著者
髙田 雅美 木村 欣司 中村 佳正
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2010-MPS-79, no.1, pp.1-6, 2010-07-05

本論文では,特異値分解を評価するために,条件数の大きなテスト行列の作成法を提案する.我々が対象とする条件数は,以下の 2 種類である.1 つ目は,連立 1 次方程式を解く際の困難さを 1 つの指標とする.2 つ目は,特異値の近接度を用いる.1 つ目の提案作成法では,2 重対角行列のみならず,密行列を作成することも可能である.一方,2 つ目の提案作成法では,2 重対角行列のみが作成可能である.提案する 2 種類の作成法の目的は異なるため,それぞれに意義がある.これらの作成法を用いて,LAPACK 3.2.1 に含まれているいくつかの特異値分解アルゴリズムを評価する.
著者
Marginean Ruxandra
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国際日本文学研究集会会議録 = PROCEEDINGS OF INTERNATIONAL CONFERENCE ON JAPANESE LITERATURE (ISSN:03877280)
巻号頁・発行日
no.22, pp.33-52, 1999-10-01

It is usual practice in no studies to analyse no scripts as texts, from a literary point of view. In this paper I shall take Izutsu as an example and analyze its interpretations from the point of view of what is usually considered the social background to literature.To put it differently, I intend to reconsider the way interpretation is usually thought to reveal the "universal" meaning of a text―a meaning that would go beyond the interpreters' differences of gender, class and living epoch.First, I would like to have a look at interpretations of Izutsu in contemporary society. As opinion polls show, when Izutsu is performed at Nogakudo, the audience evaluates the leading character's attitude in various ways. This is related, I think, with the diversification of opinion towards the marriage system in nowadays Japan.I would like then to question the existence of multiple interpretations of Izutsu in medieval society. The story of Izutsu is based on Kamakura period commentaries on Ise Monogatari (as the well-known article "Yokyoku to Ise Monogatari no Hiden" by Ito Masayoshi has shown). Researchers do not agree whether the 24th dan of Ise Monogatari and its medieval commentaries are inserted or not in the text of Izutsu. If one takes into account medieval poetry treatises (such as Seiasho) about honkadori, one can say, I think, that the 24th dan of Ise Monogatari is not alluded to in Izutsu.I would like to consider the interpretation of the 24th dan of Ise Monogatari as seen in medieval commentaries, as well as its not being included in Izutsu from the point of view of the medieval marriage system. According to Tabata Yasuko, aristocrats (kuge) and warriors (buke) had rather different marriage systems. Would not this fact have had an influence on the way Izutsu was interpreted in the middle ages?The above analysis touches on the larger problem of the power-relationships that exist behind what is usually considered to be a unique "correct" interpretation of a text/play.
著者
中村 好則
出版者
岩手大学教育学部
雑誌
岩手大学教育学部研究年報 (ISSN:03677370)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.71-83, 2013-03-10

高校数学科において,今年度(平成24年度)より学年進行で先行実施されている新しい学習指導要領では,数学的活動を生かした指導を一層充実させるために,必履修科目や多くの生徒の選択が見込まれる科目(数学Iと数学A) に課題学習が位置付けられた(文部科学省2009)。そこでは,生徒の関心や意欲を高める課題を設け,生徒の主体的な学習を促し,数学のよさを認識できるようにすることが期待されている。しかし,高校における数学の指導は,教師から生徒に問題の解法を一方的に説明する知識伝達的な授業になりがちで,課題学習の趣旨を生かした授業を行うには課題も多い。課題学習は,平成元年の学習指導要領改訂で中学校に設けられた。当時は中学校の第2,3学年において実施されてきた。しかし,平成10年12月の学習指導要領改訂では,第1学年も含めた中学校全学年で実施することとなった(文部省1999)。このように先行して実施された中学校の課題学習では多くの実践事例がある(例えば,筑波大学附属中学校数学教育研究会1991など)。しかし,高校数学の指導内容は中学校よりも抽象的・論理的であり,中学校の課題学習の教材は参考にはなるがそのまま活用することは難しい。また,高校において対象となる生徒は,中学生のときにすでに課題学習を経験しており,そのことにも配慮する必要がある。高校の課題学習で活用できる教材の検討は喫緊の課題である。筆者は,今まで高校の課題学習で活用できる教材として,水ロケットやフィルムケースロケット等の飛行実験を行い,数学を活用してそれらの飛行特性等を探究する教材を開発しその効果を検討してきた(中村2011a,2011b)。その結果,それらを活用した課題学習では,具体的な事象と数学との関連付けができること,生徒の主体的な学習活動が構成できること,数学のよさを感得できることなどの効果が示唆された。しかし,それらの教材を活用した指導では,実験準備や実験に多くの時間がかかるなどの課題があった。また,課題学習の教材として,具体的な事象と関連のある教材だけでなく,具体的な事象と関連はなくとも,生徒の興味・関心を引き,数学のよさを感得できる教材を開発することが課題であった。そこで,本研究では,問題の意外性が生徒の興味や探究心を促進し,高校数学の内容とも関連が多くあると考えられる円分割問題を教材として取り上げ,高校数学科における課題学習での活用の可能性を考察する。そのために,2つの円分割問題とその発展開題(平面分割問題,空間分割問題)を取り上げ,それらの解決過程の検討を通して,円分割問題の課題学習での活用の可能性を検討する。
著者
國司 悠莉子 浅井 美穂
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.99-104, 2019-03-12

