著者
仲小路 博史 鬼頭哲郎 重本 倫宏 寺田 真敏 石山 智祥
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.2-13, 2011-01-15

近年のP2P型ファイル共有ソフトウェアには通信自体の秘匿性を高めるための中継機能や,通信内容を隠すためのDiffie-Hellman鍵交換や,サービスポートを通信ごとに変更する機能が備わり,従来のIDSなどを使った手法では,調査対象とする通信がP2P通信であるかどうかを特定することが困難となってきた.本論文では国内で高いシェアを持つP2P型ファイル共有ソフトウェアWinnyの発展系であり,いまだ有効な対策が確立されていないWinnypを対象に,ディープ・パケット・インスペクション方式による通信検知機能の実装と性能の評価を行う.さらに,GPGPU(CUDA)に本機能を実装することによって,現在,コンシューマ向け接続サービスの中でも最も高速な1Gbpsのフルワイヤスピードにも適用可能なWinnyp通信検知装置を実装し,1,020台のノードによって構成される実験環境を用いて有効性を示す.
著者
垂水 浩幸
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.690-693, 2012-06-15

香川大学工学部信頼性情報システム工学科でJABEE受審した取り組みとその間の教育改善について述べる.学科では創立以来5年毎に教育プログラムの改訂を行ってきたが,学科の扱う分野が情報系だけでなく電子通信工学系,信頼性工学にもわたっているため,JABEE受審した最近の2つの教育プログラムはいずれも複数の学習・教育目標を学生が選択できる仕組みを導入している.また演習科目の運用や初年次教育の工夫についても述べる.
著者
西澤 無我 鳥居 順次 滝澤 順
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.678-683, 2011-05-15

増え続けるデータを格納するためのデータベースとして,近年NoSQL(Not only SQL)データベースが注目されている.既存のRDB(リレーショナルデータベース)は多くのビジネスニーズの適切な選択肢ではあるが,爆発的に増え続けるデータを格納するのには不満が残る.楽天株式会社では,NoSQLデータベースの一種であるキーバリュー型のデータベースROMAを研究開発しており,増え続ける大量のデータへのアクセスに利用している.本稿ではROMAの概要と仕組み,更に社内でのROMAの利用事例について詳述する.
著者
鈴木 智也
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.70-78, 2009-02-20

自然界や社会に存在するネットワークには,スモールワールド現象を示すものが数多く存在する.スモールワールド現象とは,各ノードが局所的にクラスタ化している割には他の遠いノードと短いステップでアクセス可能という特徴を持ち,情報伝達のしやすさに関係している.この性質は Watts らによって,クラスタ係数と平均最短経路長により定義されている.平均最短経路長はダイクストラの方法を用いればネットワークの種類を問わず算出できるが,クラスタ係数においては有向グラフの場合,前処理なしでは計算できない.そこで本研究では,情報伝達の仕方を考慮することで前処理の方法を検討し,有向グラフでも適切にクラスタ係数を計算する手法を提案する.その妥当性を検証するために,Watts らが提案した Small-world ネットワークモデルを重み付き有向グラフに拡張し,本提案手法を適用した.さらに,今まで調査されてきた線虫の神経網などの実ネットワークについて本提案手法を適用したところ,従来よりも顕著にスモールワールド現象が確認された.
著者
山腰諒一 青木 工太 長橋 宏
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.13(2007-CG-126), pp.1-6, 2007-02-19

本稿では、CGアニメーションなどに用いられるモーションキャプチャのデータからユーザが意図するような新たな動作を生成するシステムの提案について述べる。提案手法では、確率モデルを基本とした、Gaussian Process Latent Variable Models (GPLVM) を用いて、高次元空間の複数の動作データを同時に低次元化する。さらにユーザが低次元空間で高次元の姿勢を直感的に理解するために、基本姿勢との差や姿勢の位置などを低次元空間で視覚化する。それらを用いてユーザが意図する情報を対話的に与えることにより、所望の動作を生成する。
著者
rankingloid
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2012-MUS-94, no.5, pp.1-6, 2012-01-27

