著者
滝沢 茂男 武藤 佳恭
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.43-57, 2006 (Released:2007-12-28)
参考文献数
68
被引用文献数
2

人口の25%を高齢者が占める超高齢社会を迎え,高齢者の5 人に一人が要支援や要介護になる.介護は人と人との間での行為であり,在宅介護に入るヘルパーの8 割が腰痛に悩まされている.年齢状況を問わず,介護者の健康管理により,介護労災を防ぎ,介護力を高めることは,在宅の老々介護を可能にし,超高齢社会を安定的に維持するために重要である.顕著な筋骨格疾病減少を実現した英国法律を調査し,法整備とその執行についてわが国と比較した.わが国の筋骨格疾病減少へ向けた介護現場における意識,対策やその現状を調査し,明らかにした.これらの研究結果から,現状の法体系のままでは,わが国における看護・介護現場の筋骨格疾病減少は期待できないことが分かり,法整備の必要性を述べた.
著者
吉川 肇子 白戸 智 藤井 聡 竹村 和久
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-8, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
11
被引用文献数
15 11

本稿では,社会技術研究で重要となる安全と安心の概念について,以下の4つの視点から論じた.第1に,安心と安全について,日常的にどのような文脈で使われているかを主に新聞記事をもとに検討した.第2に,それぞれの概念について専門家はどのように考えているのかについて,各分野の安全基準を参照しながら検討した.第3に,以上の検討をもとに筆者らは,安全は技術的に達成できる問題であり,安心とは,安全と大いに関連があるものの,それだけでは達成できない心理的な要素を含むものであると考えた.第4に,安心と安全を能動型と無知型に分類し,社会技術研究で目指すべき能動型安心を達成するあり方を議論した.
著者
吉澤 剛
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.42-57, 2009
被引用文献数
4 5

1960年代末に民間の知識層によって日本に概念が輸入されたテクノロジーアセスメント(TA)は, トータルシステムのマネジメントとしての側面を持っており, 民間においては企業の社会的責任などのために導入されたものの問題意識が一企業の範疇を超えるため公的機関で実施されることが期待され, 一方の政府においてはプロジェクト単位での予測・評価活動を合理化・正当化することとなった.本稿ではTAという概念が産業界・科学技術庁・通商産業省・国会議員などのアクターによってそれぞれの文脈で利用され, TAの本質的な機能を発現しない形で変容していった過程を方法論的な変遷と政治的な背景の分析から追っていく.
著者
滝沢 茂男 武藤 佳恭
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.4, pp.43-57, 2006

人口の25%を高齢者が占める超高齢社会を迎え,高齢者の5 人に一人が要支援や要介護になる.介護は人と人との間での行為であり,在宅介護に入るヘルパーの8 割が腰痛に悩まされている.年齢状況を問わず,介護者の健康管理により,介護労災を防ぎ,介護力を高めることは,在宅の老々介護を可能にし,超高齢社会を安定的に維持するために重要である.顕著な筋骨格疾病減少を実現した英国法律を調査し,法整備とその執行についてわが国と比較した.わが国の筋骨格疾病減少へ向けた介護現場における意識,対策やその現状を調査し,明らかにした.これらの研究結果から,現状の法体系のままでは,わが国における看護・介護現場の筋骨格疾病減少は期待できないことが分かり,法整備の必要性を述べた.
著者
吉澤 剛
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.42-57, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
131
被引用文献数
7 5

1960年代末に民間の知識層によって日本に概念が輸入されたテクノロジーアセスメント(TA)は, トータルシステムのマネジメントとしての側面を持っており, 民間においては企業の社会的責任などのために導入されたものの問題意識が一企業の範疇を超えるため公的機関で実施されることが期待され, 一方の政府においてはプロジェクト単位での予測・評価活動を合理化・正当化することとなった.本稿ではTAという概念が産業界・科学技術庁・通商産業省・国会議員などのアクターによってそれぞれの文脈で利用され, TAの本質的な機能を発現しない形で変容していった過程を方法論的な変遷と政治的な背景の分析から追っていく.
著者
中島 達雄
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.110-119, 2010 (Released:2011-09-14)
参考文献数
33
被引用文献数
5 3

