著者
野田 秀孝
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.35-41, 2012-05-31 (Released:2016-02-15)

近年、いじめ、不登校、暴力行為、児童虐待、経済的・経済的以外の貧困など学校教育現場において児童生徒指導上、心の問題だけではなく、児童生徒を取り巻く社会的、環境的な問題が背景にあり、問題が複雑になっている。2008年に文部科学省は財務省からの提案を受け「スクールソーシャルワーカー活用事業」として、全国の小中学校にスクールソーシャルワーカーを144箇所配置するとして、国委託事業の全額補助事業として全国で展開された。2009年より補助事業として1/3国庫補助となり今日に至っている。富山県では2008年の国の委託事業開始時より、スクールソーシャルワーカーを配置し取り組んできている。富山県のスクールソーシャルワーカー活用事業も参考にしつつ、スクールソーシャルワーカーの特徴と課題について考察する。
著者
田中 信之
出版者
金沢大学人間社会環境研究科 / 金沢大学
雑誌
金沢大学人間社会環境研究科博士論文 199p.
巻号頁・発行日
2011-09

The purpose of essay writing guidance in Japanese language education is not only to improve the student’s ability in essay writing but to also enhance the student’s autonomy, or sense of self-responsibility when writing. Students carried out the peer response activity, were then surveyed and after analysing their responses, improvements were made to the peer response activity. In addition, the effectiveness of using peer response in feedback activities and whether the use of peer response leads to improvement in the student’s autonomy was reviewed. This study, based on the analysis of these 2 aspects, examined the significance of peer response in Japanese language education. After exploring the effectiveness of peer response, it was evident that peer response played a large influence in how students revised the organization and content of their essays. In order to carry out peer response activities effectively, it is implied that the method and content of instruction needs to be considered carefully. Furthermore, it was clear that students were able to judge the relevance of peer feedback and there were indications that this activity contributed to how students revised their work from peer response. It was understood that students adapted to peer response from analyzing their reflective writings after carrying out the peer response activities. Students who were teacher dependent can adapt to collaborative learning, which leads to autonomous learners. This is a result of the effectiveness of peer response improving autonomy. Based on this study, it became clear the effectiveness feedback has on peer response and at the same time, the possibilities as an activity to cultivate an autonomous writer. 本研究は、日本語教育におけるピア・レスポンス(peer response)を有効性と自律性の観点から考察したものである。 日本語教育における作文指導の目的は、学習者の作文能力を向上させることだけではなく、文章執筆における学習者の自律性を高めることにある。しかしながら、従来の作文指導の中心である、文法・語彙等を直接訂正する教師添削では、学習者を教師に依存させてしまうおそれがあり、学習者の自律という目的とは相反する結果となることがある。