著者
研谷 紀夫
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、今後増加すると想定される写真アーカイブをより客観的な観点から調査分析することが可能なデータを集約し「リサーチプロファイル」として継承していくモデルを示すことができた。また、これまではあまり焦点の当てられなかった写真の来歴情報や、目録化に際して参考とした証言者のインタビューや専門家の議論の過程、さらに被写体を計量分析した客観的なデータを体系的に集約してまとめ、学術利用に活用できる資料として公開できる点も明らかにした。またこれらのテキスト、映像、音声、静止画像などのメディアを電子書籍形式で集約し、1つのファイルで閲覧し、より持続的に保存できるフローとモデルを明らかにした。
著者
野間 晴雄
出版者
関西大学
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.A51-A60, 2009-04-01

イギリスのプラントハンターの総元締めのJ.Banksが記した海外からの植物の移送・保存に関する指示書。マイクDフィルムからの手稿の翻刻をした。 This paper is aimed to transliterate the English manuscript " Rules for Collecting and Preserving Specimens of Plants" (1796) written by Joseph Banks (1743‒1820), who is a renown English plant collector, and then became an infl uential patron for plant hunters, explorers or natural historians in the late 18th century to the early 19th century. Since the original document is preserved in the British Library, the author used the microfi lm copy possessed in Kansai University library. The background of this written document is how to transport live plants collected in Asia, Africa and New Continents for plant hunters to Western Europe with moderate and cool climate. The end of 18th century is the last phase of scientifi c navigation era for European countries. British Empire sent James Cook to the Pacific Ocean navigation in order to astronomical survey and make correct maps in 1768‒1771. J. Banks took the same ship and collected many rare plants. After he came back to Britain, he, as the president of the Royal Society of London for the Promotion of Natural Knowledge, started to support fi nancially to collect rare or economically useful plants in the world by plant hunters. At the same time, he instructed plant hunters or botanists to send rare plants, seeds, and herbarium to Kew Garden in the suburbs of London. Thus, the Kew Garden has become the world center of plants. Since the transport live plants to Britain by ship safely is a very diffi cult work at that time, so Banks instructed minutely in the document such as the protection them from sea water, uncertain temperature and humidity.
著者
森岡 孝二
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.521-544, 2004-11-11

1980年代以降、19世紀後半から1世紀余り続いた労働時間の短縮の時代が終わり、世界的に労働時間の増加が生じている。アメリカではJ.B.ショアが『働きすぎのアメリカ人』(1991年)において包括的な統計分析を踏まえて、働きすぎの時代が到来したことをいち早く明らかにした。その後、ショアの提起は経済学や社会学における労働時間論議に火をつけ、労働統計や生活時間研究の専門家を巻き込んだ論争を引き起こした。本稿では、ショアの問題提起に始まるアメリカにおける労働時間論争を跡づけ、日本との対比に留意して、アメリカ人の働きすぎの実態とその主要な原因について検討する。その作業からアメリカにおける労働時間の増大は、長時間労働者と短時間労働者への二極分化、女性における職場と家庭のタイム・デバイド、働きすぎと浪費の悪循環などの特徴をもっていることが浮かび上がるだろう。
著者
辻 大介
出版者
関西大学
雑誌
関西大学社会学部紀要 (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.43-52, 2006-03-25

本稿では、中村[2003]の先行研究によって明らかになった携帯メールと孤独不安の関連について、さらなる検討・考察を加える。2004年の予備調査および2005年の大学生調査の分析結果からは、携帯メールの利用頻度と孤独不安とが正の相関を示すことが確認され、また、携帯メール利用と孤独不安が互いに互いを高めるような螺旋状の増幅過程の存する可能性が示唆された。宮台[2005]はこうした「悪循環」の過程の背後には対人不信が潜んでいると論じているが、2003年の全国調査のデータを再分析した結果からは、孤独不安と一般的信頼尺度はむしろ正の相関関係にあることが認められた。山岸[1998]の信頼に関する議論にしたがえば、この結果は、関係性の流動化による社会的不確実状況への適応として、関係性への敏感さが求められつつ、そのことがまた関係性の不安の感じやすさにつながっているものと解釈できる。
著者
井上 克人
出版者
関西大学
雑誌
關西大學文學論集 (ISSN:04214706)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.A1-A29, 2006-03-06

http://ci.nii.ac.jp/naid/110006160420
著者
浜本 隆志 R.F Wittkamp 熊野 建 大島 薫 森 貴史 浜本 隆志
出版者
関西大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