原子力事故やトラブルについての全国紙4紙の報道を分析し,特ダネ記事となった事例や,1紙が大きく報じた後に他紙も大きく報じるようになった事例,同じタイプの事故なのにある時は大きく報じられ,ある時は小さく報じられた事例,複数の事故において共通して報じられた事例などを抽出した.これらの報道には,マスメディア間の相互作用が認められた.特ダネや複数の事故で報じられた事例は,原子力関係者の努力で防ぐことが可能である.一方,マスメディア側の事情によるニュース価値の変化には,原子力関係者は関与できず,マスメディアの自己検証が必要である.こうした事情を知ることは,広報やリスクコミュニケーションの改善だけでなく,報道の受け手のメディアリテラシー向上にも役立つ.
著者
堀 洋元 上瀬 由美子 下村 英雄 今野 裕之 岡本 浩一
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.1, pp.248-257, 2003
被引用文献数
1

本研究では,職場における違反と個人特性との関連について明らかにすることを目的としている.サンプリングによって抽出された501名の有職者男女の回答を分析した結果,1)職場において3割から5割の人が個人的違反を経験しており,不正かばいあい経験は1割前後,不正の非難・回避経験は2割前後存在することが明らかになった.2)職場における違反と個人特性との関連を検討した結果,違反に対する抵抗感には自尊感情や関心の狭さが,違反経験には公的自意識や認知的複雑性が影響を与える個人特性として特定された.個人特性は本来変容しにくいものとしてとらえられているが,変容可能なソーシャルスキルとして置き換えることによって,職場における違反抑止のための心理学的装置として応用可能である.
著者
岡村 健志 那須 清吾 熊谷 靖彦
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.6, pp.159-167, 2009

地方部における道路基盤や公共交通などのモビリティ環境は,都市部に比較すると十分に整備されておらず,さらに事業主体の財務状況が芳しくないことなどから,インフラ整備などの抜本的な対策は満足に進まない.このようななかで地方部の道路交通問題に対して,抜本的対策に比べ低予算で実行可能なITSは,実践的な対策として注目を浴びている.本稿では,高知県下で実施された「トンネル歩行者問題」と「ノーガード電停問題」をケーススタディに,それぞれの固有の道路交通問題を構造化し,ロジックモデルによりITSの効果構造を明らかにするとともに,ITSの効果を紹介する.また,それらを踏まえ,地域固有の道路交通問題を解決する手段として,地方部におけるITSの位置づけと重要性について考察する.
著者
馬場 健司 木村 宰 鈴木 達治郎
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.3, pp.241-258, 2005
被引用文献数
3 3

近年急速に導入が進んでいる大規模風力発電所(ウィンドファーム)の立地に際して,しばしば環境論争が発生している.文献調査とヒアリング調査により,全国的な論争の推移とそのパターンを分析し,その中からプロセスと結果において対照的であった2つのケースを対象とした詳細な比較分析を行った結果,以下が明らかとなった.制度に基づく公式プロセスにおける課題設定は,制度そのものの性格,非公式プロセスで得た情報,当該課題の公共性・公益性の定義に影響されている.論争の主な要因は,環境影響評価法の対象外となっていること,地域の野鳥・野生生物の生態系に係わる情報や認識の不足である.今後の社会意思決定プロセスとしては,戦略的環境アセスメントによる中央と地方の相互補完的な多層レベルの制度化や,総論と各論というように段階的に論点を配分する参加型手法の適用などが考えられる.
著者
鈴木 達治郎 城山 英明 武井 摂夫
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.4, pp.161-168, 2006
被引用文献数
2 2

