著者
中村 真 川野 健治
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 = The journal of Kawamura Gakuen Woman's University (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.137-149, 2002

神障害者に対する偏見の実態について女子大学生を対象に質問紙調査を行った。主な調査内容は, 精神障害者との接触経験, 態度および社会的距離であった。その結果, 女子大学生の精神障害者との接触経験は非常に少なかった。また, 精神障害者に対する態度は両価的であった。すなわち, 一般論としては受容的`理解的である反面, 個人としては不安に満ちており, 忌避的な面がうかがえた。次に, 接触経験, 社会的距離, 態度の相互の関連から, 直接・間接を問わず, 彼らに対する積極的かつ能動的な接触経験が精神障害者との社会的距離を縮めることを示唆した。しかし, 精神障害者に対する態度は必ずしも直接的な接触によって肯定的に変容するわけではなく, むしろ間接的ではあっても彼らに対する接触志向や関心の高さが否定的な態度の低減につながることがわかった。さらに, 否定的な態度と社会的距離の大きさとの関連が見いだされた。
著者
江島 尚俊
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletin of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.10, pp.137-151, 2016-03

本稿においては,“日本倫理学史”を大学という視点から明らかにしていくべく,1874(明治7)年度から1881(明治14)年度の東京大学(前史を含む)における「ethics」の教育課程に着眼し調査を行った。その結果,この時期では「倫理学」という名称の科目は設置されておらず,「修身学」,「道義学」という名称であったこと,かつ,それらの科目はサイルやクーパーといった外国人教師が担当していたことを明らかにした。なお,そこでの内容は現在でいう「史学」,「心理学」が教授されていた。「倫理学」概念が大きく変化したのが1881(明治14)年度であり,井上哲次郎によってであった。井上は,「倫理問題」ではなく「倫理学問題」を解決するための学問として「倫理学」を定義し,「倫理学」の学問領域の確定を試みていたが,その背景には,「東洋」の再発見という文化史的な背景が存在していたことを論じた。
著者
大澤 博隆 佐藤 健
雑誌
研究報告知能システム(ICS) (ISSN:2188885X)
巻号頁・発行日
vol.2016-ICS-184, no.6, pp.1-4, 2016-07-29

本研究では,不完全情報ゲームであり,正体隠匿型ゲームに分類されるコミュニケーションゲーム人狼を用い,人狼ゲームの最小系である 3 人人狼を考え,どのような戦略がありうるか検討した.検討のため,各プレイヤーの発言を可能世界の合成として記述するとともに,各プレイヤーのルールを記述するための言語を開発し,総当りで戦略の検討を行った.検討の結果,直感に反し,占い師が積極的に嘘をついた場合でも,村が勝利する場合のあることが判明した.
著者
鷲崎 弘宜 夏 天 鎌田 夏実 大久保 隆夫 小形 真平 海谷 治彦 加藤 岳久 鹿糠 秀行 田中 昂文 櫨山 淳雄 山本 暖 吉岡 信和 吉野 雅之
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:21888825)
巻号頁・発行日
vol.2018-SE-198, no.25, pp.1-7, 2018-03-02

セキュリティパターンとは,セキュアなソフトウェアシステムの開発運用における特定の文脈上で繰り返されるセキュリティに関する問題と解決を一定の抽象度でまとめたものである.1990 年代後半からこれまでに 500 近くのセキュリティパターンの特定と蓄積,共有がなされている.それに伴い,それらの適用や抽出といった技術研究も進められているが,その傾向や全体像,技術的課題および展望は明らかではない.そこで我々は最初に,セキュリティパターン研究を分類整理する際の基本的な用語間の関係を整理した概念モデルを提案する.さらに我々は同モデルに基づいた研究の分類体系 (タクソノミ) を提案し,同分類体系に基づき 200 を超える文献の内容を分類した結果を報告する.
著者
宮添 輝美
出版者
国際基督教大学
雑誌
国際基督教大学学報. I-A 教育研究 = Educational Studies (ISSN:04523318)
巻号頁・発行日
no.60, pp.1-17, 2018-03-31

