著者
百瀬 修二 田丸 淳一 梶野 一徳
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

大腸菌で DNA の組換えに関わると考えられている dbpA (DNA-binding protein A)の発現が、ヒトにおいて活性化リンパ球の指標となる CD30 陽性細胞の染色態度とリンパ組織において類似していることを見出し、さらに CD30 陽性の悪性リンパ腫 (Hodgkin リンパ腫;HL など)においても高頻度に発現していた。HL では NF・B シグナル伝達系の恒常的活性化が知られているが、dbpA が NF・B シグナル伝達系の下流で発現・機能すると考えられた。
著者
坪内 暁子 奈良 武司 丸井 英二 内藤 俊夫 大槻 公一 重松 美加 山崎 浩
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、当初、世界レベルでの甚大な被害が予想される重篤な新興感染症等、特に新型インフルエンザ(H5N1)をターゲットとした、国民や社会全体への被害を抑える対策の一つ、感染症教育の有効的な手法に関する研究であったが、東日本大震災以降、二次災害としての感染症の対策の意味合いも加え、知識の浸透と自主性の育成を念頭に、研究モデル校において、教育機器を用いた講義と自ら考える演習(避難所シミュレーション等)を併せたプログラムを実施、介入前後のアンケート調査の結果等から有効性が認められた。
著者
ニヨンサバ フランソワ 秋山 俊洋 キアツラヤノン チャニサ 梅原 芳恵 スミスリッティ リッティ 池田 志斈 奥村 康 小川 秀興
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

LL-37のタイトジャンクション(TJ)バリア機能に及ぼす影響を調べた結果,LL-37がケラチノサイトの分化マーカーとTJ構成タンパクの発現を増加し,さらに,TJバリア機能を強化した.また,β-デフェンシン-3がLL-37同様にRac1,非定型的PKC,グリコーゲン合成酵素キナーゼ3とPI3Kの経路を介して,TJバリア機能を調整することが分かった.また,LL-37等の抗菌ペプチドがバリア機能の調節だけではなく,痒みの抑制と抗炎症作用にも関与することを確認した.これらの結果は,LL-37等が皮膚の感染防御とアトピー性皮膚炎等の病変形成のメカニズムと治療法に大きなインパクトを与えると考えられる.
著者
山城 雄一郎 大塚 宜一 永田 智 清水 俊明
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

インフォームド・コンセントの得られた川崎病患児14例中9例の小腸粘膜から,患児末梢血単核球を有意に刺激する4種のグラム陰性桿菌,3種のグラム陽性球菌,3種のグラム陰性球菌を検出した.このうち患児2例からはスーパー抗原活性を有するS.aureusが検出された.また検出された細菌のうち1種は偏性嫌気性菌で通常の咽頭/後鼻腔,便培養では得られない細菌群であった.これらの培養上清を同一患児血清と反応させ,Western blottingにより反応した蛋白成分をIgG抗体を用いて検出した.その結果,9例全例からγグロブリン投与前の血清で検出されなかった各細菌の産生物に対するIgG抗体が投与後の血清にて検出されていた.以上より,小腸粘膜から検出された細菌の産生物が,患児単核球を増殖させ,何らかの免疫学的活性をもたらしていること,しかもその細菌産生物の産生時期は川崎病急性期であること,γグロブリンによりその中和抗体が供給されたことより,川崎病が治癒を迎えた可能性が大きいことが推測され,これら細菌産生物が川崎痛の原因物質であることを強く示唆する結果と考えられた.これらのうち2例から得られた56kDa,47kDa,37kDaの3種のバンドについてのみアミノ酸分析が行い得たが,これらはいずれも細菌の内因性蛋白であった.以上のことから,川崎病の病原菌は単一なものではなく極めてheterogeneousなものであることが推察された.
著者
菊地 正悟 稲葉 裕 和田 攻 黒沢 美智子 山城 雄一郎
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成7年12月から平成8年3月の間に、1.5歳児検診を受診した95人と3歳児検診を受診した113人の唾液中Helicobactor pylori抗体を測定した。また、平成7年度に小学校1年生であった310人と中学2年生であった300人から、平成7年6月と平成8年6月の2回唾液を採取し、唾液中H.pylori抗体を測定した。同意に保護者に、既往症、家族歴、ペットなどに関する質問票の記入を依頼した。さらに、平成8年に小児科受診者85人の血清Helicobactor pylori抗体と唾液中H.pylori抗体を測定した。唾液の測定は、英国Cortecs社製のキット、Helisalによって、血清の測定は米国Biomerica社製のキット、Pilika Plate G Helicobactorによって行った。小児科受診者85人の血清Helicobactor pylori抗体と唾液中H.pylori抗体を測定したところ血清陽性者は4人で、その唾液中抗体価は1.5以上が3人、0.5未満が1人であった。こうしたデータに基づき、1.5歳児では唾液中抗体価1.0以上を陽性、1.0未満を陰性とし、3歳児では1.5以上を陽性、1.0未満を陰性とし、1.0-1.49の児は分析から除いた。小学生と中学生については、平成7年8年とも唾液中抗体価1.0以上を陽性、2回とも1.0未満を陽性とし、2回の結果が1.0にまたがる例は分析から除いた。同胞がいる小児は1.5歳と3歳で唾液中抗体陽性率はそれぞれ8.6%、24.1%で、同胞のいない小児の0.6%、7.7%より大きく、3歳児では有意であったが、小中学生では唾液中抗体と関連を認めなかった。1.5歳児では、同室で同胞と寝ていた期間が唾液中抗体陽性者で有意に長かった。3歳児では、親が添い寝していた期間が唾液中抗体陽性者で有意に短かった。小中学生では、唾液中抗体陽性者で、小学校入学以前の共同生活の期間が有意に長かった。乳幼児の栄養や、親が噛んだ食べ物を与えたか否か、出生児や健康受診時の体格、両親の胃疾患の既往、ペットの有無は、いずれの年齢でも唾液中抗体と関連を認めなかった。
著者
平野 隆雄
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

