著者
前田 裕昭 川口 佳久 安田 明生
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.31-35, 2007 (Released:2007-09-27)
参考文献数
5

準天頂衛星測位システム(以下QZSSと呼ぶ)では,地上軌跡が東経135度を中心とし8の字を描く軌道(以下QZOと呼ぶ)に衛星(以下準天頂衛星,あるいは,QZSと呼ぶ)を軌道上に打ち上げて,日本を中心とした東アジアやオセアニアに測位サービスを提供する. しかし,軌道は,地球質点重力以外に,Zonal項やNon Zonal項等の非球対称地球重力項の影響や,太陽や月の重力,太陽輻射圧の影響を受ける. そのため,それぞれの影響の大きさがどの程度であって,どれだけの期間でそれらを補正する必要があるか,またその補正に必要な速度増分量がどれくらいかの把握は,QZSS及びQZSの研究開発において主要な課題の一つであった. この研究課題については,既に幾つかの検討がなされているが,いずれも断片的であったり,視点が異なる. 今回我々は,主に,軌道傾斜角=45deg,離心率=0.099,近地点引数=270deg,及び,地上軌跡の中心を東経135deg(これは昇交点経度=146.5degに相当する)とする軌道が受ける摂動を解析し,その特性を評価した. 2.では,Zonal項について,2体問題と対比させて述べる.Zonal項は,主として昇交点赤経,近地点引数,平均近点離角,及び昇交点赤経と平均近点離角の変動に起因して昇交点経度に影響を与える. これらZonal項による昇交点赤経,近地点引数,平均近点離角の変動は,永年摂動項としてよく知られている. ここでは,永年摂動項に関しては,軌道長半径の調整により,昇交点経度がほぼ変動しないようにすることができることを示す. 3.では,地上軌跡変動に主要な影響を与えるNon Zonal項についてその影響が経度に依存することを示す. Non Zonal項は地球の経度に関係するものであって,主として軌道長半径に影響を与え,その影響の様子は静止衛星に対するものと似ている. 適切な頻度での東西制御が必要である. 4.では太陽輻射圧の影響,太陽と月の重力の影響を,昇交点赤経ごとに評価した. 5.では研究・考察の検討をまとめて,むすびとした.まとめとしては,次のようになる.すなわち,まず,永年摂動項による昇交点経度の変動は,軌道長半径の調整により,変動しないようにすることができる.地上軌跡の東西方向の変動は,その軌道保持運用間隔Pを半年とすると,その時の軌道長半径の毎回の制御量は15kmであり,昇交点経度の変動は4.5deg以内である.10年間の軌道傾斜角の変動幅は最大で7deg程度であり,QZSSのサービス仕様次第では,その変動幅が許容して放置することもできることを示唆した. 同様に,これもQZSSサービス仕様によるが,仮に初期の昇交点赤経が135deg~270degであれば,近地点引数でさえもその変動幅は20deg以下であるので放置が可能である. なお,離心率の変動は大きいため,軌道保持運用間隔に実施する軌道長半径の毎回の制御と併せて,保持制御されることが望ましいことも分かった.
著者
北川 幸樹 桜沢 俊明 湯浅 三郎
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.47-54, 2007 (Released:2007-10-18)
参考文献数
12
被引用文献数
2 2

液体酸素(LOX)を用いた酸化剤流旋回型ハイブリッドロケットエンジンでは,インジェクターより上流でLOXを気化する必要がある.筆者らは,LOXを気化する方法の一つとして,再生冷却方式のLOX気化ノズルを提案している.本研究では,推力1500N用のLOX気化ノズルを設計製作し,設計値より低い酸素流量と燃焼室圧条件において独立気化方式と再生冷却方式による気化燃焼実験を行った.独立気化方式の気化実験によって,LOXの気化とノズルの安全性が確認され,数値計算によるLOX気化ノズルの設計が適切であることが分かった.再生冷却方式の気化燃焼実験では,確実な着火と安定した燃焼が得られ,LOX気化ノズルを用いた酸化剤流旋回型ハイブリッドロケットエンジンの自立燃焼に成功した.また,LOXを気化させることで,LOXに直接旋回を与える場合より燃料後退速度やC*効率を向上できた.
著者
荻 芳郎 樋口 健 渡辺 和樹 渡邊 秋人
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.97-103, 2007 (Released:2007-12-13)
参考文献数
12

