著者
猪狩 淳
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.124-132, 2004-06-30
参考文献数
22
被引用文献数
2

近年増加傾向がいちじるしいペニシリン耐性肺炎球菌とβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌,加えて最近増加が注目されている基質特異性拡張型グラム陰性桿菌とメタロ-β-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌について,順天堂医院における動向と現状を述べた.ペニシリン耐性肺炎球菌は1994年頃から増加が目立つようになり,2000年以降は肺炎球菌の10%を越え,しかも高度耐性化が進行し,多剤耐性株がみられるようになった.アンピシリン耐性インフルエンザ菌は,β-ラクタマーゼ産生株が1997年頃までは,インフルエンザ菌の15%を占めていたが,99年頃から減少し,これに代ってβ-ラクタマーゼ非産生株(BLNAR株)が増加し,2003年には40%台に増加した.基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBLs)産生株は大腸菌と肺炎桿菌で多くみられ,大腸菌では1990年の初期には分離されるようになり,94年には大腸菌の5%,2003年には8%台に増加している.メタロ-β-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌は緑膿菌やセラチア菌で多く,緑膿菌では,2002年には1.3%の株が分離された.これらの新しい耐性菌は今後とも増加することが考えられ,その動向が注目される.
著者
和気 秀文 グホ サビン 山中 航
出版者
順天堂大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-10-07

長期間の心理社会的ストレス暴露は高血圧の発症を促し、放置すると脳卒中や心筋梗塞を招く危険がある。ところがストレスによる高血圧発症機序については不明である。慢性ストレスでは、骨髄由来の炎症細胞が活性化し、扁桃体や視床下部に集積してミクログリアになることが報告されている(脳・骨髄相関)。そこで申請者らは「慢性ストレスによる高血圧の発症は、脳・骨髄相関に起因した“扁桃体-視床下部系の炎症”による」という仮説を立てた。本研究では動物モデルを用いてこの仮説を検証するとともに、運動トレーニングによる、脱ストレス・抗高血圧効果の機序についても併せて検討していく。
著者
宮本 直和 福 典之
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、人間生体組織の硬さを直接的かつ非侵襲的に測定できる超音波剪断波エラストグラフィを用いることによって、以下のことを明らかにした。1) 関節可動域と筋肉の硬さ(伸びにくさ)には関連があるが、その関係は決して強くなく、関節可動域による評価では筋肉の硬さ(伸びにくさ)を適切に評価できない。2) 男性の筋肉は女性の筋肉よりも硬い。3) ストレッチによって対象とする全ての筋肉が軟らかくなるわけではない。4) 筋肉の硬さは遺伝要因の影響を受ける。
著者
三浦 浩二 修 岩 鶴井 博理 高橋 和子 張 丹青 広瀬 幸子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.384-395, 2002-12-12
参考文献数
32

目的:リンパ濾胞胚中心はT細胞依存性抗原の刺激に際し,抗体の親和性成熟やメモリーB細胞の形成・維持に働く重要な部位である.全身性エリテマトーデス(SLE)の各種自己抗体もT細胞依存性に親和性成熟を示すので,リンパ濾胞胚中心が病的自己抗体産生に重要な役割を担っていると考えられる.この観点からわれわれは,SLEを自然発症する(NZB×NZW)F1マウスとBXSBマウスの脾臓リンパ濾胞胚中心の免疫組織化学的特徴を解析した.方法:加齢に伴い自己抗体を産生するSLE自然発症(NZB×NZW)F1マウスとBXSBマウスの脾臓リンパ濾胞胚中心を免疫組織化学的に解析し,正常マウス系にT細胞依存性抗原を免疫した時に形成されるリンパ濾胞胚中心の構築との比較検討を行った.結果:(1)SLEマウスでは,SLE発症前から既に胚中心の形成が見られ,加齢に伴って高度な過形成が認められた.(2)正常マウスにT細胞依存性抗原を免疫した時に形成されるリンパ濾胞胚中心と比較すると,SLE胚中心にはT細胞が相対的に多く認められた.(3)正常BALB/cマウスの濾胞樹状細胞には補体レセプターCR1やFcレセプターFcγRIIBおよびリンパ濾胞胚中心抗原FDC-M2の発現が見られたが,SLEマウスではFcγRIIBとFDC-M2の発現は加齢とともに消失することが明らかとなった.結論:SLEの過形成胚中心の成因には,濾胞樹状細胞上の免疫機能分子の統御異常が関連していると考えられた.CR1は濾胞樹状細胞とB細胞との接着やB細胞の維持に重要な分子である.一方,FcγRIIBは細胞質内ドメインにシグナル抑制ITIMモチーフを持つ分子なので,正常では濾胞樹状細胞の機能の制御に働いている可能性がある.現在機能が明らかでないFDC-M2を含め,今後.これら各分子の働きや相互作用を調べることでSLEの発症機構の一端が明らかになると思われる.
著者
上野 真一
出版者
順天堂大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