YouTube やニコニコ動画等の動画共有サイトには、サイトに投稿された動画をランキング形式で紹介するランキング動画が多数存在する。それらのランキング動画はサイトのユーザによって編集され、投稿されており、多大な労力が費やされている。本稿ではそのようなランキング動画を全自動で生成するためのシステムについて述べる。また、そのシステムを用いて、著者が 「日刊 VOCALOID ランキング」 を投稿した経験についても述べる。
著者
羽生 善治
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, 2012-05-15
著者
池田和史 服部元 松本一則 小野智弘 東野輝夫
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1308-1315, 2011-06-30

近年、TwitterのようなブログやWeb掲示板などに投稿された商品やテレビ番組などに対する口コミ情報を分析してマーケティング等に応用する評判解析技術に注目が集まっている。これらは手軽い情報発信が可能なため、新鮮かつ多数の意見を即座に収集するツールとして、その活用は大きな可能性を持っている。一方で、評判は投稿者の年齢や性別、趣味などのプロフィールに応じて異なることが多いが、ブログや掲示板には投稿者の年齢や性別が記載されていない場合が多く、投稿数や平均的な意見などの表面的な情報しか抽出できず、プロフィールごとの意見を抽出できないことが課題であった。この問題を解決するため、著者らはTwitter上の口コミ投稿者の日常的な投稿内容を解析することで、年代、性別、居住地域などのプロフィールを推定する技術を開発した。本技術を利用することで、ネット上の口コミ情報をプロフィールごとに分類、集約することが可能となり、商品の改善やテレビ番組の企画などに生かすことが可能となる。性能評価実験の結果、提案手法の汎用的な推定精度は性別で88.0%、年代で68.0%、居住地域で70.8%であり、視聴率測定などへの応用を想定したプロフィール分布誤差の評価では、分布に偏りがある場合でも性別で8.8%、年代で12.4%、居住地で14.0%と実利用に十分な精度であることが示された。
著者
川合史朗
雑誌
デジタルプラクティス
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.80-87, 2011-04-15

小規模で開発リソースも少ないオープンソースプロジェクトにとって,日本国外への展開は「もっとユーザや開発リソースが増えてから」という,将来のステップのように感じられるかもしれない.しかし,ニッチなターゲットを相手とするソフトウェアならば,対象を国内に限ってしまうことはただでさえ少ないユーザをさらに限定することになる.むしろ最初から国際的に展開しておいた方がプロジェクトの持続に必要なユーザを集めやすい.本稿ではオープンソースのScheme処理系Gaucheの10年間にわたる開発経験から,少ないリソースで国内外にユーザを得る,維持可能な戦略について論じる.
著者
神薗 雅紀 西田 雅太 小島 恵美 星澤 裕二
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2011 論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.3, pp.474-479, 2011-10-12

近年の不正サイトは,マルウェアなどにより自動生成されたポリモーフィックなJavaScriptが利用され,他のURLに誘導する手法が多くみられる.著者らはこのようなJavaScriptの動的解析システムを開発したが,条件分岐やタイマー処理による遅延処理,さらにはイベント処理などにより期待した結果が一部得られないという動的解析技術の課題も存在した.そこで本稿では動的解析技術を用いずJavaScriptを分析するための新たな特徴点として,抽象構文解析木を用いる手法を提案する.そして,本手法の検証として,抽象構文解析木を用いて自動生成されたポリモーフィックなJavaScriptの検知および分類を行う.
著者
湯本 紘彰 森 辰則 中川 裕志
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.86(2001-NL-145), pp.111-118, 2001-09-10