The purpose of this paper is to analyze structural statics and dynamics of a rotating shaft with a thin-walled open cross-section having one symmetrical axis. For the shaft, flexural-torsional coupling must be considered because the centroid axis and the shear-center axis do not always coincide. After deriving the governing equations of motion for a uniform shaft rotating at a constant angular velocity, we propose methods to estimate static deflection and dynamic stability. Numerical calculations for cantilever shafts with and without internal damping indicate that the distance between the centroid and the shear-center contributes to the dynamic instability. Moreover, an application of the methods to an elastically supported model indicates that a spin-axis antenna rod for future scientific satellites under consideration is dynamically stable in the operational spin-rate.
著者
永尾 陽典 木部 勢至朗 清水 隆之 戸上 健治 引地 誠
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.61-70, 2007 (Released:2007-10-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

国際宇宙基地の位置する地球低軌道,静止衛星の位置する高軌道,そして常に高度と位置を変える観測衛星などが位置する楕円軌道など,人工衛星が存在するすべての領域においてデブリの存在と発生が確認されている.また運用を終えた衛星自身はデブリと化し,さらに大小のデブリが互いに衝突して新たにデブリを発生させ,その数を増やす可能性も大きくなっている.これらのデブリと人工衛星などとの衝突が起きる懸念は現実のものとなっており,確認された例が報告されている.その他の未確認衛星故障においてもデブリ衝突が主因である可能性は高いと考えられる.宇宙滞在が2週間程度と短期間の米国スペースシャトルでも帰還後の検査によって微小デブリの衝突痕が確認され,その頻度はこの10年間ではそれ以前に比べて2倍以上であることが報告されている.このようにデブリ増加は具体的なデータによって確認されている. これらの環境を背景に,有人国際宇宙基地の与圧部構造では10 km/secで1 gのデブリ衝突に耐えることが求められ,デブリバンパーで構造を保護している.一方,耐デブリ性能の実証には試験が必要となるが,超高速衝突試験ができる設備は限られている.著者らは10 km/sec 以上の速度を安定的に生成することを目的に,成型爆薬(CSCと称す)による超高速加速装置を開発してきた.しかしCSCによって射出される金属ジェットは,固体と溶融体とが混在する状態(固液混相体と称す)の可能性が高いが,実際の宇宙デブリは固体である.したがって,実構造の耐デブリ性能を正確に評価するには,所定の速度と質量を射出できるCSC装置を用いても,固液混相体によるCSCジェットの衝突と固体の衝突による標的板損傷の相違を明確にし,両者の関係を把握することが必要となる. 著者らはすでに固体を射出できる2段式軽ガスガンのプロジェクタイルと固液混相体を射出するCSCジェットの質量と速度とを同じレベルにし,それぞれの両者による標的板損傷を直接比較するため,2段式軽ガスガンのほぼ上限速度である7 km/secかつ1 gのジェットを射出できるCSC装置を開発し報告した.この開発では所定の速度と質量を満たし,安定したジェット生成を実現できた.しかし先端ジェットの約半分の速度で飛翔する後追いジェットが存在することも確認された.この後追いジェットは、先端ジェットの衝突跡にさらに衝突することになり,固体プロジェクタイルが一個当たる損傷と直接比較することができなかった.従って,これを除去することが必須であり新たな技術課題となった. 本研究は,後追いジェットを除去する方式を新たに考案し,実験により有効性を確認するとともに装置の最適化を行って装置を完成した.また引き続きこの装置によって,本研究の最終的な目的である2段式軽ガスガンと同レベルでの質量と速度で高速射出試験を行い,それぞれの装置による損傷を比較し検討した.この過程で2段式軽ガスガンによるプロジェクタイルとCSC装置によるジェットの形状の差異が与える影響についても実験によって確認し,両者の関係を明らかにした.
著者
大南 香織 小川 博之
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.55-60, 2007 (Released:2007-10-18)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

