著者
佐藤 毅彦 前田 健悟 今井 一雅 戎崎 俊一 川井 和彦 坪田 幸政
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

平成17年度に引き続き、星座カメラi-CANを米国ニューメキシコ州(アパッチポイント天文台)、スペイン・カナリー諸島(ブラッドフォード望遠鏡施設)、米国ハワイ州(国立天文台すばる望遠鏡)に設置した。これにより、海外6サイト、国内1サイトのネットワークが完成した。特にスペイン・サイトの設置は、日本の早朝に夜空の観察を可能とし、学校の授業での利用に対する制限を大幅に緩和した。また、ハワイ・サイトは、子どもたちが帰宅した後、自宅から星空を見るのに便利である。授業後の感想に大変多い「家へ帰ったら、早速見てみたい」という希望を叶えるものとなった。授業実践も、熊本市立龍田小学校、同清水小学校、同松尾西小学校、天草市立本町小学校、北海道教育大学附属小・中学校、石狩市立石狩小学校などにおいて、多数行った。また、科学技術館におけるサイエンス・ライブショー「ユニバース」での定期的な活用、熊本市博物館における特別講演会「ワンダー・プラネタリウム:南天の星空を見上げて」など、社会教育への展開も精力的に行った。これらを通じて、子どもたちの反応をアンケートにもとづき評価し、「興味・関心・意欲」といった情意面、「知識・理解」といった認知面の両方において有効な天体学習ツールに成長し得たことを確認できた。今後は授業での活用を継続するとともに、科学館・博物館における有効利用、さらに宇宙航空研究開発機構などで推進されている宇宙開発の啓蒙の一端を担うツールとしての発展が期待される。
著者
澤田 秀夫 宮嵜 武
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

JAXA60cm磁力支持天秤装置を用いた風洞実験と高速度カメラを用いた野外実験の二つの手法で和弓矢の空力特性を測定することに成功した。風洞試験結果を用いて矢が軸周りに回転する効果をモデル化し、クロスボウの矢についても風洞試験と野外実験により空力特性を得ることができ、抵抗係数では両者に合理的な一致を見た。風洞試験では、矢が軸周りに回転している状態や、矢の軸が水平面内で1次モード弾性振動をしている状態で空気力を測定する磁力支持天秤技術を獲得した。
著者
中村 正人 松田 佳久 高木 征弘 今村 剛 はしもと じょーじ 山本 勝 大月 祥子 小郷原 一智 林 祥介
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

欧州の金星探査機Venus Expressにより得られた観測データを金星探査機「あかつき」のデータ解析システムで分析するとともに、大気大循環・放射輸送・雲物理・大気化学の数値シミュレーションを行い、大規模風系の維持と大気物質の循環のメカニズムを探った。これらの成果をもとに、残された問題点を洗い出し、2015年に改めて周回軌道投入を目指す「あかつき」の観測計画の最適化を進めた。
著者
塩谷 圭吾 中川 貴雄 小谷 隆行
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本応募研究の目的は、系外惑星の直接観測による大気分光という重要課題にのぞむため、赤外線宇宙望遠鏡に搭載する極低温デフォーマブルミラーを開発実証することである。デフォーマブルミラーの駆動方式には、Micro-Electronic Mechanics System (MEMS)方式を採用した。そして冷却時の最大の問題である熱応力を考慮した設計を行い、極低温(5K)で動作する多素子(1000素子)のDMを制作、試験することができた。
著者
安部 正真 川勝 康弘
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

