著者
小林 俊樹 平澤 良征 宇田川 友克 歌橋 弘哉 飯田 誠
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.49-51, 2008 (Released:2009-08-06)
参考文献数
11

今回我々は喉頭浮腫を合併したムンプス感染症の1症例を経験したので報告する。症例は23歳女性で, 発熱, 頸部腫脹, 呼吸困難を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診し, 喉頭浮腫を指摘され, 当科紹介受診となった。初診時, 触診にて両側耳下腺, 顎下腺の腫脹を認めた。また喉頭ファイバースコープにて喉頭浮腫による上気道狭窄を認めたため, 即日入院とし, ステロイド点滴およびエピネフリン吸入を施行した。入院後, 喉頭浮腫の改善がみられたため, 気管切開は施行しなかった。血液検査でムンプス抗体価の上昇を認めムンプス感染症と診断した。耳下腺, 顎下腺の腫脹が軽減し, 全身状態も改善したため退院となった。ムンプス感染症に喉頭浮腫を合併する例は多くはないが, ムンプス感染症で顎下腺腫脹を認めた場合は, 喉頭ファイバースコープにて上気道の状態を評価することは極めて重要であると考えた。
著者
林 衛
巻号頁・発行日
pp.1-48,

2016年の熊本地震は,(1)近代以降の地震災害の経験,(2)地元の民間研究組織(NPO法人熊本自然災害研究会,第1回研究会は1992年11月27日開催)や地震カタログ,研究書類による知識の発掘と共有,(3)中央政府によるハザードマップ作成などの被害予想・警鐘,(4)熊本県や熊本市,益城町といった地方自治体による耐震化施策の進行の四つの蓄積があった地域で発生した。いわば想定される事態が蓄積にもとづく想定に沿って生じたにもかかわらず,(5)「まさか,熊本では」「前代未聞の「前震」」「余震経験則 通用せず」などと,蓄積されていたはずの内容が「想定外」だと語られている点で特徴的である。そこで本研究では,防災・減災の実現のため,上記(1)から(4)の蓄積と(5)の「想定外」の語られ方の内容を整理し,惨事伝承の困難性,すなわち,「災害は忘れた時分にくる」(寺田寅彦のことばとされる)原因をリスクコミュニケーションの観点から考察する。
著者
時実 象一 神谷 枝里
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第12回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.119-122, 2015 (Released:2015-12-04)
参考文献数
5

全国の公共図書館のうち、デジタル・アーカイブを提供していると思われる図書館167館を調査し、85図書館、523件のアーカイブ・コレクションを見出した。情報資源点数は63,508件であった。図書館数では書籍をデジタル化した図書館が多く、続いて写真、地図、絵図、絵画、古文書などを手掛けた図書館が多かった。資源点数では、圧倒的に写真が多かった。続いて絵画、書籍であった。提供されている情報タイプについては、図書館単位で見ると画像と電子書籍が多かった。
著者
アメリカ版画評議会 編 越川 倫明 訳 坂本 雅美 訳 渡辺 晋輔 訳
出版者
国立西洋美術館
巻号頁・発行日
2016

作品の貸出しは美術館の基本的な業務のひとつですが、その実際の作業方法は館によって、あるいは担当者によって異なることがあります。また、どのように対処すべきか迷うこともしばしばです。とりわけ素描や版画といった紙本作品は性質が特殊なため、その傾向が顕著でしょう。本書はこうした状況において、指針となるものです。紙本作品を貸し出す際の個々の作業に関して、アメリカの経験豊かなキュレーターや修復家、レジストラーの声が反映されています。なお、本書に記されていることは、ヨーロッパの美術館においてもほぼそのまま指針として通用します。本書は1995年に初版が出され、日本でも1998年に国立西洋美術館から翻訳が出版されました。しかしその後約20年のうちに、インターネットやLED照明の普及など、技術の進歩には目覚ましいものがありました。これらの変化を踏まえ、2015年にアメリカで、初版に大幅な改訂を加えた「2015年デジタル版」が完成します。ここに公開するのは、このデジタル版に従った改訳です。本書は通常の貸出業務の参考図書として利用することができますし、欧米における紙本作品貸出のスタンダードを知るうえでも有用でしょう。各トピックについてさらに深く知りたい方のためには、充実した文献案内もついています。もっとも、本書はアメリカの美術館向きに作成されたものであるため、日本美術の作品等については、記述どおりに運用できない部分があるかもしれません。実際の作業にあたっては現場の経験と判断を重視することはもちろんですが、それでもガイドラインとしてきわめて有益と思われます。本書が日本の美術館の活動に資するところがあれば幸です。
著者
編集委員会
出版者
一般社団法人 日本ゴム協会
雑誌
日本ゴム協会誌 (ISSN:0029022X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.374-375, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
2
著者
高田 利武
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.140-163, 2008