最終年度にあたる本年は、ジュヴァルツヴァルト地方の冬至祭礼調査、宮崎県高千穂町での仮面を用いる冬至祭の儀礼調査、秋田県男鹿地方での新年の祭礼であるナマハゲおよびその周辺地域の祭礼調査といった、これまでの複数年度の調査をもとに、分析・考察をおこなった。ドイツ語圏を中心としたヨーロッパの通過儀礼と、日本を中心としたアジアの通過儀礼は意外と類似する部分が多いという認識に到達することになったが、そうした場合は、たいていがキリスト教文化の浸透以前、あるいはあまり浸透していない西欧の地域や地方のものであることが多いようである。あらためて、現在の世界各地で発生している文化摩擦や紛争の主な要因のひとつが、結局のところ、多神教と一神教の対立に起因しているのではないかという推測に蓋然性をみいだすこととなった。したがって、多神教的思考と一神教的思考というこの二項対立、たとえば、それは中沢新一が主張するところの対象性思考と非対象性思考の対立といえるのだが、これを乗り越えるために必要な思想や考え方を、世界の別の地域や住民たちのものにみいだすにしろ、まったく新たに創造していくにしろ、それともこれらのことが可能ではないときにはやはり、このふたつの対立を統合していくべき方法論を将来、模索していかなければならないだろう。本研究に従事した研究者の個別の研究成果によってなされている主張が、現時点における考察の結果の一部ではあるが、これらの成果によって、萌芽研究という本研究の役割は果たされたと思われる。
著者
竹内 洋 木村 洋二 雨宮 俊彦 吉岡 至
出版者
関西大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本年度は、新聞の見出しに着目した荷重分析の理論的・方法論的検討を行い、以下の3つのテーマに関する報道を対象として取り上げて分析した。また、多重媒介コミュニケーションモデルの理論的精緻化を図り、ネツトワークにおける信頼と不信の荷重変換ダイナミックスについて検討を加えた。1.地下鉄サリン事件とオウム真理教問題:本分析では、見出しにおける「サリン」と「オウム」という語句の出現頻度と文字面積の大きさを計測し、得られた各値を通時的な荷重グラフに表示することから、朝日・産経・毎日・読売新聞の報道における各紙の視点の違いを明らかにした。さらに、この2つのキーワードの配置に応じて5段階の評点を与え、サリン事件とオウム真理教との意味的な結びつきの強さを定量的に分析した。2.戦後日本における「いじめ」報道:1945〜2007年までの朝日新聞データベースを用い、現在、教育問題として語られる「いじめ」が、戦後から現在に至るまでの報道によって誘導され形成された言説(=「世論」)であることを明らかにし、その時系列的変遷を考察した。「いじめ」と「教育」に関連する意味ネットワークを相互比較することによって、分析におけるキーワードの選定とその意義が示された。3.東アジア問題-東シナ海ガス田の開発:2004年の中国による東シナ海ガス田開発に関する報道をもとに、日中両国の国益に関わる問題について、「ガス」という語を手がかりとして荷重分析を行うことにより、暗黙のうちに示された「国益の優先」と「日中友好」という各紙の立場の違いを明らかにした。記事の見出しに特化した本分析法は、簡便化による分析の即応性が見出された。本研究によって、客観報道の神話に隠れた荷重バイアスを視覚・データ化し、社会的現実がメディアの重みづけ報道によって相互構築されていく過程を実証的に分析する新しい手法の有効性を検証することができた。
著者
佐藤 寛
出版者
関西大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2010

本研究では,日本の大学生においてうつ病と自殺のリスクを高める心理学的要因として自動思考,社会的スキル,快活動といった認知行動的な要因の関与を検討した。これらの研究に基づき,リスクの高い大学生を対象とした心理学的予防プログラムを開発した。本研究において開発されたプログラムは日本の大学生のうつ病と自殺のリスク低減に有効であることが示唆された。
著者
谷本 奈穂
出版者
関西大学
雑誌
関西大学視聴覚教育 (ISSN:13431099)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.63-64, 2005-03-31
著者
上田 正人 高橋 智幸 鶴田 浩章 徳重 英信
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

骨とサンゴにおける骨格形成メカニズムは,ほぼ同じである。既に確立されている骨形成・再生手法をサンゴに転用し,新規なサンゴ骨格形成促進手法を確立することを目的とする。具体的には,チタン製のスキャフォールド(足場)に骨形成の促進効果が認められている酸化チタンなどを成膜し,サンゴと連結する。水槽中,海底でサンゴを飼育し,スキャフォールド表面におけるサンゴ骨格形成を観察する。ここにおいても,医療材料開発で利用されているテクニックを駆使する。高効率なサンゴ骨格形成手法を探索すると共に,骨関連分野へも新たな切り口を提案し,協奏的に研究を発展させる。
著者
中河 伸俊
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.3-26, 2022-01-30