このような状況において、本研究では、学習者同士が協働的に推敲活動を行うピア・レスポンスを取り上げ、検討した。 ピア・レスポンスは、多様な仲間からのフィードバックが受けられることや、それらのフィードバックを通して、批判的思考が身に付くことなどの利点がある一方、東アジア系学習者はピア・レスポンス活動に適応しにくいという指摘もある。そのため、本研究では、ビリーフ調査を行い、その調査結果をもとに実践を改善することを目指した。そのうえで、本研究では、(1)ピア・レスポンスがフィードバック活動として有効か、(2)ピア・レスポンス導入により、学習者の自律性にどのような影響を及ぼすのかを検討した。本研究の目的は、これらの二つの研究課題の分析によって、日本語教育におけるピア・レスポンスの意義を考察することである。 本研究は、大きく分けて、ピア・レスポンスの改善を目的とする研究(第2章)と、研究課題を実証する研究(第3章および第4章)という二つの部分で構成されている。 第2章は、ピア・レスポンスに対するビリーフを調査することにより、実践の改善を行うことを目的とした。 第1節ではアンケートによるビリーフ調査を行った結果、先行研究ではピア・レスポンスについて否定的な結果が見られたが、本節ではむしろ学習者の積極的な意識が見られた。しかしながら、仲間に作文を読まれたくないという活動に消極的な意識が見られたこと、クラスの仲間の作文を訂正することに否定的な意識も見られたことから、ピア・レスポンスの実施方法を十分に検討する必要があることが明らかとなった。 第2節では、第1節の結果をもとに、記述ピア・レスポンスを取り入れた作文授業を行い、ピア・レスポンスに対し、どのようなビリーフを持つか調査した。その結果、コメントを書くこと、仲間のコメントの効果には否定的なビリーフが見られた。しかし、これらはすべての学習者に共通するものでなく、仲間の作文を読むこと、仲間に作文を読まれることには肯定的なビリーフが見られた。これらのことから、東アジア系学習者(本節では中国人学習者)は必ずしもピア・レスポンスに否定的だとは言えないことが明らかとなった。 以上の結果に基づき、改善策として、(1)話し合いの方法を取り入れること、(2)導入法の充実を図ること、(3)教師の介入を多くすることの3点を提案した。 第3節では、前節の改善案を受け、口頭ピア・レスポンスを実践し、ビリーフ調査をもとに話し合いの問題点を考察した。その結果、学習者は記述コメントより、仲間と話し合う方法のほうを好む傾向があることがわかった。しかし一方で、(1)教師への依存度の高さ(自律性の低さ)、(2)個性の差異、(3)日本語能力の制限、により活動に適応できないということが明らかとなった。 話し合いについては、「基本的には日本語で話し、うまく表現できないときは母語で話したい」と考えている学習者が多かったにもかかわらず、実際の話し合いでは母語を多用している学習者が多く見られた。以上のことから、母語利用を検討する必要があるが、まずは学習者のできるだけ日本語で話したいという意識を活動に生かすべきだという提案をした。 第4節では、前節で課題となった話し合いにおける母語利用について検討した。ピア・レスポンスにおける話し合いの言語、および、それと深く関わるグループ編成について、実践を行い、ビリーフ調査をもとに改善を行った。 前期授業では教師がグループ編成をし、日本語で話し合いを行った。授業後の調査の結果、①母語で話し合いたい②グループに不満がある等の意見があった。そこで、後期授業では話し合いの言語を特定せず、グループ編成も自由にした。後期授業の後、調査した結果、前期授業の問題点は解決できたが、新たな問題が出てきた。①日本語で話し合いたい学習者がその機会を失った、②活動に集中しなくなった、等である。今後は以下のように実践を改善し、実施することを提案した。(1)話し合いの言語については、日本語と母語のどちらがいいということではなく、なぜ教師の指示する言語を用いるのかを学習者に明確に説明する必要があること、(2)グループ編成は教師が行うが、一部に自由な編成を取り入れること、の2点である。 第2章には残された課題が二つある。一つ目は、教師依存の学習者に対する活動改善である。二つ目の課題はグループの人間関係作りである。前者については第4章で考察した。後者については、作文の完成まで仲間とのかかわりを増やすこと、作文の目標を共有化すること、グループの存続期間を見直すことを提案した。 第3章では、ピア・レスポンスの有効性を検証した(研究課題1)。 第1節では、作文プロダクトの観点からピア・レスポンスの効果を検証した。先行研究では、ピア・レスポンスは作文の内容や構成の評点を向上させるという結果がある一方で、ピア・レスポンス後の推敲は表面的な推敲の割合が非常に高いという矛盾した結果が見られた。そこで、先行研究における分析方法の問題点を整理したうえで、次の2点を提案した。(1)ピア・レスポンス後の推敲において、作文評価が向上するかどうかを調べるため、第一作文と推敲作文を比較すること、(2)ピア・レスポンス後の推敲作文の変化についてアイデア・ユニットを用いた分析を行うこと、である。 このような分析方法を用い、ピア・レスポンスの有効性を分析した結果、ピア・レスポンス後の推敲により、作文評価、特に内容の評点が向上する傾向が示された。 しかし、第1節には、第一作文と推敲作文の比較方法や、推敲ソースを分析していないことなど、課題が残った。さらに、フィードバックに関する教示(instruction)も再検討する必要があることを指摘した。この二つの課題については第3節で分析した。 第2節では、フィードバックの教示の観点から、どのように推敲を指導したらよいかを考察した。 