本稿は,語学に特化したMOOC(略称LMOOC:massive open and online courses designed specifically for language learning)を英語カリキュラムに導入するための予備調査の結果を報告する。アンケート調査は2017 年7 月に東京を所在地とする大学の単一学部で行い,有効回答数70 を得た。対象サンプルは情報通信技術(ICT)のスキルが高い学習者グループである点に特徴をもつ。データ分析の結果, 1 )オープンな教育資源(OER)に関する知識と利用は浸透しているが,MOOCとLMOOCに関する知識・利用は開発途上にあること,また, 2 )学生のデジタル学習に対する期待が,従来の学習方法のイメージや経験により狭まっている可能性を認めた。付随して,本研究ではアンケート調査の質問法にスライダーを採用し,その機能性も検証しているが,3 )スライダーには妥当性ある統計処理の可能性が示唆された。結びに,LMOOCを用いた英語コースの設計に向けて,今後に期待される研究課題と実践研究を考える。
著者
森川 亮
出版者
近畿大学経済学会
雑誌
生駒経済論叢 = Ikoma Journal of Economics (ISSN:13488686)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.129-150, 2015-07-01

[概要] 量子なる概念は, プランクの放射公式によって議論に俎上した. しかし, それは未だ単なる関数的関係にすぎず, リアルで現実的な物理的実体ではなかった. プランクの量子は現実存在ではないのである. これに対してアインシュタインは, 光量子仮説を導入することで, 量子をリアルでビビッドな存在とし, 量子は実体となった. これは, 量子を粒子として実体化することでもあった. われわれは, 本論において, このアインシュタインのアイデアと実体化の過程を詳細に追跡し, 幾ばくかの哲学的側面についての考察も行う. また, 考察の過程で波動一粒子の二重性の根源についての議論も行うこととなる. [Abstract] The concept of quantum came up in the discussions by the Planck's formula for radiation. However, it was a merely a functional relation, but not physical substance that is the reality. Planck's quantum does not have a real existence at all. In contrast with this, Einstein proposed the hypothesis of the light quanta as a real and with a vivid existence. Thus the quantum becomes a physical substance. This is also a substantiation of quantum as particles. We will see the process of this substantiation and the developments of the Einstein's idea in this article in details and have a few philosophical discussions about this process. We will see and also argue about the roots of the wave-particle duality.
著者
神代 浩
巻号頁・発行日
2011-03

国立教育政策研究所のプロジェクト研究である「教育課程の編成に関する基礎的研究」の平成22年度における研究成果を、報告書としてまとめたものである。 本研究所では平成18年4月に中期目標を策定し、平成22年度までの期間中に取り組むべき初等中等教育分野に係る課題の一つとして「教科等の構成と開発に関する調査研究」を掲げている。本研究はこれを踏まえ、今後の教育課程の編成にかかわる基礎的な資料を得ることをねらいとしている。研究課題として、(1)国内における教育課程の開発事例の調査、(2)諸外国における教育課程の動向調査を設定した。本報告書はこれらのうち(2)の課題についての本年度の研究成果のまとめである。本年度の調査研究は、次の4項目について取り組んだ。(1)教育課程の基準の概要、(2)基準の改定と普及について、(3)教育課程の評価の方法、(4)児童生徒の学習評価についてである。各項目について近年の動き等に関する情報収集と整理を行い、我が国における教育課程の基準の改善に資する基礎的資料を得ることとした。また、今年度の調査研究では研究の進捗状況や成果等に関する情報共有と情報交換を図るため、研究委員に加えて文部科学省の専門的な職員とともに、3回にわたる研究会を開催し協議を行った。さらに、諸外国の教育課程の内容を具体的に把握できる資料も収集し、可能な限り本報告書にも掲載した。
著者
渡會 涼子 安友 裕子 北川 元二
出版者
名古屋学芸大学管理栄養学部
雑誌
名古屋栄養科学雑誌 = Nagoya Journal of Nutritional Science (ISSN:21892121)
巻号頁・発行日
no.4, pp.55-65, 2018-12-25

