- 著者
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中村 恵子
田上 不二夫
- 出版者
- 日本カウンセリング学会
- 雑誌
- カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
- 巻号頁・発行日
- vol.51, no.2, pp.114-124, 2018-10-31 (Released:2020-01-05)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
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1
本研究の目的は,うつ症状を伴う不登校生徒に対する別室登校での学校環境調整と,そこで行われた対人関係ゲームの効果の探求である。クライエントは優秀児であったが,小学3年から継続して標的いじめの対象となり,中学2年の夏から不登校に陥り,仮面うつ病と診断された。10か月余にわたる薬物療法と並行して,中学3年8月から別室登校での個別学習支援と1日3時間の対人関係ゲームを行ったところ,急速に症状が改善し,2か月後に寛解した。クライエントは,支援開始後約1か月で症状消失が認められたが,対人関係ゲームの中断で再発し,再開後に症状が消失した。 対人関係ゲームの中断は,その効果を評価する支援チームの教師と,教育活動としての適切性を否定する管理職との意見の不一致によるものであった。しかし,その適切性に対する意見が一致し,ゲームの許可が得られると,症状は消失した。症状の発現は,支援環境を提供する教師への信頼感に影響されていることがうかがわれた。また,対人関係ゲームには,①対人不安の拮抗制止,②仲間や教師との関係形成の促進効果が認められた。別室登校での仲間とのゲーム経験は,学校環境認知をポジティブに再構成し,その適応力を促進した。