自己免疫、SLE、ベ-チェット病には、多彩な神経症状をともなうことが知られている。神経症状を合併するかどうかは、その患者の予後に重要な意味を持っている。近年、抗糖脂質抗体と自己免疫病患者の神経症状との関連性が注目されている。そこで、われわれは、自己免疫病とくに神経症状をともなうSLE、ベ-チェット病患者血清、髄液について抗糖脂質抗体の検出法を開発し、定量をおこないこれと実態・原因の解析を目的として研究を試みた。62年度に抗糖脂質抗体、特に抗asialo GM_1抗体のELISA法、TLCイムノスティンニング法による検出法を開発し、各種自己免疫症患者血清、髄液を定量した結果、CNSーSLE、ニュ-ロベ-チェット病患者血清中に高率に、抗asialo GM_1抗体の存在することが判明した。髄液中には、抗asialo GM_1抗体の存在はほとんど認めなかった。さらにモノクロ-ナル抗asialo GM_1抗体を作成し、患者血清及び髄液中に糖脂質抗原の存在の有無を検討したが、検出できなかった。これは、この検出法の感度や免疫複合体の存在等まだ十分に検討すべき点が残っている。いずれにせよ、神経症状をともなう自己免疫病患者血清中に、高頻度に抗糖脂質抗体の存在することが明らかになった。このアッセイ法を用いてさらに臨床的検討を進めていく次第である。我々の共同研究者が、最近新らたにCNSーSLE血清中に存在する抗糖脂質抗体がリンパ球減少、低補体価、臨床活動性と相関することを見い出した。我々は、シアリダ-ゼ処理したB細胞表面の糖脂質に対する自己抗体がNZBマウスに存在することを明らかにした。これらの研究は全て、糖脂質に対する自己抗体が、自己免疫病の病因、病態に密接に関連することを意味している。今後の研究の発展に期待したい。
著者
菅澤 佑介
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

近年発達脳に対する麻酔薬の影響が懸念され関心が高まっている。我々は電気生理学的手法を用い、発達過程への吸入麻酔薬の影響を線条体Cholinergic interneuronの過分極活性化陽イオン電流(Ih)の変化により分析を行った。日齢7~28のマウス線条体Cholinergic interneuronにおいて、日齢増加に伴う神経細胞膜の状態変化とIhの絶対値増加を認めた。セボフルランは濃度依存性にIhを抑制した。さらに感覚応答に重要とされるCholinergic interneuronのrebound activationを抑制し、Ihが関与する生理的条件下での発火頻度を変化させた。
著者
岩清水 伴美 鈴木 みちえ
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

若手保健師が乳幼児虐待ハイリスク家庭を支援するためのチームケア能力を向上させる関連要因は、リフレクションと学習、支援への気持ち等であった。先輩保健師の課題としては、若手保健師に見せる・伝える、先輩のスキルアップ等が明らかになった。新人保健師のチームケア能力向上するためには、ケースの個別支援を展開すること、苦手意識を芽生えさせないため「高い技能を求め、高い挑戦」をさせる教育内容の示唆を得た。
著者
奥村 康 八木田 秀雄 中内 啓光 熊谷 善博
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

