著者
松原 康介
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、シリア内戦によって多大な戦災を受けた歴史都市アレッポを対象に、その戦災状況を把握し、これまでの日本の都市計画協力の実績を踏まえて、戦後の復興計画のための実践的な策定体制を構築し、大型案件への接続を目指したものである。戦災状況は、中東都市多層ベースマップシステムを活用し、現地からの情報提供に基づき明らかにした。また、アレッポ及びベイルートやハマー等の復興計画史から保全と近代化のバランスのとれた計画論の必要性を明らかにした。更に、JICAダマスカスプロジェクトの経験、日本の復興計画の実態調査、シリア人大学院生の教育活動、各支援者・団体との意見交換等を通じて復興計画原案の策定体制を整えた。
著者
中野 泰 足立 泰紀 林 圭史 渡瀬 綾乃 辻本 侑生
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1.民俗学者桜田勝徳の調査研究資料の目録を作成し、このアーカイブが、柳田国男の薫陶を受け、民俗学を実践し始めた以降の資料が中心であることを明らかにした。2.桜田のフィールドノートの検討から、その記載形式に一貫性(右面に記載し、左面を補助的に利用)とともに変化(日次、立て横書き等)があること、彼のフィールドワークには2つのスタイルがあること、フィールドノートとフィールドワークの変化は、共に1940年代に認められることが分かった。3.GHQ下の社会調査において、桜田がGHQの改革案を指示する立場で働き掛けていた事実を明らかにし、このようなフィールドワークに関わる実践の民俗学的な意義を明らかにした。
著者
稲永 由紀 吉本 圭一 猪股 歳之
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

本研究では、高等教育機関の地域配置および高等教育の地域社会的効用について、高等教育あるいは高等教育機関の地理的影響範囲(高等教育「後背地」)の理論モデル確立を目指すべく、既存指標の収集、いくつかの地域での関係者へヒアリング等によって、影響評価の候補となる主観的/客観的指標を収集し、検討する。これは、研究者の研究・勤務経歴の偏り(特に都市/国立/研究大学)に起因するであろう高等教育領域の研究知の偏在を問い直す、オルタナティブな高等教育研究領域を切り開く企てでもある。
著者
吉川 裕之 前田 平生
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

1.子宮頸がん症例、一般コントロールからのリンパ球のsampling:症例登録施設9施設(筑波大および研究協力者施設;東北大、癌研、慶応大、千葉大、近畿大、佐賀大、琉球大、東大)において、新たに全体として子宮頸がんおよびコントロールからのリンパ球と子宮頸部擦過検体のsamplingを行い、病理標本とともに提出した。2.HLAクラスIおよびクラスIIアレルの決定:HLAはgenotypingでgroup-specific primersを用い、PCR産物をSSCPおよびRFLPで同定した。前癌病変であるCIN I/II 570例のHLAクラスIおよびIIアレルを同定したことに加えて、子宮頸がん279名とコントロール203名の解析が終了した。3.HPV型の同定:consensus primer-mediated L1-PCRでのPCR-RFLP法と積水メヂィカルのクリニチップで解析した。子宮頸癌266名とコントロール188名が対象であるが、後者の方法では全体で300検体が終了した。4月末には全検体で終了する見込みである。がんで88%、コントロールで26%の陽性率である。4.統計解析:子宮頸がんの症例対照研究について検査がほぼ終了しつつある。まず、HLAとHPVのデータから約200ペアで解析する。暫定的な解析で複数のアレルで有意差が出ているが、最終解析を待ちたい。2011年秋頃には投稿できる見込みである。5.中央病理診断;コントロールが得られなかったがん症例も含めて、HPV型と組織型について検討する予定である。暫定的には神経内分泌型においてHPV18型陽性が多いことが判明している。
著者
柿嶌 眞 保坂 健太郎 阿部 淳一ピーター 大村 嘉人
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原子力発電所の事故から4年間、自然界における放射性物質の動向を解明するため、茨城県(つくば市を中心に)、福島県、栃木県、宮崎県、千葉県などできのこ類、地衣類、植物寄生菌類の放射能の生物モニタリングを行なった。その結果、きのこ類では腐生性よりは菌根性の方が放射能が高く、地衣類ではきのこよりも平均的に10倍高く、事実上放射性セシウムのミニホットスポットである。植物寄生菌類では特にサツキツツジもち病菌の罹病葉が健全葉より2倍高いことが明らかになった。一般的な傾向として事故後2年まで菌類や地衣類の放射性セシウムの放射能は徐々に減少したが、現在は、放射能はほぼ安定し、減少率が低い。
著者
佐藤 哲司 寶珍 輝尚 関 洋平 手塚 太郎 若林 啓 池内 淳 斉藤 和巳 伏見 卓恭
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