推敲に関する講義が推敲結果にどのような効果を及ぼすのか調査した。二つの条件(講義を受ける群、講義を受けない群)を設定し、作文を推敲させた。講義では作文の内容・構成の推敲を促すために、推敲基準を示した。講義の効果を調べるために、推敲前と推敲後の作文を量的、質的、誤用率、および作文評価の面から分析した結果、本節における講義は、作文の質的変化を大きくさせたが、作文評価は向上させなかった。すなわち、講義の効果は認められるが、講義内容および方法は再検討する必要があると言える。このような結果から、第3節では、推敲基準を示すだけではなく、学習項目をもとにした講義を検討し、ピア・レスポンスを実践した。 第3節では、第1節および第2節の結果を踏まえ、ピア・レスポンスを実施した。第1節で述べた分析方法、(1)ピア・レスポンス後の推敲において、作文評価が向上するかどうかを調べるため、第一作文と推敲作文を比較すること、(2)ピア・レスポンス後の推敲作文の変化についてアイデア・ユニットを用いた分析を行うこと、に加え、(3)推敲におけるピア・レスポンスの影響を明らかにするため、推敲の際のソースをポスト・インタビューにより特定すること、を提案した。 本節におけるフィードバックの教示は、学習項目(論理性、文章構成など)に基づき、作文の内容・構成のみについてフィードバックを行わせるものであった。ただ内容・構成に関する推敲基準を示すのではなく、授業において学習した知識をもとにして、推敲するように促した。 ピア・レスポンスの実施後、上述した三つの方法によって分析した結果、以下の二つの効果が確認できた。(1)ピア・レスポンスは推敲全体の約7割に影響していた。また、文章の意味内容に影響を及ぼす推敲のうち、約9割がピア・レスポンスによるものであった。(2)第一作文に比べ、第二作文の評点は、作文の「構成」では有意に向上し、「内容」では向上する傾向が見られた。 これらのことから、ピア・レスポンスが作文の内容・構成の推敲に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。また、ピア・レスポンスを効果的に行うためには、単にフィードバックの焦点を絞った教示をするだけではなく、講義やフィードバックの練習等と有機的に結びついた教示を行う必要があることが示唆された。 第4節では、フィードバックの教示と推敲の二つの観点から、学習者作文に対する学習者のフィードバック(ピア・フィードバック)を分析した。内容・構成に関するフィードバックのみを行うように教示し、ピア・レスポンスを実施した後、ピア・フィードバックを分析した。その結果、(1)フィードバックに関する教示がピア・フィードバックの対象や妥当性に強く影響していること、(2)書き手である学習者はピア・フィードバックの妥当性を判断し、採用するため、推敲成功率が高いことがわかった。 ピア・フィードバックは教師フィードバックのように完全なものではない。だが、ピア・フィードバックの不完全さを補うものとして、学習者にはピア・フィードバックの妥当性を判断する能力があることが明らかとなった。 第4章では、ピア・レスポンス導入による自律性への影響を調べた(研究課題2)。第1章および第2章では、学習者の教師依存度の高さがピア・レスポンス実施の障害になっていることを指摘した。そこで、このように教師依存度の高い学習者のためにデザインされたピア・レスポンスを実施することにより、日本語学習者がピア・レスポンスに適応するかを分析した。第2章で述べたように、教師依存的な学習者ほど協働学習に適応できないことから、協働学習に適応していくことが学習者の自律につながると考えられる。本章では、学習者のピア・レスポンスへの適応の分析を通して、ピア・レスポンスが自律的な書き手を育成する活動となり得るのかを検討した。 テキストマイニングを用い、学習者の内省文を分析した結果、活動第1回目後の内省文に比べ、活動第3回目後の内省文では活動の熟達化が見られること、学習者が作文能力の向上を実感していることなど、ピア・レスポンスに適応していることが窺えた。このことから、自律的な書き手を育成する活動としてのピア・レスポンスの可能性を示すことができた。 ただし、一部の学習者には仲間に依存する意識や潜在的な教師主導の学習観があり、ピア・レスポンスに適応できないケースが見られた。 本研究の成果は三つ挙げられる。第一の成果は、ビリーフ調査によるピア・レスポンス改善の可能性を示したことである。第二の成果は、ピア・レスポンスの有効性を示したことである。これには二つの要因が挙げられる。一つは、ピア・レスポンス分析方法を再検討したことで、もう一つはフィードバックに関する教示内容および方法を改善したことである。第三の成果は、協働学習と自律性との関連性を指摘し、自律的な書き手を育成する活動としてのピア・レスポンスの可能性を示したことである。 本研究ではピア・レスポンスが作文の内容・構成の推敲に大きな影響を及ぼしていることを明らかとしたが、ピア・レスポンスが学習者の推敲能力の向上に貢献したか否かは明らかにしていない。本研究におけるピア・レスポンスの有効性の検証は、作文指導による学習者の作文能力向上のための基礎的研究であり、今後はピア・レスポンスを継続することによって、学習者の推敲能力が向上するかを分析する必要がある。また、第4章において、一部の学習者にピア・レスポンスに適応できない学習者が見られたが、今後も実践の改善を図っていく必要がある。 金沢大学博士学位論文 田中信之, Theisis of Nobuyuki TANAKA
著者
菅野 幸子
巻号頁・発行日
2009 (Released:2013-12-25)

