著者
諸岡 雄也 古野 憲司 菊野 里絵 川向 永記 加野 善平 空閑 典子 鳥尾 倫子 安部 朋子 水野 由美 吉良 龍太郎
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.131, 2022 (Released:2022-05-12)
参考文献数
19

【要旨】新生児、早期乳児の無菌性髄膜炎における FilmArrayⓇ髄膜炎・脳炎パネルの有用性を検討した。発熱で受診した生後3 ヵ月未満の 152 例に髄液検査を施行し、細胞数増多 27 例、正常 125 例であった。細胞数増多 27 例中 15 例が無菌性髄膜炎と診断された。10 例は病原体陽性(全例 enterovirus:EV)、5 例は陰性であった。陽性群の抗菌薬投与日数は平均 2.4 日で、陰性群 4.8 日とくらべて有意に短かった(P<0.04)。細胞数正常 125 例中 15 例に本検査を実施し、EV1 例、human parechovirus2 例を検出した。本検査により不要な抗微生物薬を安全に減らせる可能性がある。
著者
山下 幸子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.227-236, 2002-08-31 (Released:2018-07-20)
被引用文献数
3

本稿では,質的調査をとおして,重度心身障害者の介助者がどのような過程を経てコミュニケーションをはかるのか,そしてコミュニケーションの様相が介助への姿勢にどのような影響を与えるのかということを考察した。調査では非構造化面接法を採用し,10名の介助者にインタビューを行った。分析の視点は,(1)初めての介助時に感じた思い,(2)現在の介助から感じる思い,(3)障害者観の変化や障害者と介助者との関係の変化の3点である。調査結果ではコミュニケーションの様相を明らかにし,障害者の意思について介助者の解釈が広がっていくと,介助者は両者の関係性や障害をその人固有のものとみなしていくことを明らかにした。また解釈についての不安,わかりあえないことの辛さの継続により,介助者は障害を絶対化してしまいうることも明らかにし,その辛さを継続化させないための試みとしてセルフヘルプグループの可能性を示唆した。
著者
深田 耕一郎
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.82-102, 2009-06-01 (Released:2019-10-10)
参考文献数
12

本稿の目的は介護をコミュニケーション過程としてとらえ,そこでいかなる現実がかたちづくられているかを明らかにすることである. とくに介護者と被介護者の関係の非対称性に注目し従来の介護論とは別様の視点から,介護コミュニケーションのよりゆたかな相を記述する.これまで,介護における関係の非対称性は解消するべきものと考えられてきたというのは,非対称な関係性がパターナリズムを生み,被介護者を抑圧する状況を発生させることが危倶されてきたからである.介護に配慮は必要である一方,行き過ぎた配慮は介護者,被介護者双方に閉塞をもたらすと考えられたそれゆえ,非対称な関係を解消するために“対等な関係"の構築が理論的にも実践的にも模索されてきた.こうした認識と主張は事実を適切に把握しており妥当なものである.しかし,筆者が行っている参与観察による事実を参照すると,実際の介護現場ではこれとは異なる現実が見られた.配慮の諸相を観察してみても,そこには多様なあり方が存在していたーむしろ,関係が非対称であるからこそコミュニケーションが生成していく事態が確認された.たとえば,遊びのコミュニケーションや非対称性に直面することで生じる自己変容がそれである以上の議論から,介護の社会学的研究は関係を対等モデルに閉じ込めるのではなく,コミュニケーションが生成・反転・破局していく姿を繊細にとらえていくことが重要であると指摘する.
著者
村田 一也
出版者
独立行政法人 石川工業高等専門学校
雑誌
石川工業高等専門学校紀要 (ISSN:02866110)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.43-52, 2014 (Released:2017-10-01)

Generally speaking, “Minka” means an old Japanese (private) houses. Studies of Minka to date have focused on the associated life style and culture, as well as the environments and societies that they were located in. Minka have characteristic madori (floor plans) depending on the region in which they are situated. That is, there are regional types in its MADORI = PLAN. In this paper, I dealt with Minka-Types as a result of research studies for Minka, then I tried to analyze some Minka-Types in Ishikawa prefecture found by previous researches. I analyzed the contents and models regarding Minka types in Ishikawa prefecture of three previous studies. I then unified the classification of Minka Types in Ishikawa prefecture. This paper is fandamental study in that mean. Ishikawa prefecture is divided into the Kaga region and Noto region, which differ both geographically and culturally. A distinction was made between Kaga type and Noto type madori. Furthermore the Minkas of Ishikawa prefecture were classified into five types: which were Kaga I type, Kaga II type, Noto I type, Noto II type and Noto III type. I clarified the areas of distribution in Ishikawa prefecture and the characteristics of the five Minka Types. The relationship between the findings of the three previous studies is discussed. Unified diagrams and a distribution map will be shown in another paper.
著者
三角 一浩 鳥居 哲太郎 青木 修 藤木 誠 三浦 直樹 柳田 宏一 坂本 紘
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.829-836, 2001-11-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