現在「はやぶさ」に続く小天体探査の検討が進められている。次期小天体探査では「はやぶさ」が探査したS型小惑星よりさらに始原的なタイプの小惑星の探査を進める予定である。具体的にはC型小惑星の探査を検討しており、探査機が到達しやすい近地球型小惑星の中で始原的なタイプの小惑星を多数検出することが必要となってる。本研究において、我々はまず、探査機の到達しやすい近地球型小惑星のリストを作成した。リストアップした小惑星それぞれについて観測好機を調べ、観測後期を迎える小惑星の多色測光を適宜行い、小惑星のスペクトル型の推定を進めてきた。観測は東京大学木曽観測所の1.05mシュミット望遠鏡および台湾鹿林天文台の1m望遠鏡を用いている。これまで3年間で30天体の観測を実施し、20天体のスペクトル型を推定することに成功している。これらのうち5つはC型小惑星であった。本研究開始前の探査しやすい近地球型小惑星でC型小惑星と判明していた天体は、7天体であったが、我々の研究成果と海外の研究者の観測成果を合わせて、現時点でC型小惑星は15天体となり、ほぼ倍の数となった。この数は本研究を開始する前の予測とほぼ一致している。探査しやすいC型小惑星の数が約2倍になったことにより、探査計画の設計自由度が上がり、探査のフィージビリティーが向上している。これらの結果を踏まえて、2010年の打ち上げを想定している「はやぶさ2」ミッションの探査候補天体については、C型小惑星である1999JU3が有力な探査対象として選ばれている。本研究では1999JU3を探査する場合の探査機の具体的な軌道計画についても検討を行い、はやぶさと同程度の探査機設計で探査できることを明らかにした。
著者
橋本 樹明 澤井 秀次郎 斎藤 芳隆 稲富 裕光 石川 毅彦 小林 弘明 坂井 真一郎 山川 宏 吉光 徹雄 斎藤 芳隆 石川 毅彦 稲富 裕光 澤井 秀次郎 坂井 真一郎 吉光 徹雄 小林 弘明 藤田 和央 坂東 信尚 山川 宏
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

数十秒間の微小重力環境を中程度のコストで実現する手段として、高高度気球から微小重力実験装置を落下させ、自由落下中に微小重力実験を実施するシステムを開発した。飛翔実験にて10^<-4>G以下の微小重力環境を約35秒間実現し、今後の定常的運用に目処を立てた。
著者
小高 裕和
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

新世代・次世代の高精度宇宙X線観測に向けて、モンテカルロ法に基づくX線放射計算コードの開発を行った。このコードはさまざまな天体に適用可能な高い汎用性を持つフレームワークMONACOとして完成した。物理プロセスとして、高温の降着流における逆コンプトン散乱、光電離プラズマ、低温物質からのX線反射を扱うことができる。これらを中性子星・ブラックホールへの降着流、活動銀河核からの超高速アウトフロー、活動銀河ダストトーラス、白色矮星の降着円盤コロナに適用し、モンテカルロ計算による高精度データをすざく衛星、チャンドラ衛星、XMM-Newton衛星などのデータに適用する仕組みを確立した。
著者
津田 雄一
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究が理論的な基礎としている状態遷移行列の近似法に関する理論(申請者とコロラド大学教授との共同執筆論文)は,摂動の作用する実環境の状態遷移行列を解析関数群で近似する手法である.本研究により,左記の近似を施しても,状態遷移行列がそもそも物理的に本来保存すべき数学構造を保存する定式化が可能であることが示された.ここで本来保存すべき数学構造とは斜交群構造(simplecticity)であり,この構造を保存することで良好なエネルギー保存・運動量保存特性が得られるのが特徴である.また,本理論の具体的応用先として,実摂動環境下での編隊飛行の相対軌道設計に適用する手法について,網羅的に示された.具体的作業としては,前年度に引き続き,理論面では状態遷移行列の特異値構造に基づく最適編隊飛行軌道の設計法を構築した.結果として得られた手法は,地球周回の編隊飛行ミッションにおいて,実際の摂動環境下で制御コストの推算および最適相対軌道設計が容易となるものである.本手法は,摂動源の数学的・物理的構造に着目した手法であるため,場当たり的な数値最適化とは異なり,摂動源ごとの挙動の分離が可能であり,最適設計の指針が得やすい(設計者に自由度が残される)のが特長である.本年度の研究活動により,当該設計法を実現する計算プログラムコードの開発・評価を行い,妥当な結果を得た.研究成果は,年度中盤の3回の国際学会にて発表を行うとともに,理論構築の基礎部分について,学術論文としてまとめた.
著者
川崎 繁男 稲谷 芳文 成尾 芳博 三田 誠 丸 祐介 吉田 賢史 宮地 晃平 西川 健二郎 ITOH Tatsuo
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