【目的】若年女性の過度のやせは、貧血、骨粗鬆症、低体重児出産などのリスク因子となる。本研究では女子大学生を対象に健康状態、栄養摂取状況、食行動調査を実施し、低体重者の実態を明らかにするとともに、自己のボディイメージ評価による栄養摂取状況および健康状態について比較検討を行った。【方法】①健康状態については身体計測、血液検査、②栄養調査は食物摂取頻度調査法(FFQ)、③食行動は独自で作成したアンケート調査を実施した。ボディイメージはStunkard によるシルエット法を用いて検討した。【結果】管理栄養学部1 年生女子学生134名を対象とした。Staunkard のシルエット法は体格図( 1~ 9段階でスコアが高いほど体格が大きくなる)から選択してもらいボディイメージをスコアで評価する方法である。BMI による実際の体格とシルエット法によるボディイメージ評価を比較検討した。現在の自己評価によるボディイメージ・スコアは、低体重者(BMI<18.5)4.00±0.92、普通体重(18.5≦BMI<25.0)4.17±0,96、肥満者(25.0≦BMI)4.40±1.34と、低体重者と肥満者との間に有意差は認められたが、いずれもBMI=23に相当する4 点台であった。理想とするボディイメージ・スコアは平均2.93±0.63、健康的であると思うボディイメージ・スコアは平均3.49±0.59と、健康的であると思うボディイメージより、理想とするボディイメージ・スコアが有意に低かった。肥満度別に、「理想のボディイメージ」とエネルギー摂取量を比較検討したところ、低体重者、普通体重者ともに、理想のボディイメージ・スコアが低い者は、エネルギー摂取量が低く、過剰なダイエットをしている可能性が示唆された。自己のBMI による体型を正常に認識している「正常認識群」と自己のBMI による体型を実際より太っていると過大評価している「やせ願望群」で検討を行った。やせ願望群は63%であった。血圧や骨密度、血液検査成績においては、正常認識群とやせ願望群で有意差は認めなかった。エネルギー摂取量は正常認識群1,714±545 kcal、やせ願望群1,583±437 kcal とやせ願望群が少ない傾向がみられたが有意差はなかった。食品群別における主食・芋類摂取量は、やせ願望群の方が有意に低かった。【結論】ボディイメージの誤った認識が過度の痩身傾向に影響している可能性が示唆された。若年女性に対する正しいボディイメージ認識の啓発が重要であると考えられた。
著者
横尾 暁子 竹内 美香 鈴木 晶夫
出版者
田園調布学園大学
雑誌
田園調布学園大学紀要 = Bulletion of Den-en Chofu University (ISSN:18828205)
巻号頁・発行日
no.13, pp.149-159, 2019-03

青年期女子の「痩せ」の多さが問題視されている。本研究では,首都圏の大学に在籍する女子学生115人を対象に調査を実施し,中学から現在までのダイエット経験やBMI,食習慣,自尊感情,栄養知識の関連について調査した。今回の調査からは,青年期女子の痩身願望や痩身化の高さが明らかになり,体型の不満足感と自尊感情の間に有意な負の相関関係が見られた。また,ダイエット経験者の多さが明らかになったとともに,ダイエットを実施した理由について,発達段階ごとの特徴が示された。さらに,これまでのダイエット経験のパターンによって,食意識や栄養知識およびBMIに差異のあることが示唆された。これらの結果をもとに若年女子の過度な痩せを防ぎ,心身ともに健康な状態を維持するための適切な介入方法の在り方について検討し,今後に向けた課題を示した。
著者
中野 敬一 Keiichi NAKANO
雑誌
神戸女学院大学論集 = KOBE COLLEGE STUDIES
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.103-120, 2012-12-20

Chiristianity was first introduced into Japan in 1549 by the Catholic missionary, Francis Xavier. However, Christians were persecuted quite strongly by the ruling forces of the time. By the mid 17th centuty, missionary work conducted in public had completely ceased to exist. Christianity was re-introduced into Japan in 1859. In the Meiji era various sects of Protestant and Catholic missionary groups from various contries, particularly from the United States, arrived in Japan once again and started their missionaty work. Missionaty groups introduced Japanese to Christian ideas of the other world (afterworld, the world beyond) and Japanese who became Christian believed what the missonaries taught. What kinds of ideas have Japanese accepted and developed? To know the ideas of the other world of Japanese converts in the Meiji era, we study sermons and articles by famous Japanese preachers (such as Jo Niijima, Masahisa Uemura, Kanzo Uchimura and so on), tracts written by missionaries, and hymns that Christians in Japan used in the Meiji era. Studying these materials, we could see some common characteristics of the ideas of the other world. The preachers or missinaries insist that there is a "Heaven" with God. In heaven, the deceased have peace and happiness, and can meet Got and the other dead who already were there. In particular, "to meet again" with family members or friends are significant words for hope in Heaven. The Japanese Christians who believed these ideas must have been comforted and given hope for their future. The important thing that we have to comfirm is that we could not see any specific image of Heaven or Hell. For example, they ded not talk about the form or shape of Heaven, or the condeition of the deceased.