肥育牛における蹄の生長, 蹄疾患の発生や生産性と削蹄との関係について検討した. 肥育期の黒毛和種16頭 (13.0±2.0カ月齢, 体重308.0±30.8kg, 去勢牛) を削蹄間隔により3, 6および12カ月削蹄群ならびに無削蹄群の4群に分け, 以後19カ月間, 蹄計測, 蹄形の変化を記録した. と殺後, 蹄病変を観察し, 枝肉成績を記録した. 削蹄間隔の延長に伴い, 蹄角度は小さく, 蹄壁・蹄踵長は長くなった. 12カ月削蹄群および無削蹄群では蹄の変形が進み, 伸びた蹄踵で負重するようになった. 白帯離解の発生頻度は無削蹄群で有意に高かった (P<0.05). 歩留基準値は, 6カ月削蹄群が12カ月および無削蹄群と比較して有意に高い値を示し (P<0.05), 産肉量が向上していた.本研究結果から, 削蹄間隔を6カ月とすることで, 標準蹄に近い蹄形が維持され, 蹄病変の発生抑制と産肉量向上に役立つことが明らかとなった.
著者
鶴田 智
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.128-140, 2020 (Released:2022-11-01)

本研究は、犯罪者に対する法的制裁と社会的制裁の相補性に着目し、法の素人と司法の量刑判断の差が素人の「社会的制裁意図」に及ぼす影響を明らかにする目的で行った。一般的に、犯罪者が受ける制裁は、法的制裁と社会的制裁に分けられる。先行研究では、法的制裁と社会的制裁の間には、どちらか一方が減少することによって、他方が増加するという相補的な関係があると指摘されている。本研究は、その可能性を検証するために、大学生を対象とした実験を行った。実験では、まず参加者に犯罪事件のニュース記事を提示し、犯罪者に対する量刑を判断してもらった。次に、司法の量刑判断の結果を提示し、犯罪者に対する「社会的制裁意図」などへの回答を求めた。その結果、参加者の量刑判断と比べて、司法の量刑判断が足りていないほど「社会的制裁意図」が強まり、法的制裁と社会的制裁の相補性の原理に基づく判断が確かめられた。本研究により、法的制裁は社会的制裁の抑制要因になりうるという知見が得られた。
著者
長坂 和彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.699-704, 2007-07-20 (Released:2008-09-12)

二千年以上にわたり漢方が永続し得たのは, 「漢方は効く」この一点に尽きる。二千年前の薬が効くのは, 人の体が二千年前とほとんど変わらないからである。一説には400万年の間, 人はほとんど進化していないという。しかし, 我々を取り巻く環境は著しく変化し, アレルギー疾患のような新たな証を引き起こす要因となっている。日本漢方は証を決定する上で, 傷寒論・金匱要略を重視している。それ以外の考えを排除する, あるいは傷寒論・金匱要略に収載されている薬方以外は用いない, という行き過ぎと思われる意見もある。しかし, 証を決定する上で根底を成す傷寒論・金匱要略は時代より変化しているのではないかと思う。傷寒論は林億らの宋改を経ている。金匱要略はまだしも, 傷寒論は宋改を経ていない医心方や太平聖恵方と異なっている点も多い。我々は, 張仲景が書いた傷寒論・金匱要略を重視するといいながら, 実は, 林億らが書き換えた, あるいは, それ以前に書き換えられていた傷寒論に基づいて証を決定している可能性が高い。ここで注意してほしいのは, 書き換えたことがいけないということではない。むしろ, 宋板傷寒論は現代によりマッチしていると思っている。我々は, 古いスタイルから脱皮することを恐れてはならない。漢方医学は四診をことのほか重視する, といわれているが, これは単に漢方医学が成立した時点で四診くらいしか情報を得る手段がなかったからである。現在の医療機器の進歩にはめざましいものがある。白血球やCRPが上昇している場合は, 闘病反応が強いので実の反応と捉えることも可能である。我々は, 有用であるものは可能な限り取り入れ治療に当たるべきである。これは, 傷寒論の序文にある, 「博采衆方」という考えに合致すると信ずる。
著者
髙田 知紀
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.11_44-11_48, 2020-11-01 (Released:2021-03-26)
著者
小林 研介
出版者
日本熱測定学会
雑誌
熱測定 (ISSN:03862615)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.16-22, 2018-01-25 (Released:2022-11-20)

In this review, we describe what we can learn from noise in mesoscopic systems. We first introduce noise in electric circuits. Historical importance of noise (or equivalently fluctuation) is stressed especially in terms of the study on the Brownian motion and the fluctuation-dissipation relations. Second we introduce mesoscopic systems, which are very small, typically micrometer- or nanometer- sized, electric circuits made of metals or semiconductors by using nanofabrication technique. The biggest advantage of studying them lies in the fact that we can conduct precise experiments in a scale where quantum physics plays a key role. Finally, we discuss two examples of our noise research in mesoscopic systems, namely the experimental test of the fluctuation theorem and the shot noise in a strongly-correlated system. Our attempts will shed new light on the research field of mesoscopic quantum statistical physics and non-equilibrium quantum many-body physics.
著者
橋本 学
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.521-530, 1996-03-12 (Released:2010-03-11)
参考文献数
23
被引用文献数
2 3

