著者
関谷 融 SEKIYA Toru
出版者
長崎県立大学
雑誌
研究紀要 = Journal of the Faculty of Global and Media Studies (ISSN:2432616X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.87-98, 2017

図をナレッジ・マネージメントのツールおよびシステムとして利用しようと意図するさまざまな努力は、図をツールまたはシステムとして作動させてきたという経験的事実から出発しているものの、なぜツールとして作動するのか(作動させ得たのか)については十分に語られてこなかったきらいがある。 本稿では、まず、現象学的還元をめぐるフッサールの思考遍歴をたどりながら、諸科学の数学的図処理の発動の内に潜む空間ありとする信念、ひいては数学的思考の可能性や意義への信頼形成の根拠をみた上で、カッシーラーの「形態」認知及び象徴操作の思想的意味を探った。
著者
安部 真理子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2015, 2015

1.はじめに 沖縄島・名護市東海岸の辺野古・大浦湾にはサンゴ礁、海草藻場、マングローブ、干潟、深場の泥地といったタイプの異なる環境と地形が存在し、生物多様性を支えている。国の天然記念物であり絶滅危惧種絶滅危惧IA類(環境省)であるジュゴンと餌場である海草藻場をはじめとし、2007年にその存在が発見されたチリビシのアオサンゴ群集、長島の洞窟など、この海域全域におよび生物多様性が高く、複数の専門家(黒住ら 2003、藤田ら2009)が述べているように、今後も新種や日本初記録、ユニークな生活史を持つ生物が多発見される可能性が高いことが示唆されている。 2.       環境アセスメント(環境影響評価)の問題 本事業に伴う環境アセスは、2012年2月に仲井真元沖縄県知事が「環境保全は不可能」と断じたほど、科学的に大きな問題があり、住民参加や情報の透明性という観点からも多くの問題が存在した。しかしながら2013年12月に仲井真県知事の手により、正反対の判断が下され、公有水面埋立申請が承認された。 3.       環境アセスメントの対象とならない埋立土砂 環境アセスの段階では埋立土砂の調達先については示されなかったものの、公有水面埋立手続きの段階になり、初めて埋立土砂の具体的な調達先が明らかにされた。160 ヘクタールの埋立てに2,100 万立方メートルの土砂が使用される。この量は10 トントラック300 万台以上の土砂に相当する。以下に、4つの問題について指摘する。a)埋立土砂調達予定先の環境への影響、b)土砂運搬船とジュゴンとの衝突の可能性、c)海砂採取により嘉陽の海草藻場への影響が生じる可能性、d)埋立土砂に伴う埋立地への外来種の移入。 4.       情報の隠ぺい、後出し 環境アセスの期間においても、公有水面埋立申請書の段階においても、環境に大きな影響を与える工事について、情報の隠ぺいおよび後出しが行われている。 5.       環境アセス後に判明した科学的事実の軽視 昨年5~7月に自然保護団体が行ったジュゴンの食痕調査により、ジュゴンがこれまで以上に高い頻度で埋立予定地内および周辺を餌場として利用していたことが解明された。このようにジュゴンが採餌域を拡大し、大浦湾の埋め立て予定地内および周辺を利用することは、環境影響評価が行われた時点では予測されていなかったことである(日本自然保護協会 2014年7月9日記者会見資料)。しかしながら事業者は事業の中断および変更は行っていない。 4.環境保全措置の問題点 環境影響評価書(補正後)には環境保全措置が書かれているが、公有水面埋立承認が下りてから埋立工事が開始されるまでの「調査期間」には、その保全措置が適用されない。着工前の調査の時点でも、厳重な保全措置が取られるべきである。つまり着工前に影響を与える行為をしながら、事後に保全措置を取っても意味がない。 5.       おわりに 辺野古・大浦湾はIUCNが3度にわたる勧告を出しているほどの貴重な自然であり、沖縄のジュゴン個体群は、世界のジュゴンのなかで最も北限に位置する重要なものである。日本が議長国をつとめた2010年に採択された愛知ターゲット目標10「脆弱な生態系の保全」と目標12 「絶滅危惧種の絶滅・減少を防止する」を守れない事業を進めることは国際的にも許されないことである。
著者
佐野 美奈
出版者
広島大学大学院教育学研究科附属幼年教育研究施設
雑誌
幼年教育研究年報 (ISSN:03883078)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.33-40, 2018

