著者
伊藤 晶文
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 自然科学編 (ISSN:03896692)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-8, 2006-02-28
被引用文献数
3

仙台平野の浜堤列は従来4列に大別されるが,最も海側に位置する第III浜堤列は,さらに細分できる。本研究では,細分した浜堤列の形成時期について,放射性炭素年代測定,テフラおよび史跡の分布状況に基づいて推定した。さらに,浜堤列の分布や形成時期から,歴史時代における海岸線の変化を考察した。第III浜堤列は,陸側から順に,第IIIa浜堤列,第IIIb浜堤列,第IIIc浜堤列に細分され,それぞれの形成開始時期は,約1,300cal.BP,約1,100cal.BPおよび約350cal.BP以前である。歴史時代以降の海岸線の変化には地域差があり,阿武隈川以南の地域において海岸線が顕著に前進した。第IIIa浜堤列形成期には仙台平野全域で海岸線が急速に前進しており,その要因として,流入河川および平野南方からの土砂供給量の増加,もしくは供給される土砂の質の変化が考えられる。
著者
鎌倉 やよい 坂上 貴之
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.2-13, 1996-05-25
被引用文献数
3

本研究は開胸術後の順調な回復のために必要とされる効果的な最大吸気練習プログラムの開発のために計画された。プログラムは被験者間多層ベースライン法でなされ、3つのフェーズからなっていた。ベースラインのフェーズでは、被験者は吸気練習器具であるトリフローの使用法について病棟で与えられる通常の教示を受け、吸気練習を自己記録するように言われた。第1の介入フェーズでは日々の吸気回数と吸気量の結果がグラフでフィードバックされ、もし前日の記録よりも上回っていれば言語的賞賛が与えられた。第2の介入フェーズでは、第1のものに加えて、この練習の手術への役割についての新しい情報が与えられた。吸気回数の目標値はベースラインでは20、第1介入フェーズでは50、第2介入フェーズでは80というようにあげられた。19人中、14人が介入によってベースラインのフェーズから第2介入フェーズヘとその吸気量を増加させた。増加しなかった5人は、ベースライン時においてその吸気量を急激に増加させたため、吸気行動を維持できなかった。
著者
奥風 栄弘
出版者
日本印度学仏教学会
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.969-966, 2010-03-20
著者
道又 元裕
雑誌
第16回日本クリティカルケア看護学会学術集会
巻号頁・発行日
2020-06-19

侵襲によって組織へのダメージが生じると、そのダメージが末梢組織の受容体や末梢神経への刺激となって、末梢からの刺激や興奮が中枢神経へ伝達されます。ダメージを受けた組織や周辺組織では、細胞膜酵素の活性化が起こり、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの種々のchemical mediatorが遊離され、血管透過性亢進(血管内皮細胞間隙の膨化開大)をはじめとして平滑筋収縮、血管拡張、腺分泌促進などをもたらします。これらの変化が刺激となって細胞膜酵素の活性化が一層促進されるとともに炎症性サイトカインがアラキドン酸カスケードを活性化して様々な生理活性を有するエイコサノイド産生します。一方、同じカスケードにリポキシゲナーゼが作用し、ロイコトリエンを産生させます。他方、アラキドン酸カスケードは、血小板機能を凝集するPAFをも産生し、産生されたPAFがアラキドン酸カスケードを活性化します。PAFは血小板凝集のほか、気管支平滑筋の収縮や気道過敏性の亢進、また、心拍出力の 低下と血管透過性亢進などの作用を持つため、血栓症、気管支喘息などのアレルギー疾患、エンドトキシンショックのメディエータでもあり、種々の受容体拮抗薬が治療薬として開発されてきています。ダメージを受けた組織からはカリクレインが遊出し、血清タンパクの一部が分解されブラジキニンが生成されます。ブラジキニンは、血管内皮細胞収縮を起こし、間隙を開大させ血管透過性亢進を引き起こす他、発熱や痛み、一酸化窒素合成酵素(NOS)を活性化させます。NOSは血管内皮細胞内でアルギニンから血管平滑筋に対して強い弛緩作用を有する(血管拡張)NOを産生します。NOは敗血症性ショック時の血管拡張やニトログリセリン製剤の血管拡張の機序でも知られています。アラキドン酸カスケードの活性は、炎症反応に強く関与しており、発熱、痛み、血管拡張(特に細動脈)、血管透過性亢進、凝固・線溶系の不調和、脂肪代謝、Na+-K+チャネルの変調、サイトカインの生成と抑制、好中球などの免疫細胞の活性と不活化、好中球の化学遊走性などをもたらします。末梢神経の刺激は、交感神経の興奮を引き起こし、神経伝達物質であるカテコールアミンがストレスホルモンとして血中に放出されます。その結果、以下に示すようなそれぞれが有する生物活性を示し、優位な作用が標的組織・器官に強く表れます。各種chemical mediatorの遊離は、ダメージ部位を中心とした局所におけるマクロファージ)、顆粒球(特に好中球)、血管内皮細胞などを刺激し、それぞれから免疫情報伝達物質であるサイトカインを分泌産生します。そのサイトカインネットワークが侵襲時における急性相反応を大きく修飾しています。炎症部位では、サイトカインに活性化されたマクロファ-ジ、好中球、補体が、さらには、それら自身が炎症性サイトカインやNOを分泌します。その一方では、炎症性サイトカインの産生によって、細胞性免疫(リンパ球群)の活性は抑制されます。炎症性サイトカインは、血液循環によって全身にデリバリーされ、各臓器の血管内皮細胞に存在する転写因子であるNF-κBを活性化し、接着分子(ligand)を発現させ(NF-κBがサイトカインの発現を増加させる)、免疫細胞は、接着因子を介して血管外へ遊走する。その結果、手術部位を中心とした局所の炎症反応が惹起され、それは数時間後に全身へと波及していき、SIRSの状態を形成します。このような生体反応の仕組みの中で、最近における話題や注目すべき事柄について若干の示唆を含めて述べさせて頂きます。
著者
阿部 猛
出版者
東京教育大学
巻号頁・発行日
1966

