著者
内藤 篤 宮崎 昌久 牧 俊郎
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.212-218, 1981-03-25

能登半島におけるコガタルリハムシGastrophysa atrocyanea MOTSCHULSKYの分布調査を1976∿1978年の3年間実施した.その結果, 1.本種は主に半島北部の奥能登丘陵地帯と, 南部の宝達山系丘陵地帯及びそれに接する北辺地域に偏って分布しており, 両分布域の中間の能都・内浦丘陵地帯, 一部の小分布域を除く大部分の中能登丘陵地帯, 能登北西部山間地帯, 能登島などかなり広範囲にわたって分布していない地域が存在することが明らかになった.2.本種の分布とこの昆虫の発生に大きく関連があると思われる食物条件, 気象条件, 土壌条件や天敵などの環境要因, 農薬散布の影響などの人為的要因について検討を加えたが, それらの要因との間に特記すべき関連を見出すことはできなかった.3.能登半島は山地山林が多くしかもそれが半島全体に複雑に分布しており, コガタルリハムシの生息可能な草地や農耕地がその間に入り組んで不連続的に存在している.このような地形は, 森林がこの昆虫の分散の大きな制限要因であることから考えると, この半島での本種の分布は人為的要素が加わらない限りほぼ固定していると思われた.

2 0 0 0 OA 千代見草

出版者
文友社
巻号頁・発行日
vol.第4, 1891
著者
西村 貴直
出版者
一般社団法人日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.14-22, 2003-03-31

今日,とくに英米を中心としたいくつかの先進資本主義諸国では,既存の福祉国家体制の,大規模な再編成のプロセスのなかで,貧困問題をめぐる社会的な構図が大きく書き換えられつつある。その背景には,貧困の問題を,一般労働者階級の失業や低賃金の問題と,あるいは一般市民が被っている社会的・経済的剥奪の問題と結びつけて把握するのではなく,一般社会とは切り離された「アンダークラス」の構成員が抱える個人的・集団的属性の問題として把握する考え方が存在している。本稿では,こうした「アンダークラス」に言及する,あるいはそれと深くかかわるいくつかの議論の検討を通じて,現代福祉国家における「貧困」をめぐる問題構成の変容の一側面を浮き彫りにしたい。こうした作業は,とくに英米の「ワークフェア」政策から多くを吸収しようとしているわが国の福祉政策の展開を占う意味でも,極めて重要な意義をもつように思われる。
著者
石田 雅人 土井 一弘
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C4)教育科学 04 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.199-207, 1996-02

Two groups of 11 pond turtles each were trained with right-vs.-left spatial discrimination problem to a criterion of 19/20 correct responses over two consecutive sessions in a T-maze. Then one group (CT) received the reversal, the other (OT) received a total of 150 trials of overtraining followed by reversal. A rubber-made curtain was attached near the choice point of the apparatus to prevent the subject from automatizing their movement, and an irrelevant brightness cue was presented in the goal throughout original and reversal learning. The results showed that Group OT did not reverse faster than Group CT despite of no difference between groups in terms of trials to criterion during original discrimination training, i.e., they did not show the overtraining reversal effect. The data are compared with those from our previous experiment with turtles and discussed in relation to the assumptions about a spatial discrimination derived from the two-process hypothesis.1群11匹の淡水ガメがT迷路において左右の位置を関連次元とする空間弁別課題で訓練された。学習基準は連続する2セッション(1セッション10試行)で19/20の正反応である。そののち1つの群(CT)は逆転学習に移り,もう1つの群(OT)は150試行の過剰訓練を受けた後に逆転学習が与えられた。装置内の選択点の近くに運動の自動化を防ぐことを目的としてゴム製のカーテンが取り付けられ,さらに目標箱には無関連手掛かりとしての明るさ手掛かりが原学習・逆転学習を通じて提示された。その結果学習基準到達試行数において,原学習で両群間に差がなかったにもかかわらず,OT群がCT群に比べて逆転学習が速いという証拠は見いだされなかった。つまり過剰訓練逆転効果は生起しなかった。この結果はカメを用いた筆者らの以前の実験結果と比較され,さらに二過程説(注意説)に由来する位置弁別に関する仮説について考察された。
著者
天野 道代 恵美須 文枝 志村 千鶴子 岡田 由香
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.354-365, 2013-07