リアルとサイバー複合空間を対象に,知識創造社会を支える第3の社会資本と言われるソーシャルキャピタルの形成・変容過程を解明する.我々の実生活と不可分な存在となっているツイッターから,リアル空間における生活を支援するツイート抽出・生活の局面ラベルを付与する手法を提案した.コミュニティのノード機能に着目することで,構造的特性と意味的特性を表す中心性指標も提案した.急速に拡大しているテキストコミュニケーションにおける話者の役割や親密さを推定する手法を提案した.また,テキスト投稿時の意図推定や意見分析に有効な特徴量の考察,変化変容を扱うための系列データを対象とする機械学習手法の考案にも取り組んだ.
著者
川崎 真弘
出版者
筑波大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

発達障害児に見られる「逆さバイバイ」のように、視点と身体表象の重ね合わせはコミュニケーション時の発達障害の一つとして重要な未解決問題である。本研究では、視点と身体表象の重ね合わせを健常者と発達障害者で比較し、発達障害の方略の違いを調べた。PCディスプレイ上に呈示された人の両手のうち一方がタッピング動作をし、被験者はその動作と同じ手でタッピングをすることが要求する運動模倣課題を用いた。方略の聞き取り調査より、定型発達者の多くが視点取得の方略を取るのに対して、発達障害群の多くは逆に心的回転の方略をとった。反応時間によるパフォーマンス結果から、心的回転を報告した被験者だけで回転角度依存性が観測されたため、この聞き取り調査が正しかったことを確認した。また、その方略の違いは発達障害のスケールの中でも「こだわり」や「コミュニケーション」のスコアと有意に相関した。さらに発達障害者は定型発達者とは異なり、自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意にパフォーマンスが悪化した。この課題遂行時の脳波と光トポグラフィの結果を解析した結果、発達障害者は自分がとった方略と異なる方略を強制されると有意に前頭連合野の活動が増加することが分かった。前頭連合野の活動は従来研究で認知負荷と相関することが示されている。つまり、発達障害者は視点取得の戦略を使うと心的負荷がかかることが示唆された。以上の結果より発達障害者は他社視点を使う視点取得の方法より自己視点を使う心的回転を用いて運動模倣を行っていることが示された。今後はこのような戦略の違いがどのようにコミュニケーション困難と関係するかを分析する必要がある。
著者
谷口 智子
出版者
筑波大学
巻号頁・発行日
2000

筑波大学博士 (文学) 学位論文・平成12年11月30日授与 (乙第1663号)
著者
喜多村 和之
出版者
筑波大学
雑誌
大学研究 (ISSN:09160264)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.33-55, 2001-03

