著者
松本 修一 平島 浩一郎 國府方 久史 川嶋 弘尚
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.131-138, 2010

積載量制約のある複数車両による辺巡回配送計画問題は,容量制約つき枝巡回問題とも呼ばれ,節と辺によるネットワーク上で,辺にデマンドがある場合において,配送拠点から容量制約つきの車両がデマンドのあるすべての辺を巡回し配送拠点へ戻るときの巡回総コストが最小となるルートを求める問題である.配車配送計画の効率化には,ネットワークの節にデマンド指定がある車両巡回問題が用いられる例が多い.しかし,郵便配達のようなデマンドが密集した場合や,道路清掃など道路区間そのものにサービスを行う場合には,辺にデマンド指定があるCARPのアプローチの方が適している.本研究では模擬焼きなまし法を用いたCARPの近似解法を提案した.
著者
川又 孝太郎 堀田 昌英
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.41-49, 2012 (Released:2012-10-03)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究では,Barrettらのゲーム理論のモデルと気候変動の国際交渉の実態を比較し,モデルが交渉の理解に役立つものの,EUのリーダーシップの存在,各国の交渉ポジションに対する国内制約,先進国と途上国間の衡平性の考慮といった点で現実の交渉を反映していないこと,大幅削減合意に導くためには各国の温室効果ガス削減対策の便益の認識が重要であることを明らかにした.また,上記の問題点を克服し,大幅削減合意に導く可能性のある数理モデルとして,豪州の条件付目標に類似するマッチングメカニズムを提案する.
著者
藤生 慎 沼田 宗純 大原 美保 目黒 公郎
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.96-105, 2013 (Released:2013-06-18)
参考文献数
11
被引用文献数
2

本稿は東北地方太平洋沖地震で被災した住家に対して実施された建物被害認定調査の実施状況をアンケート調査を通じてまとめたものである.アンケート調査では,調査期間,実施体制,支援体制,トレーニング体制などを明らかにした.分析の結果,各自治体とも発災後1か月以内に調査を開始しているが,1ヶ月以降に調査方針の変更などがあり,現場に混乱が生じたことが明らかとなった.また,過去の地震災害で実施された建物被害認定調査で指摘されている問題が解決されることなく今回の調査でも生じていた.特に判定要員のトレーニングは,調査実施前に短時間で実施されており,調査結果に対する影響が少なからず生じている可能性が考えられることも明らかとなった.
著者
渡部 生聖 林 同文 今井 靖 光山 訓 瀬戸 久美子 新谷 隆彦 橋口 猛志 野口 清輝 真鍋 一郎 戸辺 一之 山崎 力 永井 良三
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.383-390, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

ミッションプログラム医療安全研究グループにおいては, 日々の診療で膨大に発生する各種の診療情報から, 情報処理技術の適用により医学的知見を抽出し, その知識を国内で共有化する為の汎用的な手法について研究を行っている. 研究にあたっては, 倫理面に配慮された適切な情報収集・管理手法によって得られた実際の診療情報を, 医学と工学, それぞれの専門家が共同で体系化することにより, 臨床的に有用な知見を得るにいたっている. これらの医学的成果及びその普及手段としての技術的成果を併せて報告する.
著者
王 晋民 宮本 聡介 今野 裕之 岡本 浩一
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.268-277, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
23
被引用文献数
4 5

内部告発は組織における不正行為を暴露して制止させるだけではなく,新たな不正行為を抑止する効果がある.内部告発は内部告発者本人の動機付けと第3者の内部告発に対する許容度の2つ側面がある.前者は潜在的な告発者の告発行動を起こす意向で,後者は,社会や組織構成員の内部告発・内部告発者に対する態度からの影響である.適切な内部告発を推進する環境や内部告発に関する効果的な教育プログラムを作るために,本研究は内部告発行動や内部告発及び告発者に対する態度に対する個人特性・組織特性の影響について社会調査で調べ,その結果に基づいて社会心理学の視点から内部告発に関する制度や教育プログラムに対する提案を試み,内部告発に関する社会心理学研究の役割と方向について検討した.
著者
伊藤 徳彦 高野 伸栄
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.75-85, 2013 (Released:2013-06-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