無線情報エネルギー伝送技術を適用したICセンサタグのネットワーク化による宇宙機用安全監視システムを構築した。これは、ハイブリッド集積回路によるセンサICタグ、集積回路技術による小型基地局と制御、データ通信、および、無線電力伝送をコントロールするファームウェア等で構成された。システムを実現するため実験局免許も取得し、S帯2.45GHz・Zigbeeによるワイヤレスセンサネットワーク情報・データ通信に関わる情報伝達と、マイクロ波によるC帯5.8GHz無線電力伝送の両立を、再使用宇宙機RVTモデル機で検証し、完全ハーネスフリーの再使用宇宙機用ワイヤレス安全監視システムの実現性を実証した。
著者
佐藤 毅彦 松本 一郎 石井 雅幸 上田 晴彦
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

小学校第6学年理科「月の満ち欠け」学習では、日々変わる月の形を観察・記録することが重要だが、晴れの日が続くことは日本ではなかなかない。そこで天候条件に左右されにくいよう、ネット経由で晴れているサイトの月を観察できるツールWel-CAMを開発し、教育実践や教員研修に活用した。このツールは、月の満ち欠けと同時に、月と太陽の相対的位置関係も把握することができるよう工夫されている。これにより、観察結果にもとづいて子どもたちが現象の規則性を調べ、その原理を納得・理解することができるようになると期待される。
著者
佐藤 毅彦 熊野 善介 石井 雅幸 五島 政一 坪田 幸政 松本 榮次 福田 章人 丸山 修 岩崎 泰久 木村 かおる
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

実験・観察を重視する新学習指導要領理科「天体」分野の教育を現場レベルで向上させることを目的に、教材・カリキュラムの開発を行った。昼間に星空を見るためには、インターネットを経由した遠隔天体観察ツールを活用した。新設単元「月と太陽」における「満ち欠け」指導方法には特に力を入れ、学習教材BaMoonを開発するとともに、視点共有のためのカメラ活用を考案し、教員研修会等で広める活動をした。
著者
須浪 徹治 新井 隆景 滝田 謙一 松尾 亜紀子
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

H22年度研究実施計画に基づき研究を実施し,下記の成果を得た.1.境界層制御について,インレットと燃焼器の境界層剥離抑制を目的に,縦渦導入装置を設計し,燃焼実験による剥離抑制効果の確認と,着火・保炎等の燃焼特性への影響を調査した.また,壁面摩擦抗力低減の理論的検討を進めた.2.燃料噴射器・混合制御手法では,噴射器の縦渦導入部形状をパラメータとした性能評価を非燃焼・燃焼実験,CFD解析により実施し,混合・燃焼性能向上に必要な知見・データを取得した.3.着火・保炎・燃焼制御手法では,実験で観察された超音速燃焼器内のデトネーション生成・伝播・減衰の過程をCFDにより再現するとともに,伝播条件・伝播特性について調べた.着火装置について,超音速流中で誘電体バリア放電と非平衡プラズマの生成に成功し,これを用いた燃焼試験を実施した.4.広帯域燃焼器設計について着火,保炎,燃焼,インレット-燃焼器干渉抑制の全ての性能向上を目的とした燃焼器流路の形態提案と形状設計を行い,第1期エンジン設計へ適用した.5.インレット始動特性・性能評価については,可変形状インレットの可変量変化に伴う性能(インレット出口気流状態)についてCFDにより調べた.また,インレットの設計・性能予測ツールに関し,CFDによる評価・検証を進め,広帯域インレット最適化に向けた課題抽出を行った.6.第1期エンジンについては,H21年度成果および上記1~5の重要成果を適用してエンジン形態決定・形状設計・製作を行った.また,CFDによる事前性能評価を行った.7.燃焼器作動特性・性能評価については,HIEST燃焼実験(H24年6月)により実施予定である.
著者
小川 博之 小林 康徳 平木 講儒
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

