著者
松澤 孝明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.222-235, 2013-07-01 (Released:2013-07-01)
参考文献数
6
被引用文献数
5 6

本報告は,研究不正に対する関心の高まりを受け,その低減を図る観点から,わが国の研究不正についてマクロ分析を行ったものである。データの捏造,改ざんおよび盗用を含む研究不正についての公開情報を収集し,主として研究不正が発生した機関の特徴や研究不正の責任が問われた研究者の役職や年齢構成,研究不正の動機などに着目した分析を行い,わが国の研究不正の特徴,および研究不正低減のための取り組みについて考察を行った。
著者
中井 万知子 藤倉 恵一 橋詰 秋子 福山 樹里 神崎 正英
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.209-217, 2016-06-01 (Released:2016-07-01)
参考文献数
4

日本図書館協会(JLA)と国立国会図書館(NDL)が,日本十進分類法(NDC)をLinked Data化するために,2015年4月から2016年3月まで実施した共同研究の成果を報告する。NDCは,JLAが編集発行するわが国の標準分類法である。研究では,NDCの新訂8版と新訂9版を対象とし,JLAが機械可読形式化したMRDFを基に,Linked Data形式のデジタルデータを試行的に作成した。想定利用者のニーズが情報システムでの利用にあることを踏まえて作成方針案を策定したうえで,NDCの概念的な階層関係を基にした分類項目間の階層構造モデルの構築,記述語彙の選定,ラベルの構造化,補助表による分類項目の合成,相関索引等からの分類項目の機械生成等を行った。また,Linked Dataとして外部データとのつながりを生むために,国立国会図書館件名標目表へのリンクを含めた。今後は共同研究の成果に基づき,JLAにおいて提供や利用に関する調査・検討を行う予定である。
著者
宮川 剛
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.157-166, 2012 (Released:2012-06-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

研究者の実績評価がどのように行われるかは,研究者個人はもちろん,大学や研究所など研究機関の日々の活動の方向性を左右する重要な要因である。研究ポジションの数に比して研究者人口が過剰であることや,競争的資金の研究予算における比重が増す中,客観的な評価指標の重要性が認識されつつある。近年,諸外国では,研究者個人の論文の総引用数,各年の総引用数,h-indexなどのさまざまな研究実績に関する数値的指標(メトリクス)が考案され,研究者の採用・昇任などの人事や,研究提案審査時に参考資料として活用されている。しかし,わが国においてはこのような取り組みが十分に進んでいるとは言いがたい状況である。本稿では,科学技術研究において客観的評価指標が求められる背景と各種メトリクスの紹介を行う。さらにメトリクスを普及させるための方策,活用上の留意点,その波及効果について,一研究者としての視点から議論し提言を行う。
著者
鳥海 不二夫 篠田 孝祐 栗原 聡 榊 剛史 風間 一洋 野田 五十樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. AI, 人工知能と知識処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.94, pp.19-24, 2012-06-14

本論文では,東日本大震災時の前後にTwitterに投稿された約4億のTweetを用いて,震災がTwitterを用いたリツイート行動に与えた影響を分析した.リツイートの時系列を混合正規分布を用いてモデル化し,震災直後にはリツイートが行われるタイミングが短くなり多くの情報が素早く大勢のユーザに共有されたことを明らかにした.また,得られたモデルをクラスタリングすることで,リツイートの時系列変化を5パターンに分類しそれぞれの特徴を分析し,各パターンの出現数が震災前後でどのように変化したかを確認した.
著者
平山 優
出版者
国際忍者学会
雑誌
忍者研究 (ISSN:24338990)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.3, pp.1, 2020 (Released:2021-09-01)
参考文献数
17

本稿は、二〇一九年に上田市で開催された国際忍者学会における記念講演「戦国時代の忍びの実像について」を論文化したものである。本稿では、まず、戦国期の忍びについて、戦国末期から近世にかけての人々がどのように認識していたかを、武家故実書の『武家名目抄』、近世初期成立の軍記である『甲陽軍鑑』での記述を検討した。そこでは、忍びとは①草、かまり、透波、乱波、突破など多様な呼称があり、②戦場では最前線に配置され、夜間の陣所警護、夜討などを任務としていた。また、夜間の敵城潜入や放火、乗っ取りなど、戦国大名にとって、正規軍同士の会戦以外の部分で、大きな活躍が期待され、③その出自はおもに、悪党(アウトロー)出身者)が多かったが、④戦国大名が課役として村町から動員した者もいた、などと記されていた。これらの記述を、戦国期の史料より検討してみると、これらの認識はほぼ正しく、忍びは、戦国大名の軍隊では「足軽」に編成され、おもに夜間の戦闘(夜討、潜入)や敵の城砦、陣所への潜入、放火、最前線での伏兵や略奪などをになっていたことを明らかにした。そして、戦国大名が彼らを登用した背景には、軍事的要請のほかに、領国内の治安維持を担わせるという意味があったことも指摘した。
著者
谷口 祥一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.758-765, 2014-02-01 (Released:2014-02-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