本研究では,道路整備事業の建設工事に伴う経済効果のうち,工事関係者の事業地域での日常生活支出に着眼し,高規格幹線道路事業トンネル工事をケーススタディに経済波及効果を推計し,推計プロセスの開発を行った.その結果,工事関係者88名の域内日常生活支出は年額1,756万円,一人あたり20万円であり,ガソリン・一般食料品・生鮮食料品の購入と自動車整備が支出全体の約70%を占める傾向とわかった.経済波及効果は2,933万円で,同年度我が国の名目経済成長率が1.1%のなか,過疎化高齢化とマイナス経済成長の懸念の地域で,域内生産額16,846百万円の0.17%増分に相当するものと推計した.産業別では,製造業・農業・商業運輸・自動車整備業等に効果が及ぶとわかり,結果,推計プロセスを開発できた.
著者
村山 敏泰
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.85-90, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
12

SPOCシステムは会話エージェントによるマルチメディア, 議論の趨勢, 情報処理・分析などを織り交ぜた会話型コンテンツの作成・提供を目指したシステムである. 会話型コンテンツの作成・提供を目指したシステムにはPOCシステム・EgoChatがありSPOCのコンセプトは基本的に両システムを継承する. POCシステム・EgoChatのコンテンツは画像と100文字程度のテキストからなるPOCカードと呼ばれるカードによって構成される。本論文では会話型コンテンツを構成するカードの要素にWebサービスを導入することによってシームレスに情報処理・分析を織り交ぜた会話型コンテンツの作成, 提供を行うSPOCシステムの提案を行う.
著者
藤武 麻衣 佐野 可寸志 土屋 哲 三本 諒
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.65-74, 2013 (Released:2013-06-18)
参考文献数
11

近年,持続可能な交通を目標にノーマイカーデーという短期的な交通行動転換施策が各地で行われている.本稿の目的は,新潟県長岡市におけるノーマイカーデー運動の調査結果をもとに,参加(交通手段転換)者の属性や参加に至る意識の因果構造を明らかにし,参加者を増やす方策を提案することである.まず参加者の特徴や期間中の交通行動を明らかにした.次に今後のノーマイカーデーの参加意識に対する意識要因モデルを,今後の参加意識を被説明変数として,過去の参加経験,環境保護意識,自動車の自粛意識,自動車利用の必要意識を説明変数として構築した.モデルのパラメータから,特に不参加者は過去の参加経験による影響が大きいとともに,自動車の必要性意識が強い妨げとなっていることを明らかにした.
著者
大上 泰弘 神里 彩子 城山 英明
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.132-142, 2008 (Released:2009-07-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

イギリスにおける動物実験の規制では,包括的な法律に基づき国家が一元的に,動物実験を行う人,施設,実験内容を管理する.アメリカでは,分立的な法制度の下で,機関内動物実験委員会を中心とした各研究機関の自主規制を基盤としている.そして,この自主規制を監督する制度が法律とガイドラインで規定されている. これらの規制に関する比較分析を踏まえて,日本の動物実験規制のあり方に関する二つの提案を行った.一つは,日本において動物実験規制ガイドラインを作成する場合,その規制原理 (理念) を「愛護」ではなく「尊重」とすべきであるという点,もう一つは,一定の担保された実効的な自主的規制メカニズムを構築するとともに,信頼に足る研究者の資質を研究者サイド自らが養成・保証する仕組みを構築し,一般社会に示す必要があるという点である.
著者
杉原 太郎 藤波 努 高塚 亮三
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.54-65, 2010
被引用文献数
1 7