喜多村でございます。今日は山本先生がおはじめになりました研究会の趣旨を大学経営人材の養成を目指してということでうかがいまして、こういう研究会は当然、早くから、特に私学の間から当然行わなければならないものを、まず国立のほう ...
著者
鈴木 博章
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究では蚊を模倣した超低侵襲微小血糖値分析システムの実現を目的とした。このシステムは、血糖値(グルコース)測定用マイクログルコースセンサ、サンプリング機構、微小針から構成される。本研究ではサンプリング機構につき重点的に検討を行い、特に夜間などに長時間かけて徐々に吸引できるものをめざした。上記のサンプリング機構を実現するために、poly(N-isopropylacrylamide)/acrylic acid共重合ゲルに酵素(グルコースオキシダーゼ)を包括したものを作製した。酵素反応に伴うpH変化をゲルの体積変化の駆動力とした。ゲルの体積変化はシリコーンゴムダイヤフラムを介し、微小流路内の圧力変化に変換され、サンプル溶液が吸引・排出される。センサ作用極上には、妨害物質の影響を低減し、測定可能な濃度範囲を拡張するため、Nafion膜およびpolyHEMA膜を形成した。サンプリング機構は約10時間にわたり、ほぼ一定の流量で外部液を吸引することができた。Nafion膜被覆グルコースセンサの選択性を調べたところ、グルコース比で、アスコルビン酸に対し約1%、尿酸に対し約1%、アセトアミノフェンに対し約33%の応答が認められ、Nafion膜により妨害物質の影響を低減できることが示された。また、polyHEMA膜を拡散制限膜として形成することにより、微小流路中で測定した場合の検量線の直線範囲が30mM付近まで拡張された。微小針を緩衝液を充填したチューブに刺して緩衝液を吸引させ、その後さまざまなグルコース溶液の充填したチューブにシステムを刺し変え、これに対する応答を連続的に調べた。グルコース濃度の変化に対する明瞭な電流値の変化が認められ、このシステムが実際に機能していることが確認できた。
著者
和知 剛
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.65, pp.16-20, 2003-06

Wachi, Tsuyoshi
著者
長尾 宗典
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本課題の研究日的は、高山樗牛の「美学」思想の特質を明らかにすることにより、それが彼の生きた明治中・後期の時代状況のなかで占めた位置を、「浪漫主義」の思想運動との関わりのなかで解明し、近代日本思想史における「浪漫主義」思想の意義を考察することにある。近年では、近代に対する批判的な反応を具体化したという観点から、保田與重郎など、昭和期の日本浪曼派の活動の再評価が進められているが、日本浪曼派同人たちが自らの先達として位置づけた明治期の「浪漫主義」者の思想に関する内在的研究は、まだ十分に行なわれているとはいいがたい。高山樗牛の思想の研究は、上述の研究動向を補完し、近代日本の「浪漫主義」の思想史的意味を究明する上で重要な位置を占める。なぜなら高山は、作家ではなく美学者として、西洋の「浪漫主義」の理論を自覚的に取り入れて自らの思想を構築していった人物だからである。以上の目的のもと、本年度においては、高山樗牛の「浪漫主義」思想の歴史的意義をより明確にするため、彼の友人や周辺人物との思想比較を試みた。とくに高山の友人であり、批評家でもあった宗教学者・姉崎正治の思想分析に取り組んだ。姉崎は、芸術にも造詣が深く、高山が没した明治35年(1902)以降には高山の思想的後継者とも見なされた人物であった。日露戦争の時期になると、姉崎は雑誌『時代思潮』を創刊し、文明批評家として時代状況に対して旺盛な言論活動を展開していくことになる。姉崎の議論は、芸術や宗教に対する造詣もあって、いわゆる煩悶青年たちに一定の支持を得たが、日露戦争が終結に向かう明治38年の頃になると、自己犠牲の価値を強調し、文化的な共同性を重視しようとする傾向が現われ、やがて後に明瞭な国家主義に転化していってしまう。「自我」の救済から「国家」への帰依という姉崎の軌跡は、「日本主義」を唱えた後に「個人」の立場にこだわった高山の思索と対照的であることが明らかである。以上の研究成果は、学術論文として発表したが、このほか、高山樗牛と雑誌『明星』グループとの思想的交流の問題について学会での口頭発表も行なっている。以上の比較を通して明らかになる同時代における「浪漫主義」の思想の全体像を評価していく必要があり、引き続き多角的な観点から考察を加えていくことを課題としたい。
著者
今泉 容子
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究は「日本のアルツハイマー映画」に着眼し、つぎの2つの成果をあげた。まず、1973年の第1号作品(豊田四郎監督『恍惚の人』)から今日までのアルツハイマー映画において、「アルツハイマー患者と介護者の人物造形」と「彼らを取り巻く社会環境」を検証したこと。これによって、日本のアルツハイマー型認知症の「映像表象史」が構築できた。つぎに、2000年代に入って盛んに制作されている「外国」のアルツハイマー映画をパースペクティヴに入れ 、「 日本」のアルツハイマー表象と比較考察を行い、日本独自のアルツハイマー表象を浮き彫りにすることができた。
著者
中西 僚太郎
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

