著者
高森 建二
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.193-199, 2007-06
被引用文献数
1

痒みには抗ヒスタミン薬が奏効する痒みと抗ヒスタミン薬に抵抗する痒みがある.前者の痒みはヒスタミンが痒み発現に主要な役割を演じている末梢性の痒みの場合である.一方,後者の痒みは,いわゆる難治性の痒みと言われる痒みで,痒み発現に蛋白分解酵素(トリプターゼなど)や炎症性サイトカイン(TNFα,IL-1など),好酸球由来因子(活性酸素ECP,MBP)などヒスタミン以外のケミカルメディエイターが痒み発現に関与している場合,あるいは求心怪C線経が機械的,化学的あるいは温度刺激のような外部からの刺激により活性化される場合,あるいはオピオイドペプチド/オピオイドレセプター系の関与する中枢性痒みメカニズムによる場合などである.抗ヒスタミン薬の奏効しないいわゆる難治性痒みを呈する疾患には腎不全に伴う血液透析患者や胆汁うっ滞が原因で生じる黄疸や肝硬変などの肝疾患やアトピー性皮膚炎などの痒みがある.本講演では腎透析に伴う痒みとアトピー性皮膚炎に認められる痒みの発現メカニズムと対策について考察した.腎透析に伴う痒みの原因としてヒスタミン,セロトニン,ECP,副甲状腺ホルモン,補体の活性化,皮膚の乾燥など多くの因子が推定されているが,これらの血中濃度や症状と痒みの強さが相関しないこと,抗ヒスタミン薬が奏効しないこと,それぞれの因子に対して対処しても痒みが抑制されないこと,などからこれらの因子は否定的である.われわれは本症の痒み発現にオピオイド系(μ-オピオイド系とκ-オピオイド系)が関係していることを示し,κ-オピオイド系を優位にすることにより痒みが抑制されることを示した.アトピー性皮膚炎の痒み発症には多くの因子が関与している.肥満細胞由来因子(ヒスタミン,トリプターゼ,TNFαなど),表皮内神経線経,サブスタンスP,好酸球由来因子(活性酸素,ECP,MBP),リンパ球由来サイトカイン(IL-2ケラチノサイト由来炎症性サイトカイン,オピオイドペプチド/オピオイドレセプターなどである.従ってアトピー性皮膚炎の痒みを一元的に捉えるのではなく,多元的に捉え対処する必要がある.本講演では痒み閾値の低下の原因と考えられる表皮内神経線経とオピオイド系の痒み発現への関与と対策について考察した.
著者
多田 昇弘
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

マウス精子を室温保存できれば、凍結保存に比べ、保存スペースが少なくて済み、液体窒素を補充する必要もなく、輸送も容易である。本研究では、マウス精子の室温保存技術を確立するために、トレハロース及び緑茶ポリフェノールを含む保存液を用いて真空乾燥させたマウス精子を室温保存し、復水後の受精率及び発生率を確認した。また、一部の保存精子ついて、1年以上の室温保存を行い、産仔の作出も試みた。その結果、トレハロースの室温保存における有効性が明らかになった。また、1年以上(446日)長期室温保存した精子を用いて顕微授精を行い、得られた受精卵の卵管移植により、正常な産仔の作出に成功した。
著者
松本 孚
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.83-92, 1996-03-29

幸福という概念を総合的,網羅的に分類しようと試みた結果,結論として次のような分類体系が考案された。1.内からの幸福:1)身体的幸福,2)行動的幸福,3)心理的幸福:(1)自ら、幸福と思う場合,(2)自ら幸福と思わない場合,(3)欲求満足,(4)欲望からの解放,(5)理性や徳への準拠,4)自己実現,5)全人的調和,6)自己超越。2.外からの幸福:1)外部環境としての幸福:(1)他者環境の幸福,(2)家庭環境の幸福,(3)組織やコミュニティの幸福,(4)社会の幸福,(5)人為的自然環境の幸福,(6)自然環境の幸福,2)外部環境と個人の相互作用としての幸福:(1)対人関係の幸福,(2)個人と組織の関係の幸福,(3)個人と社会の関係の幸福,(4)個人と人工物との関係の幸福,(5)人間と自然の関係の幸福。
著者
山口 忍 荒賀 直子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.33-40, 2000-03-29

