飲食店と連携した食環境整備の推進を目指し,飲食店経営者を対象に,健康日本21の認知度および活用,目標「適切な量と質の食事をとる者の増加」に関する取組の実施状況を検討した。【方法】2019年5月インターネット調査会社のモニターである飲食店経営者412人を対象に,健康日本21の認知度および活用,健康日本21(第二次)の「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事をとる者の増加」「食塩摂取量の減少」「野菜と果物の摂取量の増加」の目標の取組の実施状況を調べた。実施状況は得点化し,Mann–WhitneyのU検定,Kruskal-Wallis検定を用い,対象者,店舗の属性,「健康日本21の認知度と活用」の回答で,得点を比較した。【結果】ハレの日の食事としての利用が多い店舗経営者25人を除いた387人(解析対象率93.9%)を対象とした。61.2%(237人)が健康日本21を「聞いたことがない」と回答し,これらの者の取組の実施状況の得点は低かった(p<0.001)。また,ファストフード店や小規模企業者の得点も低かった(各々p=0.002,p=0.007)。【結論】飲食店経営者の「健康日本21」の認知度は低く,認知度が低い飲食店経営者の店舗では,健康日本21(第二次)の目標に関する取組の実施も低かった。「健康日本21」の認知度を高め,外食産業と協働して進めていく方法の検討が必要である。
著者
新杉 知沙 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.210-217, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
26

【目的】新型コロナウイルス感染拡大の影響による行動制限が長引く昨今の状況に鑑み,非対面式で実施可能な,妊産婦の健康的な食生活を促すオンラインツールを用いた介入研究について文献を整理した。【方法】文献データベース(PubMed)上で公表された論文のうち,「妊婦,インターネット介入,食生活」により作成した検索式を用いて文献検索を行った。【結果】包含基準により文献の精査を行ったところ,最終的に4件を採択した。研究対象者は健康的な単胎妊婦や,妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群の既往歴のある女性であった。アウトカム指標により介入時期が異なり,妊娠中の体重増加量過剰割合の減少を目的とした研究では妊娠初期・中期に,産後の体重維持を目的とした研究では妊娠後期や産後に実施されていた。介入内容としては,健康的な生活習慣を促進することを目的とした個別のオンライン教育プログラム,公的機関等による情報提供,専門職からの食事指導,さらに参加者同士の交流が実施されていた。オンラインツールを用いた介入により,産後の体重減少,産後のウエスト周囲径の減少,健康な食事に対する自己効力感の向上がみられた。【結論】妊産婦を対象とした食生活に関するオンラインツールを用いた介入により母体転帰との関連が示唆された。一般向けにわかりやすく正確な情報が集約されたオンラインツールの拡充やそれらの効果検証を含めたさらなるエビデンスの蓄積が求められる。
著者
木村 宣哉 小林 道 杉村 留美子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.158-168, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
32
被引用文献数
1

【目的】本研究の目的は,地域住民におけるヘルスリテラシーと食品群別摂取量及び栄養素等摂取量の関連を明らかにすることである。【方法】研究の参加者は,2018年7~8月に北海道江別市在住の20~74歳の成人である。ヘルスリテラシーは相互作用的・批判的ヘルスリテラシー尺度を用いた。食品群別摂取量及び栄養素等摂取量は,妥当性が確認された簡易型食事歴質問票(BDHQ)を用いて評価した。研究の対象として合計1,607名(男性708名,女性899名)が選ばれた。参加者はヘルスリテラシースコアに基づいて四分位群に分類した。ヘルスリテラシーと食品群別摂取量及び栄養素等摂取量との関連は,共分散分析(ANCOVA)によって確認した。【結果】ヘルスリテラシーの高い参加者は,低い参加者に比べて,その他の野菜類摂取量が高く,Na/K比が低い傾向がみられた。加えて,男性では,ヘルスリテラシーが高い者は低い者に比べて総エネルギーと銅の摂取量が高かった。女性では,ヘルスリテラシーが高い者は低い者に比べて緑黄色野菜類,嗜好飲料類,カリウム,カルシウム,マグネシウム,鉄,亜鉛,ビタミンB1,ビタミンB2,ナイアシン,ビタミンB6,葉酸,ビタミンCの摂取量が高かった。【結論】ヘルスリテラシーの高さは,野菜類や複数の栄養素等摂取量と関連があることが示された。地域住民のヘルスリテラシーを向上させることは,野菜類摂取量の増加につながる可能性が示された。
著者
木林 悦子 中出 麻紀子 諸岡 歩
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.149-157, 2022-06-01 (Released:2022-07-06)
参考文献数
33