筑波大学博士 (医学) 学位論文・平成21年3月25日授与 (甲第5122号) 図版, 参考論文あり
著者
片岡 真
巻号頁・発行日
2009-01-29

多くの大学と同様、九州大学でも雑誌の電子ジャーナル化が進み、冊子体に取って代わってきている。また、図書館の利用統計は、入館、貸出、レファレンス、ILLといった来館サービスと同様に、またはそれ以上に、電子ジャーナル、所蔵検索、文献検索、リンクリゾルバといったeリソースが利用されていることを示しており、ウェブ上での学習・教育・研究支援は重要性を益している。 この発表では、本学で導入した「きゅうとLinQ」(リンクリゾルバ)、「RefWorks」(文献管理)、「どこでもきゅうと」(自宅・出張先からのeリソースアクセス)の事例、および図書館ウェブサイトのリニューアルを紹介する。また、こうした利用環境整備や図書館員による適切なインストラクションが、ユーザーとの繋がりや新たなサービスへのニーズを生み、更なる環境整備の土台となることを説明する。最後に、多様化するeリソースの契約・アクセス・利用を管理するためのERM(eリソース管理)システムの実験について、また図書館が提供する「検索」を整理し、探しやすくするための次世代OPACの検討について、紹介する。 平成20年度国立大学図書館協会地区協会助成事業ワークショップ「大学における研究・教育活動と電子リソース利用の現在」発表資料 平成21年1月29日 広島大学中央図書館ライブラリーホール
著者
後藤 啓倫
出版者
九州大学法政学会
雑誌
学生法政論集
巻号頁・発行日
vol.1, pp.121-132, 2007-03-26 (Released:2009-04-22)
著者
徳永 洋介
出版者
富山大学人文学部
雑誌
富山大学人文学部紀要 (ISSN:03865975)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.1-19, 2007-08-28 (Released:2016-02-15)
著者
山口 亨
出版者
東京都立科学技術大学学術研究委員会
雑誌
東京都立科学技術大学紀要 (ISSN:13403176)
巻号頁・発行日
no.15, pp.133-138, 2001-11

In an intelligent system such as ITS, the hardware side was strong. In this paper, we paid attention to a software side, that is the human centered system, in the intelligent system. And the display function which was the point of contact of the system with the person was taken up. In this display function, a soft touch display is important. Because, the user becomes a panic when user displays immediately before. However, it is difficult to make such software display beforehand. However, it is difficult to make such software display beforehand. Therefore, we propose the technique which software display knowledge is learned at high speed on-line. This technique is learning method by which Q-Learning is united with Chaotic Evolution. In this paper, this proposed technique is called "Q-Learning with Chaotic Evolution". And the utility is verified by applying to the commuter car system in ITS.
著者
石原 あえか
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. ドイツ語学・文学
巻号頁・発行日
no.37, pp.1-23, 2003 (Released:2003-00-00)

1. はじめに 「ホムンクルス」の製造法2. ゲーテのホムンクルス—その1:「実験室」の場面—(1) 錬金術と化学のはざまで(2) ゲーテのホムンクルスとヴェーラーによる尿素の有機合成3. 人造人間制作者の系譜—ギリシア神話から天才職人ヴォーカンソンまで—4. 現代のプロメテウス(1) プロメテウス伝説とゲーテの散文詩『プロメテウス』(2) メアリー・シェリー:『フランケンシュタイン 現代のプロメテウス』(3)「産む男」 女性の出産に対する憧れと嫉妬 ( ? )5. ゲーテのホムンクルス—その2:「実験室」の続きとしての「海の祝祭」—6. 現代ドイツ文学におけるホムンクルス・モティーフ(1) ロベルト・ハマーリンクの叙事詩『ホムンクルス』(1888)(2) シャルロッテ・ケルナーの児童文学作品『1999年に生まれて』7. まとめ ゲーテのバランス感覚—良心と好奇心—
著者
山本 卓 藤井 仁奈
出版者
文教大学大学院言語文化研究科付属言語文化研究所
雑誌
言語と文化 (ISSN:09147977)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.140-156, 2009-03 (Released:2011-11-04)

Dans Délire I, un des chapitres d'Une saison en enfer, le monologue de la Vierge folle raconte la relation du couple, Vierge folle et l'Époux infernal. Nous allons analiser la structure de la narration pour éclaircir la relation de ce couple, et la présence du locuteur qui apparaît momentanément au début et à la fin de ce chapitre.