著者
榎原 博之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

近年、ディープラーニング(深層学習)が注目されており、様々な応用分野に利用されている。一方、組合せ最適化問題は応用範囲が広く、厳密解法だけでなく、近似解法、特にメタヒューリスティックスの研究が盛んである。本研究では、ユークリッド型組合せ最適化問題に対してディープラーニングを応用した近似解法を提案する。ランダムに生成した大量の問題例に対して最適解もしくは最良解を画像としてディープラーニングにより学習させ、出力として得られた画像データから評価値を算出する。学習により得られた評価値を従来の距離による評価値の代りにヒューリスティック解法に適用することにより、学習により得られた評価値の有効性を計算機実験により検証する。計算機実験の結果、提案手法は先行研究より優れた性能を示した。その成果は情報処理学会論文誌(Vol.60, No.2, pp.651-659, Feb. 2019)に掲載された。上記の手法は教師あり学習のため、大量の教師データが必要であり、大規模な問題例の教師データを大量に用意することは困難である。そこで、教師データを必要としない強化学習に注目して、報酬と学習方法を工夫し、計算機実験を行っている。この成果は、情報処理学会論文誌に投稿中である。さらに、学習方法を修正し、出力画像から各経路の評価値を算出するのでは無く、次に選ぶべき頂点座標を評価する手法を提案した。この手法は従来手法より解の局所的な点で優れていることを示した。この成果は、2019年11月にアメリカオレゴン州ポートランドで開催されたIEEE 31st International Conference on Tools with Artificial Intelligence (ICTAI)で発表している。
著者
江澤 義典
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 = Journal of informatics : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
no.49, pp.3-10, 2019-01

わたしたちは日常的な知的活動において,手元の電子機器(パソコン,タブレット端末,スマートフォンなど)にアクセスすることが多い.ところが,都合の悪いニュースなどを「フェイクニュースだ」と決めつける政治家の発言やSNSへの匿名の無責任な書き込みなどに,多くの市民が迷惑している.インターネット利用が普及した現代において,わたしたち市民にとって十分に信頼できる情報を得るにはどのような工夫が必要なのであろうか.すなわち,知的な装置をわたしたちの生活空間で活用するために検討すべき情報倫理の課題にも多くの関心がよせられている.ここでは,具体的な個々の問題解決が必要なときに,適切な相談相手(バディ)を得るためには社会的な知のネットワークの構築・維持が欠かせないことを明らかにする.
著者
松村 暢隆 西村 優紀美 小倉 正義 田中 真理 桶谷 文哲 柘植 雅義
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

