著者
武藤 芳照
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.202-206, 2002-09-30

水中運動は,浮力により関節への負担を軽くし,全身の余分な緊張を和らげること,水の抵抗のもとでからだを動かすことで,安全にしかも確実に筋力を強化でき,水圧が胸にかかる状態で努力呼吸を行うために呼吸・循環機能を高められ,水による温熱効果あるいは寒冷効果が得られ,骨・関節・筋肉などの血液の流れを改善し,柔軟性を高めることができる.たとえば肉ばなれ・捻挫・骨折などの運動・スポーツで起きやすい傷害は,水中運動ではほとんど起きる危険性がなく,安全である.温水プールでの水中運動の場合には,スポーツ感覚の明るく軽快な雰囲気の中でからだを動かすことを楽しみ,それが結果的にリハビリテーションの効果につながる.このように水中運動は,優れた利点をいくつも有するために,関節痛の運動療法としてきわめて優れている.水中運動の主要な効果には,次のようなものがある.(1)関節の動きを改善する (2)筋力を高める (3)痛みを軽減する (4)リラクゼーション (5)バランス感覚を磨く さらには,関節痛のために,自然に落ち込むことが少なくない中高年にとって,水中運動は解放感を体験でき,自身の上達・改善の様子を理解しやすく,達成感を味わうことができるために,生きる自身と希望をもたらす効果もある.運動中や運動後に,「疲れた!」と感じたり,関節に痛みを感じたりするようならば,それは「やりすぎ!」とみられる.普段地上では思うようにからだの動きができない分だけ,水中で「こんなに動ける!」といううれしさのあまり,つい時間を長くしたり,回数を多くしたりして家に帰ったらへとへとになってしまう例もある.しかし,こうした運動の仕方ではリハビリテーションの効果も得られないばかりか,かえって関節痛を悪化させたり,他の病気・障害を招くことさえある.また,関節痛の水中運動・水泳に適したからだの動きに留意することは,傷害・事故の予防につながる.
著者
中村 恭子 古川 理志
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂大学スポーツ健康科学研究 (ISSN:13430327)
巻号頁・発行日
no.8, pp.1-13, 2004-03
被引用文献数
4

The purpose of this study was to verify that what mental factor is affecting the adherence volition of physical exercise. After the method made jogging and aerobic dance carry out for 30 minutes each to 85 juniors in J university (45 males, 30 females), it carried out self-valuation (Subjective movement intensity, Physical competence, Pleasure, Effect of exercise, and Adherence volition), and Profile of Mood States(POMS), and authorized the consciousness item which affects adherence volition.The result was as follows: 1) The subjects thought aerobic dance was very significant ``Pleasure'' and significant ``Efficacy of exercise''more than jogging. So the females' adherence volition to aerobic dance was very significant high. 2) The mental factor that had affected the adherence volition of exercise in common with each group was ``Pleasure'' and ``Physical competence''. 3) By the POMS test, the feeling after aerobic dance was improving very significant. As mentioned above, it was verified that ``Pleasure'' and ``Physical competence'' was one of the important factors as a mental factor that affects the adherence volition of physical exercise. Therefore, in order to make physical exercise continue habitually, the possibility that offer of the exercise program with ``Pleasure'' and ``Physical competence'' will be effective was suggested.
著者
伊藤 弘明 岩崎 基 原田 浩二
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ここ数十年で乳がんの年齢調整罹患率は著しく増加してきたが、乳がんの原因はその既知の危険因子だけでは半分程度しか説明できないとされている。一方、新規な環境汚染物質である有機フッ素化合物への曝露が乳がん発生に関与している可能性が注目されている。しかしながら世界的にもデータが乏しく、国際機関が発がん性を評価していない有機フッ素化合物も多い。既存の疫学研究では異性体別に研究しておらず、南半球での研究例もまだない。これまで日本人女性において有機フッ素化合物が乳がんの発生に及ぼす影響の解明を進めてきたが、これに加え、本研究ではブラジル人女性における症例対照研究を行い、国際比較と統合解析を行う。
著者
河盛 隆造 筧 佐織 田村 好史
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

骨格筋細胞内は肥満状態になっているのにも関わらずインスリン感受性が高い、いわゆる「アスリートパラドックス」の全容を解明し、メタボリックシンドローム予防の一助とするため検討を行ったところ、PGC1Aプロモーター領域のメチル化率に差が見られ、血中、骨格筋中の脂質組成が運動強度によって異なる組成となったことより、アスリートパラドクスの一因としてエピジェネティクスによる遺伝子制御の影響が存在する可能性が示唆され、メタボリックシンドローム予防のためには特に運動強度の設定が重要になることが示唆された。
著者
野田 洋子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.55-65, 2001-03-29
被引用文献数
1