看護職を選択する人に共依存傾向があるといわれていることから,看護を選択した女子学生129名と,看護以外の学科を選択した女子学生134名を対象に,今後の学生指導に役立てることを目的として,学生本人の育てられ方や共依存傾向の実態を調査し,以下の知見が得られた。1.看護学生と看護以外の学生の入学直後の生活背景では,大きな差はなかった。2.入学時では看護学生と看護以外の学生の,共依存傾向に大きな差はみられなかった。3.看護学生と看護以外の学生の,母親の育児姿勢と,本人の共依存傾向の関連はなかった。4.看護学生の,看護職を選択した理由を,共依存的群と非共依存的群に分類し,母の育児姿勢,本人の共依存傾向について比較した結果,共依存的群の得点が有意に高かった。
著者
森近 浩 橋本 隆之 草野 マサ子 細田 誠弥 倉本 孝雄 田村 和子 林 敬民 稲見 邦晃 高桜 芳郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.83-89, 2005-03-31
被引用文献数
1

目的:肥満者に胃食道逆流をよく経験する.体格指数と逆流性食道炎発症の相関について検討した.対象:男性548例(平均53.9歳)女性246例(平均62.2歳)の計794例(平均56.5歳)である.方法:肥満は日本肥満学会の基準に準じ,また逆流性食道炎の判定はロサンゼルス分類による内視鏡所見基準に従った.結果:逆流性食道炎発症は非高齢者普通群(男,女)に比し,肥満A群2.2, 1.5と肥満B2.7, 2.0,また高齢者においてやせ2.4,1.9普通A群1.8,0.9普通b群1.9,2.2肥満A群2.6,2.5と肥満B群3.1,2.8各々倍である.結語:逆流性食道炎発症は体格指数が大となり高齢者に多かった.肥満者と高齢者には逆流性食道炎対策が必要である.
著者
村中 陽子 足立 みゆき 吉武 幸恵 鈴木 小百合
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

医療に於いて、患者の安全は最優先課題である。しかし、ヒューマンエラーによる事故報告は後を絶たない。そこで、現実に起きた事故の分析結果を反映させた事例を作成して、危険予知能力の向上を目的としたe-learning用の教材を開発した。開発したシミュレーション型Web教材は、転倒のリスクが潜む患者2事例、メディケーション・エラーのリスクが潜む看護場面3事例から構成される。学習コースは次の特徴を持つ。(1)随所にリスクの判断を求め、判断内容を自ら入力させることにより主体的学習を促す。(2)解説は、学習者の判断の適切性や十分性を考えさせると共に、一般的知識に繋がるように提示している。(3)判断すべきリスクに対して、適切な対処方法を提示している。(4)危険予知に関するQ&Aにより、知識の強化を図っている。(5)最後に、学習を振り返り、その時点の自分のリスク感性についての評価を入力させることにより、その後の学習で自己のリスク感性の高まりを確認できるようにしている。次に、運用評価を新人ナースと看護学生を対象に行い、システム上の「アンケートに回答する」に入力された内容を分析し、その効果をみた。学習の結果、危険予知に関して知識・観察力が不足していることに気付いた、今後このような場面に遭遇したときの対応を考えることができた、危険がひそんでいるところを見逃していることに気づいた、学生の実習にも看護師の仕事にも生かせる教材だと思った、等の評価が得られた。本システムは新人ナースと看護学生の両者にとって効果的であることを確認した。その要因は、シミュレーションを通して、タイムリーなフィードバックが与えられ自己の傾向をリフレクションすることができるプログラム構成であることが大きいと考える。また、勤務シフトに影響されずに学習できるe-learning環境は主要なファクターであると言える。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.48-56, 1990-03-25