近年、植物質の発酵に関わる「植物性乳酸菌」が注目されており、その中でも甘酒は人工甘味料の代替品としても注目されている。今回の研究では、女性が続けることが出来る健康習慣の1つを提案する事を目的とし、A大学の学生(21~22歳)に甘酒水を摂取する事をライフスタイルの中に取り入れ4週間継続してもらった。結果として、排便については日本語版便秘評価尺度(CAS)の合計得点の平均値に有意差は見られなかったが、ブリストルスケールによる便の形状では、甘酒摂取群10名中4名の便は軟化し、4名が普通便の状態を維持していた。疲労については、青年用疲労自覚尺度の合計得点に有意差は見られなかったが、項目ごとに見ると集中力と身体的違和感の2項目において得点の有意な差が見られた。考察として、甘酒摂取後の便秘尺度の平均得点は低下しており、ブリストルスケールにより評価した便の形状は軟化を示しており、甘酒による便秘改善効果を可能性として否定できず、疲労に関しては、甘酒に含まれるアミノ酸が脂質代謝を亢進し、ビタミン類は脂質や糖質の代謝を高め、疲労改善効果を引き起こした可能性がある。また、疲労を改善することは腸内環境の改善にもつながるため、疲労改善が結果的に便秘改善へとつながる可能性が示唆された。
著者
清沢 伸幸 小林 奈歩 木村 学 東道 公人 藤井 法子 大前 禎毅 長村 敏生
出版者
京都第二赤十字病院
雑誌
京都第二赤十字病院医学雑誌 = Medical journal of Kyoto Second Red Cross Hospital (ISSN:03894908)
巻号頁・発行日
vol.35, pp.2-11, 2014-12

京都第二赤十字病院小児科に川崎病として1978年4月から2014年6月までに入院し、急性期の治療を行った1,109例(男児650例、女児459例)の治療成績に関する検討を行った。治療プロトコールから4期に分類した。第I期(1978.4~1984.3)は心エコー検査機器がなく病初期の冠動脈評価が出来なかった時期で164例。第II期(1984.4~1994.3)はアスピリン治療を主体とした時期で197例。第III期(1994.4~2003.12)はγグロブリン療法(γ-gl)を行うも、1日用量が統一されなかった時期で212例。第IV期(2004.1~2014.6)は初回投与量を2g/kgとして使用している時期で516例である。γグロブリン療法を行うようになった第III期以降は冠動脈障害を残す割合は著減し、1ヵ月を過ぎても拡大や瘤を残す症例の割合(表3)は第I期が4.3%、第II期が8.1%、第III期が0.9%、第IV期が1%であった。第I期の初回の評価が回復期を過ぎて行っている症例が含まれていることからその割合は第II期と変わらないと考えられる。第III期、第IV期の治療成績は川崎病全国調査成績(拡大1.75%、瘤0.72%、巨大瘤0.018%)からみても極めて優れているもので、巨大瘤はいない。現在、当院で行っている治療プロトコール(表2)は日本小児循環器学会のガイドラインや世界標準とは少し異なっている。γ-glの投与開始時期は少なくとも発症後第5病日まで待つべきである。次に、γ-glの投与時間は24時間以内ではなく、32-36時間かけることである。再投与は原則1回とし、第10病日以内に投与する。アスピリンはγ-gl投与中は併用しない。再投与でも効果がない場合は経過をみることである。結論的にいえば、γ-glの投与の仕方を工夫すれば、血漿交換療法、副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤、抗TNFα剤の必要性はほとんどないと考える。また、γ-glとアスピリン剤の併用はすべきではない。
著者
武蔵 勝宏 Katsuhiro Musashi
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.157-170, 2020-03-01