月経の経験は女性の生涯における健康,QOLを考える上で重要な要因である。本研究は若年女性(18-22歳の女子短大生)の月経の経験と関連要因,ことに楽観性・悲観性との関連を明らかにするものである。記名式自己記入式質問紙法による配表調査を行った結果,2,391名の有効標本が得られた。分析の結果,月経周辺期の変化,月経観,月経のセルフケア行動に楽観性・悲観性が関連していることが明らかとなった。1.オプティミストは月経周辺期の変化を低く捉える傾向にある。2.オプティミストは月経をポジティブに捉える傾向にある。3.オプティミストは自尊感情,自己の性に対する満足度が高く,ストレスを感じることが低い傾向にある。4.オプティミストは月経痛に対し積極的セルフケア行動をとる傾向にある。5.ペシミストは月経をネガティブに捉える傾向にある。以上の結果は,今後月経周辺期変化の強い者への看護面接を行っていく上での考慮すべき要件となる。
著者
廣津 信義 宮地 力
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

記録系・採点系・格闘技系五輪競技として、陸上(リレー競技) ・体操・柔道を主な対象とし、競技をシステムして捉えて定式化する数学モデリングを行った。リレー競技については、合計タイムの確率分布を算出するモデル、体操については、団体戦での総合得点の確率分布を算出するモデル、柔道については、団体戦でのチーム・選手を相対評価する AHP (Analytic Hierarchy Process)を用いたモデルを作成した。指導者の意見を反映し競技現場で適用可能な数学モデルを提示することができた。
著者
坂本 優子 時田 章史 鈴木 光幸 荻島 大貴 松岡 正造 本田 由佳
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

ビタミンDは現代社会の中で特に不足しがちな栄養素である。われわれは、幼児の「生理的」と言われているO(オー)脚がビタミンD不足に由来すること、ビタミンDサプリメントを使用すると改善が早いことを明らかにしてきた。O脚だけでなく精神発達や免疫機能保持にも重要な栄養素でありながら、われわれのコホートでは、90%がビタミンD欠乏という危機的状況であった。そして、その子ども達の血中ビタミンD濃度も他のコホートと比較して低く、O脚が高率に含まれていた。そこで、本研究では集団を前向きに検討し、妊娠中の母親と生まれてからの子どものビタミンDサプリメントの使用が子どものO脚の程度を軽くするかどうかを検証する。
著者
後藤 佐多良 熊谷 仁 福 典之 宮本 恵里
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、骨格筋の速筋線維や遅筋線維の割合を規定する遺伝子多型を明らかにし、それらの遺伝子多型が将来の生活習慣病リスクとなるか否かについて検討を行った。日本人男性において、ACTN3 R577X多型およびACE I/D多型が骨格筋の筋線維組成に関連することを明らかにした。さらに、これら2つの遺伝子多型の組み合わせが、将来の高血圧発症リスクに影響を及ぼすことを明らかにした。これらの研究成果から、ACTN3 R577X多型およびACE I/D多型は骨格筋の筋線維組成に関連し、将来の高血圧リスクを反映する可能性が示唆された。
著者
横溝 岳彦 城 愛理
出版者
順天堂大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-10-07

BLT2の結晶構造解析と、構造を元にしたBLT2作働薬のリード化合物の樹立を行う。研究代表者の研究室ではBLT2の熱安定変異体の作製と結晶化に必要な単クローン抗体の樹立を行う。Heptares社では、研究代表者が樹立した熱安定変異体BLT2の大量発現、精製、結晶化と構造解析を行い、立体構造を元に候補化合物を選定する。研究代表者は候補化合物の評価を行い、Heptares社にフィードバックする。Heptares社は化合物の至適化を行い、至適化化合物を用いて再度BLT2の結晶化と構造解析を行う。こうしたフィードバックを伴った密接な共同研究によって、BLT2の高親和性作働薬のリード化合物を見いだす。
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.8-15, 2005-03-19

発達心理学が明らかにしてきた知見を参照しながら,思春期の心の危機を描いた文学作品-村上春樹氏の「海辺のカフカ」-について分析を行った。まず思春期とはどのような時期であり,思春期危機に関与している要因は何か,また危機を乗り越えるためには何が必要なのかに関する発達心理学の見解について述べ,それらと関連させながら,15才の主人公がどのような問題をかかえ,にもかかわらずなぜ危機を乗り越えることができたのかについて分析した。危機的状況を乗り越えることを可能にした要因として,1)情緒的及び実際的に支えてくれる人との支持的で暖かい関係,2)自分が必要とされている価値ある存在であることの実感と,「母親の過去」の事情を理解し許す気持ちになったこと,3)自立して生活する能力や,自己を内省したりコントロールする力-自我の強さをもっていること,が抽出された。それらは発達心理学が明らかにしてきたこととほぼ対応するものであった。
著者
野尻 宗子
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