安全規制に対する社会的信頼の確保を目的として,安全規制体制に一定の「独立性」を付与する試みが行われる.独立性は,様々な文脈における政治的独立性と技術的独立性に分けて理解することができる.本研究では,米国における原子力規制委員会における独立性の制度設計とその運用を分析し,我が国における原子力安全規制体制と比較することを通して,社会的信頼を確保するためには政治的独立性だけではなく技術的独立性が重要であるという示唆を得た.
著者
鈴木 達治郎 武井 摂夫 城山 英明
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.2, pp.275-284, 2004
被引用文献数
1 1

昨今の原子力に係る不適切な取扱い等に鑑み、国内の原子力安全規制においては電気事業法の改正、国の業務の一部を担う機関である「独立行政法人原子力安全基盤機構」の発足など、新しい規制制度が運用され始め、施設の検査等において民間の第三者機関による規格設定制度や認証・認定制度が着目されている。米国、仏国等においては既に原子炉の供用期間中検査や溶接検査等において当該制度の導入が異なった方式で図られており、一定の実績を上げている。本研究においては、原子力関連施設の安全規制における第三者機関の役割に関して日仏米の比較分析を行い、日本における今後の制度設計に関する示唆を得る。
著者
西郷 貴洋 小松崎 俊作 堀井 秀之
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.87-98, 2010 (Released:2011-09-14)
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

2006年から2007年にかけて高知県東洋町で発生した高レベル放射性廃棄物(HLW)処分地候補の文献調査への応募を巡る紛争においては,住民間で激しい対立が起きて冷静な議論ができず,町内に禍根を残した.本研究では今後の処分地選定においても懸念される対立の緩和に資する教訓を得るため,東洋町での紛争の政治過程分析・対立要因の抽出・解決策の導出・解決策のシナリオ分析を行った.その結果,公募に基づく当時のHLW処分地選定制度に起因し,住民の対立感情や住民間の禍根といった問題の解決を困難にしている要因の一つとして,「自ら応募し,交付金を受け取るという構図」の存在により,金目当ての応募であるという批判に反論できないという要因を抽出した.
著者
中島 貴子
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.321-330, 2004-10-29 (Released:2007-12-21)
参考文献数
52
被引用文献数
2

2003年7月1日, 内閣府食品安全委員会が発足し, 食品安全のリスクコミュニケーションを推進する活動が活発に展開され始めた. 本稿では, 食品安全委員会のリスクコミュニケーション活動には, 消費者と行政や専門家の間に様々のディスコミュニケーションが存在していることを指摘する. また, リスクコミュニケーション活動の重点が行政の信頼回復よりも消費者への啓蒙活動に重点が置かれていることや, 消費者の行政不信が歴史的に蓄積されていることが, 潜在的ディスコミュニケーションの要因となっていることを指摘する. 積年のディスコミュニケーションを解消し, より健全な食品安全行政を創出するためには、戦後の食品安全行政史を食品安全委員会が主導して取りまとめる必要がある.
著者
安藤 二香
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.1-10, 2013 (Released:2013-06-18)
参考文献数
23
被引用文献数
2 2

研究開発成果を社会問題の解決に結び付けることが求められる昨今,プログラム設計やマネジメントの具体的な改善が必要である.本論文では,科学・技術の需要側からのアプローチを基本方針としたJST社会技術研究開発センターの公募型研究開発プログラム「犯罪からの子どもの安全」におけるプロジェクトへのマネジメント事例を分析した.その結果,需要側の適切なアクターが研究開発の早期の段階から参画し,供給側と協働するよう促す仕掛けやマネジメントが重要であることを確認した.また,研究開発の段階よってプロジェクトに求められる機能と,それを担うアクター・ネットワークの状況を観察・評価できるマネジメントが必要であると思われた.
著者
加藤 浩徳 志摩 憲寿 中西 航
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.11-28, 2011 (Released:2011-11-04)
参考文献数
48
被引用文献数
1