発達障害/学習困難児者の、得意・興味等の才能面を活かせる支援の体制・方法と、学校間の連携の在り方に関して、多方面の視点から調査、資料収集、プログラム実施を進めた。(1)シアトル市の教育委員会及び公立小中学校を訪問して、2E教育プログラムの実践研究の実態調査を進めた。2E教育として、才能教育と特別(支援)教育担当部署が連携して、家庭環境や障害の多様性のある児童生徒に公正なプログラムが実施されている様子が見て取れた。発達多様性のある「不協和感のある才能(GDF)児者」の特性を把握するために、自己評定「GDFチェックリスト」を開発して、6因子が見出された。(2)富山大学で発達障害のある高校生に向けた大学進学プログラム「チャレンジ・カレッジ」を開催した。「大学の障害学生支援」について説明を行い、発達障害学生から当事者の視点で大学の授業の一端が説明された。大会シンポジウムで、このような大学体験イベントは、支援ニーズのある高校生・保護者が大学に主体的に繋がれる貴重な場であることが共有された。また発達障害のある生徒の中で病弱や精神的な不調により入院・在宅を余儀なくされる生徒とその家族へのインタビューを行った。学習保障とクラスの仲間意識を育てるための取り組みの必要性を感じた。(3)一昨年度から実施してきた徳島県内の高校での教育相談体制・特別支援教育体制、および鳴門教育大学での体制整備・教職員への啓発・学外連携の在り方の検討を継続して行い、進展が見られた。加えて本年度は読み上げソフトなどのICTの通常学級への導入を促進するための研究、およびGDF児者に関する研究を開始し、一定の成果を得た。(4)大学進学を目指す中学生を対象として、自分の障害特性に関する理解とそれに基づいた事例検討を進めた。自己評価、他者に映る自己評価、他者評価との関連の中で、自己理解の様相を把握していくことの意義が示された。
著者
沼田 博子
出版者
関西大学
雑誌
千里山商学 (ISSN:02861879)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.73-110, 2012-10-31
著者
鈴木 哲 松井 岳巳 安斉 俊久 孫 光鎬 菅野 康夫
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,マイクロ波を用いた完全な非接触での生体計測手法を応用し,血圧変動を推定する手法の確立を目指すことを目的とした.手法の有効性の確認のための,①推定法の理論的検討,②システムの試作,③実験室内における試作したシステムの評価実験,を実施した.さらに,臨床的知見の蓄積とシステムの問題点の確認のため,④医療現場における心不全患者へ適用した実証実験,の4点の実施を目標とした.結果として,理論構築およびシステム試作,さらに評価実験を行い,ある程度良好な結果を得た.一方で,臨床的知見の蓄積のための調査については,安全性と精度に課題があったため十分な実施が出来ず見送る結果となった.
著者
加藤 雅人
出版者
関西大学
雑誌
関西大学哲学 (ISSN:0910531X)
巻号頁・発行日
no.28, pp.1-16, 2010-03
著者
河端 隆志 小田 伸午
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

スポーツ時の精神的・身体的疲労が視覚情報-認知・運動制御能及び身体的行動体力の機能別に及ぼす影響について検討した。その結果、身体的行動体力の機能に及ぼす影響は高強度間歇的運動前後でVO2maxに13%の低下、サイドステップ及び前後方向ステップ動作に疲労の影響が強く現れた。また、・運動時視覚認知-運動制御系に及ぼす影響では、20分間運動時の認知―運動制御テストにおいて正答率は安静時に比べ各運動時テストにおいて増加したが、運動時テスト2回目と3回目では、正答率が低下、無回答率も低下し、平均正答時間は安静時に比べ1回目に短縮するが2回目及び3回目では正答までに時間を長く要する結果となった。
著者
藪田 貫 陶 徳民 大谷 渡
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究の成果は、つぎの3つからなる。第1にアリス・ベーコンJapanese Girls and Women『日本の女性』の翻訳である。翻訳は初版本全10章のうち第5章、日本の女性の一生に関する部分までの翻訳を終え、本成果報告書に収めた。6章以下に天皇・皇后をはじめとする身分ごとの女性に関する叙述が続くが、それについては時間的な制約から、期間内に終えることができなかった。また津田梅子、大山捨松、アリス・ベーコンらの間に交わされた書簡を調査・閲覧することで本書の成立事情を明らかにすることができた。第2に津田梅子の留学、帰国後の津田塾の創設に代表される近代日本の女子高等教育の歩みを、同時代の日本史およびアメリカ史の文脈から位置付け、とくに1984年に発見された屋根裏の手紙など英文の史料から女子教育に生涯を捧げた梅子を通じて明らかにした。第3に津田梅子とともに留学し、生涯、強い姉妹愛に結ばれていた大山捨松・永井繁子らの日本での活動を、「婦女新聞」を通じて明らかにした。女性の社会的地位の向上、女子教育の振興を目指して1900年に発刊された「婦女新聞」は、廃刊となる1942年まで、廃娼運動・職業問題・母性保護・女子教育などを論じたが、そこには梅子・捨松らの投稿記事と並んで、彼女たちに関する記事も頻出するが、これまでこれほど多量に集約されたことはない。これらは梅子たちに関する同時代的証言として、今後の研究の礎石となるものである。本研究の開始に前後して、日本・アメリカ双方で、近代成立期の女子高等教育に関するあらたな研究が進展を見せている。そのような研究潮流に呼応して本研究も成果をあげることができたと総括できるだろう。
著者
伊藤 俊秀 宮澤 樹 山本 恭輔
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 = Journal of informatics : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
no.50, pp.1-10, 2020-01