The purpose of this study is to quantitatively analyze the characteristics of the elements of movement in the musical expression of kindergarten children during musical experience centered on rhythm in the practical process of MEB (Musical Expression Bringing up) program created by the author. MEB program consists of four phases of activities to recognize musical elements in early childhood. In this study, F kindergarten children and Y kindergarten children with different childcare forms participated in the music test devised by the author, and the first and second phases' activities practice. The children participated in motion analysis through 3D motion capture by the activity phase of the MEB program (n =73). The correlation between the music test result of the participant children and the MVN measurement result was analyzed. As a result, regarding the elements of movement, a significant difference was observed in the activity phase factor over the age factor. Furthermore, it was found that a correlation between recognition of musical elements and movement in musical expression was observed in the moving distance and the moving acceleration regarding the hand.MEXT/JSPS KAKENHI Grant Number 16K04579
著者
佐藤 岩夫
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.81-108, 2005-03-30

日本の違憲審査制の現実の運用の特徴として違憲判決が極めて少ないことはよく知られている.その原因についてはさまざまな指摘があるが,その1つとして,内閣法制局による厳格な事前審査の存在があげられることがある.それによれば,内閣法制局による法律の厳格な事前審査の存在が裁判所の事後的な司法審査の機能領域を小さなものにしている.本稿は,この説明の妥当性を比較法社会学的な手法を用いて検証し,厳格な事前審査の存在が直ちに事後的な司法審査の機能領域を縮小させるのではなく,裁判所が自らの役割について一定の選択をしているという媒介要因(司法の役割観judicial role conception)が重要であることを主張する.
著者
林 謙一郎 新田 朋子
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本岩石鉱物鉱床学会 学術講演会 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.17, 2003

青森県下北半島,恐山地熱地帯には,シリカシンター(珪華)が広範に分布している.湧出する熱水には硫酸酸性型,中性塩化物重炭酸型,中性塩化物型などが報告され,それぞれのタイプで酸素・水素同位体比が異なることが知られている(Aoki, 1992).同位体比の解析から現在の熱水の起源は主に天水で,これに様々な割合でマグマ水起源物質が添加していると考えられてきた.ここでは熱水から沈殿したシリカシンターの酸素同位体比を層序ごとに調べることにより,一連のシンターが生成する間に熱水の起源がどのように変遷してきたかを検討したので報告する.<BR> 本研究では一連のシンターとしては最も厚く,層厚約1.3 mを有するものを検討した.このシンターの生成期間については明らかではない.産状の特徴から,下部層と上部層に区分できる.下部層は厚さ約1 mで,赤や黄色に着色した縞状構造が特徴で,ストロマトライト状の組織を有する部分も存在する.上部層は厚さ約30 cmで白色を呈する1 mm程度の薄層の互層からなる.シンターはまれに外来岩片を伴うが大半は熱水から沈殿したシリカ鉱物のみから成り,X線粉末回折の結果は上部層はopal-Aのみから,また下部層はopal-Aおよびopal-CTの両者から構成されている.<BR> シリカ鉱物の酸素同位体比は通常のレーザー加熱五フッ化臭素法によった.酸素同位体比(&delta;<SUP>18</SUP>O<SUB>SMOW</SUB>)は下部層では概ね+20から+25 &permil;で,上部程重くなる傾向がある.上部層は+25から+30 &permil;で上部に向かい連続的に同位体比が軽くなっている.シリカ鉱物の酸素同位体比は,それを沈殿させた水の酸素同位体比と熱水の温度に支配されているであろう.シリカ鉱物が水と同位体的に平衡になった時の温度として1) 熱水貯留層中の温度(220℃),2) 地表でシリカが沈殿した温度(現在の地表での実測値は96℃)の両者の可能性が考えられる.貯留層中の温度を仮定した場合,熱水の同位体比の計算値は+10から+20 &permil;となり,高温火山ガスあるいはマグマ水の同位体比として考えられる値よりもはるかに大きく,このような組成の熱水の存在は現実的ではない.従ってここでは熱水が地表に噴出した時の温度が,シンターの酸素同位体比を決定していると考えた.非晶質シリカー水間の同位体分配係数を用いて求められた熱水の酸素同位体比は,天水よりも最大12.5 &permil;重い.このことから熱水の酸素同位体比は天水と高温火山ガスの中間にあり,時代とともに両者の割合は変動するが,最近は高温ガスの影響がより強くなっているように思われる.
著者
稲葉 洋子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.64-70, 2008-02-01