明治期から昭和初期に作成された、厳島、和歌浦、天橋立、富士山、耶馬溪などの景勝地の鳥瞰図について、その現存状況を調査し、データベースを作成するとともに、作成主体、作成目的などの資料的検討を行った。それをふまえて、同地域の「案内記」や「写真帳」などの関連資料や、近世の絵画資料を参考にして、鳥瞰図に描かれた内容を分析し、表現された景観の特質を明らかにした。
著者
吉原 ゆかり
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、昨年度に引き続き、16・17世紀イギリスのコレクターたちの業績および彼(女)たちが生きた激動の時代について、調査と資料収集を行った。今回とくに注目したのは、16・17世紀・18世紀における古代ローマ・ギリシア研究、古代イングランド研究、中国研究、アジア研究および自由主義思想(リベルタン思想)とのつながりである。このようなつながりから、蒐集文化の研究は、単に美術や古物蒐集といった高級文化の研究という側面のみならず、当時における歴史研究、政治思想などとも深い関係をもつものであることがあきらかになった。たとえば、ヨーロッパ・キリスト教文明全般の源流とみなされつつも16-18世紀においては、イスラム教帝国オスマン・トルコの支配下にあったギリシア・小アジア地域の研究は、当時における国際政治の実状と切り離しては考えることができない。また、放蕩と自堕落を礼賛する形式で、政治的自由思想が表現される傾向があり、政治的自由思想を有する人々が古代ギリシア・ローマの文物のコレクターであり、その時代における性的自由を礼賛することで、自らの生きる時代を諷刺したことなどから、蒐集文化と社会諷刺、さらにはポルノグラフィの誕生がきわめて密接な関係にあることが明らかになった。本助成は今年度で完結するが、将来にむけては、上記したような方面への展開・発展を目していく予定である。本助成研究の総括、および将来へむけての準備として、当該テーマに関心をもつ国内の代表的な研究者を筑波大学にまねき、16年11月、研究集会を行った。参加者は、荒木正純(筑波大学)、箭川 修(東北学院大学)、川田潤(福島大学)、川田理和子(山形保険医療大学)、南隆太(愛知教育大学)、大和高行(鹿児島大学)である。当日は、ジョン・イーヴリンを代表とする、17世紀のコレクターの動向などをめぐり、盛んな質疑応答が行われた。
著者
和知 剛
出版者
筑波大学
雑誌
筑波フォーラム (ISSN:03851850)
巻号頁・発行日
no.65, pp.16-20, 2003-06