パーキンソン病(PD)は構造異常を伴うα-シヌクレイン(AS)が伝播・凝集することで神経細胞変性を惹起することが想定されている。これまでAS凝集体は嗅上皮や腸管から神経回路を介して脳全体へ進展するという2経路が提唱されているが、全ての症例には当てはまらず、非神経系回路を介した伝播経路以外にAS凝集体が循環し全身に広がる可能性を考え、血液中に微量なAS凝集体を検出することに成功した。本研究では、血液からの進展様式および病態への影響を解明することを目的とし、その上で、血中AS凝集体除去による治療の可能性を模索する。
著者
鈴木 大地
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.308-311, 2003-09-30
参考文献数
4
著者
高谷 真由美 黒木 淳子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.117-128, 1997-03-29
被引用文献数
1
著者
永原 章仁 浅岡 大介 北條 麻理子 泉 健太郎
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

胃潰瘍や癌がないにも関わらず、胃痛、胃もたれを起こす例は機能性ディスペプシア(FD)と呼ばれ、症状発現機序は十分に解明されていない。本研究では胃内圧を測定し、空腹時の内圧が食後の満腹感に影響している可能性を示した。FDの診断では、軽微な内視鏡所見にとらわれず、症状にフォーカスして診療をすること、治療では、新たな酸分泌抑制薬が高い効果を認めること、多剤併用療法の効果は限定的であること、抗うつ薬・抗不安薬が一定の効果があること、また、長期の管理は今後解決すべき大きな問題である事を明らかにし、非効率的な薬剤治療を回避し、適切な薬物治療を行うためのエビデンスの構築に寄与することができたと考えられる。
著者
川久保 嘉昭 竹井 謙之 泉 光輔 山科 俊平 今 一義 榎本 信行 鈴木 聡子 池嶋 健一 大久保 裕直 佐藤 信紘
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.73-81, 2007-03-31
参考文献数
27

目的: 肝星細胞は肝障害が継続すると筋線維芽細胞様細胞に形質転換し,コラーゲンをはじめ,細胞外マトリクスを過剰産生し,肝線維化機序の中心的な役割を果たす.このため,活性化した星細胞に細胞死を誘導することができれば,肝線維化抑制につながると期待される.グリオトキシンは活性化した星細胞にアポトーシスを引き起こすことが知られているが,その分子機序は明らかではない.一方,inverse genomicsの手法は,ランダムな切断配列をもつリボザイムライブラリーを導入し,細胞の表現型・性質を変化させる刺激を与えた際,変化が起こらなかった細胞からリボザイムを単離し,その塩基配列を知ることで表現型変化に関わる機能遺伝子を同定することが可能である.われわれはこの手法を用いてグリオトキシンによる星細胞のアポトーシスに関わる遺伝子の探索を行った.対象・方法: 株化星細胞であるHSC-T6にリボザイムライブラリーを搭載したプラスミドをトランスフェクションし,48時間後にグリオトキシン(1.5μM)を培養液に添加して24時間培養後,生存細胞からプラスミドを回収した.このグリオトキシンによるセレクションを3回繰り返した後にリボザイムを単離してシークエンス解析を行い,その配列情報をもとにアポトーシス関連遺伝子の検索をデータベース上にて行った.結果: われわれは20の星細胞アポトーシスに関わる候補遺伝子の配列を得た.その中の1配列は,カスパーゼ7に相補性を有していた.同配列を持つリボザイムをHSC-T6に導入したところ細胞はグリオトキシンによるアポトーシスの誘導に抵抗性を示した.結論: 以上の結果によりグリオトキシンによるアポトーシスの誘導にはカスパーゼ7が関与していることが示唆された.またinverse genomicsによるアプローチは,肝星細胞のアポトーシスに関わる機能遺伝子の探索に有用であることが示唆された.
著者
三輪 正人 中山ハウリー 亜紀 大久保 公裕 飯島 史朗 村上 亮介
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