本稿は,我々がそれぞれもっている「正しさ」の枠組み-何が正しいこと,よいことなのか-が,どのような経験の中で何によって作られていくのかを考察するものである.コールバーグは「公正さの道徳性」の発達段階論を提唱し,その発達には他者との相互作用の中で自分とは異なった他者の視点をとる経験(役割取得)が重要だとした.それに対しギリガンは,コールバーグの発達理論は男性の発達を描いたものにすぎないと批判し,女性はそれとは異なった「配慮と責任の道徳性」をもち異なった発達過程をたどること,その違いは他者-世界との関係の仕方が男女で異なることに由来すると指摘した.本稿では,日本における道徳判断の発達を実証的に検討した研究と関連させて,二つの道徳性が,我々が経験する二つの基本的な対人関係に基づいて構成されるという仮説が提起される.二つの対人関係とは(1)自他が明確に分化された関係と,(2)自他を明確に分化しないままにかかわる関係であり,それぞれ父親,母親との関係に原型があると考えられる.父親的関係,母親的関係の中でいかに「正しさ」が構成されるのかの考察がなされ,更に日本のしつけ-対・子供関係-の特徴が二つの対人関係との関連で論じられる.
著者
長瀬 美樹
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、Rac1によるMR活性化と臓器障害の機序につき検討した。足細胞特異的Rac1活性化、同Rac1 KOマウスは足細胞障害、アルブミン尿、糸球体硬化を自然発症し、Rac1活性とMR活性、MR阻害薬の保護効果が平行していた。マクロファージや心筋特異的Rac1/MR KOマウスでは心腎障害が軽微であった。肥満糖尿病性腎症、TAC心障害モデル、Ang II/食塩腎障害モデル、皮膚老化モデルにおいてRac1やMRの活性化、慢性炎症が関与し、Rac阻害薬やMR拮抗薬により病変が改善した。以上、Rac1-MR系の標的細胞とシグナルカスケードを同定し、この系が関与する新たな病態を明らかにした。
著者
青木 和浩 河村 剛光
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、指導現場で活用できるフィールドテスト種目の提言という観点から簡易的に測定ができる立三段跳・立五段跳に着目し、大学陸上競技者と小学生を対象に跳躍能力の評価方法としてバウンディング能力の有効性を検証した。その結果、大学陸上競技選手だけではなく、小学生においてもバウンディング能力は跳躍能力の有効な指標になることが明らかになった。さらに、疾走能力とも関係のあるテスト項目であった。
著者
千葉 百子 篠原 厚子
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

[目的]タリウムは毒性が強いので、以前には殺鼠剤、殺虫剤として使われた。最近タリウムは超電導素材、半導体産業の素材として注目されている。そこでタリウムが生体内に摂取された場合の体内分布、また生体内からの消失を観察することを主目的としてマウスを使って実験した。[方法]1.マウス(6週齢、♂)に0.2ppm Tl含飲料水を1週間自由に摂取させ、1、3、7日後にTlの臓器内分布と排泄量を観察した。2.20ppm Tl含飲料水を3週間自由に摂取させる。(1)翌日および3週間後解剖、(2)翌日50μmol Tl/kgの強制経口投与し、その翌日および3週間後に解剖、(3)50μmol Tl/kg 1回強制経口投与し、その翌日および3週間後に解剖。各マウスから骨、肺、腎臓、骨髄細胞、顎下腺、消化管内容物、精巣、筋肉、膵臓、膀胱、消化管、脾臓、心臓、脳、肝臓、RBC、Plasma、Hair、尿、糞の20検体についてTlを分析した。[結果および考察]次のことが明らかとなった。1.経口摂取したTlは測定した全ての臓器に分布していた。2.摂取を中止すると各臓器からのTlの消失は比較的早く低濃度摂取の場合、3日後に約1/2、7日後に約1/10となる。3.連続的に摂取したTlは尿中に10〜30%、糞中に35〜60%排泄された。4.臓器中Tl濃度は骨に最も高く、摂取中止後も濃度は下るが長く存在している。5.消化管、精巣、顎下腺は比較的Tlとの親和性の高い臓器である。6.体毛中Tlは摂取総量との相関が高い。7.血値GOT、Al-P、血中ALADには著明な影響はなかった。[結論]経口的に侵入したTlは殆ど全ての臓器に分布するが、消失は速やかである。Tlの生物学的モニタリングには体毛が有効である。
著者
樋口 キエ子 原田 静香 カーン 洋子 山口 和枝 金子 裕子
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.42-49, 2008-03
被引用文献数
1