日本の国会は、政府に議事運営権や審議促進手続に関する権限が付与されておらず、凝集性の低い自民党内で造反を回避するためには、事前の調整で政府と与党を一体化する必要性がある。そのため、自民党政権では与党による事前審査が行われ、国会提出の段階から党議拘束がかけられてきた。本稿は、こうした事前審査制に代えて、閣法草案を国会の委員会において予備審査を行う方法を提案し、国会審議の形骸化の解消に取り組むことを提案する。
著者
野池 賢二 池淵 隆 片寄 晴弘
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013-MUS-100, no.33, pp.1-6, 2013-08-24

MIDI メッセージのパラメータの精度を拡張する MIDI 上位互換仕様がふたつある.ひとつは MIDI Manufacturers Association によって承認された The high-resolution MIDI 仕様であり,もうひとつは YAMAHA による eXtended Precision MIDI(XP MIDI) 仕様である.これらは,いままで未使用であったコントロールチェンジ番号を使用して,たとえば Note On ベロシティの精度を 128 段階から 16256 段階に拡張できる手軽で便利な仕様である.しかし,現状ではいくつかの製品で採用されてはいるものの,まだあまり普及していない.本稿では,これらの仕様の詳細について紹介し,研究分野での利用における有用性について述べる.
著者
山口 倫子
出版者
神戸親和女子大学福祉臨床学科
雑誌
神戸親和女子大学福祉臨床学科紀要 = Bulletin of social welfare, Kobe Shinwa Women's University (ISSN:18812414)
巻号頁・発行日
no.13, pp.75-85, 2016-03-31

1998年以降の自殺者数の増加や、精神障害等に係る労災請求件数の増加などから、メンタルヘルス対策が喫緊の課題であった。そこで2014(平成26)年6月に「労働安全衛生法の一部改正」により、ストレスチェック制度が創設された。この制度の目的は、メンタルヘルス不調の一次予防、労働者自身の気付きを促す、職場環境の改善の3点である。制度の概要と流れは、①事前準備、②ストレスチェックの実施、③面接指導の実施、④集団的な分析による職場環境の改善となっている。そこで、精神保健福祉士は一定の条件をクリアすれば検査の実施者となれることが規定された。これは、精神科医療現場における精神保健福祉士の活躍に対する一定の社会的評価であると考えられる。また、この制度に関しても、面接指導への勧奨や職場環境の調整、あるいは専門機関への紹介等の支援など、個別ケースワーク的なかかわりが期待されるため、精神保健福祉士の力が発揮できるのではないかと考える。 昨今、医療現場だけでなく、教育や司法といった分野においても精神保健福祉士が活躍しているが、ストレスチェック制度導入をきっかけに、今後、労働現場におけるメンタルヘルス対策が進み、産業保健分野においても精神保健福祉士に対するさらなる期待と可能性が広がると思われる。
著者
相馬 伸一 ソウマ シンイチ Shinichi Sohma
雑誌
広島修大論集
巻号頁・発行日
vol.56-1, pp.24-59, 2015-09-30
著者
マーハ ジョン C. John C. MAHER
雑誌
国際基督教大学学報. I-A, 教育研究 = Educational Studies
巻号頁・発行日
no.46, pp.173-185, 2004-03-31

ピジンとは多言語が存在する状況の中で新たに発生した言語であり,固有の特徴をもち,かつ体系だったシステムを持っている。ピジン・クレオールの研究は,異なる言語を持った人間が互いに接触する際に,言語はどのような形で存在するかという問題に関連している。日本は多数の言語が存在する地域であるため,様々なピジンも存在する。しかしこれまで詳細に言語学的に研究されたピジンは少ない。そこで本論では,多言語的環境である日本の中で,ピジンは新旧の歴史をもつ言語現象であることを述べる。言語どうしの接触は大陸から人間が日本本土に移動してきた縄文-弥生期に始まった。これは大陸からのアルタイ語族(弥生人)とマレー・ポリネシア語族(縄文人)の接触である。「港ピジン」は16世紀に九州で発生して以来今に至っており,日本語とスベイン語のピジンである「長崎ピジン」はその例である。沖縄にも日本語と琉球語のピジンが存在する。1980年代以降は,都市で働く外国人労働者の間で「Gastarbeiter(外国人労働者・出稼ぎ)ピジン」が発達した。このような言語接触のなかには,琉球語と日本語の接触のような言語どうしの接触の例もあれば,同言語の亜種どうしの接触(例えば方言間接触)もある。より「軍事基地ピジン」は世界中で見られるもので,日本にも「浜松ピジン」などの例がそれにあたる。小笠原諸島は歴史的にも長く英語のコミュニティがあるが,ここではミクロネシア語,ポリネシア語,日本語,英語の言語接触が19世紀から始まった結果ピジンが形成された。本論は日本におけるピジン・クレオールの歴史の概略であるため,日本語と日本語手話などのピジンについては述べられていない。しかしこの歴史を見るだけでも,日本が多言語的環境にあることは明らかである。