【目的】バランスの良い食事,朝食習慣,野菜摂取を含む健康な食事の習慣に関わる要因を包括的に明らかにする。【方法】平成28年度ひょうご食生活実態調査に回答した20~40歳代の720名(男性46%)を対象とした。健康な食事を構成する変数として,バランスの良い食事が1日2回以上,朝食習慣,1日の野菜料理の皿数を設定し,これに関わる要因として,生活習慣病予防のための食態度(エネルギー摂取量の調整,塩分制限,脂肪摂取量の調整,糖分を取り過ぎない,野菜をたくさん食べる,果物を食べる),健康維持の姿勢(適正体重の心がけ,栄養成分表示の活用),外食頻度を用いた仮説モデルを立て,共分散構造分析を行った。【結果】本仮説モデルにおいて,許容範囲の適合度が得られた(χ2=153.015,df=86,GFI=0.967,AGFI=0.940,CFI=0.974,RMSEA=0.033,AIC=293.015)。健康な食事の習慣には,生活習慣病予防のための食態度からの直接的な影響が示されず,健康維持の姿勢を経由して影響を及ぼし,標準化総合効果は,男性が0.40,女性0.41であった。また,男性では,外食頻度から健康な食事への標準化推定値が-0.17(p=0.021)の有意な負のパスが示された。【結論】健康な食事の習慣には,生活習慣病予防のための食態度に健康維持の姿勢が介在し,加えて男性では,外食頻度が悪影響を及ぼす可能性が示唆された。
著者
井邉 有未 赤松 利恵
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.286-292, 2021-10-01 (Released:2021-11-24)
参考文献数
25

【目的】高校生や成人では,咀嚼習慣と肥満の関連が知られている。本研究では,小・中学生を対象に咀嚼習慣と肥満の関連について学年区分別に検討する。【方法】港区教育委員会が実施した小・中学生対象の食育に関するアンケート調査のデータを使用した。体格,咀嚼習慣について,男女,学年区分別にχ2 検定を行った後,痩身傾向・標準体重と肥満傾向の2群に分類し,男女別に肥満と咀嚼習慣について,χ2 検定,ロジスティック回帰分析を行った。【結果】解析対象は,平成30年1月現在港区の小・中学校に通う計8,704人だった(解析対象率95.0%)。ロジスティック回帰分析の結果,未調整のモデル1,学年で調整したモデル2,学年,身体活動,朝食頻度,夜遅い食事,就寝時間,スマートフォン使用時間で調整したモデル3で,噛まない子どもは,噛む子どもに比べ,痩身傾向・標準体重より肥満傾向である可能性が示された[モデル1:男子のオッズ比2.17(95%信頼区間1.69~2.78),女子2.06(1.34~3.20);モデル2:男子2.14(1.67~2.75),女子2.04(1.32~3.16);モデル3:男子1.94(1.50~2.52),女子1.89(1.20~2.98)]。【結論】小・中学生において,よく噛まずに食べる咀嚼習慣は,学年や肥満に関連する生活習慣で調整すると,男女とも肥満に関連していた。
著者
小谷 清子 高畑 彩友美 瀬古 千佳子 吉井 健悟 東 あかね
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.105-115, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
50

【目的】地域の若年期からの循環器病予防をめざして,乳児の父母の推定1日尿中食塩排泄量(以下,食塩排泄量)および尿中Na/K比を評価し,食習慣との関連を明らかにすること。【方法】2015年10月から1年間の,京都府内3市町の全ての乳児前期健診対象児393人の父369人,母386人,計755人を対象とした。早朝第1尿から食塩排泄量と尿中Na/K比を算出した。自記式食習慣調査は食物摂取頻度と減塩意識の13項目で,これらと食塩排泄量および尿中Na/K比との関連について,単変量解析と多変量解析を行った。解析対象は,父166人(年齢中央値34.0),母200人(同32.0),計366人(解析率48.5%)であった。【結果】食塩排泄量(g/日)(中央値)は父10.2,母9.9,尿中Na/K比(mEq比)(中央値)は父4.0,母3.9であった。多変量解析の結果,食塩排泄量と食物摂取頻度については有意な関連がなく,減塩意識ありとの関連は父のオッズ比0.83(95%信頼区間0.44~1.60),母のオッズ比0.55(0.28~1.09)であった。尿中Na/K比と食物摂取頻度については母において有意な関連は認めなかった。父において果物摂取と有意な正の関連を認めたが,その解釈は困難であった。【結論】乳児の父母の食塩排泄量と尿中Na/K比を評価し,これらと食物摂取頻度や減塩意識に有意な関連を認めなかった。
著者
小島 唯 村山 伸子 堀川 千嘉 田中 久子 森崎 菜穂
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.116-125, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
13
被引用文献数
1