Wachi, Tsuyoshi旧・図書館情報大学であるところの図書館情報専門学群は、筆者が今更書くまでも無く1921(大正10)年に開設された文部省図書館員養成所以来、図書館司書養成という大義名分をその名称・機構の変遷にかかわらず背負ってきた。 …
著者
大倉 浩 (2007) 湯沢 質幸 (2006) 李 承英
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究においては、日韓文化史的な研究の一環として、日本に残存する中世の韻書に焦点を当て、それを同時期の韓国韻書と比較し、韻書の取り扱い方や位置づけにおける日韓間の同異を解明することを目的とし、本年度では以下のような研究を行った。1. 日本中世漢字音研究の指導的役割を果たした五山系抄物について、『玉塵抄』『史記抄』等、有用な資料を調査・収集し、韻書におけるデータを整理した。韻書や抄物等は関西の図書館や社寺に所蔵されている場合が多いので、本年度における資料調査は関西方面において行った。2. 資料の調査結果を踏まえて、まず、日本側の韻書である聚分韻略の音注の系統を探るため、五山系抄物、特に『玉塵抄』『史記抄』『漢書抄』等の呉音・漢音と比較を行った。3. 五山系抄物との比較した結果を基にし、中世の呉音漢音の資料である文明本節用集との比較も行い、聚分韻略の音注の系統を更に探った。4. 日本の韻書の聚分韻略と同じ三重韻形式を採用している韓国『三韻通考』とを比較し、両国韻書の歴史における位置を確かめ、この二書の前後関係を考察した。5. 日韓漢字文化史の比較研究を行うために、京都・中国地方の図書館や博物館等において漢字音資料の発掘や調査、資料収集を行った。
著者
白川 友紀 鈴木 敏明 鴫野 英彦 佐藤 博志 長澤 武 武谷 峻一 加茂 直樹 山岸 みどり 夏目 達也 渡辺 公夫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究では各大学における教育目標、教育方針、アドミッションポリシーと中等教育の多様性の適合度を明らかにしたいと考え、入学者受入方針等に関する調査を行うとともに、AO入試の実施状況、オープンキャンパスにおける高校生に対する情報提供の現状と課題、専門高校および総合学科高校出身者の大学受入の現状、ならびに入学者の志望動機等に関するアンケート調査などを実施した。また、専門高校、総合学科高校、SSHと高大接続、総合的な学習と高大接続などの高校での学びの多様化と大学入試について研究会を開催し、話し合った。モデル化も行う予定であったが、この数年でAO入試実施大学が急激に増加し、そのアドミッションポリシーも新たに独白性を持ったものが増えており、今後さらに増加すると予想されるため、静的なモデルではあまり意味がないと考え現状分析を行った。今後、時代の変化に応じた新しい入試や大学進学を扱う、環境適応能力を表現できる動的なモデルを考える必要があると思う。アドミッションポリシー、入学試験や合格者への調査は本研究のメンバーによって大変精力的に行われ、大きな成果があったと考えている。一方、入学後ある程度の時間を経た学生や大学側の満足度のような指標の調査はあまり広く実施できなかった。複数の大学で共通のアンケート調査を実施して卒業研究評価を試み、幸い九州大学と筑波大学の2大学で実施した結果を平成18年度の入研協で報告できることとなったが、このような共同研究は大学間の調整の困難さだけでなく、アドミッションセンターと学部や学科との間の調整がかなり困難であるらしいことも分かった。海外調査はSARSの影響で平成16年度以降に行った。欧州の調査は行えなかったが本研究メンバーが他の研究費で行ったフィンランド等の調査結果について本研究のミーティングで知ることができた。本研究では米国、オーストラリア、中国、台湾の調査を行い、各国で入試の多様化が進んでいることが分かった。「理科離れ」について、理科教育を熱心に行っている教員や学芸員、SSHの教員との研究会を開催してAO入試との関連について話し合った。総合的な学習で理科が好きになる、総合的な学習の時間を減らして理科の時間を増やすべき、などの意見があった。しかし、私見であるが、実践されている授業内容に大きな違いは無いように思われ、また、理科離れは科学振興という社会の要請と生徒や学生の個人の幸福が結びついていないというところにも問題があると思われた。さらなる研究が必要である。本研究の成果は、平成15、16年度中間報告書とシンポジウム論文集ならびに成果報告書の4部に収録した。