本研究は,キャリア途上にある女性が,予期せぬ妊娠に気づいてから初めての出産にのぞむまでの体験を明らかにすることを目的とした。妊娠32週以降の女性で,自分の仕事に対して明確な目標をもち,その経験を積み重ねることに価値を置いて働いて(学んで)いた13名を対象に半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した。その結果,妊婦は,土台となる【妊娠前に育成されたキャリア意識】があり,【職業生活が揺さぶられる予期せぬ妊娠の体験】に遭遇し困惑する実態が示され,そして,【妊娠と仕事との調和のとれた働き方にたどり着く体験】までには,さまざまな生活上の調整を行い,それを経て気持ちが落ち着き,その結果,【仕事と家族と自分をつなげる方向にキャリアの価値が広がる体験】という経過で,妊娠の体験を認識していた。以上のとおり,予期せぬ妊娠は,女性が歩むキャリア形成においての節目となっていた。妊娠して出産することを決意した女性は,その後のすべての体験をプラスに受け止める姿勢が養われ,キャリアと妊娠を融合しながら,他者とともに生きるという新たな生活の価値を獲得していた。妊娠初期には,職場や家族との調整に混乱状態にある女性を支援することの重要性が示唆された。
著者
庄司 真人
出版者
日本経営診断学会
雑誌
日本経営診断学会論集 (ISSN:18824544)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.111-116, 2012 (Released:2013-07-26)
参考文献数
11

本稿は地方キャラクターが地域活性化に貢献すると認識する組織においては,情報の伝播,対応の程度が高いということを実証的に分析したものである。地域キャラクターは地方公共団体によって設定・認定されているもので,近年,急増しているものである。しかし,この地域キャラクターの前提条件や効果について十分には考察されていない。そこで,本稿では,地域キャラクターに関して概念的に考察したうえで,地域活性化担当者に対するアンケート調査の結果をもとに,地域活性化に有効と考えられている組織の特性に関して,情報の発生,伝播,普及という市場志向の視点から検討したものである。住民の声を拾い上げる組織が地域キャラクターによる地域活性化に効果的であり,地方公共団体におけるマーケティング活動の重要性が明らかとなった。

2 0 0 0 OA 男女交合原論

著者
瀬山佐吉 編
出版者
瀬山佐吉
巻号頁・発行日
1890
著者
倉田 耕輔
出版者
静岡県警察科学捜査研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

3Dプリンタで拳銃を作成する場合、市販されているモデルガンやエアガンの3Dデータを元に作成されることがあると考えられる。本研究では、「撃鉄を稼働させるバネ」に着目し、3Dデータの段階で、モデルガンキャップや紙火薬等を撃発する機能を有しているか否かの判断が可能か検討した。実験として、モデルガンの機関部を開け、撃鉄バネの代わりに「ねじりバネ」を用いて撃鉄を作動させた。この時の撃鉄の動きを高速度ビデオカメラで撮影し、この映像から時間と撃鉄の角度の関係を測定した。使用したねじりバネは、バネ定数の大きいものと小さいものの二種類である。次に、モデルガンのフレーム、撃鉄等の寸法、重量を計測し、FEMソフトウェアであるSolidWorksを用いて3Dデータを作成した。作成した部品をソフトウェア上で組み合わせ、撃鉄の動きをシミュレートし、時間と撃鉄の角度の関係を求めた。ただし、撃鉄を作動させるバネのバネ定数は、実験で用いたねじりバネのバネ定数を計測し設定した。実験で求めた時間と撃鉄の角度の関係とシミュレーションで求めた時間と撃鉄の角度の関係を比較すると、バネ定数の小さいバネを使用した場合は両者の関係に開きが見られたが、バネ定数の大きいバネを使用した場合については両者の関係は比較的近い結果となった。この違いは、撃鉄とフレーム間の摩擦に起因するものと考えられた。摩擦の影響を少なくするためには、シミュレーションで設定した摩擦に係るパラメータの精度を上げ、バネ定数を大きくしていくことで対応することが可能と考える。よって、実験を重ね、本モデルの各パラメータの精度を上げることで、3Dデータの段階でモデルガンキャップや紙火薬等を撃発する機能を有しているか否かの判断ができる可能性があることが示唆された。