著者
盛山 和夫
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.199-214, 2006-09-30 (Released:2007-08-02)
参考文献数
20
被引用文献数
5

数理社会学は何の役に立つのか。経済学と比べると、社会学において数理の役割は依然として小さい。ここには、社会学という学問の特性が関わっており、数理社会学の意義はそれを踏まえて再定義される必要がある。そもそも、社会学が探究すべき社会秩序は、パーソンズが主張したように単なる事実的秩序ではなくて規範的秩序である。ただし、パーソンズの述べた理由によってではなく、社会的世界が人々にとって先験的な意味世界として構成されているからだ。規範的に秩序づけられている社会的世界を探究するのは「解釈」という営みであり、それは純粋には経験主義的ではありえない。なぜなら、「意味」は外的世界にモノとして存在するのではないからである。解釈による探究は、基本的に対象としてある意味世界に対して、新しい意味世界を重ね書きするような営みであり、それは新しい秩序構想の提示に等しい。この意味で、社会学は規範科学であり、数理社会学の意義も、経験的説明としてよりはむしろ規範的構想のための可能性の論理的探究にあるといえる。
著者
佐藤 未帆 村上 陽子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.112, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】 わさび(山葵)は、我が国固有の香辛料である。根、茎、葉全体に辛味があり、特に根の辛みは強く、特有の高雅な風味がある。そのため、日本料理ではこれを新鮮な状態でおろして、「つま」として用いられる。また、根茎を磨砕したものは山葵餅、山葵羊羹などの菓子にも使用されている。静岡県は国内有数のわさびの産地の一つであるが、一部の地域において餅を搗く際にわさびを添加する風習がある。これは、わさびを添加することによって餅が柔らかくなり、食べやすさが向上するとともに、長期間保存できることが経験的に伝承されているためである。しかし、わさび添加による影響について詳細な記述や論文はほとんどないのが現状である。そこで、わさびの添加が餅の物理特性に及ぼす影響について検討した。【方法】 試料として、もち米はこがねもち(精白米)、わさびは静岡県産の本わさびを用いた。わさびは、使用時におろし器(鮫皮)にておろして用いた。もち米は、蒸溜水で洗浄後、20℃で5時間吸水させた。その後、30分間水切りを行い、蒸し器にて40分間強火で蒸し上げた。蒸し上がったもち米をすり鉢に移し入れ、米粒がなくなるまですりこぎで搗いた後に二等分し、一方は無添加、一方にはわさびを添加し、わさびが均一に混ざるまでさらに搗いた。また、無添加の試料についても、同回数さらに搗いた。物理特性は、調製当日の試料と1日間保存した試料について、卓上物性測定器により測定した。【結果】 調製当日の物性をみると、かたさは、わさびを添加した餅とわさび無添加の餅との間に有意差はみられなかった。一方、1日間保存した場合、わさびを添加した餅は無添加の餅と比べて、かたさが有意に低下した。
著者
斎藤 久美
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.78, no.11, pp.710-723, 2005-10-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
26

本研究は,韓国の地方中心都市である清州市を対象とし,都市における血縁組織の形成とその変容を,村落から都市への人口移動との関連から明らかにすることを目的とした.韓国の都市における血縁組織の形成は,1960年代以降,首都ソウルに人口が集中するとともに同族集落からの転入者によって,ソウルなどの大都市に形成される動きがみられるようになった.清州市の血縁組織は,清州市への人口集中が著しくなった1970年代以降活発に形成されたという.一方,清州市の血縁組織は,1970年代に忠清北道内の同族集落から清州市に転入した経済的・社会的成功者たちを中心に,同族集落との連絡を補うために形成された.その後,都市の血縁組織は,各同族集落からの転入者を会員に迎え入れ成長したが,その中で,就職の斡旋や住居地の紹介など,転入者の都市定着支援などの役割も補う例もあった.都市の血縁組織は都市居住者が増大するにしたがって,都市住民のニーズに応じ,血縁組織が細分化されるなど,社会状況に応じて変容し続けている.
著者
藤田 祐
出版者
日本イギリス哲学会
雑誌
イギリス哲学研究 (ISSN:03877450)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.39-54, 2004-03-20 (Released:2018-04-25)

