著者
絹川 正吉
出版者
日本高等教育学会
雑誌
高等教育研究 (ISSN:24342343)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.7-27, 2005-04-30 (Released:2019-05-13)
参考文献数
9

大学学部(学士課程)卒業者に対して与えられる「学士学位」は,いかにして同定されるか,という問題を,リベラルアーツ教育を基軸にして論評する.「学士学位」を同定するための法的根拠は,大学設置基準である.しかし,同法令の内容は,学部(学士課程)のシステムに限定されていて,学部(学士課程)の教育内容にまでは及んでいないから,同法令を「学士学位」の同定根拠にすることは,ほとんど意味がない.そこで,さらに大学基準協会の「学士課程基準」および大学審議会答申「21世紀の大学像」(1998年)の提示する学士課程像とAALE(The American Academy for Liberal Education)のリベラルアーツ教育基準を比較検討することにより,「学士学位」を同定する基準について論ずる.
著者
平川 俊介 案部 雄一郎 山下 珠希 内野 隆一郎 丸田 英基 才本 明秀 石松 隆和
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
pp.687, (Released:2015-05-08)
参考文献数
15

Handgun bullets fired toward the windshield of an automobile sometimes ricochets. In such a case, we must estimate the type of bullet and direction of shooting from the damaged windshield. The purpose of this study is to obtain a method to estimate the fired direction of a handgun bullet from the fractured windshield. We test fired bullets to an automobile windshield with various incidence angles. The thickness of the windshield is slightly different from model to model of the automobiles. In the beginning, we examined the strength of the automobile windshield of various car models. First, we examined the static failure strength of the windshield by an indentation test. In this test, fracture load and the amount of indentation were measured on windshield samples cut from ten models of Japanese automobiles. Next, we test fired a handgun in order to examine the relation between the trajectory of a bullet and the collision marks on the windshield. The cartridges used in these test firings were 38SPL. lead round nose (LRN) bullet and full metal cased (FMC) bullet. In the results of static indentation test for different car models, there was found to be almost no differences in the relationship between fracture load and indentation depth. With the LRN bullet, bullets perforated the windshield when the incidence angle was less than 45 degrees and ricocheted when the incidence angle was greater than 60 degrees. In these cases, a characteristic damage was left on the windshield. On the other hand, FMC bullets of 38SPL. perforated the windshield when the incidence angle was less than 60 degrees and ricocheted when the incidence angle was greater than 70 degrees. Based on these results, we proposed a method to estimate the direction of shooting in criminal cases in which a bullet was fired on an automobile windshield.
著者
鹿野 嘉昭 Yoshiaki Shikano
出版者
同志社大學經濟學會
雑誌
經濟學論叢 = Keizaigaku-Ronso (The Doshisha University economic review) (ISSN:03873021)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.159-186, 2007-09-20

江戸時代の日本では、藩札という事実上の不換紙幣が地方所在の大名領国における日常の交換手段として広く普及していた。この藩札の流通状況に関しては、その大部分は濫発とともに幕末にかけて価値が大きく下落し、領民の生活に悪影響を及ぼしたとされることが多い。仮にそうだったとした場合、明治政府が発行する不換紙幣を誰もが喜んで交換手段として受け入れたとは考え難い。しかし、明治通宝という政府不換紙幣がすんなりと受け入れられたほか、藩札と新貨幣との交換も順調に進んだのである。本稿は、藩札濫発論に問題があるのではないかという視点から、明治初年に作成された各種の資料などを利用して江戸後期における藩札発行高の推移を独自に推計のうえ、貨幣論の立場から改めて藩札濫発論の妥当性について検討しようとするものである。その結果、藩札濫発論あるいは価値下落論のいずれとも支持されえなかった。だからといって、藩札の増発自体を否定するものではない。むしろ、藩札の増発は、徳川幕府が万延の改鋳後に財政赤字補填を目的として採用した通貨増発政策、それに伴って生じた銀相場の大幅な下落や国内一般物価の騰貴に起因するものと観念される。
著者
大森 洋一 荒木 啓二郎
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.18-28, 2010-12-10

形式的な論理に基づいたモデルベース開発は,上流工程からソフトウェア品質の向上に有用なさまざまな数理的検証を可能とする.しかし,システム開発における仕様記述のほとんどは自然言語により行われており,形式モデルへの変換が必要である.我々は,自然言語による要求あるいは仕様の記述から形式的なモデルの要素となるキーワードを抽出し,それらの関連を特定するという,よく知られた手順をより精密に定義し,この手順を効率的にサポートするツールを開発した.自然言語記述と形式モデルを対応づけることによって,解釈の一意性と記述の柔軟性を両立させることができる.開発したツールを活用した検証では,自然言語による仕様記述に対して,用語や表記のゆれといった言語的な品質から,記述不足や多義的な用語といった解釈に関する問題まで幅広く改善できることを示すとともに,より高度な自動変換に向けての課題を明らかにした.
著者
市橋 正彦
出版者
分子科学会
雑誌
Molecular Science (ISSN:18818404)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.A0044, 2011 (Released:2011-06-11)
参考文献数
48

Chemical reactions and pathways involving a metal cluster change dramatically with the cluster size and composition. These dependences originate essentially from the electron correlation of the cluster, and hence are closely related to the geometrical and electronic structures of the cluster. Along with our recent studies, the following subjects are reviewed: (i) reactivity, (ii) geometrical and electronic structures in relation to the reactivity, (iii) reaction dynamics, and (iv) catalytic properties.
著者
こまたん
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.15-25, 2017-11-01 (Released:2020-01-12)
参考文献数
6
被引用文献数
2

