著者
小川 進
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.60-71, 1997 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
4

本研究ではイノベーションでユーザーが重要な役割を演じる条件を「情報の粘着性(stickiness of information)」という視点から明らかにする.「情報の粘着性」という概念は近年,提唱されたものであり,体系的に収集されたデータをベースに議論が展開されることはこれまでほとんどなかった.その意味で本研究は,「情報の粘着性仮説」を概念的議論から経験的調査をもとにした議論へと橋渡しする試みであると言える.また,本稿ではこの仮説から引き出される実践的インプリケーションについても経験的調査の結果をベースに議論する.
著者
松永 真理 日置 弘一郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.4-13, 1996 (Released:2022-07-22)

女性についての組織論的研究は,当初の女性への制度的不平等の現実関心から,現在では組織論のレベルでの問題関心によって論じられる必要がある.制度的に不平等が存在している場合には,それを指摘するだけで十分な問題提起になり得たが,理論的なレベルでは,女性の組織行動を扱う理論枠組みが必要となっている.本論文では実務と理論の双方から,女性の役割モデルとしての家刀自の概念を提出する.
著者
金井 壽宏
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.62-75, 1996 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
1

統合という問題を分化との関連において論じる.個人にせょ,集団にせよ,組織にせよ,そのシステムの分化の程度に応じた統合をはかることが,システムの発展や成長のために要請される.分化と結びつけられることなく統合ばかりを旗頭にするようでは,個人レベルでは独断的で権威主義的なパーソナリティ,組織レベルでは(表現は適当ではないが)ファシズムのような組織を生み出してしまうことになる.本稿では,「分化に応じた統合」という観点から,複数の分析レベルにまたがって議論が成立するようなクロス・レベル・イシューが試論的に展開される.
著者
楠木 建 野中 郁次郎 永田 晃也
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.92-108, 1995 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
11

組織の保有する知識は(1)知識ベース,(2)知識フレーム,(3)知識ダイナミクスという3つのレイヤーの重なりとして把握できる.それぞれの知識のレイヤーは相互に異なる組織能力を提供しており,したがって組織能力は重層的な性格をもっているというのがわれわれの概念的フレームワークの基本的なアイデアである.この論文では上場している日本のすべての製造業企業を調査対象とした大規模サーベイに基づいて日本企業の製品開発における組織能力についての仮説を導出し,われわれの概念的フレームワークのもつ意義とインプリケーションを考察する.
著者
桑田 耕太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.66-79, 1995 (Released:2022-07-22)
被引用文献数
2

長期的視野から,新しい情報技術が,組織の境界や規模,組織構造のデザインに与える影響を検討する.新しい情報技術は組織デザインの基本的制約条件を,従来の不確実性の除去から,多義性の除去へとシフトさせ,専門化の利益と顧客満足度を両立する組織構造を可能にする.また情報技術が高度化すればするほど,組織における管理者の職務は,より人間的・社会的スキルを必要とするものになる.

1 0 0 0 OA 日本中世史

著者
原勝郎 著
出版者
創元社
巻号頁・発行日
1939
著者
上野 昌之
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.153-161, 2020-03-31 (Released:2020-05-21)

アイヌ文化振興法のもとで始まった「伝統的生活空間(イオル)の再生」が行われている。イオル再生事業とはアイヌ民族が古来伝統的な生活の場と考えてきた空間を復元し、アイヌ文化を伝承していこうというものである。その中でアイヌ民族の受け継いできた知恵(ウパシクマ)の継承をめざし、伝承者を育成していこうという事業が白老で行われている。アイヌ民族の儀式がアイヌ語ででき、舞踏や工芸、自然に関する知識など様々なアイヌ文化を伝承し、普及していく人材の育成が行われている。アイヌ民族の若者が、3年間の専門教育を受け伝統的なアイヌ文化を学んでいる。すでに第4期目となり、これまでに優秀な人材が輩出され教育や文化伝承などで活躍している。ここではアイヌ文化伝承者育成事業の学習カリキュラムを分析することでアイヌ民族の伝承活動のあり方、事業の趣旨を明らかにし、後継者の育成の観点からこの事業の持つ問題点と課題を考察する。
著者
Kota Hasegawa Takao Shimizu Naoki Ohashi
出版者
The Ceramic Society of Japan
雑誌
Journal of the Ceramic Society of Japan (ISSN:18820743)
巻号頁・発行日
vol.130, no.7, pp.452-457, 2022-07-01 (Released:2022-07-01)
参考文献数
42
被引用文献数
2

The density functional theory (DFT) was employed to understand the ferroelectric behaviors of wurtzite (WZ)-type aluminum nitride (AlN). To explain the decrease in the coercive field (Ec) due to lattice deformation, the total energy and enthalpy of the strained WZ phase were compared to those of the non-polar (NP) phase, which acted as a transition state during polarity switching. The shrinkage of the c-axis length and elongation of the a-axis length were favorable for reducing Ec. In addition, the calculated residual stress in the transient NP phase was as high as 30 GPa, suggesting that such a high residual stress may be related to the polarity switching behavior under a very high electric field.
出版者
埼玉県立図書館
巻号頁・発行日
vol.第1巻, 1953
著者
新宅 賀洋 原田 理恵 永藤 清子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.401-407, 2009 (Released:2011-10-12)
参考文献数
16
被引用文献数
1