ドライスキンと同じく、ドライノーズの病態がアレルギー性鼻炎の前駆段階である可能性を実証するため、スギ花粉抗原鼻誘発前後の鼻粘膜上皮バリア機能の非侵襲的生理学的検査である鼻粘膜水分蒸散量、鼻粘膜上皮間電位差の測定、鼻汁浸透圧、pHの測定、鼻および口呼吸時の呼気凝集液中の過酸化水素濃度の測定、鼻粘膜上皮擦過細胞の糖鎖解析をおこなった。また、ドライアイの成因として、涙液の高浸透圧が考えられている。高浸透圧溶液のモデルとして5%の高張食塩水の点鼻誘発刺激をおこない、同様の検討を実施した。抗原特異的鼻誘発後、非特異的刺激である高張食塩水点鼻の両者とも、鼻粘膜水分蒸散量は増加、鼻粘膜上皮間電位差は減少し、鼻粘膜上皮バリア機能は低下したことが示された。抗原刺激後、呼気凝集液中のpHは上昇したが、高張食塩水刺激では有意な変化はみられなかった。両者共刺激後の呼気凝集液中の過酸化水素濃度も増加したが、異なる経過をたどった。鼻粘膜上皮擦過細胞の糖鎖の解析では、ABA, LCA, SSA lectinの反応性が、スギアレルギーの被験者で特異的ならびに非特異的誘発刺激後、減少していた。ドライノーズの病態とアレルギー性炎症、高浸透圧環境の関連性について引き続き解析中である。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂大学スポーツ健康科学研究 (ISSN:13430327)
巻号頁・発行日
no.11, pp.37-48, 2007-03

The purpose of this study was to examine the condition of solidarity in childhood by analyzing typical examples where children either could form solidarity or couldn't. We analyzed two contrasting novels describing boys' solidarity, William Golding's ``Lord of the flies'' and Kenzaburo Oe's ``Nip the buds, shoot the kids''. Results showed that the following six conditions had effects on forming solidarity; as to tasks which boys worked on, 1) cognitive adequacy of tasks, 2) degree of task sharing, 3) clarity of results, 4) degree of necessity for cooperation, and as to boys' endowments, 5) ego maturity of group members, especially their leader, and 6) experience of independence and strength of orientation toward it. It was also considered how adults can support them to form solidarity in difficult conditions.
著者
宇賀 貴紀
出版者
順天堂大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

長期の学習によって、感覚情報により鋭敏に反応できるようになる学習過程を「知覚学習」と呼ぶ。知覚学習の脳内メカニズムに関する現在の定説は、「感覚情報を担うニューロンの感度が、学習の結果、より鋭敏になることで実現されている」というものである。しかし、サル第一次視覚野ニューロンの感度は学習によってほとんど変化せず、個体の学習能力を説明できないことが知られている。本研究では、知覚学習では感覚ニューロンの感度が上がるのではなく、「学習により、情報量の多い有用な感覚ニューロンから選択的に情報を読み出すことができるようになる」という新しい説を検証する。昨年度までに、サルがランダムドットステレオグラムの奥行きを答える奥行き弁別課題を学習する過程を行動レベルで追いながら大脳皮質MT野ニューロンの活動を記録した。その結果、ニューロンの弁別閾値は学習過程で変化しなかったのに対し、ニューロン活動からサルの答えを予測できる確率が訓練により上昇することがわかった。今年度はさらに、短期の学習、すなわち日内学習ではどのようなニューロン活動の変化が見られるのかを解析した。すると驚いたことに、日内学習ではニューロンの感度が上昇するのに対し、ニューロン活動からサルの答えを予測できる確率は上昇しないことがわかった。これらの結果は、短期の学習では感覚情報を担うニューロンの感度がより鋭敏になるのに対し、長期の学習では感度の高い感覚ニューロンから上手く情報を読み出すことができるようになることを示唆する。