固体ロケットプルームによる電波干渉の直接的原因として,(1)燃焼ガス中に含まれるアルミ・アルミナ粒子による散乱吸収,(2)燃焼ガス中に含まれる自由電子,を取り上げ,それぞれについて電波減衰量を見積もった実験で観測される減衰量,電波減衰の周波数依存性から,電波干渉の直接原因は燃焼ガス中の自由電子であると結論づけた.自由電子による電波減衰を評価するパラメタである,自由電子密度と電子衝突周波数を求めるための解析モデルを構築した燃焼ガス流れ中の自由電子密度変化を解析できるモデルにより,プルーム中の自由電子密度分布を求めたプルーム中の化学反応は凍結しており,自由電子のモル分率は変化しないこと,自由電子数密度は巨視的物理量から求めることができることを示した.混相流解析を行い,アルミ・アルミナ粒子が流れ場に及ぼす影響が小さいことを示した.1次元プラズマスラブを仮定した電波減衰解析,2次元プラズマモデルによる電波の伝播解析を行った.電波の回折・屈折の効果は無視できないことがわかった.電波減衰量は周波数に対して弱い負の相関があること,電子密度に比例し電子衝突周波数に反比例することを示した.地上燃焼試験において,電波とロケットモータプルームの干渉実験を行ったモータの燃焼末期を除き定性的に理論どおりの結果が得られた.自由電子数密度が理論よりも小さく見積もられたが,これは不純物Naの量を実際と比べて大きく見積もっていたためと考えられる.燃焼中モータプルームによる電波の変調はないことがわかった.燃焼末期の電波減衰の振る舞いは現時点では説明がつかないため,今後研究を継続して明らかにする必要がある.今後,実際のロケット飛翔へ適用できる解析ツールの整備を行っていく予定である.
著者
笠原 慧
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

人工衛星による粒子の直接観測は、宇宙における粒子加速機構の解明に不可欠である。本課題ではこれまで技術的に困難であった中間エネルギーイオン観測実現に向け、キーテクノロジーのひとつである質量分析器の開発を行った。数値シミュレーションを行って構造を決定し,それに基づいて製作した分析の性能を,実験室で確かめる事ができた.
著者
津村 耕司
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究課題にて、当該年度中にすばる望遠鏡・ハッブル宇宙望遠鏡・Spitzer宇宙望遠鏡での観測をほぼ完了した。前年度までに確立した、本研究目的に特化した観測手法にて観測を実施し、データ解析を行った所、エウロパ・ガニメデ・カリストが近赤外線での波長域において木星の影中においてもわずかに明るいという新たな事実を発見した。この現象の解明は、本研究目的においても必須である為、新たに惑星科学の専門家達と相談し議論・検討をすs目多結果、木星上層大気による差太陽光の散乱が最もありえる説であるとの結論を現時点で得ている。この新発見は、今までほとんどデータが得られていなかった圧力帯(10mbar付近)での木星大気構造について、地上観測から制限を付けられる可能性を秘めており、今後の発展が期待される。そこで、これらの観測結果をまとめた論文を用意し、投稿した(現時点で査読中)。また、ガリレオ衛星食観測で目指す観測目的である赤外線背景放射について、赤外線天文衛星「あかり」やロケット観測実験CIBERによるデータ解析・成果発表等も並行して実施した。
著者
高木 俊暢
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

「あかり」衛星による連続体な近-中間赤外線による測光観測結果を用いることにより、多環芳香族炭化水素(PAH)による特徴的な放射特性を捉えられることを示した。つまり、「あかり」衛星では、PAH放射が強い銀河を、分光せずとも、測光観測のみで同定することができる。この特徴を活かし、私たちは、PAH放射の強い銀河を同定する方法を確立した。この方法では、7および11μm、または、9および15μmで定義される色で、非常に赤くなる天体に注目する。この色は、フラックス比で8倍に相当し、活動銀河核やその他PAH以外の放射特性では再現できない色である。つまり、これら赤外線で明るいPAH銀河は、AGNではなく、純粋に爆発的な星生成活動によって明るくなっている天体と考えられる。近傍では、赤外線光度が10^<12>太陽光度を超える超光度赤外線銀河は、全赤外線光度に比べて、PAH放射が弱く、AGNの全光度への寄与、または、PAH放射のダストによる吸収があると考えられる。一方、「あかり」で見つかった赤方偏移1付近のPAH銀河は。超光度赤外線銀河でありながら.PAH放射が強く、中間赤外線でのスペクトル特性は、純粋なより小規模な爆発的星生成銀河のそれと矛盾しないことを示した。
著者
山上 隆正 斎藤 芳隆
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

