- 著者
-
谷本 奈穂
- 出版者
- 関西大学
- 雑誌
- 情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
- 巻号頁・発行日
- vol.27, pp.57-67, 2007-07
社会学の領域において,「身体」というパースペクティブが注目されている。そこでまず本論では特にAデiddensによるボディプロジェクト(body projects)概念を検討した.次に,アンケート調査から,一般的な身体加工に関する意識を分析し,次のことを明らかにした.一つは身体加工において準拠されているのは,「自己自身」,「他者の視線」,「社会の視線」であること((1)自己系,(2)他者系(消極)系,(3)他者(積極系),(4)社会系と命名).もう一つは一般的な身体加工は,他者のため((2)(3)),社会への配慮のため((4))だけでなく,自己満足のため,自分らしくあるため((1))に行われることが多いことである.また,そこにはジェンダー差があり,同じ「他者の視線」を意識するのでも((3)他者(積極)系),男性は不特定多数な異性を,女性は自分の好きな特定の人だけを念頭においている.さらに女性は,自己満足や自分らしさといった「自己自身」を準拠することが多い.そして,外見の良し悪しでも差異が見いだせ,外見をほめられる経験の多い人は,(1)自己系,(3)他者(積極系)の理由を挙げ,ほめられる経験が少ない人は,(2)他者(消極系)の理由を挙げる.(1)自己系の理由を多く挙げるのは,女性であり,外見をよくほめられる人であった.このような一般的身体加工に関する意識は,他の身体における現代的現象と関連している.