本論文は,山梨県を事例に交通システム成立の経緯を整理するとともに,その経緯と社会的要因との関係を分析するものである.同県の広域交通ネットワークの発展経緯を,近世以前,明治~戦前,戦後の3つの時代区分にしたがって整理した.山梨は,元来,山々に囲まれた地域であるため,近隣地域とのアクセスが不便であった.しかし,古来より道路網が整備されており,一時は,富士川を通じた舟運も栄えた.明治時代に入り,近代化が進められると,鉄道が整備され,舟運は衰退した.戦後は,観光農業と製造業が盛んとなり,東京という巨大市場へのアクセス向上のため新笹子トンネルや中央高速道路が開通された.これらの経緯を踏まえつつ,交通に関連する社会的要因を,国内動向,政治・政策,産業・宗教に分類し,これらと交通システムとの相互関係を時代別に分析した.
著者
白井 清兼 西村 崇 山本 淳子 伊藤 興一 加藤 浩徳 城山 英明
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.93-106, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
30
被引用文献数
3

本論文は,地域のアイデンティティ確立を目指すまちづくりに成功した事例として,千葉県香取市(旧佐原市) の先進的な取組を取り上げ,過去の取組経緯をインタビューによって丹念に調査するとともに,関係主体の問題構造認識を分析することによって,成功の要因を抽出することを目的とする.情報収集のため,佐原の観光政策に関係する主要主体に対するインタビュー調査を実施し,また,分析に当たっては,問題構造化手法を適用した.分析の結果,「町並み保存関係者」と「佐原の大祭関係者」による独自活動がもたらした意図せざる相乗効果,市民団体による巧みな行政の活用および行政の巧妙な戦略的なプロセスマネジメントが,佐原の持続的な観光政策ならびにまちづくり型観光地形成を成立させるための成功要因であったことを明らかにした.
著者
大野 晋 城山 英明
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.317-326, 2003
被引用文献数
1

日本の化学プロセス安全規制には3つの問題がある。第1は、主務官庁の縦割り構造である。化学プロセスは技術的には1つのシステムで管理されるが、適用される法規制は、複数の省庁の法令で規制されている。第2は、技術基準の品質管理である。法令が詳細を規定しているため、改定は遅れぎみであり、技術の進歩の妨げなっている。第3は、民間第三者機関の役割が不十分である一方国家の役割も制限的であることによる不十分な規制実施体制である。以上の分析を基礎に、技術的知見を速やかに基準に反映し、また、基準の妥当性を評価する第三者民間監査機関の役割の拡充強化を提案する。
著者
茅 明子 奥和田 久美
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.12-22, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
24
被引用文献数
2 6

科学技術政策が科学技術イノベーション政策に転換して以来,研究開発プロジェクトに対して「社会実装」が求められる機会は増加しているものの,実際の現場においてどの程度社会実装が進んでいるのかはきちんと把握されていないのが現状である.それゆえ本研究では,新たに設定した指標を用いて社会実装を推奨する研究開発領域の成果の類型化を実施し,成果の進捗を把握した.その結果,約4割のプロジェクトが社会実装フェーズに到達しており,想定以上に概念が浸透していることが判明した.あわせて、社会実装と研究開発手法の新規性や成果の汎用性についての相関関係も考察した.
著者
村山 明生 古場 裕司 舟木 貴久 城山 英明 畑中 綾子 阿部 雅人 堀井 秀之
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.338-351, 2003
被引用文献数
5 4

耐震性に関する既存不適格住宅について,その耐震診断,耐震補強の実施を促進させるための新たな制度的対策の研究を行った.新たな制度的対策として,中古住宅売買/賃貸時説明責任制度,沿道既存不適格建築物耐震改修補助制度,生命/損害保険耐震性割引制度,中古住宅耐震性価格査定制度,減災耐震改修促進制度,地震倒壊危険建築物利用制限制度の6つを抽出した.研究方法として,原因仮説体系の設定,ユーザー意識インターネットアンケート調査による原因考察,対策現状を踏まえた新たな制度的対策の考案,ユーザー意識インターネットアンケート調査による効果考察,法的観点からの妥当性評価を行った.