博士論文

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著者
阿部學監修
出版者
学習研究社
巻号頁・発行日
1984
著者
一色 大悟
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部インド哲学仏教学研究室
雑誌
インド哲学仏教学研究 (ISSN:09197907)
巻号頁・発行日
no.19, pp.73-89, 2012-03

Sarvāstivādins assert all factors (dharma) exist in all times. In their ontology, the way factors pass through the present time seems problematic if they "exist" in the three times : future, present, and past. To answer this problem, the Abhidharma scholar Vasumitra defined the present time as the time when factors have their activities (kāritra). Although his theory was accepted by Sarvāstivādins in general, it was still unclear what he meant by the word "activity". Therefore, another Abhidharma scholar, Saṃghabhadra, the author of *Nyāyānusāriṇī, redefined it "the power to project its own effect (*phalākṣepaśakti)" that all conditioned (saṃskṛta) factors must have in the present. Modern scholars such as G. Sasaki explained *phalākṣepa as phalapratigraha, an ability that a conditioned factor fixes itself as a cause of its own effect. Contrary to this explanation, T. Fukuda reasoned that not every phalapratigraha is *phalākṣepa, and concluded that *phalākṣepa corresponds only to those phalapratigraha affecting the effect that arises after its cause arose ("*phalākṣepa≠phalapratigraha theory"). The present article reconsiders Fukuda's hypothesis. By this reconsideration the article clarifies that his understanding unconsciously presupposes a few notions Saṃghabhadra does not accept. From this discussion, it is concluded that every phalapratigraha is *phalākṣepa which Saṃghabhadra regarded as deciding the present.
著者
大島 誠 杉浦 実 上田 佳代
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.114-120, 2010-03-15
参考文献数
22
被引用文献数
6