退院後の患者・家族の退院支援への要望・意見から退院支援のあり方を検討することを目的とした。方法は,地域特定機能大学付属病院に入院し,退院支援部署で指導を受けた患者家族の「退院支援への要望・意見」の記述データを分析した。その結果,患者家族が希望する退院支援は,【対象者の意思を尊重した退院準備】【療養継続に向けたケアの計画的指導】【退院後の生活を見据えた社会資源の紹介】【対象者にわかる連携体制】【対象者に伝わる診療看護体制】の5コアカテゴリーとそれを構成する内容が明らかになった。特にケアの継続に向けた指導の要望が最も多く,対象特性は高齢者夫婦や医療ニーズが高い療誉者が多い結果から,退院支援の開始時期,患者・家族にわかる退院支援システムづくり,関係者間のチームケアの必要性が示唆された。患者・家族の求める継続ケアの実現には,退院後の生活を見据えた退院支援体制づくりが求められる。
著者
田部 陽子 岩渕 和久 笹井 啓資 金 林花
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、低線量放射線がヒト生体内の微小環境の中で、前がん状態の細胞に対して発がんに関与する遺伝子発現やその調節機構にどのような影響を与えるのかを調べることを目的とした。研究の結果、①低線量放射線ストレスによって前がん状態の細胞内では遺伝子の発現を抑制するmicroRNAを介した遺伝子発現コントロールが機能し、遺伝子とタンパク発現が変化すること、②生体微小環境内に存在する間質細胞が、直接・間接的にこれらの前がん細胞内での低線量放射線による遺伝子・タンパク発現変化に関わっていること、が明らかになった。
著者
齋藤 正博 飯島 恵 西尾 温文 込山 洋美 東山 峰子
出版者
順天堂大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

家族機能評価尺度(FACESIII)及び家族イメージ法(FIT)が小児がんの家族評価に有用か検討した。6歳以上の患児とのべ14家族を対象に入院の異なる時期に調査を実施した。FACESIIIでは欧米の報告とは異なり家族機能が不安定な家族が見られた。FITでは臨床で見られなかった家族の力動や特徴を捉えることができた。時期による家族関係の変化も捉えられた。これらの家族機能評価は多様な家族に対する有効な支援につながると考えられた。
著者
村上 志津子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

生殖機能を司る視床下部のコナドトロピン放出ホルモン(LHRHまたはGnRH)産生ニューロンは、脳外の鼻プラコートで発生し、脳内へ移動して中隔-視索前野-視床下部系へと分化する。本研究では、脳内に進入したLHRHニューロンが中隔・視索前野を中心とする領域に移動し、定着するメカニズムを知る手がかりとして、中隔LHRHニューロンと視索前野LHRHニューロンの定着部位の違いは誕生日時の違いから生じる可能性を調べた。プロモデオキシウリジン(BrdU)による誕生日時の標識実験では、早生まれのLHRHニューロンは中隔一視索前野の全領域に分布するのに対し、遅生まれのLHRHニューロンは腹側の視索前野には分布しないことが判明した。領域別によるLHRHニューロン数の定量実験は、後期胚におけるLHRH抗体の免疫染色性低下なと技術的な問題により統計可能なデータが得られず、継続中である。組織学的観察から、脳内に進入したLHRHニューロンは嗅神経の分枝とともに嗅球尾側の腹内側部から背尾側方向へ移動し、この経路の終点てある中隔領域でガイド構造となる神経線維から離れて腹側方向へと向かうことが想定された。E5.5生まれのLHRHニューロンが腹側の視索前野に分布しない理由のひとつとして、中隔から腹側方向への移動が阻害された可能性が考えられる。ラミニン様構造を持つ液性分子ネトリンの発現をin situ hybridizationによって調べた結果、E7.5におけるネトリンmRNAは中隔ではなく前脳腹側の視床下部領域に強く発現していた。嗅上皮や嗅神経にはネトリンmRNAの発現はみられず、ネトリンが脳内におけるLHRHニューロンの移動に関与する可能性が示唆される。特に前脳背側の中隔から視索前野に向かう腹側方向への移動に関与する可能性があり、今後の検討課題と考える。
著者
安田 美弥子 新井 信之 岡本 隆寛
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