平成15年度に開発した厚さ3.0μm、折径140cmの薄膜ポリエチレンフィルムを用いて容積3万立方米の気球を製作し、飛翔性能試験を行った。平成16年度は、さらに薄い厚さ2.8μm、折径140cmの薄膜ポリエチレンフィルムを開発し、容積5千立方米の気球を製作し、飛翔性能試験を行った。2機の薄膜型高高度気球は、それぞれ予測した高度まで正常に上昇した。また、厚さ2.8μmで容積6万立方米および容積30万立方米の気球を製作し、地上において頭部試験を行った。その結果、将来高度60kmまで飛翔できる目処をたてることができた。スーパープレッシャー気球の開発では、昨年度の地上試験結果を踏まえて、容積1万5千立方米のパンプキン型スーパープレッシャー気球を製作し飛翔性能試験を行った。気球は高度28kmで圧力のかかった状態で水平浮遊に入った。その結果、将来の大型スーパープレッシャー気球化への第一歩を踏み出すことができた。また、大重量観測器を高度40km以上に浮遊でき、気球本体の自重を最小限にするための気球の構造解析を行い、薄いフィルムで気球頭部にキャップを被せるタイプの気球の開発を行い、その有効性を試験するために容積50万立方米気球の頭部部分を製作し、地上において実際に2.6トンの浮力を付け、その性能評価試験を行った。その結果、われわれの構造解析が正しいことが実証された。
著者
中川 貴雄 塩谷 圭吾 小谷 隆行 GUYON Olivier
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

太陽系外惑星(系外惑星)の直接観測は、惑星の誕生から進化、多様性、また究極的には地球外生命の兆候にも迫る、人類の宇宙観に関わる重要な研究テーマである。しかし、主星光と惑星光のコントラストが極めて大きいことが直接観測の障壁となっている。大気の影響のないスペースから、コントラストの点から有利となる赤外線領域で、我々の太陽系外の惑星を直接検出することを目指して、ステラー・コロナグラフの開発に取り組んだ。その結果、今までにない高いコントラスト達成の実証実験に成功し、波面補償の基本アルゴリズムを開発し、赤外線実験用環境を構築し冷却実験に成功するなどの成果を上げられた。これらの成果は、将来のスペースからの系外惑星観測の貴重な基礎技術獲得となる。
著者
国分 紀秀 中澤 知洋 渡辺 伸
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

ガンマ線を用いた天体観測における観測限界感度を大幅に引き上げ、新世代のラインガンマ線天文学を開拓するため、ガンマ線を集光することが可能なガンマ線レンズの開発と、集光したガンマ線を高感度で観測する検出器の開発を行った。ガンマ線レンズの試作機を用いた基礎特性の測定と、人工衛星搭載用焦点面検出器のプロトタイプの開発を行い、性能実証を行うことが出来た。
著者
松原 英雄 中川 貴雄 和田 武彦 有本 信雄 児玉 忠恭 川良 公明
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、最先端のスペース及び地上望遠鏡を用いて、可視光から電波領域にわたる多波長サーベイ観測を連携させることにより、「超極赤銀河」(遠方の大きな赤方偏移を受けたスペクトルを持つ銀河で、宇宙の星形成史を解明する上で重要な天体)を多数発見し、さらにその正体を探ることにある。これにより宇宙誕生から現在にいたる宇宙の星形成の歴史の解明に挑む。そこで本研究では、天空の1-5平方度の領域について可視光域〜電波領域にわたる多波長サーベイを連携的に行った。波長2-160ミクロンでのサーベイは、平成18年2月に打ち上げられた赤外天文衛星「あかり」で行った。この特徴は「広く・かつ深く、地上からできない波長をカバー」であり、これによりこれまでに知られている超極赤銀河の数に比べて桁違いに大きいサンプルを得ることができた。「あかり」は、Spitzer宇宙望遠鏡に比べて多数の連続したフィルターバンドを持つおかげで、「あかり」でしか検出不可能な、「PAH高輝度銀河」、「シリケイトブレーク銀河」といった新天体の発見や、700個にも及ぶ「極赤中間赤外線天体」(ERMOs)を検出した。PAH高輝度銀河は中間赤外線で選択した銀河サンプルの約1%に過ぎないけれども、星形成の年齢の極めて若い大変重要な段階にある銀河と考えられる。一方ERMOsは中間赤外線で選択した銀河サンプルの約10-15%存在し、そのかなりの割合が、星形成銀河というよりもむしろ塵に埋もれた活動的銀河核をエネルギー源とするような天体であることがわかってきた。今後このような天体の正体をさらに詳しく調べていくことで、銀河進化の描像に新たな知見を加えることができるであろう。