We calculate static stress changes for the fault model derived from geodetic data before and after the magnitude=7.2 Kobe earthquake of January 17, 1995 in order to examine the possible correlation between changes in seismicity in the surrounding regions and stress changes.The Coulomb failure function (CFF) for right lateral slip on NE-SW or nearly E-W trending vertical faults may increase in the north of the Arima-Takatsuki Tectonic Line, where the activation of seismicity is observed. CFF for left lateral slip on NW-SE trending vertical faults may also increase around the Yamasaki fault, northwest of Kobe, which is consistent with the activation of seismicity there. In the northern Kinki district, where seismicity became a little bit lower, CFF is predicted to decrease. CFF may change a little in the Wakayama region, where significant seismicity changes are not observed.The Kobe earthquake may have loaded the Arima-Takatsuki Tectonic Line, segments of the Median Tectonic Line in Wakayama and Tokushima and westward dipping thrusts in the Osaka plane. Therefore we should carefully monitor the crustal activity around these tectonic lines.
著者
中村 孝太郎 坂本 英之 Dejan Krizaj
出版者
サービス学会
雑誌
サービソロジー論文誌 (ISSN:24355763)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.12-24, 2021 (Released:2021-12-23)
参考文献数
54

Applying networking and connectivity to empower human resources and infrastructure towards the formation of sustainable regional service ecosystems is becoming increasingly important for well-being of people within and outside society to meet social challenges. However, the concepts of smart city (SC) for residents/citizens and smart tourism destination (STD) for visitors/tourists are not yet well coordinated. Therefore, this research provides a framework for regional innovation through “smartization”, which is common to both SC and STD. The framework is constructed from the perspective of the service ecosystem and applied by analysis of four case studies: two representative smart city projects (“urban policy”-directed type) (Toyama and Aizu-Wakamatsu), and two advanced tourism projects (“resource integration”-directed type) in Japan and Slovenia. Based on these examples, the framework clarifies the macro aspects of human resources and infrastructure’s roles with data platform and presents a smartization model with service layers and dynamic spiral through integrating to the concept of Smart Tourism City (STC): a city that aims to improve/create QoL (quality of life) and QoE (quality of experience) for citizens and tourists. It is expected that further STC-concept-based research towards building the quantitative model will lead to concrete insights into the typology of holistic servitisation of each city or region.
著者
坂口 恵亮 宮﨑 将之 立花 雄一 上田 哲弘 明石 哲郎
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.31-36, 2024-01-01 (Released:2024-01-10)
参考文献数
10

症例は60代男性.切除不能肝細胞癌(T2N0M1 Stage IVB)に対しアテゾリズマブ・ベバシズマブ併用療法を開始し,2コース施行後のCTにて肝内病変の縮小を認めた.治療開始5カ月後に鼻出血が出現し,圧迫止血困難のため耳鼻科にて焼灼術を2回施行した.ベバシズマブによる副作用と判断し,ベバシズマブを休薬とし,アテゾリズマブ単独投与を2コース施行したが,CTにて肝内病変の増大を認めた.ベバシズマブ減量投与(7.5 mg/kg)にて併用療法を再開し,2コース施行後のCTにて肝内病変の縮小を認めた.鼻出血の再燃なく経過し,7コース施行後のCTにて肝内病変はさらに縮小し,肺転移の1カ所は不明瞭化した.
著者
田所 智子 大浦 杏子 琢磨 慧 中原 麻衣 藤田 浩二 三村 志麻 谷 丈二 森下 朝洋 小野 正文 樋本 尚志 正木 勉
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.25-30, 2024-01-01 (Released:2024-01-10)
参考文献数
17

症例は50代女性.B型肝硬変,肝細胞癌に対して肝切除術後.術後15カ月頃より貧血(術前Hb10.9 g/dl→5.8 g/dl)および白血球数減少(術前7550 /μl→1160 /μl)の急激な増悪を認め,末梢神経障害も呈するようになった.全身薬物療法の施行歴はなく各種スクリーニング検査や骨髄検査を行うも原因不明であった.経過で血清銅低値,血清亜鉛高値が判明,他科にて亜鉛製剤が術後より長期処方されており亜鉛製剤による銅欠乏症と判断した.薬剤中止に加え純ココアによる銅補充を行い,術前と同程度への血球回復と末梢神経障害の改善を認めた.肝硬変患者における亜鉛補充療法は一般的となりつつあるが,亜鉛製剤は多量継続摂取により銅欠乏症の誘因になり得る.銅欠乏により生じる血球減少は鑑別が困難なことが多く,神経障害は非可逆性となる可能性がある.亜鉛製剤投与中の血清銅測定の必要性を周知する必要がある.