本稿の目的は,アーヴィング・ゴフマンの『スティグマ』を参照しながら,カテゴリー化という観点に軸足を置いて,日常のやりとり(相互行為)の中での参与者の自己(self)の立ち現われ方をめぐるいくつかの課題を検討することである.そのためにまず,そうした作業の方法論上の前提について述べたあと,ゴフマンの自己呈示論とサックスの成員カテゴリー化論を踏み台にしながら,そこに欠けていた,個別固有なものとみなされているパーソナルなアイデンティティをめぐる考察を『スティグマ』から抽出し,それがもたらすいくつかの課題を検討した.その帰結として,役割―パースン複合体という新たな概念を提示し,それを補助線に,ジェンダー論の分野での論争点である性別のオムニレリヴァンスとパラレルな形でゴフマンが主張する,スティグマのオムニレリヴァンスについて若干の試論を提示した.
著者
川口 寿裕
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

離散要素法(DEM)を歩行者間の相互作用力計算に適用し、高密度下の歩行者流れを解析できる数値シミュレーションコードを作成した。本コードを直線通路内歩行者流れ、出口からの退出、群集詰め込みなどの問題に適用したところ、既存の実験結果と定量的によく一致することが確認された。特に、高密度下での群集内作用力の不均一性について、有益な知見を得た。一方、ビデオカメラを用いて実際の群集の流れを撮影し、PIV解析を行った。二次射影による平面補正を行うことで、斜め上からの撮影画像からも適正な歩行速度を計測できることが確認された。
著者
谷本 奈穂
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.37-59, 2012-09-20

本論文は,美容整形や美容医療(プチ整形)が普及する現代社会において,それらの施術を受けたいと思う人々の①属性,②身体意識を明らかにする.また,以前行った調査で,美容整形を希望する理由に「自己満足のため」が最も多かったという結果をうけ,③美容実践が,身体を自分の所有物と感じてアイデンティティを再定義するような主体的な経験なのかも明らかにする.25~65 歳の男女800 人に調査票調査を行い,分析した結果は次の通り.①美容施術を望むのは男性よりも女性である.性別以外の,年代,世帯年収,学歴,既婚・未婚といった属性では有意差が見られなかった.②美容実践はあくまでも第一義的に「自分の心地よさ」(=自己満足)のために行われる.自分の心地よさという理由は,美容実践でない行為においても,美容実践を望む人が,望まない人より使用している.ただし,美容実践を望む人ほど「他者」の評価も求める傾向ももつ.③美容実践は,性別と世帯年収に規定される.また自己アイデンティティの再構築を目指すような主体的な行為というより,むしろ「外見の老化を感じる」こと,「身体に関する社会の常識を守るべきという考えを持たない」ことに規定される行為でもある.したがって,美容実践は,第一に「自分」という位相で語られる行為である.ただし,自分の心地よさの背後には「他者」の評価期待が含まれる.そして身体に関わる常識という意味での「社会」的影響は後景に退いている行為である.\nThis paper analyses people intending to undergo cosmetic surgery or cosmetic medical care in contemporary Japan. It aim to explore (1) their attributes, and (2) their body consciousness. The study found that the most popular motivation for cosmetic surgery was “self-satisfaction”. ーFollowing this, the study investigated (3) whether cosmetic practices can be regarded as subjective experiences, which promote the re-definition of identities. The results of this later survey (involving 800 informants) as follows.First, more women want to have cosmetic interventions than men. Other attributes, including age, academic background, income, and marital-status, did not show any significant influence on motivations. Second, some people want to have cosmetic interventions because of a sense of self-satisfaction, however, they tend to want positive evaluations from “others” too. Third, “awareness of aging” and “lack of a conviction to maintain common sense in relation to one’s body” are more likely to inderpin a desire to undergo cosmetic intervention than “the intention to reform self-identity.”Therefore, cosmetic interventions should be understood in terms of “the self,” positive evaluations by “the other,” and “self-comfort.” Although cosmetic practices are social practices, they are not significantly influenced by “the social.”
著者
関西大学総合企画室広報課
出版者
関西大学
巻号頁・発行日
vol.2015, no.(40), 2015-02-25