宇宙機における二液式推進系は多くの研究がなされ,また多くの実績を持つ.その燃料としては,ヒドラジンは自然性・燃焼温度が高く熱制御が難しいことから,通常安定なMMH(モノメチルヒドラジン)が適用されてきた.しかしながら,近年,サンプルリターンをミッションとする宇宙機が多くになるにつれ,ターゲット天体へのスラスタによる汚染防止及び高比推力化を鑑み,ヒドラジン(N2H4)とNTO(四酸化二窒素;N2O4)の燃料/酸化剤の組合せの適用が求められるようになった.ヒドラジン-NTOに含まれるN/H/O系の燃焼反応は多くの研究がなされてきたものの,実際にヒドラジン-NTO燃焼モデルは確立されていない.そこで本報告では,ヒドラジン-NTOを用いた二液式スラスタ設計のための反応モデルを構築することを研究目的とし,その一環として,これまで発表された16論文を網羅的に調査し,そこから,ヒドラジン-NTO燃焼に関与するN/H/O系の245の素反応を抽出した.反応機構は各245素反応に対し、素反応及びArrhenius式で表される反応速度定数により表現した.集めた式は今後感度解析を実施することでヒドラジン-NTO系において有効な反応を抽出し,スラスタの燃焼解析に反映させる方針である.
著者
加藤 博光 中須賀 真一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.71-80, 2007 (Released:2007-10-31)
参考文献数
18

We propose a concept of human machine co-learning, in which the system learns the user's intention interactively, and the planner as a user learns the characteristics of the problem based on the solution represented by the system. In this paper, we propose a method to reflect the user's intention on the optimization by providing the interactive user interface connecting between "the design space", which is easier for a user to understand, and "the evaluation space", in which the system executes the optimization. We applied this idea to the NETSAT communication planning problem. NETSAT consists of existent multiple low-earth orbit satellites, and forms an ad hoc network dynamically according to the satellite position at the time when a certain communication is required. The effectiveness of our proposed method is evaluated by using the prototype system of the satellite simulator and interactive planner.
著者
坂本 信臣 近藤 淳一 原田 信弘
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.17-24, 2007 (Released:2007-06-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1

電磁流体力学(MHD)推進技術は次世代の推進システムとして期待されており,NASAマーシャルスペースフライトセンターではMAPXと呼ばれるMHD加速実験が計画されている.この計画ではダイアゴナル型のMHD加速機の使用が予定されている.チャネル上下に配置された電極を適切に接続することによって,流れの非対称性やジュール加熱を緩和することができ,これはホール電流中和状態と呼ばれる.本論文では,このホール電流中和状態を理論的に評価し,さらに理想的な電極接続状態と実機との違いの影響を見積もった.結果として,両者に多少の違いは生じるが加速機出口における流速に大きな違いはないことを示し,実機においても理想的に評価されたホール電流中和状態をほぼ達成できることを示した.
著者
横山 隆明 樋口 健
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-16, 2007 (Released:2007-06-14)
参考文献数
24

安全着実な月面着陸のためには,着陸時に着陸脚が月の砂地盤から受ける反力を事前に算定し,着陸脚設計に生かす必要がある.本研究では,地球上での実験から月面着陸時の衝撃力を算定する実験的方法について検討した.また,SPH法を利用した解析的方法についても検討し,実験結果とよい一致を示した.
著者
山極 芳樹 熊谷 泰啓 宮本 重宏 大津 広敬
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.9-18, 2006 (Released:2006-05-08)
参考文献数
17

