著者
松澤 幸範 花岡 正幸
出版者
信州公衆衛生学会
雑誌
信州公衆衛生雑誌
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-8, 2018-08

目的:加熱式たばこや電子たばこなど、有害性成分が低減された新しいたばこ製品が急速に普及しつつある。本研究の目的は、職場における加熱式たばこや電子たばこの使用実態および意識調査を行い、これらのたばこ製品に対する職場の対応方法を検討することである。方法:総合化学製品メーカーの A、B 事業所の喫煙者を対象に、2016 年 11 月の予備調査(A 事業所の喫煙者 126 名)に引き続き、2017 年 6 月と 11 月の 2 回、定期健診後の産業医面談を利用して喫煙者全員(それぞれ 227 名、221 名)に聞き取り形式でアンケート調査を行った。結果:加熱式たばこや電子たばこの使用者の割合は、A 事業所では 2016 年 11 月の 26.2% から 2017 年 11月の 51.9% に、B 事業所では 2017 年 6 月の 22.1% から同年 11 月の 35.8% にそれぞれ増加していた。種類別では加熱式たばこ(94.5%)がほとんどを占めた。加熱式たばこの内訳では IQOS が 82.7% を占めたが、このうち 30.8% は紙巻たばこか glo か電子たばこの二重使用であった。導入理由では「健康のため」が最多だったが、健康影響については分からないとする声も多く、情報不足が示唆された。紙巻たばこから加熱式たばこや電子たばこに切り替えた者のうち25.5%が自宅の喫煙場所を屋外から屋内に移しており、受動喫煙を軽視する傾向が示唆された。結論:職場においても、情報不足にもかかわらず自身や周囲へ健康リスクの低減を期待して加熱式たばこや電子たばこに切り替える従業員が増加していた。しかし有害性成分が低減されているとはいえ、使用者本人や受動喫煙の健康影響は現時点では不明である。以上から、職場における対応として、正確な情報の収集と従業員への提供、加熱式たばこや電子たばこの使用者への禁煙支援、禁煙区域での使用禁止の指導などを継続することが重要と思われる。
著者
山田 浩平 小野 かつき
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 (ISSN:21860793)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.75-81, 2012-03-31

本研究は小学校の体育科保健領域で学習する「病気の予防」の「病原体がもとになって起こる病気の予防」の単元におけるスコープ(scope)とシークェンス(sequence)を検討するための第1段階として、保健学習の内容の体系化のための資料を得るために児童の風邪の原因と予防に関する認識について調査を行った。 調査は2010年7月に愛知県内の公立A小学校6年生4クラスの143人の児童を対象に行い、調査内容はイギリスのCommon Cold Research Unit(CCRU)での実験を参考に作成した。調査項目は、児童が健康の成立条件である3要因(宿主、感染経路、病原体)と風邪の罹患についてどのように捉えているか、また風邪の予防法についてどのような知識を持っているかであった(風邪の原因について3項目、風邪の予防法について2項目)。 調査の結果、無菌の部屋で健康な人に寒冷刺激を与えるという設問に対して、その人が風邪に罹患したか否かを尋ねたところ、「風邪に罹患しない」、しかも「病原体がいない」、「病原体は体内で自然発生しない」と正しく答えた児童は全体の8.7%にすぎなかった。さらに、風邪の原因に対する質問で全て正解した児童のうち、半数以上がこの認識を風邪の予防法に関連づけられていなかった。 今後は、児童の風邪の原因や予防に関する知識と風邪の予防行動が結びつくように、教育内容の範囲として歴史的経緯や実験結果、例えばCCRUでの風邪の罹患に関する実験やスピッツベルゲン島における風邪の発生に関する調査結果などを教材化し、急性伝染性疾患の予防には健康成立条件である主体(宿主)、感染経路(行動)、病原体(環境)の3要因からの対処が必要であることを理解できるようにすることが望まれる。
著者
櫻井 義秀
出版者
至文堂
雑誌
現代のエスプリ
巻号頁・発行日
vol.490, pp.150-159, 2008-05

カルト―心理臨床の視点から
著者
吉田 如子 Naoko Yoshida 明治大学客員
雑誌
社会安全・警察学 = Criminal justice and policing (ISSN:21885680)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-16, 2015-12

はじめに1.警察と警察活動――Islington Crime Survey でほぼ決着した理念論争2.正統性追求、警察官職業文化と女性警察官3.日比女性警察官調査から窺えること――英米の経験的研究を踏まえて結びにかえて
著者
山口 尉良 後藤 裕太 岩原 光男 長松 昭男
出版者
法政大学情報メディア教育研究センター
雑誌
法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 = 法政大学情報メディア教育研究センター研究報告 (ISSN:18807526)
巻号頁・発行日
vol.20, 2007-03-20

