著者
原田 洋平
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.121, 2009

【はじめに】<BR> 今回、脳血管障害を持ち、対人交流の拒否が強く身体機能訓練を拒否した一人の高齢女性に対して、興味を示した折り紙・お手玉を通じて関係を築き、ナラティブの語りから方針を再検討した。その結果、行動範囲や対人向流の拡大に至り、活動量の拡大に繋がった。訓練拒否から活動を広げていった経過を分析し、考察を加えて報告する。<BR>【事例紹介】<BR> Aさん。80歳代女性。左ラクナ梗塞。家族構成は夫と息子夫婦、孫夫婦、曾孫。職業は夫の農業を手伝いながら兼業主婦。家事全般をこなしながら、勤めに出ている孫夫婦に変わり曾孫の育児を行なっていた。<BR>【経過・結果】<BR> 初期評価時より常に表情は険しく日中臥床傾向であり他患との交流や離床を拒否。OTRが提案したベッドサイドでの身体機能訓練に対し「つまらない。」「リハビリなんて楽しくないと思う。」と拒否を続ける。Aさんの語りにより病棟でお手玉を使用。OTRは初心者であり、OTRに教えてくれるよう頼んだ。次第にAさんはお手玉遊びのコツや練習方法を教えてくれるようになり、指導的役割や、AさんがOTRへ指導をし、指導が上手く行くという成功体験を通じ、Aさんは達成感を得る。しだいにOTRの問いかけに対し、院内生活や過去の生い立ちについて自ら語るようになり、OTRはナラティブと傾聴をおこなっていく。また、他患のベッドサイドにある千羽鶴を指差し、「私も昔は孫と一緒に作ったものよ。」と折り鶴作製を希望した。その語りより、OT方針を再検討し、折り紙を追加した。他患や他患家族に対し「みんなと一緒に食事を取りたいから食堂でご飯を食べたい」等と話すようになる。そして自らOTRや他患へお手玉遊びの指導やおはじきの遊び方、折り紙の折り方を教えるようになりコミュニケーション・交流技能に変化が見られる。<BR>【考察・まとめ】<BR> 「今までは主婦業をこなしていたのに、助けてもらうばかりで何もできなくなった」「手が動かないからだめだ」と個人的原因帰属の低下や役割・自己効力感の低下により居室に閉じこもっていたAさんは、お手玉という作業を通じて、「今までは息子や孫にいろいろなことを教えていた」役割や達成感、「OTRが上手くお手玉できるようになった」成功体験を得ることができた。その結果、OTRとの関係が築かれ、活動への意欲が向上したと思われる。ナラティブと傾聴を基に方針を修正した後、楽しみとなる作業活動の提供によって意欲が引き出され、行動範囲や対人向流の拡大に至り、活動量の拡大ができたと考える。<BR> 今回の症例ではナラティブな関わりを通じてお手玉・折り紙という作業に注目した。このようにナラティブな関わりからセラピストとの関係を構築し、協業することの重要性が示唆された。
著者
東谷 成晃 入船 友紀子 都甲 幹太 中村 智子 辻 泰子
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.14, 2009