抑制性T細胞に限らず、T細胞の機能発現のために、標的との結合に不可欠の数々の免疫機能分子の解析、その発現機序等の解析を通し、T細胞の免疫系での調節性の役割を解析した。1)抑制性T細胞株の確立とその細胞膜分子の解析 抗原に得異的な抗体産生抑制性T細胞株を確立し、その抗原レセプターを介するシグナルがいかなるリンフォカインを産生するかを指標に、抑制性T細胞の機能の多面性を解析した。また、この抑制性T細胞膜上の遺伝産物に対する抗体の確立と、その抗体の反応分子の検索を進めた。また、これらの抑制性T細胞の疾患における意義を解析するため、各種の自己免疫病、特にリウマチにおける抑制性T細胞をその細胞膜表面分子を指標に解析した。2)リンパ球機能分子のコードする遺伝子の単離とその分子に対するモノクローナル抗体の確立 T細胞の抗原レセプター以外に、いくつか重要な補助分子としてリンパ球機能分子と総称される膜分子が、リンパ球の分化と機能発現に大きな役割をしていることが明らかになりつつある。マウスのT細胞に焦点をあて、抑制性T細胞、細胞障害性T細胞の機能発現に不可欠な分子CD8、CD2等の遺伝子の単離同定、またそれらの遺伝子導入した細胞を用いて、その分子の免疫反応での役割を解析した。その分子に対するモノクローナル抗体を確立し、これらの機能分子の動きを調べた。3)細胞障害性リンパ球の最終エフェクター分子の解析 T細胞やNK細胞の細胞エフェクター分子のひとつであるperforinの遺伝子の単離に成功し、その分子の免疫応答で果たす役割を分子免疫学的に解析した。
著者
西村 あをい 山田 至康
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

1.調査研究の実施【目的・方法】2011年12月、救急外来トリアージの現状と課題を明らかにすることを目的に、全国の救急認定および小児救急認定看護師が所属する全国440施設を対象として、救急外来看護師トリアージの現状をアンケート調査により実施した。【結果】有効回答は155施設(回収率35.2%)であり、トリアージナースの導入施設は75施設(48%)だった。75施設のうち小児トリアージの実施施設は12施設(16%)であり、以下この12施設の結果を報告する。小児トリアージ導入の動機は、救急外来混雑の改善目的が7施設、診療報酬改訂が3施設だった。ガイドラインを有するのは11施設(92%)と高率であるが、CTAS/JTAS改訂版の使用は4施設(42%)のみで、他5施設(50%)は自施設独自に作成したものを使用していた。トリアージの事後評価体制があるのは4施設(33%)と低率であり、各施設では教育・研修上の問題やトリアージナースの質の問題、事後検証の必要性等を問題点として自覚していた。【考察】小児トリアージを実施している施設では、ガイドラインの使用率は高いが独自のものが多いため、事後検証の普遍性を保つには標準化が望まれる。また、トリアージナースの教育や研修体制に課題を有する施設も多く、教育研修プログラムの改善が必要である。2.トリアージナース養成プログラムの作成と運用関東地区の大学病院救急外来に勤務するトリアージナース候補者を対象にして、トリアージナース養成のための研修会を2013年3月に千葉県浦安市内で開催した。研修内容は、院内トリアージの概要(トリアージの概念、目的、意義、過程)、トリアージナースの役割、トリアージの過程に関する講義と、成人患者及び小児患者のトリアージプロセスに関する演習問題のグループワークである。
著者
山田 俊彦
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.118-119, 2003-05-30
被引用文献数
1
著者
佐藤 文彦
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

非肥満IGTにおける高血糖のメカニズムは完全には解明されていな。本研究においては、非肥満IGTの病態生理を検討するためにトレーサーを用いたグルコースクランプと、二つのトレーサーを用いた経口糖負荷試験を行った。私達の予備的なデータからは、非肥満IGTでは肝糖取り込みの低下と骨格筋のインスリン抵抗性が高血糖に寄与する可能性が示唆された。今後は、これらのデータを確定させるためにさらなる調査が必要である。
著者
恩田 紀更 大井 洋之 玉野 まり子 大澤 勲 富野 康日己
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.217-225, 2007-06

目的:IgA腎症はわが国の原発性糸球体腎炎のなかで最も頻度の高い腎炎である.補体成分の糸球体沈着は知られているが,血清中の補体成分の全体像は明らかにされていない.そこでわれわれは,血清中の補体成分と補体制御蛋白がIgA腎症の病態に関与しているか否かについて検討した.対象と方法:IgA腎症患者50名と健常者50名の補体価(CH50)および血清補体成分を測定した.血清C3とC4はlatex cohesive immunoassayで測定し,CH50はMayer法相対比濁法,C1qはnephelometry法,C5・C1 inhibitor・B・C4 bindingprotein・H・Iは一次元放射免疫拡散法で測定した.Mannose-binding proteinとproperdinは,ELISA法で測定した.IgA腎症患者を組織学的予後分類で4群(予後良好群,予後比較的良好群,予後比較的不良群,予後不良群)に分類し,血清補体成分との関連性を検討した.結果:IgA腎症患者では,健常者と比較しCH50・C4・B・properdin・H・Iは有意に高値であった(p<0.01).IgA腎症患者では,C4とC1 inhibitor(p<0.05),C5とC4 bindingprotein(p<0.05)の間に有意な相関が認められた.しかし,健常者ではそれらの相関は認められなかった.予後分類の予後不良群は,他の群に比べC4 binding proteinの有意な高値がみられた(p<0.05).考察:IgA腎症患者では,健常者と比較して血清補体成分および補体制御蛋白が高値であり,各補体成分間で掛1相関が認められた.また,C4 binding proteinが組織障害度と強い関連を認めた.これらのことより,血清補体の変動は,本症の病態を反映しているものと考えられた.
著者
堀越 あゆみ 堀越 勝
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.192-199, 2008
被引用文献数
3