本研究はソフトテニスラケットに関する研究である.一般的な硬式ラケットについてはいくつかの研究が進んでいる。しかし、軟式テニスラケットについてはあまり研究がなされていない。本研究では軟式テニスラケットをモード解析し、その特性を調査した。
著者
石田 頼房
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
no.58, pp.123-144, 1996

これは、1995年3月18日に行なわれた著者の東京都立大学大学院都市科学研究科における最終講義の記録である。当日の講義は、あらかじめ講演内容と経歴・著作目録を記したパンフレットを配布し、そのパンフレットに載せた原稿どおりに講演したので、それを、ほとんどそのまま再録した。再録するにあたって、注と英文梗概をつけ加えた。この講義の題目にある2019年は、いうまでもなく日本に初めて都市計画法が制定された1919年からちょうど百年という年である。そして現在からおよそ四半世紀という年でもある。都市計画の長期展望として、その時期までに可能な望ましい目標像を掲げ、いかにすればそこに到達できるかを、段階計画を含めて考えてみようというのがこの講演の試みであった。「2019年への都市計画史」という表題の意味するところは、上記の試みが成功するならば、それはとりもなおさず、2019年という日本都市計画にとって記念すべき年に書かれるであろうところの都市計画史を現時点で述べることに他ならないという認識に基づいている。日本及びそれをとりまく世界の、経済状況・政治情勢がきわめて不安定で、明らかに転換期であり、人々の意識にも変化が見えているだけに、これはやや無謀な試みであるが、最近の都市計画界に長期展望が不足しており、そのことが現実の課題への対処も視野の狭いものにしていると考えられるので、あえてこのような議論をしてみた。また逆に、転換期であるだけに、このような将来予測をあえてして、そこに到るプロセスを考えるというのも一つの方法であると考えたのである。また、これは、『総合都市研究』50号(1994)に発表した「都市農村計画における計画の概念と計画論的研究」とつながりのある問題提起を目指したものでもあった。しかし、これはやはり困難な課題であって、結局、2019年への都市計画史の内容は、2019年への段階的展望を、簡略化された「年代図表」の形で示したにとどまったが、それでも一定の意義はあるものと考える。
著者
有馬 敏則
出版者
滋賀大学経済学会
雑誌
彦根論叢 (ISSN:03875989)
巻号頁・発行日
no.第220号, pp.47-68, 1983-05
著者
白木 優馬 五十嵐 祐 SHIRAKI Yuma IGARASHI Tasuku
出版者
名古屋大学大学院教育発達科学研究科
雑誌
名古屋大学大学院教育発達科学研究科紀要. 心理発達科学 (ISSN:13461729)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.97-106, 2015-12-28

The development of Information Technology has unraveled a new form of employment, crowdsourcing. With the spread of crowdsourcing, psychological researchers began collecting data with crowdsourcing. Crowdsourcing enables them to collect data from a wider range of people in a shorter timespan relative to the conventional methods. Although the application of crowdsourcing has gained popularity in foreign psychological research in recent times, Japanese researchers have not yet tapped this resource. Therefore, this paper presents the available framework of crowdsourcing service for Japanese researchers and its usage aiming for the spread of crowdsourcing in Japanese psychological research. Furthermore, we underline the required precautionary measures while collecting data using crowdsourcing.
著者
鴨志田 聡子
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 = Tokyo University linguistic papers (TULIP) (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.145-159, 2018-03-31

本稿では、執筆者がカイロ (エジプト) とイスタンブル (トルコ) において 2017 年 8 月に実施したユダヤ教徒とその言語についての調査の概要を示し、それぞれの地域のユダヤ教徒の活動の特徴と今後の調査の可能性について考察する。ユダヤ教徒はカイロには全部で 6 人、イスタンブルには 1万 5 千人から 1 万 8 千人ほど住んでいる。イスタンブルにはユダヤ・スペイン語 (通称ラディノ語) の話者が現在でも一定数住んでいると確認でき、今後の調査の可能性が広がった。
著者
平塚倖太
雑誌
Hokkaido University Preprint Series in Mathematics
巻号頁・発行日
vol.1069, pp.1-47, 2015-03-24

非線形な力学系では、単純な規則から複雑なフラクタル構造をもつ幾何的対象物が生成される。それでは、それを目の前のコンピュータスクリーン上で見ることは可能であるか。これは一見単純そうな問題であるが、奥深い事実が隠されていることを近年の研究は明らかにした。本論文では実力学系、複素力学系、計算理論の基礎を紹介し、複素力学系のジュリア集合の計算可能性と複雑性についての事実をまとめる[17]。