本論文では,専門用語を専門分野コーパスから自動抽出する方法の提案と実験的評価を報告する。本論文では名詞(単名詞と複合名詞)を対象として専門用語抽出について検討する。基本的アイデアは、単名詞のバイグラムから得られる単名詞の統計量を利用するという点である。より具体的に言えば、ある単名詞が複合名詞を形成するために連接する名詞の頻度を用いる。この頻度を利用した数種類の複合名詞スコア付け法を提案する。NTCIR1 TMREC テストコレクションによって提案方法を実験的に評価した。この結果、スコアの上位の1 400用語候補以内においては 単名詞バイグラムの統計に基づく提案手法が優れていた。
著者
辰巳 直也 森勢 将雅 片寄 晴弘
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2010-EC-15, no.17, pp.1-6, 2010-03-05

Vocaloid 「初音ミク」 の発売以来,歌唱合成に対する注目が高まりつつある.Vocaloid では,メロディーと歌詞を入力することにより歌声を生成できる.また,表情パラメタを調整することにより様々な表情を付与することができる.しかし,より人間らしい歌声にするには,表情パラメタの調整を細かく設定することが必要なため,非常に煩雑で時間がかかる.本研究では,あらかじめ,特定の歌唱者 (GACKT) の歌い方にみられるビブラートやポルタメントといった音量,音高等の特徴を表情パラメタとして抽出しておき,それらを Vocaloid の出力に付加することで,より,当該の歌唱者らしい歌い方を実現するような GACKT レゾネータの開発を目指す.
著者
森田 憲一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.496-502, 2012-04-15

可逆的な計算システムというのは,そのシステムのどの状態も,直前の時刻にとり得る状態を高々1つしか持たないようなシステムのことをいう.一見すると些細でつまらない性質のように見えるこの制約が物理的可逆性(時間の逆方向にも同じ法則が成立つという性質)と密接に関わっており,また計算におけるエネルギー消費の問題を考えるときに重要な役割を果たすのだ,ということをLandauer~(1961)が指摘して以後,この計算のパラダイムが注目されるようになった.本解説では,可逆的な計算機構が可逆的な論理素子によって,さらにはそれが可逆的な物理的システムによってどのように構成できるのかという問題を,理論的な可逆計算モデルに基づいて論じる.特に,可逆コンピューティングの世界にどのような新しい設計のアイディアがあり得るのかを例を用いて説明する.
著者
井田 健太 坂主 圭史 武内 良典 今井 正治
雑誌
研究報告システムLSI設計技術(SLDM)
巻号頁・発行日
vol.2012-SLDM-155, no.27, pp.1-6, 2012-02-24

本研究では,シミュレーション精度をシミュレーション中に変更可能なプロセッサ・シミュレータを提案する.提案プロセッサシミュレータは,シミュレーション中に外部のハードウェアモデルより割り込みが要求されたときに,シミュレーション精度を命令精度からサイクル精度に変更することによりリアルタイムシステムで重要な割り込みの応答サイクル数を,シミュレーションの速度を落とすこと無く評価することができる.実験では,提案シミュレータの,外部のモデルからの割り込みに対する応答と,シミュレーション速度を計測することにより,本手法がシミュレーション速度を犠牲にせずに割り込みの応答サイクル数を計測できることを確認した.
著者
太田 淳 三輪 忍 中條 拓伯
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.115-132, 2011-05-12

Android 端末では,Java プログラムは,Dalvik バイトコードと呼ばれる独自のバイトコードに変換され,VM を介して実行される.VM による実行は時間がかかるため,Java バイトコードを携帯端末で実行する場合は,ハードウェア・アクセラレーションがよく行われる.一方,Dalvik バイトコードの場合は,まだ歴史が浅いため,その高速化に関する研究は十分でない.そこで我々は,携帯端末における Dalvik バイトコード実行の高速化機構として,Dalvik アクセラレータを開発することにした.バイトコードの各オペランドはメモリ上に存在するため,単純にアクセラレータを実装すると,多数のメモリ・アクセスが発生してしまう.この問題に対し,物理レジスタを最大限活用することでメモリ・アクセスを削減する機構を提案する.本機構により,大部分のメモリ・アクセス命令を削減できることが分かった.
著者
安倍満 吉田悠一
雑誌
画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2011)論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.1682-1689, 2011-07-20