【目的】新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言による学校休業を含む学校給食の実施有無と簡易給食の実施状況および簡易給食の提供内容の実態を把握する。【方法】全国の公立小学校および中学校から無作為抽出した479校を対象とした。2020年4~10月の学校給食実施状況を日ごとに回答,簡易給食期間の献立の提出を依頼した。【結果】解析対象校は205校であった(適格率42.8%)。簡易給食を1日以上実施していた学校は55校であった(実施率26.8%)。給食実施なし日数,簡易給食実施日数の中央値(25, 75パーセンタイル値)は各々50(43, 56)日,10(5, 16)日であった。緊急事態宣言の期間が長い地域で,給食実施なし日数が多かったが,簡易給食実施日数に差はみられなかった。解析対象献立は,延べ871日分であった。簡易給食実施初期の献立では調理された料理数が少なく,デザートなどの調理や配膳の不要な単品数が多く,主菜,副菜の出現頻度が低かった。【結論】新型コロナ感染拡大による学校給食の実施中断や簡易給食の実施により,子どもの食事状況に影響があった可能性が示唆された。簡易給食実施初期の献立では単品の提供が多く,簡易給食実施後期の献立では,主食・主菜・副菜を組み合わせた献立が提供されていた。
著者
奥薗 美代子 能瀬 陽子 髙山 祐美 湯面 百希奈 鈴木 新 飯田 晃生 村田 一平 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.139-148, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
25

【目的】交替制勤務者が勤務中に摂取する食事の実態は不明な点が多い。本研究では,24時間稼働の事業所の勤務者を対象として,社員食堂で選択されるメニューと社員の勤務形態・喫食時間の関連性を,全営業時間で同一メニューが提供される社員食堂の給食管理データを用いて明らかにすることを目的とした。【方法】A事業所には,事務系の通常勤務者(以下,日勤群)および製造現場の3交替制勤務者(以下,交替群)の4つの勤務形態があり,それぞれが固定された喫食時間に社員食堂を利用していた。各営業時間に提供された全メニュー(主菜,副菜,麺類,単品もの,デザートに分類)は,社員食堂の給食管理システムから13日分抽出された。各メニューの選択されやすさは,選択割合(提供実績数/実来客数)で算出し,勤務形態(日勤群と交替群),および喫食時間による違いを検討した。【結果】勤務形態別では,交替群は日勤群と比べて野菜を含む副菜の選択割合が有意に低く,主食・主菜・副菜が揃うセットより麺類,単品もの・副菜のセットの選択割合が有意に高かった。喫食時間別では,深夜は他の時間帯よりも麺類と甘いデザートの選択割合が有意に高かった。【結論】交替群,なかでも深夜の時間帯の社員食堂利用者におけるメニュー選択の問題点が明らかになった。交替制勤務者が利用する社員食堂において,健康的なメニューの利用をより容易にする取組みが求められる。
著者
石見 佳子 竹林 純 横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.79-95, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
49

【目的】人びとが健康な食生活を営むためには,適切な食品の選択が求められる。諸外国では消費者が食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品をランク付けする「栄養プロファイルモデル」が活用されているが,我が国においては策定されていない。そこで本研究では,加工食品について,日本版栄養プロファイルモデル試案を作成することを目的とした。【方法】WHO Technical meeting 2010報告書,WHO健康な食生活のための食品の包装前面表示ガイドライン及び諸外国のモデルを参考とし,国民健康・栄養調査,日本人の食事摂取基準(2020年版),日本食品標準成分表2015年版(七訂),日経POSデータ等を根拠資料として用いて,加工食品の日本版栄養プロファイルモデル試案を作成し,妥当性を検討した。【結果】①日本の公衆栄養の観点から,対象を18歳以上,対象項目を脂質,飽和脂肪酸,ナトリウム(食塩相当量)及び熱量とした。②日本版栄養プロファイルモデルとしてカテゴリー特異的モデルを選択した。対象食品を調理済み加工食品を含む加工食品とし,一般加工食品は国民健康・栄養調査食品群別表の中分類を基に15カテゴリーに分類した。③対象項目の閾値基準を設定し,各食品カテゴリーについて閾値を設定した。【結論】日本の公衆栄養の状況に応じた日本版栄養プロファイルモデル試案を作成した。
著者
鈴野 弘子 杉山 法子 三好 恵真子 澤山 茂 川戸 喜美枝 川端 晶子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
榮養學雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.335-340, 1995-10-01
参考文献数
5
被引用文献数
1