本稿では,認知症高齢者をどのようにしてカメラシステムで支えるかという切り口で行った3軒のグループホームに対するアクションリサーチ,その中でもシステム開発および導入にまつわる問題ついて述べる.調査はインタビューにより行い,情報は介護者から収集した.調査結果から,カメラシステムは介護者の肉体的・精神的負担感を低減させ,提供する介護作業の最適化に寄与したことが明らかとなった.さらに,認知症を原因とする問題に対処するためには周囲の環境から支えることが重要であること,システムの開発・導入に当たっては,周囲の人々が抱く抵抗感に配慮する必要があること,「家」のメタファを損なうことの無いようなシステム作り・導入が求められることを示した.
著者
内田 由紀子 竹村 幸祐 吉川 左紀子
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.194-203, 2011
被引用文献数
1 1

日本の農村社会において技術指導ならびに関係者間のコーディネート業務を行っている普及指導員の役割について検討した.近畿の普及指導員が回答した調査から,関連機関や農業者同士の連携など,コーディネートに関わる普及活動が地域の問題を改善している可能性が示唆された.また,コーディネートに関わる感情経験ならびに普及指導員の間の知識・技術伝達についても検討したところ,地域住民同士の信頼関係が業務内で普及指導員の感じるポジティブ感情を高めること,さらには対人的スキルのある普及指導員が評価され,そうした先輩の存在が普及活動にポジティブな効果をもたらすことが明らかにされた.日本の農村社会において,人をつなぐ役割の効果と,普及指導員の持つスキルについての考察を行った.
著者
濱田 志穂 柳下 正治
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.170-181, 2011 (Released:2011-11-04)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1 1

筆者らは,参加型会議手法を応用し,我が国におけるEST(持続可能な交通)論議の本格化を目指した「ESTステークホルダー会議」を実践してきた.ステークホルダーによる熟議を通じて,「ESTの観点から『交通と土地利用』についての政策形成上の論点・障壁を明確化する」ことをねらいとして実施した. 会議の結果,熟議を経て一定の結果をまとめることはできたが,ステークホルダーの主導(参加者イニシアティブ)によって論点を抽出し,一致点や不一致点等の意見構造まで明確化できたかどうかについては,十分な参加者評価を得るに至らなかった.しかしながら実践を通じ,科学的知識の共有に基づくステークホルダー間の熟議に関して,貴重な実証データと具体的課題を抽出することができた.
著者
土屋 智子 谷口 武俊 小杉 素子 小野寺 節雄 竹村 和久 帯刀 治 中村 博文 米澤 理加 盛岡 通
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.16-25, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

温暖化対策としての原子力の重要性が高まる中で, 信頼回復の切り札のひとつと考えられているのがリスクコミュニケーションの実施であるが, 原子力分野でこれを意図した活動が幅広く行なわれているとはいえない. 本稿では, 東海村を実験地として行われたリスクコミュニケーション活動の設計意図と実施内容を示すとともに, リスクコミュニケーションに対する住民と原子力事業者の評価を分析し, 原子力技術利用に伴うリスクに対する住民の視点を明らかにする. また, これらの住民の視点がどのように原子力施設の安全に関与するかを示し, リスクコミュニケーションにおける課題を論じる.
著者
鈴木 達治郎 城山 英明 武井 摂夫
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.161-168, 2006 (Released:2008-02-29)
参考文献数
3
被引用文献数
3 2

安全規制に対する社会的信頼の確保を目的として,安全規制体制に一定の「独立性」を付与する試みが行われる.独立性は,様々な文脈における政治的独立性と技術的独立性に分けて理解することができる.本研究では,米国における原子力規制委員会における独立性の制度設計とその運用を分析し,我が国における原子力安全規制体制と比較することを通して,社会的信頼を確保するためには政治的独立性だけではなく技術的独立性が重要であるという示唆を得た.
著者
竹内 啓
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-11, 2004-10-29 (Released:2007-12-21)
参考文献数
3