我が国の高齢化率は年々上昇しており,平成30年高齢社会白書によると 65歳以上人口は、3,515万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も27.7%である.高齢化による合併症の増加に伴い多剤併用(polypharmacy)が生じやすくなっており,多剤併用による医療費の増大と同時に有害事象の増加が懸念されている.本研究では,60歳以上の高齢者を対象として睡眠薬・抗精神病薬での多剤併用と骨折リスク,睡眠時無呼吸症候群患者の睡眠薬使用実態についてレセプトデータ(National DataBase)を用いて調査する.
著者
天野 篤 松下 訓 山本 平 稲葉 博隆 桑木 賢次
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

局所脂肪は隣接臓器の状態を反映するとともにその臓器にも影響を及ぼすことが示唆されている。本研究では動脈硬化性疾患の代表である虚血性心疾患に対する手術の際に皮下脂肪、冠動脈周囲および内胸動脈周囲の3か所の脂肪を採取し解析、脂肪の質にどのような差があるのか検討を行った。一部の炎症性サイトカインや炎症性マクロファージの発現は冠動脈周囲で最も高く、皮下で最も低かった。一方で血管新生関連因子は内胸動脈周囲で最も高かった。線維化マーカーは冠動脈周囲の発現が最も高く、コラーゲンは皮下脂肪で最多であった。このように皮下脂肪と血管周囲脂肪、さらにはその血管の状態により異なる脂肪のプロファイルを示していた。
著者
池田 黎太郎
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.104-113, 2005-06-30
参考文献数
22

医学校の標章としておなじみの「杖に絡みつく蛇」のデザインは何に由来し,何を意味するのだろうか?この疑問を解く鍵になると思われるのが,「サモスのヘルメース」と呼ばれる浮き彫りの蛇の像である.このヘルメースと呼ばれる巨大な蛇は岩の上に厳かに鎮座して人々の崇拝を受け,その足下に8の字形の頭部を持つ杖を置いている.古代ギリシアの神々はふつう人間の姿をしているが,神である徴しとしてそれぞれの神格を表す付属物と共に描かれる.ヘルメースの場合は神々の伝令使としての職分を示す杖を持ち旅人の服装をして,それらには天空を駈け巡るための翼が附けられている.本来この伝令使の杖には蛇が居ないはずであるが医学校の標章には2匹の蛇が絡みついている.じつはここにはヘルメースの別の職分である「死者の霊魂の導師」を表すための表象が混同されているのである.強い毒と強靭な生命力を持つ蛇は,地面の穴から地下へ自由に行き来して冥界の事情に通じ,生死の秘密を知る存在として古来畏怖と崇敬の対象となっていた.だから死者を蘇らせる能力がある神として崇拝されていたアスクレーピオスは神殿に蛇を住まわせ,蛇を侍らせた玉座に座り,巨大な蛇を巻き付かせた杖にもたれた姿で描かれている.むしろ神格化した蛇そのものがアスクレーピオスと呼ばれ崇拝されていると考える方が自然である.じっさい蛇とアスクレーピオスが同時に病人の治療にあたっている情景を描く奉納の浮き彫りがあるほどである.だから医学校の標章は蛇を軸にしてアスクレーピオスとヘルメースのイメージが混同され重ね合わされたものだろうと説明することができる.
著者
細田 誠弥
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.330-337, 2004-12-22
被引用文献数
3

食事を中心とした生活習慣の変化に伴い,様々な消化器症状が問題となっている.特にその摂取量において,食物繊維が減少する一方,脂肪食が増加したことによって,便秘と下痢などの便通異常を訴える人が増えている.排便の生理的仕組みとして,(1)胃・結腸反射,(2)結腸蠕動運動,(3)直腸の排便反射,が重要な役割を果たしている.この仕組みのいずれかが障害されると,便通異常がもたらされることになる.また,その原因によって便秘と下痢もいくつかに分類され対処の方法も異なるが,昨今注目を集めている代表的疾患が過敏性腸症候群である.その症状を改善させるには,便通異常が生活習慣病の一症状として表れていることを踏まえると,適切な生活指導が最も重要であると考えられる.

3 0 0 0 OA 便秘と胸やけ

著者
細田 誠弥
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, 2005-06-30