神奈川県大磯町照ヶ崎海岸に飛来するアオバトを観察していると、稀に喉から胸にかけて赤い色の個体(以下喉赤アオバト)が観察されている。今回照ヶ崎への飛来調査記録から、喉赤アオバトの飛来状況及び採食している果実の状況確認を踏まえ、喉赤アオバトの発生理由について検討した。 1 2010年~2016年の照ヶ崎でのアオバト飛来調査において、総観察羽数168610に対して喉赤アオバトは177羽観察され、その出現率は0.10%だった。 2 2010年~2016年における喉赤アオバトの飛来は、主に6月~9月の間で特に6月、7月に集中し、9月に少数の飛来が再びある。8月は2012年(34羽)と2014 年(2 羽)を除き飛来はなかった。 3 2010年~2016年の観察時に、性別を識別できた147羽では、オスの比率:73.5% メスの比率: 26.5%だった。 4 2010年~2016年の観察において、喉赤アオバトはすべて成鳥のアオバトで幼鳥の喉赤アオバトは一度も観察はされなかった。 5 2016年の観察回数は他の年の倍以上実施できたので、2016年の記録を用いて詳細な検討を行った。 以下、2016年の記録についての検討結果を示す。 ①観察総数42529に対して喉赤アオバトは24羽観察され、その出現率は0.06%だった。 ②喉赤アオバトの飛来は、6月~9月の間で特に6月、7月に集中し、9月に少数の飛来が再びある。 8月は観察されなかった。 ③性別を識別できた20羽では、オスの比率:90%メスの比率:10%だった。 ④観察総数42529羽のうちオスの比率:39%、メスの比率:61%だった。観察羽数全体のオスに対する喉赤アオバトのオスの出現率は0.11%、同様にメスの出現率は0.01%。オスがメスに対して11倍の出現率だった。 ⑤喉赤アオバトの出現は大きく二つのグループに分かれていた。最初のグループ(第1回目)が6月19日~7月24日まで、2回目の出現が9月12日~9月26日まで。そして幼鳥第1 期が飛来したのが7月18日からだった。幼鳥第1期の観察が集中する7月下旬~9月上旬の間は喉赤アオバト(明らかに喉が赤い個体)は観察されなかった。 6 2010年~2016年の7年間の観察データから、各年度の喉赤アオバトと幼鳥第1 期の飛来は、まず喉赤アオバトが出現し、喉赤アオバト出現終了後に幼鳥第1 期の飛来が増加していくことがわかった。 7 喉赤アオバトの発生理由について複数の候補案を検証し、果汁が赤い色の果実が食べられている時期、および幼鳥が巣立つ時期とに関連が認められた。このことから、照ヶ崎に飛来する喉赤アオバトの正体はアオバト幼鳥の巣立ち~自立するまでの間に親鳥が果実を吐き戻して幼鳥に与える際に潰れた果実の赤い果汁が親鳥の口からこぼれ落ち喉や胸に赤い果汁が付着したものと考えるのが最も妥当な発生理由であった。

1 0 0 0 生産技術

著者
生産技術協会 [編]
出版者
生産技術協会
巻号頁・発行日
vol.5(7), no.42, 1950-07
著者
酒井利信著
出版者
第一書房
巻号頁・発行日
2005
著者
千葉 伸太郎 足川 哲夫 徳永 雅一 森山 寛 林 成彦 宮崎 日出海
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.443-451, 1997-06-01 (Released:2011-07-05)
参考文献数
7
被引用文献数
1

(目的) 小児の睡眠呼吸障害と睡眠時の成長ホルモン (GH) 分泌への影響について検討した.(対象と方法) 1995.7.1~1996.6.30にAdenotonsillectomyを行った患児のうち, いびきのエピソードを認めた24例に術前後で血中ソマトメジンC値を測定した.(結果) 24例中15例で増加, 6例で不変, 3例で減少し, 全体で平均170.46±91.58ng/mlから222.0±114.29ng/mlへと有意に増加を認めた.(結論) アデノイド, 扁桃肥大によるいびきを伴う小児では睡眠呼吸障害のため深睡眠の出現が影響を受けGH分泌が減少し, 手術により睡眠呼吸障害が改善するとGH分泌が増加すると推察した.
著者
新谷 朋子
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

小児の睡眠障害はアデノイド・扁桃肥大が原因となる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS : Obstructive Sleep Apnea Syndrome)が主である。アデノイド・扁桃摘出術によって、口呼吸、いびき、無呼吸、睡眠中の陥没呼吸、胸郭変形、夜尿、起床時の不機嫌、成長発育不良などが著明に改善することが臨床的に経験されるが、近年OSASによる行動異常(多動や攻撃性)、学習障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との関連が指摘されている。終夜睡眠ポリグラフ、簡易検査であるヒプノPTT、行動評価としてアクティウオッチ、OSA-18を用いて、小児OSASの病態について検討した。簡易検査であるヒプノPTTを終夜睡眠ポリグラフに加えることによって、呼吸努力の評価が可能であった。OSA-18では睡眠や日中の行動、保護者の不安が有意に改善して、手術療法の効果が見られた。アクティウオッチは少数例にしか施行できず、24時間の使用が困難で十分な評価は難しかった。