- 著者
-
武藤 香織
- 出版者
- 科学技術社会論学会
- 雑誌
- 科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.129-139, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
- 参考文献数
- 32
- 被引用文献数
-
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本稿では,いわゆる「遺伝子検査」の日本国内の規制状況を論じる.「遺伝子検査」の規制には2 つの省が関与する.厚生労働省は,診断的検査(発症前遺伝学的検査を含む)を所掌する.健康・医療戦略の閣議決定(2014)までゲノム医療が推進されなかったため,保険収載済みの検査は74 項目に留まる.経済産業省は,DTC検査や診療所で販売される消費者向け検査を所掌するが,その質は規制せず,業界団体が自主的に管理する.だが,これら2 つの「遺伝子検査」を消費者が区別することは困難であろう.米国では,食品医薬品局(FDA)が全ての「遺伝子検査」を所掌し,上市前承認の要否判断にはリスク別アプローチを採用した.FDAの方針に則ると,日本の消費者向け検査の大半は販売禁止となるが,一部の発症前遺伝学的検査は消費者への直接販売が可能だ.日本の原則なきデマケーションを見直し,消費者が「遺伝子検査」のリスクを理解できる基本方針を示すべきである.