【はじめに】<BR> 60代女性が癌治療の為に入院。ADL改善目的でOT開始するが癌性疼痛の増強及び精神的低下等により生活範囲の拡大がみられず、ベッド上中心の生活となった。この症例に対し作業療法の一環として「千羽鶴作り」の作業活動を提供・支援したことがきっかけとなり、症例の心・身体に変化が見られ、QOL向上に繋げることができたので報告する。<BR>【全体経過】<BR> 10月中旬入院。3病日目:ST開始。 28病日目:OT開始。44病日目:折り紙開始。47病日目:千羽鶴作成開始・自室内環境変更。74病日目:外出。90病日目:千羽鶴完成。101病日目:自宅訪問。105病日目:外泊。116病日目:自宅退院。また入院中に合計59回のradiation(各部位)と合計7回の化学療法実施。<BR>【症例の変化・考察】<BR>第1期:折り紙導入前(介入当初)<BR> 入院当初、元々独歩自立が癌性疼痛によりベッド上生活となり、現病についての話題が大半を占め、自己の出来ないことに目が向くようになっていた。<BR>第2期:折り紙導入時(介入から約2週)<BR> 自室内にて短時間で出来、馴染みある活動として「千羽鶴」作成を開始。広告紙や用紙準備・一日の折る羽数は患者自身で決め、2~3日の完成分毎にOTが飾り付けを行い自室内に飾った。また自室内の環境を座位活動や移動がしやすいように変更した。<BR>第3期:心・身体の変化(介入から約4週)<BR> 「千羽鶴」作成で病態以外に目を向ける時間や、作業を通してスタッフや家族との関わりが増えた。また完成していく「千羽鶴」から満足感・達成感が得られると共に、他者から賞賛を受けた事で自己価値観の向上を認め、「癌治療きついけど千羽鶴が完成したら家に帰れるやろうか。」と発言内容にも変化が見られた。それに加え放射線や化学療法の治療効果もあり心理的苦痛の軽減や安心感が生まれたことで、院内を一人で散歩するなど生活範囲が拡大し徐々に生活習慣を取り戻していった。<BR>第4期:家族の変化(介入から約8週)<BR> 作品を通しての会話が増え、家族が症例の姿や能力を知り得たことで共に喜びや満足感を経験でき、リハビリ以外の時間で院内での散歩や家族・親戚と一緒に外出・外泊するなど外への時間を増やすことが出来た。これらの動きが在宅復帰にも繋がり、「孫を抱っこしたい」という新たな目標を掲げて笑顔で退院となった。<BR>【まとめ】<BR> 今回「千羽鶴」の余暇活動がきっかけとなりQOL向上から機能・能力の回復に繋がっていった。癌患者様へのリハビリには多面的な介入が必要であるが、作業活動を提供・支援することは患者様に目標ある生活を獲得させ、生活全般に変化をもたらす一助になると言える。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1940年02月19日, 1940-02-19
著者
Shunsuke SHIBAO Kazunari YOSHIDA Junki SOGANO Katsuhiro MIZUTANI Hideyuki TOMITA
出版者
The Japan Neurosurgical Society
雑誌
NMC Case Report Journal (ISSN:21884226)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.171-176, 2022-12-31 (Released:2022-06-21)
参考文献数
9

We report a rare case of hypoglossal canal meningioma in a 65-year-old woman who presented with dysphagia. Neurological examination revealed left hypoglossal nerve palsy. Head computed tomography and magnetic resonance imaging revealed a lesion around the left hypoglossal canal. She underwent a total resection with a midline suboccipital transcondylar approach. There were no postoperative complications, and the hypoglossal nerve palsy improved. There was no recurrence nine months after the surgery. Choosing a surgical approach that considers the site of origin and extent of tumor extension is important.
著者
山本 純也
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.370-373, 1994-04-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
8

核融合科学研究所が岐阜県土岐市に建設中の大型ヘリカル装置はそのプラズマ閉じ込め用の磁場をすべて超伝導コイルによって発生する世界で最初の核融合実験装置である.ここで使用する超伝導コイルは世界最大の蓄積エネルギーを持つもので,その設計,製作は超大型超伝導技術の歴史を塗り替えるものである.本稿では装置本体の超伝導マグネットシステムの構成,各要素の条件などの設計方針,および製作についての主要な点について述べている.使用する超伝導材料はひずみに強いNbTiであり,ヘリカルコイルは浸漬冷却方式,ポロイダルコイルは強制冷却方式である.電流値としては,10kA~30kAという超伝導としてはかつてない高い値となる.この装置は, 1997年に完成し年間2000時間10年間の核融合プラズマ実験を支える.
著者
田中 亜美 星 友二 長谷川 隆 坂田 秀勝 古居 保美 後藤 直子 平 力造 松林 圭二 佐竹 正博
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.531-537, 2020-06-25 (Released:2020-07-17)
参考文献数
23
被引用文献数
2 5

E型肝炎ウイルス(HEV)の輸血感染対策を検討するため,輸血後E型肝炎感染患者として,既報(Transfusion 2017)の19例も含め,2018年までに判明した34症例について解析した.原因献血者は全国に分布し,関東甲信越での献血者が半数以上を占めた.原因血液の88.2%(30例)がHEV RNA陽性かつHEV抗体陰性で,多くはHEV感染初期と考えられた.分子系統解析の結果,原因HEV株の遺伝子型は3型が29例(90.6%),4型が3例(9.4%)で,それぞれ異なるクラスターに存在し,多様性に富むことが示された.一方,輸血後感染34症例中少なくとも16例(47.1%)は免疫抑制状態にあった.多くは一過性急性肝炎であったが,確認できた半数(8例)でウイルス血症が6カ月以上持続した.臨床経過中の最大ALT値の中央値は631IU/lで,輸血による最少感染成立HEV RNA量は2.51log IUと推定された.輸血されたウイルス量や遺伝子型と,最大ALT値に相関は認められなかった.HEV RNAスクリーニングの全国導入はHEV輸血感染対策として有効と考えられる.