全国3,420件の学校給食献立を解析し, 学校給食における野菜使用の現状について調査した。<br>緑黄色野菜の出現頻度は, にんじんが3,726回で最も多く, その他の野菜ではたまねぎ, いも類ではじゃがいも, きのこ類では生しいたけが第1位であった。1食当たりの野菜の平均使用量は, じゃがいも, にんじん, たまねぎが多かった。学校給食では限られた種類の野菜が繰り返し使用され, 量的には国民栄養調査結果の野菜摂取と比較して, にんじん, たまねぎの使用が非常に多いことが認められた。また, 1食当たりに使用される野菜数は, 全国平均で6.3種類であった。ビタミンA及びビタミンCの摂取は, 野菜が大きく寄与していた。
著者
小林 仁美 金子 健彦 多賀 昌樹
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.77-84, 2019-08-01 (Released:2019-10-15)
参考文献数
31

【目的】月経前症候群(PMS)の発現には様々な因子が関連しており,これまでに睡眠時間や栄養素摂取,欠食の有無,やせや肥満,運動習慣などとの関連が報告されている。食物には様々な栄養素が含まれていること,時代と共に食事内容は変化することを考えると,食事を選択する際の意識・傾向を含め,継続的,多角的な視点でPMS症状との関連を解析する必要がある。そこで本研究では,女子大学生を対象にPMS症状と食生活習慣の関連について検討することを目的とした。【方法】52名の女子大学生を対象とし,PMS症状に関する調査,食事調査および食生活習慣調査を実施した。PMS症状はMDQ(Menstrual distress questionnaire)を用いて評価し,MDQスコアと栄養素および食品摂取量の相関を求めた。平均値の比較には対応のないt検定を行った。【結果】MDQスコアと栄養素等摂取量との相関を検討したところ,動物性たんぱく質,動物性脂質,飽和脂肪酸,飽和脂肪酸エネルギー比率,コレステロールと正の相関,炭水化物と負の相関が認められた。食品摂取量では肉類,卵類,乳類と正の相関,穀類および砂糖・甘味料類の摂取量と負の相関が認められた。また,食生活習慣調査では食品の組み合わせや調理方法を考慮しない者はMDQスコアが高く,PMS症状が強かった。【結論】栄養素や食品の摂取量とPMS症状の程度には相関が認められることが明らかになった。食生活習慣の改善はPMS症状を緩和するために有効な手段の一つである可能性が示唆された。
著者
山内 有信
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.51-59, 2022-02-01 (Released:2022-03-12)
参考文献数
21

【目的】核酸(RNA)高含有玄米発酵抽出物(FBR)の摂取が血糖値の上昇を抑制することについて,ラットを用いた一連の実験によってすでに報告している。しかし,この一連の実験は動物実験であり,摂取させたFBRも多量であった。そこで,本研究では,推定通常摂取量付近の摂取でヒトにおいても同様の効果が期待されるかについて経口糖負荷試験によって確認することを目的とした。【方法】健康な若年日本人25名(男性6名,女性19名)を被験者として,約10%濃度のマルトデキストリン水溶液と 5 gの粉末化した通常玄米(NBR)またはFBRの同時摂取による糖負荷試験を,シングルブラインド・クロスオーバー試験にて実施した。なお,血糖値の測定は,30分間隔で糖負荷後120分間実施した。【結果】糖負荷後の経過時間が影響する血糖値の変化の仕方にFBRとNBRで違いはなかった。しかし,FBRの摂取による血糖値の変化は,NBRに比べて緩やかであった。また,糖負荷後120分間の時間曲線下全面積および血糖上昇曲線下面積を計算して比較した結果,実測値計算と変化率計算のいずれにおいても,FBRの同時摂取時はNBR摂取時に比べて有意な低値を示した。【結論】FBRの摂取は,健康な若年日本人においても食後血糖値の上昇抑制が期待できることが示唆された。