The Japanese school lunch system is considered to be a product of the interdependent view of the self derived from Japanese culture, in the sense that it gives weight to children eating the same food at the same place as their peers in order to bring about a mutually close relationship. The latest form of school lunch is the so-called "interactive lunch," where children have lunch with not only their peers but also with the principal, teachers, office staff, and even sometimes with residents of the school area. In the present study, three surveys of schoolchildren were conducted to clarify the effects of the interactive school lunch on their cognition and attitude toward school lunch. It was found that children provided with an interactive lunch generally showed a more favorable attitude to school lunch than their counterparts who were not so provided, and that these effects of an interactive lunch depend on the length of the period for which the service continues. It was also suggested that children internalize an interdependent view of the self through their experiences of school lunch.
著者
元吉 忠寛 高尾 堅司 池田 三郎
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.209-220, 2008
被引用文献数
3

This study examined factors which influence the extent to which citizens prepare for natural disasters. A questionnaire-based survey was administered to residents (N=849) living in the greater Nagoya area. The items were devised to probe for residents' attitudes toward disaster preparedness, perceived flood and seismic risk, their commitment to the community, and concerns about society. The study revealed that both household and community disaster preparedness were affected by the individual's subjective norm regarding preparation, the perceived benefit of protective courses of action, and general concern about natural disasters. Commitment to the community and concerns about society were the only strong predictors of community-based disaster preparedness. By contrast, perceived flood and seismic risks were weak predictors.
著者
鈴木 雄介 山口 珠美
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