近年、急増しているアディクションに対し、従来の看護観、看護技術では対応できず、地域でも臨床現場でもとまどいが大きい。そこで、アディクション看護の特性を明らかにするために、日本アディクション看護学会を設立し、年1回の学術集会を開催し、そのほか事例検討会や、病棟見学スタッフとの話し合いなどを行い、従来の看護との相違やアディクション看護の専門性、アディクションという病気の特性を検討した。その結果、アディクション看護には再飲酒が予測されても本人の意志によっては失敗を容認したり、患者の話すことを傾聴し受容するよりより突き放すことが必要とされるなど、従来の看護のカウンターカルチャー的なところがあり、臨床現場で困惑や陰性感情を生じやすいことが明らかになった。アディクションは人間関係の病、家族の病、生き方の病、喪失の病であるので、看護師は人間、家族、人生、生き方などに深い思索を行い、他職種、他機関と連携しながら、セルフヘルプグループなどにも出席するなど自らの成長をはかり、当事者・家族を共に見守っていかなければならないという特性があり、やってあげる看護ではなく、当事者・家族の自己決定を促す見守る看護にアディクション看護の専門性があることを確認した。アディクションの急増する社会では臨床現場での教育だけでなく、看護基礎教育からアディクション看護を教育する必要がある。そこでアディクション看護のテキストブックの作成にも携わり、近日出版されることになっている。
著者
河村 剛光
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、打席においてボールを見るというトレーニング方法が打撃能力や動体視力に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。被験者を、時速100kmのストレートを見る群、打撃する群、時速115kmのストレートを見る群、打撃する群、時速100kmのカーブを見る群、打撃する群の6つに分けた。それぞれ、トレーニングを約週3回4週間実施した。その結果、全体として打撃能力は向上する傾向にはあったが、比較的、打撃練習を行う群は打撃能力に対して、見るトレーニングでは視覚機能に対して効果が得られる傾向にあったと思われた。
著者
嶋田 奈緒子
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

EGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤であるイレッサ(ZD1839)は肺癌における分子標的治療薬として使用されているが、その副作用として急性肺障害・間質性肺炎の発症があり、この急性肺障害の発症機序の解明や危険因子を同定することは我々呼吸器・臨床医にとって急務である。我々は昨年までに、AKR/J系マウスにイレッサを投与しneutrophilの集積が肺胞壁のcapillary内に起きていることを確認した。Macrophageの集積はneutrophilに比べて顕著ではなかった。また老化促進マウス(senescence-accelerated mouse, SAM)にもイレッサを投与しその肺組織に及ぼす影響も検討した。SAMの元々のストレインはAKR/Jマウスであるにもかかわらず、SAMPlはイレッサ投与によってもAKR/Jマウスと比較してneutrophilの集積はみられなかった。今年度はマウス・ストレイン間のイレッサ感受性の違いを検討する為に、AKR/Jマウス、C57BL6マウス、NZWマウスにイレッサを投与して検討した。当初はマウス・ストレイン間でイレッサ感受性に違いのあることを予想していたが、今のところ3ストレイン間で炎症性細胞の浸潤などに大きな違いは認められていない。また肺組織での発現解析においても現在のところ、大きな違いは同定できていない。しかしまだマウスの実験匹数やイレッサの条件検討などが充分ではなく、今後はさらに検討を重ねる予定である。これら疾患モデルにおける遺伝子発現プロファイルの違いやgenetic variationを検討することは、今後イレッサ急性肺障害の危険因子・予測因子の解明の糸口につながる可能性があると思われる。