The "Fundamental Law of Food and Nurture" was passed in 2005 and shows the importance of considering regional foods and the culture of dietary habits. Our interest is how to promote food education that adopts regional foods in traditional dishes and in cultivating dietary habits. The history of cultivating strawberries in the Naruo region and the changes in strawberry cultivars was therefore studied. Strawberry production grew from the Taisyo to Showa eras in the Naruo region as a subsidiary farming business. Strawberries were recognized as an indispensable seasonal food for residents in the surrounding areas. The kind of strawberry produced in Naruo is specified and there is a growth plan for the future. We will further study documents on how strawberries were eaten and how strawberry products were made in the Taisho era.
著者
滝沢 翼
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

片頭痛は若年者に好発する慢性頭痛疾患であり、有病率(約10%)、生活支障度ともに高い。片頭痛患者の一部ではストレス、生活習慣、天候の変化など何らかの頭痛発作の誘発因子を有している。本研究では片頭痛の誘発因子の実態について調査を行い、科学的な検討を試みる。最終的には片頭痛患者のQOL向上を目指す。
著者
磯谷 敦子
出版者
公益社団法人におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.340-345, 2015-09-25 (Released:2019-02-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

全国新酒鑑評会出品酒にみられる地域性について検討した.原料米は大部分が山田錦であることから顕著な地域性はみられなかったが,地元の品種など山田錦以外の原料米を使用した出品酒が15%程度あり,金賞を受賞したものもある.酵母はきょうかい1801が全国的に使用されているが,地域で開発された酵母の使用割合も高かった.吟醸香成分(酢酸イソアミルおよびカプロン酸エチル)の濃度は地域による違いがみられ,主に使用酵母の違いに起因すると考えられた.また,オフフレーバーについても,地域間で発生頻度に違いのみられるものがあった.
著者
村田 知佐恵 丸山 綾子 定光 春奈 荒川 清美
雑誌
第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2015-04-21

【背景・目的】新生児は体温調節機能が未熟という特徴があり、集中ケアにおいては体温管理が重視される。さらに、先天性心疾患(以下CHD)児の場合は、心負荷に繋がらない中枢-末梢温度較差を保つ必要があり、繊細な体温管理が求められる。しかし、現時点ではCHDを持つ新生児への体温管理方法について具体的なガイドラインが作成されていない。本研究では、CHDの新生児への集中ケアを担う看護師が、体温管理を行う際にどのような困難を感じているか明らかにすることを目的とした。【方法】看護経験2年以上かつNICU/PICU経験1年以上のNICU看護師5名及びPICU看護師4名に半構成的インタビューを実施した。逐語録から文脈を抽出し、得られたデータを質的に分析した。【倫理的配慮】施設の承認後、研究協力者に参加の自由意志、プライバシー保護、学会発表等を口頭と書面で説明し、同意を得た。【結果】CHDの新生児に対する体温管理で感じる困難として、看護師の語りから、次の3つが導き出された。1.CHD児に多く見られる「末梢が締まり、中枢温が高い状態」に対して、手足を温めながら同時に頭や体幹をクーリングしても、期待する効果が得られないことがある。2.新生児は低体温になりやすいが、クーリング時に体温が「下がり過ぎてしまう」ことがある。3.冷温用品を使わずに環境温で緩やかに体温を下げたいときに、空調等の問題で環境温を調節できないことがある。【考察】看護師は、CHDの新生児の体温管理において、特に体温を下げる場合に困難を感じていることがわかった。温罨法ではインファントウォーマー等の加温器を用いることが可能だが、冷罨法には段階的に調節可能な手段が少ないことも一因と推察する。本研究により、中枢温のみを下げる、下げ過ぎない、緩やかに下げるという3つの視点を基に、適切な中枢-末梢温度較差の範囲を保つための効果的な体温調節方法を確立する必要性が示された。
著者
中村 恵子 田上 不二夫
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.114-124, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究の目的は,うつ症状を伴う不登校生徒に対する別室登校での学校環境調整と,そこで行われた対人関係ゲームの効果の探求である。クライエントは優秀児であったが,小学3年から継続して標的いじめの対象となり,中学2年の夏から不登校に陥り,仮面うつ病と診断された。10か月余にわたる薬物療法と並行して,中学3年8月から別室登校での個別学習支援と1日3時間の対人関係ゲームを行ったところ,急速に症状が改善し,2か月後に寛解した。クライエントは,支援開始後約1か月で症状消失が認められたが,対人関係ゲームの中断で再発し,再開後に症状が消失した。 対人関係ゲームの中断は,その効果を評価する支援チームの教師と,教育活動としての適切性を否定する管理職との意見の不一致によるものであった。しかし,その適切性に対する意見が一致し,ゲームの許可が得られると,症状は消失した。症状の発現は,支援環境を提供する教師への信頼感に影響されていることがうかがわれた。また,対人関係ゲームには,①対人不安の拮抗制止,②仲間や教師との関係形成の促進効果が認められた。別室登校での仲間とのゲーム経験は,学校環境認知をポジティブに再構成し,その適応力を促進した。
著者
田邊 将一 浅井 光輝 宮川 欣也 一色 正晴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A2(応用力学) (ISSN:21854661)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_329-I_338, 2014 (Released:2015-02-20)
参考文献数
18

東日本大震災から数年が経過した今,今後危惧される巨大津波に備えて橋梁の津波対策が積極的に議論されている.実寸大での橋梁流失実験が現実的に困難であるため,数値シミュレーションによる橋梁の流失被害予測が期待されている.本研究では,流体解析分野だけでなく破壊を考慮した固体解析分野での利用も注目されている粒子法を解析手法として採用し,これまで粒子法の中で提案されてきた流体剛体連成解析の定式化を整理した後,主に用いられている2つの定式化(速度ベースと外力ベース)による差異を検証することにした.この際,外力ベースの定式化においては近年開発された高精度な境界処理法を採用した改良法を提案している.最後に,簡単な橋梁流失問題を通して両定式化による結果を比較検討した.