In his ‘Evolution and Ethics’ T. H. Huxley formulates the antagonism between nature and art. In this formulation, human beings and society have in themselves both natural and artificial aspects, to which he attaches ambiguous values. This view is closely connected with his political argument in ‘The Struggle for Existence in Human Society’, which seeks the middle course between ‘Anarchic Individualism’ and ‘Regimental Socialism’. In his formulation, the antagonism between individualism and socialism is parallel to that between nature and art. It can be argued, therefore, that his middle-of-the-road politics is based on his ambiguous attitudes to nature and art.
著者
三上 直之
出版者
岩波書店
雑誌
科学 (ISSN:00227625)
巻号頁・発行日
vol.90, no.12, pp.1087-1093, 2020-12
著者
進藤 聡彦
出版者
日本教育方法学会
雑誌
教育方法学研究 (ISSN:03859746)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.95-105, 2003-03-31 (Released:2017-04-22)

社会科の歴史領域は暗記科目などと言われることがある。このことから,多くの学習者は機械的な暗記による学習方略を採用していると考えられる。そして,そのような学習方略の採用は,学習項目間の繋がりを欠き,有意味性を感じにくくさせるために,学習者にとっておもしろい学習とはなりにくいと予想される。そこで,調査Iでは歴史学習の好悪と学習方略の関連が調べられた。その結果,歴史の学習が好きだったとする者は嫌いだったとする者に比べて,メタ認知的な学習方略を採用していることが明らかになった。このことは,機械的な暗記による学習方略が歴史の学習を嫌いなものにすることを示唆する。学習者に歴史学習をおもしろいものとして捉えさせるための方法として,知識の構造化による有意味化が有効だと考えられる。そして,構造化のための前提として疑問が生成されることが必要だと推定される。すなわち,断片化された知識の関連についての不十分な知識は,疑問という形で意識される必要があるからである。こうした観点から,調査IIでは疑問の生成を保証するのは理解のモニターや既有知識との関連をつけようとするようなメタ認知に関わる学習方略の採用だとする仮定の下に,疑問の生成能力とメタ認知能力の間の関連が探られた。その結果,疑問の生成能力とメタ認知能力の間に相関関係が確認され,メタ認知的な方略の育成が構造化された知識の前提になり,そのことが知識の構造化による歴史学習の有意味化につながると考察された。

10 0 0 0 OA 白内障と認知症

著者
石井 晃太郎
出版者
日本白内障学会
雑誌
日本白内障学会誌 (ISSN:09154302)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.36-38, 2015 (Released:2015-07-10)
参考文献数
5
著者
横田 俊平 黒岩 義之 西岡 久寿樹
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.288a-288a, 2015

ヒト・パピローマウイルス(HPV)は一般的な感染因子であり,子宮頸部基底細胞への感染は部分的には癌発症の契機になる.子宮頸癌を予防する目的でHPVワクチンが開発され(CervarixとGardasil),約340万人の若年女性に接種が行われた.しかし,HPVワクチン接種後より全身痛,頭痛,生理異常,病的だるさ・脱力・不随意運動,立ちくらみ・繰り返す便秘・下痢,光過敏・音過敏,集中力低下・計算力と書字力の低下・記憶障害などを呈する思春期女性が増加している.「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)」と仮称し,当科外来を受診した51例の臨床症状の把握とその体系化を行った.すべての症例は,HPVワクチン接種前は良好な健康状態・知的状態にあり,接種後,全例が一様に一連の症候の重層化,すなわち,疼痛性障害,不随意運動を含む運動器機能障害,感覚障害,生理異常,自律神経障害,高次脳機能障害と進展することを確認した.このように幅広いスペクトラムの疾患の記載はこれまでになく,これらの症候を同時に呈する中枢神経障害部位についての検討をすすめ,「視床下部 下垂体病変」と捉えられることが判明した.病態形成にはミクログリアが関わる自然免疫,HPVワクチン抗原のペプチドと特異なHLAが関わる適応免疫の両者が,強力なアジバントの刺激を受けて視床下部の炎症を繰り返し誘導していると考えている.治療にはramelteon(circadian rhythmの回復),memantine(シナプス伝達の改善),theophylin(phosphodiesterase inhibitorの抑制)を用い対症的には対応が可能となったが,病態に根本的に介入できる薬剤はいまだ手にしていない.