イオンスラスタの長時間・大量使用は周辺環境への大量の高エネルギーイオン排出を意味し,場合によっては,そのイオンの量およびエネルギーは周辺環境の粒子に比べて無視できないものとなる.これらのイオンスラスタ排出物が地球周辺環境中でどのような振る舞いをしてどのような影響をもたらすかを明らかにすることは,イオンスラスタ輸送システムの設計および運用形態を計画するうえで重要である.本論文では,主に地球磁場に捕獲されたイオンの三次元的運動と拡散過程および周辺粒子との衝突過程の時間的履歴を詳細にモデル化することで,以前のモデルからの大幅な改善を施し,周辺大気に受け渡されるエネルギーと地球周辺プラズマ密度をより精度よく求め,その結果をもとに,大量イオンスラスタ輸送ミッションの地球周辺環境および通信への具体的な影響評価を行った結果について報告する.
著者
浦山 文隆 渡辺 吉男 矢野 敬一 馬場 尚子
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.25-30, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

太陽観測衛星「ひので」可視光望遠鏡には分子状コンタミネーション付着にセンシティブな光学系が搭載されている.これら付着は,望遠鏡内部に使用されている有機材料からのアウトガスにより生じる.「ひので」は日本時間2006年9月23日に打ち上げられ,同年10月25日から可視光望遠鏡による太陽観測が開始された.観測開始から約2カ月の間,光学系の一つである排熱鏡近傍の温度が急上昇した.この原因として,コンタミネーションが排熱鏡に付着し,排熱鏡の太陽光吸収率が増加した可能性が高いことが判った.また,フライト前に実施した数値解析結果と比較したところ,主鏡及び副鏡での太陽光吸収率変化Δαs計算値は温度データからのΔαs概算値に傾向が概ね一致した.しかしながら,排熱鏡でのΔαs計算値は温度データからのΔαs概算値を下回った.数値解析においては,材料表面からのコンタミネーションの脱着効果,汚染源となる材料の急激な温度上昇を考慮する必要があることが判った.
著者
海老沼 拓史 千蔵 真也 中須賀 真一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-8, 2007 (Released:2007-03-31)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

An experimental Global Positioning System (GPS) receiver based on a Commercial Off-the-Shelf (COTS) hardware and open source signal processing software modified for space applications is planed to be integrated into the PRISM Earth observation nano-satellite. This paper describes the preliminary orbit determination experiments considered to be performed as part of the PRISM missions to study the operation and performance of the COTS-based GPS receiver on a very small and low-power satellite flying in a low Earth orbit.
著者
藤井 裕矩 草谷 大郎 渡部 武夫 AN Andrew
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.43-50, 2006 (Released:2006-11-29)
参考文献数
27

非線形フィードバック制御における階層的微分最適手法を基礎とした,制御アルゴリズムの提案を行い,航空宇宙機の非線形制御の例として,軌道から帰還操作のために大きくピッチ角を変更させるスペースシャトルの非線形運動と,地表面観測のためにピッチングと上下運動を拘束した状態で等加速度水平飛行を行う飛行船の非線形運動へ応用し,最適なフィードバック制御問題を解いた.この制御アルゴリズムは,テイラー展開・緩和法などを用いるよりも,シンプルで計算時間も短くてすみ,精度も向上させるものである.また,トラジェクトリーコントロールやスピンアップ問題などのより複雑な非線形問題にも応用が可能であるといえる.
著者
秋田 剛 名取 通弘
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.33-41, 2006 (Released:2006-11-02)
参考文献数
38
被引用文献数
1 1

A new sensitivity analysis method for membrane wrinkling is presented. The wrinkling phenomenon is modeled by the tension filed theory with a projection technique. In the technique, the total strain energy in wrinkled membranes is effectively decomposed into elastic energy and zero-strain energy parts using a projection matrix. The zero-strain energy part depends on only the zero-energy deformation caused by wrinkling, and is utilized for a quantifier of degree of membrane wrinkling at a material point. The wrinkle quantity of the discretized membrane element is obtained by the integral of the zero-strain energy over each element. The total wrinkle quantity of whole membrane is also obtained by the summation of the elemental wrinkle quantities. The sensitivity of the total wrinkle quantity is derived with respect to displacement vector and also design parameter. The latter is given by the semi-analytical differentiation method (SDM). The proposed sensitivity analysis method is applied to a shape design problem for wrinkle reduction of a square membrane to demonstrate its effectiveness.
著者
松井 信 池本 智之 高柳 大樹 小紫 公也 荒川 義博
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.27-31, 2006 (Released:2006-09-30)
参考文献数
21

