- 著者
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新城 靖
- 出版者
- 筑波大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
本研究の目的は、カジュアル利用者(コンピュータに不慣れな利用者)にも簡単に利用できるプライバシを保護するオペレーティング システムを実現することである。そのために、申請者が考案した「多重世界モデル」をもちいる。これは、SF (Science Fiction) のパラレルワールドを、OS レベルで実現するものである。本研究では、多重世界モデルを用いて、「双子の研究」を行う。双子の研究とは、氏名や生年月日等の個人情報をわずかに変化させ た類似の実行環境でプログラムを動作させ、その差を調べることである。これにより、プライバシ情報を含むファイルや通信を特定し 削除するツールを作成する。平成29年度には、Docker を用いて作成した2つの類似の実行環境「双子の環境」で動作させるための Web ブラウザを実装した。この Web ブラウザは、協調ブラウジングの技術を用いて、片方の Web ブラウザの動作をもう片方の Web ブラウザに伝え、同じサーバを同じようにアクセスすることが用意に可能になる。また、コンテナ発信される通信内容を Man-In-The-Middle Proxy を用いて解析することに成功した。これにより、サーバから送られてくる通信内容を比較することが可能になった。平成29年度には、複数のコンテナでブラウザを実行し、ドメイン名により自動的にコンテナを切り替える仕組みを実現した。利用者が登録されたドメイン名のリンクをクリックすると、それドメイン名に対応したコンテナで動作しているブラウザに動作が引き継がれる。この仕組みにより、利用者は、複数のネットネームを簡単に使い分けられるようになる。利用者が誤って別のコンテナで接続すべきサーバのリンクをアクセスしたとしても、自動的に本来の実行環境を選び、実行を継続できるようになった。