本論文では,高速に計算可能であり,128ビット程度のバイナリコードで表現可能な局所特徴量Compact And Real-time Descriptors(CARD)を提案する.CARDはSIFTやGLOHと同様に,勾配ヒストグラム特徴量の一種である.提案手法は,(1) ルックアップテーブルによる高速な局所特徴量抽出,(2) Supervised Sparse Hashing(SSH)による高速なバイナリコード化の2段階から成る.本手法では,2種類のルックアップテーブルを用いることで,1つのキーポイントあたりSIFTの約16倍の速度で局所特徴量を計算可能とした.また,抽出された特徴量をハッシュ関数によりバイナリコードに変換することで,メモリ消費量を低減した.ここで用いるハッシュ関数は疎行列の掛け算により構成されているため,高速にバイナリコードへ変換が可能である.実験により,CARDは実行速度,メモリ消費量の二つの点において,既存の手法よりも優れていることを示した.
著者
西山 正紘 北原 鉄朗 駒谷 和範 尾形 哲也 奥乃 博
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.15(2007-MUS-069), pp.31-36, 2007-02-23

本稿では、アクセント構造およびムードの一致に基づいて、音楽と映像の調和の度合い(調和度)を計算する枠組を提案する。一般に、音楽と映像の調和要因としては、時間的なアクセントの一致による時間的調和と、ムードの一致による意味的調和の2つが存在する。従来の研究では、それぞれの要因のみしか扱っておらず、両要因を統一的に扱った事例は存在しない。そこで本稿では、音楽と映像の調和度を、アクセント構造の一致に基づいて定量化した調和度とムードの一致に基づいて定量化した調和度の重み付き線形和で表現する。アクセント構造の一致は音楽と映像それぞれの特徴量系列間の相関に基づいて、ムードの一致はそれぞれの特徴部分空間内における相互の特徴量の連想に基づいて定量化する。実映像作品を対象とし、本手法の有効性を実験により評価した。
著者
原田 邦彦 佐藤 嘉則
雑誌
研究報告コンピュータセキュリティ(CSEC)
巻号頁・発行日
vol.2010-CSEC-50, no.47, pp.1-7, 2010-06-24

k-匿名化手法は,個票データから同一タプルが k 件以上存在することを保証したデータを生成するプライバシ保護手法である.Sweene1) を代表とする既存手法は入力のデータとは別に一般化階層木を入力として与える必要があった.また,匿名化前後のデータ間の歪度を一般化階層木の深さを基準とした指標で与えていた.この指標では,データの失う情報量を正しく扱えない場合がある.本稿では,各属性の属性値の頻度情報を取得して一般化階層木をデータから自動生成する方法と,一般化を行う際のデータの歪度を頻度分布を用いた情報エントロピーで評価する方法を提案する.
著者
秋山 大輔 細川 和宏 安倍 広多 石橋 勇人 松浦 敏雄
雑誌
研究報告インターネットと運用技術(IOT)
巻号頁・発行日
vol.2010-IOT-8, no.9, pp.1-6, 2010-02-22

本稿では,多数の 2 次元位置情報を P2P ネットワークを用いて分散管理する一手法を提案する.提案手法では,2 次元平面を Z 曲線を用いて分割し,各領域を一つのピアが管理する.管理領域内のデータ数が一定数を越えると領域を分割することでピアの負荷を一定に保つ.範囲検索のためには構造化オーバレイネットワークの一種である Skip graph を用いる.範囲検索に要するホップ数を削減するために,領域の分割方法を工夫している.提案手法はシミュレーションにより範囲検索に要するホップ数と管理に必要なノード数を評価した.