RDAの理解において重要であるが,RDA本体には直接記載されていないこと,すなわちRDAの位置付けを確認するための事項を取り上げ論じた。最初にRDAの全体的な評価とわが国におけるRDA採用の必要性を確認し,そのうえで以下の事項を論じた。(1)RDAはFRBRとFRADに基づいているが,細部においては多数異なる部分があるため,むしろ独自のモデルをもつと捉える方が混乱が生じない。(2)RDAのみでもメタデータを作成できるが,RDAに含まれている選択肢の扱いや構文的事項については採用機関側での決定が必要である。RDA採用機関においては従来からのMARC21がメタデータスキーマとして用いられており,それに代わるものが現在検討されている。(3)RDAメタデータが利用者にもたらすものは,端的にはFRBRモデルに沿ったOPAC検索・表示機能の実現である。(4)RDA自体はLinked Dataに対応したものではなく,そのためLinked Dataに向けてRDAエレメントや値の記録に用いる統制語をレジストリOpen Metadata Registryに登録する作業が別途進められている。
著者
大園 隼彦 片岡 朋子 高橋 菜奈子 田口 忠祐 林 豊 南山 泰之
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.719-729, 2018-01-01 (Released:2018-01-01)
参考文献数
15

日本国内において,機関リポジトリに登録されたコンテンツのメタデータは,junii2を標準的なメタデータスキーマとして,国立情報学研究所(NII)の学術機関リポジトリデータベース(IRDB)を介して広く流通している。近年の学術情報流通をめぐる国際的な状況の変化や技術的な発展に対応し,日本の学術成果の円滑な国際的流通を図るため,オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)では,junii2に代わる次世代のメタデータスキーマとして,2017年10月に「JPCOARスキーマ ver1.0」を公表した。本稿では,策定過程での議論も含め,新しいメタデータスキーマの考え方と概要を紹介する。
著者
井上 純一
巻号頁・発行日
2007

2007年度に工学部電子工学科4年生対象に開講されたグラフ理論の講義ノートおよび講義スライドです。今年度は旧カリキュラム最終回ですので、過去5年間(2003-2007)にわたって講義で扱った演習問題とその解答例を掲載した一括ダウンロード版もアップロードしました。
著者
竹内 比呂也 國本 千裕
出版者
国公私立大学図書館協力委員会
雑誌
大学図書館研究 (ISSN:03860507)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.2062, 2020 (Released:2020-04-28)

本稿は今日の日本の大学図書館に求められる機能の変化を実現するために必要な人材という観点から新たな大学図書館員の育成について論じるものである。過去40年間の大学図書館機能の変化とその際に大学図書館員に必要とされた新しい知識やスキルを明らかにした上で,それらを現職者がどのように獲得してきたかを記述する。その上で,学習(修)支援・教育活動への直接的な関与と研究データ管理という新しい機能について,これらを実現するために大学図書館員が獲得すべき知識,スキルを育成するプログラムの内容を紹介するとともに,その実現に向けた課題を考察する。
著者
小田嶋哲哉 李珍泌 朴泰祐 佐藤三久 塙敏博 児玉祐悦 RaymondNamyst SamuelThibault OlivierAumage
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2012-HPC-135, no.9, pp.1-8, 2012-07-25

GPU クラスタ上でのプログラミングは,様々なプログラミングフレームワークが直交しており,複雑になってしまうことが多い.本研究では,XMP をアクセラレータを持つ並列計算機向けに拡張した言語仕様 XMP-dev の一実装として,GPU と CPU によるハイブリッドワークシェアリングを容易に行うことができる XMP-dev/StarPU を提案し,プロトタイプ実装を行う.XMP-dev は,XMP が本来提供している分散メモリノードへのデータと処理の分割・通信の機能に加え,各ノードでの処理の一部を GPU にオフローディングをすることが可能である.しかし,現在の実行モデルでは GPU にオフロードされた部分はすべて GPU により実行され,CPU との協調計算やワークシェアリングを行うことができない.本研究では,StarPU をバックエンドスケジューラとして用い,計算をタスクという単位で GPU や CPU へスケジューリングをすることで,GPU / CPU のワークシェアリングを可能とする.本稿では,現在開発中の XMP-dev/StarPU のプロトタイプコンパイラと同等の動作をするハンドコンパイルしたコードを用いて重力 N 体問題について評価を行う.結果として,GPU/CPU ワークシェアリングは機能しているが性能向上は十分ではなく,大きな要因は GPU と CPU の性能差に対応する十分な問題サイズを与えることが難しいこと,また,これを改善するために何らかの負荷バランス機能が必要であることがわかった.
著者
工藤 絵理子 片岡 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.480-498, 2008 (Released:2008-10-01)
参考文献数
52
被引用文献数
5 4 6

「Web 2.0」の概念が主流になりつつある現在,図書館の世界でも,ビジュアル化,情報の表紙イメージや内容情報によって情報を強化した「次世代OPAC」が注目を集めている。スペルチェック/サジェスト機能,絞り込み検索,適合度によるソート,利用者参加型機能,統合検索機能などを備えたシステムが注目され,世界各国で開発・運用され始めている。本稿では,まず現在一般的な大学図書館で導入されているOPACの現状を述べ,次に海外での導入事例をもとに,次世代OPACの特徴を具体的に説明する。さらに,現在開発されている主な次世代OPACシステムについてレビューを行う。最後に,これらのシステムを日本の大学図書館で導入する際の課題と,課題解決に向けたいくつかの方法を提示する。