二酸化炭素の排出が地球温暖化にどの程度影響しているかは議論の余地の残るところではあるが,現時点で商用化されている水素自動車(燃料電池車)は走行時に二酸化炭素を排出しないので,地球温暖化防止に有効であると広く認識されている.しかし,水素は,工業的には天然ガスから製造されているので製造時点で二酸化炭素が排出される.そこで,水素自動車が実質的に排出する二酸化炭素量を推計し,ガソリン車,ハイブリッド車,電気自動車が排出する二酸化炭素量と比較して考察した.ここで,電気自動車については発電時の排出量であるので,各国の電力ミックスに大きく依存する.比較考察した結果,日本の場合,水素自動車と電気自動車の二酸化炭素排出量は,現時点ではほぼ同量であるが,政府が2030年に目標としている電力ミックスで考えるとむしろ電気自動車の方が少なくなることがわかった.したがって,水素ステーションなどに膨大な設備投資を行って取り扱いが難しく非常に危険な水素で走行する水素自動車の普及を推進するより,現時点でもかなり普及している電気自動車の更なる普及を促進する方が合理的である.本稿では,最後に,水素の製造や発電の際に排出される二酸化炭素の地中への貯留手法であるCCSの現状と実現性についても言及した.
著者
吹田 浩 西浦 忠輝 米田 文孝
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

2003年8月にエジプト国古物最高評議会から、サッカラにあるイドゥートのマスタバ墓の地下埋葬室壁画を修復する正式な許可を得て、同年11月に第1次調査、2004年4〜5月に第2次調査をおこなった。調査の最大の意義は、イドゥートの壁画がギザ・サッカラ地域での初めての修復の試みであることにある。壁画の状態は予想をこえて悪く、1935年の報告書に比較して相当に剥落が進行していることを確認した。注意すべきは、クラックの存在と浸水による損傷である。天井・壁・床に多くのクラックがあり、南面の壁のクラックは、この70年の間に成長していることは明らかである。北面にはかつての浸水のあとが明瞭であり、東のシャフト入り口上部も浸水による損傷と考えられるあとが見られる。乾燥地帯にあるとはいえ、何回かの豪雨があり、浸水したものと思われる。正確な記録を作成するために、カメラとビデオによって壁画を撮影した。多くの壁画片が床面に落ちていたために、これらを回収した。これらの壁画片は、修復の際に本来の位置に戻すことがある程度可能である。壁画の劣化の原因を探るべく、化学分析(X線回折、岩石分析学、DTA分析、赤外線分析、断面分析法など)をおこない、埋葬室内と外部に温湿度計を設置している。調査の範囲では、温度と湿度とも極めて安定している。壁画と母岩の状態から、壁画は母岩からはぎ取る必要があると考えている。その際、埋葬室が閉鎖空間であることと、さらに日本独自の技術の有効性を確認するために、フノリと和紙(あるいは、レーヨン紙)による引き剥がし方法を検討している。2年間の調査によって、エジプトの遺跡管理当局と信頼関係を築くことができた。また、エジプト側の研究協力者が遺跡管理当局の修復部門のトップとなったことから、我々の調査が今後開発する修復技術は、エジプト側にすみやかに普及することが期待される。
著者
森部 豊 山本 明代 小沼 孝博 宮野 裕 舩田 善之
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,東ユーラシア世界で見られる草原世界と農耕世界との境界域,すなわち「農業・牧畜境界地帯」の歴史的性格・特質が,ユーラシア全域で普遍的に見られるかを検証し,将来的に,ユーラシア史の歴史像を書き換えるための準備作業を行った。その結果,「農業・牧畜境界地帯」という概念は,ユーラシア史を叙述する上では再定義する必要があるという結論に達した。
著者
北条 秀司
出版者
関西大学
巻号頁・発行日
1993

博士論文