An arc-heater using a zirconium cathode was developed as an atomic-oxygen generator. With pre-mixed argon-oxygen injection, stable discharge was maintained for more than three hours, and the cathode erosion rate was as low as 1.7x10-5 g/s. The plume temperature and velocity distributions were measured and chemical composition and total specific enthalpy was evaluated by laser absorption spectroscopy. As a result, in the center area of the plume, the degree of dissociation in oxygen was found almost 100% with the total specific enthalpy of 4.5±0.1 MJ/kg.
著者
山本 宏 木村 真一 永井 康史 鈴木 健治 橋本 英一 高橋 伸宏 加藤 松明 高山 慎一郎 河原 宏昭
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.19-26, 2006 (Released:2006-09-27)
参考文献数
18
被引用文献数
2

研究開発活動を発展させていく上において,その意義,内容,基本的な考え方などをわかりやすく説明し,研究内容に親しんでもらう,いわゆる教育啓蒙活動は欠くことのできない重要な課題である.NICTではマイクロラブサット1号機での実験により撮影された地球画像を直接メールで配信する「マイクロオリーブ実験写真のメール配信」実験を実施してきた.本論文では,我々が実施したメール配信実験の概要を紹介する.また,配信状況と実験開始からの登録数の遷移について検討する中で,本実験の参加者がインターネットにおいてどのように広がっていったかについて考察する.さらに,アンケートなどで得られた一般の方々からの生の声から,一般の人々が本実験に対してどのような関心を持ったのかについて検討する.これらの情報には,インターネットを用いた情報提供について何が効果的か,また一般の人々が宇宙開発についてどのような関心を持っているのかといったことについての,重要なヒントが含まれていると思われる.
著者
渡部 武夫 藤井 裕矩
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.29-34, 2005 (Released:2005-12-28)
参考文献数
12

重力傾度によって安定する宇宙テザーシステムのテザー上に電流を流し地球磁場との干渉によるローレンツ力を推力に利用するエレクトロダイナミックテザー(EDT)推進が考案されている.これは,展開したテザーの両端にプラズマコンダクタを搭載することにより,電子を放出,収集し,周辺のプラズマを介した閉回路を形成する方法であり,従来の化学推進に比べて非常に高い比推力をもつ推進システムとして期待されている. このEDT推進システムにおいては,テザー上を流れる電流ベクトルの向きが推力の向きを決定するため,加速,減速の両方の推力を得るシステムを構築するには電流の向きが上下2方向に変更できる必要があり,プラズマコンダクタを加速用と減速用に二対搭載する必要がある.しかしながら,システムの姿勢,すなわちプラズマコンダクタの相対位置を任意に逆転することができれば一対のプラズマコンダクタで加速減速が可能になりシステムの大幅な簡素化,軽量化が見込める.この姿勢変更制御は,ある平衡点にある副質点を姿勢角にして180度逆向きの別の平衡点まで導く非線形制御問題としてとらえることができ,これまでの伸展,回収問題に続く新しいRest-to-Rest問題と定義できる. 本稿ではこの姿勢変更制御問題(逆転問題)に対して,リーマン距離を最短にする最適制御問題としたフィードフォワード制御、ならびにオーソドックスなフィードバック制御による数値解析結果を行った。数値解析の結果,最適経路による制御,フィードバック制御ともに,テザーの長さ・速度制御および張力制御によって重力傾度化された宇宙構造物の姿勢変更(逆転)制御が可能であること,および最適経路による姿勢制御が姿勢変更過程において対称で滑らかな軌跡を描くことを示した.
著者
小島 孝之 小林 弘明
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.35-42, 2005 (Released:2006-01-06)
参考文献数
17
被引用文献数
4 1