世界の文化を比較研究するファイル資料としてアメリカ・イェール大学で開発され,現在も世界中で利用されているHuman Relations Area Files (HRAF)がある。国立民族学博物館は1976年HRAFの正会員となり,大学共同利用機関としてファイル情報の提供や利用法の研修会を開催し,利用促進や広報に努めてきた。また,館内においてはHRAFを研究に活かしていくだけでなく,標本資料や文献図書資料等所蔵資料の分類にHRAFの分類法の一つであるOWC分類を付与している。紙ファイルからWeb版に媒体変更しつつあるHRAFは会員数を着実に増やしているが,民博でもより研究に活かしてもらう方法を考える時期にきていると考える。
著者
Andrew McWilliam アンドリュー マクウィリアム
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.301-315, 2019-01-25

Historically, the diverse ethno-linguistic communities of Timor-Leste havedefined themselves through local ancestral resource jurisdictions and mythichistories of exchange, alliance, and settlement. Central to this conception ofplace and belonging is the idea of the rai na'in, a Tetun language term withlocal language variants that refers to 'custodians of the land'. However, thebrutal, generation-long struggle for independence promoted new forms ofimaginative connection and belonging encapsulated in the concept of RaiTimor, or 'homeland'. The notion of Rai Timor is not merely a moreencompassing 'homeland' than the landed inheritance of locally embeddedcommunities; it is imagined as a territory shaped from below and collectivelyby the ordeals of 'the people', who become the active originators ofthe nation. If the constitutive act of a subject in the traditional ideology ofrule is to recognise and defer to authority vested in ritual and political leaders(the rai na'in), the constitutive act of belonging to the nation is to sufferand sacrifice for it (the Rai Timor) (McWilliam and Traube 2011). This presentationconsiders the contemporary force of this expansive sense of theimagined community in Timor-Leste, a notion that Anderson described as'aggregated nativeness' (2003), in the light of the well-documented resurgenceof custom and traditional authority. How do these different scales ofallegiance and belonging contribute to the shaping of contemporary societyin post-independence Timor-Leste? In this chapter, I discuss these and otherquestions with reference to the Fataluku ethnography. 歴史的にティモール・レステのさまざまな民族はローカルな伝統(先祖からの取り決めによる資源の裁定,交換・縁組・居住に関する神話的歴史)を通して自らを定義してきた。土地と所属に関するこの考え方に中心的な位置を占めているのがライ・ナインである。「ライ・ナイン」はテトゥン語で「土地の守護者」を指す。しかしながら,暴力的で一世代にわたる独立への闘争は,想像上の連帯と所属の新しい形,「ライ・ティモール」あるいは「祖国」の概念を産みだした。ライ・ティモールの考え方は,単にローカルな共同体の土地にむすびつきながら継承されたものをより包括的にしただけではない。それは全く違った仕方で想像されているのだ。それは下から,集団によって,「民衆」(彼らこそが国家の作り手となるのだが)の試練から作られた領土なのである。伝統的な統治のイデオロギーの中での主体の重要な行為が儀礼的・政治的リーダー(ライ・ナイン)の権威を認め・それに従うことだとすれば,国家に属するという中での重要な行為は国家(ライ・ティモール)のために殉教し犠牲になることである(McWilliam and Trauve 2011)。この論文はティモール・レステにおける想像された共同体(「ネイティブの集合体」(Anderson 2003))の,このような意味での拡張された意味の力を,慣習や伝統的権威の復活というよく知られた動きと対照させながら,考察する。いかにしてこれらの様々なスケールをもった忠誠と所属の意識が,今日の独立以降のティモール・レステの社会を形作っているのだろうか?わたしはこれらの問題をファタルクの民族誌に基いて議論する。
著者
Little Crispin T. S.
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.72-79, 2010-05

深海底に沈んだクジラの死骸はヌタウナギ類や深海ザメ,エビやカニに食べられる。しかし骨ばかりになっても,その骨を間接的に栄養源とする各種の貝やゴカイなどが集まり,「鯨骨生物群集」が形成される。
著者
渋谷 秀樹
出版者
地方自治総合研究所
雑誌
自治総研 (ISSN:09102744)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.1-25, 2014-10