目的:ハーディネスは,ストレスが精神的健康に及ぼす影響の緩衝要因として海外で数多く研究されているが,日本での研究は少なく,日本語版の尺度の信頼性と妥当性は検証が不十分である.本研究では,中高年と大学生を対象に,日本において最も有用と考えられる多田・濱野の15項目版ハーディネス尺度の構造,および精神的健康との関連を検討する.対象:関東圏に住む中高年向け会員制雑誌の50歳以上の購読者とその知人の合計750名と,関東圏の大学に在籍する大学生164名であった.方法:多田・濱野の15項目版ハーディネス尺度により調査対象者のハーディネス特性を,日本語版GHQ短縮版(GHQ12)により精神的健康を測定した.結果:因子分析の結果,全ての世代および性別で,おおむね同様の3因子構造が確認された.重回帰分析の結果,GHQ12に対してコントロールとコミットメントは負の影響を,チャレンジは正の影響を与えていた.考察:本調査で使用した15項目版ハーディネス尺度の信頼性と妥当性が確認された.コントロールとコミットメントは精神的健康を高め,チャレンジは阻害するという結果が示された.
著者
長尾 正嗣
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.45-52, 2001-07-30

高齢社会が到来した今日,わが国の老年期痴呆疾患患者数は約130万人と推定されている.この数は21世紀に入っても増加して2035年には350万人に達すると予想される.アルツハイマー病はその過半数を占めると言われている.今まではアルツハイマー病の人は痴呆症状のため家族や地域社会の人々から誤解を招き,つらい日々を送っていた.痴呆症状が進行してくると介護している家族の負担も増し,医療機関に援助を求めて来院する.この時点では痴呆もかなり進行しており,入院治療などが必要になってくる.笑顔の失われた人々に何が今できるのか,地域でどのようにアルツハイマー病に取り組んでいるのかを紹介する.57歳女性の症例の治療において,ドネペジルを投与しての経過を紹介し,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はあくまでも病態に作用する対症療法であり,一時的に認知機能を改善するだけであり,その後各国での治療も参考にした経過を報告し,今後地域におけるアルツハイマー病の早期診断早期治療が必要であることを述べる.
著者
長尾 正嗣
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.45-52, 2001-07-30
参考文献数
18

高齢社会が到来した今日,わが国の老年期痴呆疾患患者数は約130万人と推定されている.この数は21世紀に入っても増加して2035年には350万人に達すると予想される.アルツハイマー病はその過半数を占めると言われている.今まではアルツハイマー病の人は痴呆症状のため家族や地域社会の人々から誤解を招き,つらい日々を送っていた.痴呆症状が進行してくると介護している家族の負担も増し,医療機関に援助を求めて来院する.この時点では痴呆もかなり進行しており,入院治療などが必要になってくる.笑顔の失われた人々に何が今できるのか,地域でどのようにアルツハイマー病に取り組んでいるのかを紹介する.57歳女性の症例の治療において,ドネペジルを投与しての経過を紹介し,アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はあくまでも病態に作用する対症療法であり,一時的に認知機能を改善するだけであり,その後各国での治療も参考にした経過を報告し,今後地域におけるアルツハイマー病の早期診断早期治療が必要であることを述べる.
著者
森下 総司
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

骨髄増殖性腫瘍(MPN)には,主として真性赤血球増加症(PV),本態性血小板血症(ET),原発性骨髄線維症(PMF)などが含まれる。我が国のMPN症例におけるJAK2遺伝子変異の陽性率はPVが94.4%,ETが51.9%,PMFが54.7%であった。PVと診断されたにも関わらずJAK2遺伝子変異が陰性であった5例について,JAK2の全エクソンを次世代シークエンサーで解析したところ,共通する遺伝子変異を2つ同定できた。これらはアジア人に特有のSNPであったが,アミノ酸の置換を伴わない変異であった。以上のことから,我が国におけるPV診断ではJAK2遺伝子変異検査が重要であると考えられる。