リスク管理の問題と社会技術の観点から考えるとき, 「不運」にも「確率の小さい」災厄が生じてしまったときの「事後処理」の問題も重要である. それは「不運」である限り, 完全に「合理的な」解決は存在しない. それは「不運の納得できる分配」と考えることに帰着し, 「責任」や「賠償」の問題もその程度から考えられる. そこでは社会的倫理観や, 関係者の関与の性格等を詳しく評価することが必要であるが, 結局「感情問題」を避けることはできない.同時に「不幸」な事件から, 有益な「教訓」を引き出すことも大切であり, そのためにも「感情問題」を含め適切な「事後処理」の方法が確立されなければならない.
著者
鷲田 祐一 三石 祥子 堀井 秀之
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-15, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
10
被引用文献数
7 6

本研究では, 8つの代表的な科学技術研究開発領域と, 「スキャニング」手法を用いて作成された近未来における社会変化シナリオとの「交差点」で発生する多様な社会技術問題を議論することを目的とした. 各専門領域における有識者が「スキャニング」データベースを用いて, 生活者視点での社会変化シナリオを構築することで, 他の技術普及予測があまり取り扱わない外部性要素をうまく取り込むことができた.
著者
田邉 朋行 稲村 智昌
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.26-41, 2009 (Released:2010-05-14)
参考文献数
16

原子力施設に対するテロ懸念の高まりや, 再処理施設の本格稼働等プルトニウム平和利用の着実な推進の確保等を背景に, 我が国では, 原子力開発利用分野における秘密情報管理の重要性が高まりつつある. 本稿では, 2001年の9・11同時多発テロ以降その内容を強化してきた, 米国の商業用原子力発電施設における秘密情報管理の先行導入事案を, 法制面及び実務対応面の両面から調査・分析し, その特色を抽出するとともに, 同分析を通じて, 我が国における詳細制度設計や実務対応のあり方についての示唆を得た.
著者
堀田 昌英 榎戸 輝揚 岩橋 伸卓
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.67-76, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

本論文は多元主義的アプローチに基づいた政策論議の構造化手法を提案する. 議論の論理的及び言語学的構造を視覚的に表すことで議論の支援を行うシステムはこれまでも社会問題に適用されてきた. しかし議論支援システムを複雑な社会問題の理解に役立てるためには, 互いに対立する事実認識や価値観を抽出し, それらが同時に説得的であり得るような議論を既存の情報から再構築することが必要になる. 本研究で提案する手法は, 多数の議論や情報資源の中から特に複雑でかつ注目に値する一連の議論を抽出するための指針を与えるものである. 本手法は情報システムとして実用化され, 公共的な議論の支援に適用された. 本論文では事例研究の結果と社会技術システム論への含意について述べる.
著者
金野 和弘
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.205-213, 2005 (Released:2008-07-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本稿は,デジタル著作権管理(DRM)が生み出す経済的便益を研究する.DRMは,デジタルコンテンツに関する様々な権利を保護し,その流通を円滑化し,制作者および供給者が正当な対価を回収できる仕組みを提供するなど,デジタルコンテンツ流通を促進するために不可欠な基盤技術である.他方,DRMの導入により,利便性の低下,死重損失,参入障壁などの問題が生じることに注意しなければならない.そこで本稿では,DRMの導入による社会的な便益とコストを挙げ,それぞれに関して経済学の視点からの検討を試みる.
著者
古田 一雄 前原 基芳 高島 亮祐 中田 圭一
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.299-306, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

社会的決定においては公衆の参加による社会的合意形成への要望が高まる一方,インターネットの急速な展開にともない,電子掲示板などを用いた電子会議が社会的合意形成に一定の役割を果たすようになった.本研究では,こうした電子会議を用いた合意形成における参加者の発言内容や会議の進行に対する理解を深め,円滑な合意形成を支援するために,会議発言録から話題を抽出し,要約を作成して参加者に提示する手法を開発した.さらに開発手法を組み込んだ電子会議システムTSS (Transcript Summarization System)を開発し,既存の会議発言録を用いて機能確認を行った.