パルスデトネーションエンジンを航空宇宙用空気吸い込み式推進機関へ利用することを想定し,空気吸い込み式PDEの推力性能を見積もった.PDEは,供給圧が外気圧(大気圧)まで膨張するため,高空で作動する場合,推重比が低下する.この推力低下を軽減するため,新概念PDEを提案した.PDEの出口に高速開閉弁を設け,燃料充填時に弁を閉じることにより,高速飛行時のラム圧力をPDEの推力に有効に利用する.さらに,インテーク捕獲流を燃料を利用して予冷却することにより,エンジン飛行可能領域がM0.5上昇する.これらのシステム解析の結果を踏まえ,PDRJE(Pulse Detonation Ramjet Engine)を提案した.さらに,PDEの基本的な推進性能について調査することを目的として,水素・酸素PDEの燃焼実験を実施した.PDE燃焼器に作用する熱流束は5kW/m2/Hzであった.
著者
青柳 潤一郎 各務 聡 竹ヶ原 春貴 橘 武史 三島 弘行 齋藤 憲吉 長島 隆一 栗木 恭一
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-6, 2005 (Released:2005-03-01)
参考文献数
11

Conventional monopropellant thrusters for spacecraft utilize the pelletized catalyst bed to decompose the propellant, typically Hydrazine. The catalyst bed consists of Iridium catalyst supported by porous Alumina ceramics pellets. During the long-term operation of the thruster, however, the catalyst is occasionally damaged, which causes several critical problems like a deterioration of the decomposition performance or choke of the capillary tube. In order to solve or mitigate these problems, a new decomposition device was designed and its preliminary model was fabricated and evaluated in our research group. Preliminary tests were conducted to examine the new reaction mechanism using pulsed or stationary AC discharge plasma instead of pelletized catalysts in a bucket type reaction chamber. In the reaction chamber filled with Hydrazine, sudden increase of the temperature and the pressure was observed immediately after the production of plasma discharge. These results show that the plasma is capable of the decomposition of Hydrazine, and acts as catalysts, and that it is worthwhile developing a new monopropellant thruster system using plasma assisted reaction in order to eliminate the disadvantages associated with the pelletized catalyst bed.
著者
松本 道弘 川口 淳一郎
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.43-52, 2005 (Released:2006-01-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

今日の電気推進機関の技術進歩により,高比推力の推進機関が実用化されるようになり,さまざまな惑星探査が可能となった.そして今後も,火星や木星をはじめとする,深宇宙の惑星を探査する機会が増えていくと考えられている.宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部では,地球近傍ではなく地球引力圏界に,中継拠点として深宇宙港を建設しようという検討を行っている.本研究では,太陽-地球系L2点に深宇宙港を設置することを想定し,低推力推進機関を搭載した宇宙機によるL2点を発着地とした深宇宙往還システムを考え,その脱出軌道を論じる.また同時に,本軌道設計において地球と同期する回帰惑星間軌道上で軌道エネルギーを離心率の拡大によって蓄積する手法(Electric Delta-V Earth Gravity Assist(EDVEGA))が有効であることを示し,EDVEGA軌道への接続を考えた脱出軌道についても提案する. なお,本検討は,その対称性からL1点深宇宙港に対しても,同様に当てはめることができる.
著者
石村 康生 高井 伸明 佐々木 進
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.15-20, 2005 (Released:2005-07-07)
参考文献数
6

現在,無人宇宙実験システム研究開発機構や宇宙航空研究開発機構/宇宙科学研究本部を中心に重力傾斜安定型の宇宙太陽発電システム(SSPS)が検討されている.本研究の目的は,このSSPSの組立時における姿勢安定性の評価である.まずはじめに,SSPSの構成モジュールをライン状に並べていく組立手順における安定性の解析を行った.近似式によって,組立初期において,ロールとピッチ周りの固有振動数が,それぞれ軌道運動の2倍及び1倍になることとが示された.さらに動力学解析によって,ロールとピッチ周りの姿勢運動が発散傾向にあることが確かめられた.この発散傾向を回避するために,相似形状が保たれた組立手順の検討を行った.しかしながら,この組立手順では,組立初期においてピッチとヨー周りの復元トルクが小さく,ヨー軸周りの姿勢変動が最大29度発生することがわかった.それ故,どちらの組立手順においても,組立初期においては能動的な姿勢制御が必要となる.