ジオパークは、平常時のみならず発災時においても、住民や訪問者に対して情報を届けるコミュニケーターとしての機能も期待される。本発表では、2015年に小噴火の発生した箱根火山において行った情報発信とそれに対するアンケート調査結果を報告し、発災時におけるジオパークの役割について述べる。箱根火山では、2015年4月末から大涌谷周辺で火山性地震が増加し、噴気の増加や蒸気井の暴噴などを経て5月6日に噴火警戒レベルが2に引き上げられ、大涌谷への立ち入りが禁止された。6月29日にはごく小規模な噴火が発生し翌30日に噴火警戒レベルが3に引き上げられた。その後、活動が低調になり噴火警戒レベルは9月11日にレベル2に、11月20日にレベル1に引き下げられたものの、大涌谷への立ち入り規制は現在(2016年2月)も継続中である。筆者らは、立ち入りが規制された大涌谷内の状況を解説することを目的とし、マルチコプターによる空撮等を用いて、解説映像を制作した。解説映像に用いた映像は7月15日と7月28日にしたもので、解説には神奈川県温泉地学研究所が7月21日にwebサイト上で発表した「箱根山2015年噴火の火口・噴気孔群(暫定版)」を用いた。制作した解説映像は、8月6日に動画共有サイトのYoutubeで閲覧可能とし、箱根ジオパークおよび伊豆半島ジオパークのwebサイトからリンクした。Youtubeでのこれまでの再生回数は約2700回である。また、環境省箱根ビジターセンター内で活動中であった箱根ジオミュージアムでは、館内の大型スクリーンを用い、訪問者に対し各種解説とあわせ映像を公開した。この映像の公開と同時に、伊豆半島ジオパークのwebサイト上および箱根ビジターセンター内で、閲覧者に対して、解説映像をどのように捉えたのか明らかにするためにアンケート調査を行った。アンケートの有効回答数は97件で、そのうちwebアンケートは65件、箱根ビジターセンターでの回答は33件であった。「このような動画を公開すべきか」という問いに対しては1件の回答を除き「積極的に公開すべき」「必要に応じて公開すべき」という回答であり、情報の需要は高いことがうかがわれた。全回答者に対し「公開すべきでない」理由を複数回答可で回答させたところ「説明不足であり誤解を生むため(9件)」「観光に悪影響があるため(6件)」「不要な恐怖心を与えるため(5件)」などの理由があげられた。「説明不足」や「不要な恐怖心」に関しては継続的な情報発信や、平常時におけるジオパークの活動によって軽減される可能性がある。一方「公開すべき」理由としては「観測観察された情報は公開されるべき(69件)」「火山のことを知るための良い材料になる(68件)」「現状を自分の目で確かめたい(65件)」が高い回答数であり、現状を自ら知り、判断したいという需要が高いことがわかった。その他、大涌谷で発生した噴火に関する興味関心の程度や、大涌谷への訪問回数と、現状の危険性に関する認識などについて解析を行った。アンケート結果からは「そこで何が起こっているのか」に関する情報の需要が高いことがうかがえた。発災時には地元自治体だけでなく、関連する研究機関などからも多くの情報が提供される。これらの個別的、専門的な情報をつないで、わかりやすく提供することがジオパークには求められている。また、発災時の情報発信の信頼性を確保するためには、どのような背景でどのような組織が何をやっているのかが伝わっている必要があり、平常時からの活動も重要である。
著者
神谷 貴文 中村 佐知子 伊藤 彰 小郷 沙矢香 西島 卓也 申 基澈 村中 康秀
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

岩石や鉱物に含まれるストロンチウム(Sr)の安定同位体比(87Sr/86Sr)は、これまで主に地質学や岩石学の分野で活用されてきたが、植物は地域基盤である岩石・土壌・水の同位体組成を反映することから、農産物の産地トレーサビリティー指標としても用いられつつある。ワサビ (Wasabia japonica)の栽培地は主に河川最上流部の湧水や渓流水であり、このような立地は、大気降下物や肥料などの人為的な影響が少なく、湧水は各地の地質を直接反映した同位体組成となると考えられる。そこで本研究では、Sr安定同位体比によるワサビの産地判別の可能性を評価することを目的とした。日本の主要なワサビ産地である静岡県、岩手県、長野県、東京都、島根県から計34地点においてワサビ97サンプルおよびその栽培地である湧水・渓流水95サンプルを採取し、微量元素と87Sr/86Srを測定した。その結果、87Sr/86Srは地質の特徴によって異なる値となり、同地点のワサビと湧水の値がほぼ一致することを確認した。第四紀の新しい火山岩地域である静岡県の伊豆・富士山地域では87Sr/86Srがほとんど0.7040以下と最も低い値となり、中生代の花崗岩や堆積岩が分布する長野県や東京都では0.7095以上で高い値となった。このように、87Sr/86Srによってワサビ生産地を判別できることが明らかになった。
著者
亀谷 宏美 鵜飼 光子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-36, 2012-02-05
被引用文献数
1

インスタントコーヒーのヒドロキシルラジカル捕捉活性をESRスピントラップ法により評価した。ヒドロキシルラジカル捕捉活性の評価にはスピントラップ剤5-(2,2-dimethy-1, 3-propoxycyclophosphoryl)-5-methyl-1-pryoline N-oxide (CYPMPO)を使用した。H_2O_2とCYPMPOのリン酸バッファー溶液をHg-xeアーク灯で照射することで高純度のヒドロキシルラジカルを発生させた。ヒドロキシルラジカルとCYPMPOのアダクトのESRスペクトルは非常に安定しており,感度良く観測することができた。インスタントコーヒーは高いヒドロキシルラジカル捕捉活性を有すると結論した。