軽度脂質代謝異常を有する肥満男性26名に対し,β-クリプトキサンチンを強化させたウンシュウミカン果汁(強化果汁介入群)と通常量のβ-クリプトキサンチンを含有するウンシュウミカン果汁(対照果汁介入群)を1日160g,8週間連続摂取させ,介入前と介入4週間および8週間後の血清β-クリプトキサンチン濃度,脂質代謝および肝機能指標値の変化について検討した.<BR>果汁投与後の血清β-クリプトキサンチン濃度はいずれの群においても介入前に比べて有意に上昇し,この上昇は強化果汁投与群においてより顕著であった.強化果汁介入群における8週後の血中ALT値およびγ-GTP値は4週後に対して有意に低下していた.血清β-クリプトキサンチンと肝機能指標値との関連について横断的な解析を行ったところ,いずれの肝機能指標値も介入前には血清β-クリプトキサンチン濃度と有意な相関は認められなかったが,介入4週および8週後ではそれぞれ有意な負の相関が認められ,これらの負の相関は8週後においてより顕著であった.一方,強化果汁介入群では,投与8週後のHDLコレステロール値およびLDLコレステロール値の低下がみられたが,対照果汁介入群とは有意な差は認められなかった.<BR>これらの結果から,β-クリプトキサンチンを豊富に含むウンシュウミカン果汁の摂取は肝機能障害の改善に有効である可能性が示唆された.
著者
和栗 珠里
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学人間科学 (ISSN:09170227)
巻号頁・発行日
no.39, pp.29-56, 2010-12-15

The 16th century Venice is generally conceived to be oligarchic. Under the aristocratic regime, influential noble families weaved up kin-group network and tried to devide among themselves important state offices. But it remains unclear which specific families were the most `influential'. This paper aims at solving this question through the analysis of the Procuratori di San Marco (PSM abbr.). The PSM were one of the most important state offices. They were originally no other than the custodians of the treasury of the St.Mark's Basilica. But because those appointed to the PSM were considered the most wise men in Venice, many people entrusted their property and legacy to them. Not only the individuals but also the government utilized the PSM as depository of various incomes. From 1454 the PSM could sit and vote in the Senate, from 1496 could hold the office of Savio Grande concurrently, from 1523 could sit and vote as zonta members in the Consiglio dei Dieci. Thus by the 16th century, the PSM had come to wield a tremendous power in every way: financially, politically, socially and culturally. For the noble families, having more than one PSM member was a great source of honor and profit. The 16th century made it easier for rich families to obtain the PSM position by a kind of `simony' of the state offices. One notes that in such cases very young nobles, even in their twenties and obviously with little experience in the political world, were elected to the PSM. It may seem strange because the PSM were second only to the Doge (Prince) in the hierarchy of the Venetian Republic and the position for eldest members of the aristocracy. But it becomes understandable if we take into consideration that the PSM were, different from all the other offices but the Dogeship itself, lifetime position which its holders could keep as long as they lived. In other words, it was family tactics to put a young member in this position in order to stay close to the core of the power as long as possible. Analyzing all the PSM elected in the 16th century, we find that five families, namely, the Grimani, the Contarini, the Priuli, the Mocenigo and the Venier, occupied about 30 percent and with other five, namely, the Corner, the Giustinian, the Cappello, the Lezze and the Morosini, the top ten families occupied more than 45 percent. And a genealogical study reveals intricate matrimonial relations among them. In this way, we can identify the most influential families of the 16th century Venice. However, we must not forget that the Venetian Republic was not totally oligarchic. Not a few PSM who didn't belong to these families were also great leaders of the time. For a further understanding of the early modern Venice, more detailed prosopography will be required.
著者
石井 聡
出版者
筑波大学
雑誌
筑波大学技術報告 (ISSN:09162674)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.17-21, 1995
著者
金沢 和樹
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, 2008-04-15

フコキサンチンは,炭素数40のイソプレノイド構造を骨格とするテトラテルペン類で,自然界に600種類余り存在するカロテノイドの一つである.カロテノイドのうち,化学構造に酸素を含むものをキサントフィルと細分類するが,フコキサンチンは褐藻が特異的に生産するキサントフィルで,1914年に発見,1969年に化学構造が決定された(図1).よく知られているキサントフィルに鮭のアスタキサンチン,マリーゴールド色素のルテイン,柑橘のβ-クリプトキサンチンなどがあり,いずれも鮮やかな黄色から橙色なので,古くから食品の着色料として利用されているが,フコキサンチンも鮮橙色である.<BR>褐藻は日本人が好んで食する海藻である.フコキサンチン含量は,生褐藻の場合,新鮮重100gあたりおおよそ,コンブ19mg,ワカメ11mg,アラメ7.5mg,ホンダワラ6.5mg,ヒジキ2.2mgである.日本人は干し海藻にすることが多いが,乾物にするとコンブ2.2mg,ワカメ8.4mg,他は検出限界以下となる.つまり酸化に不安定であるが,これは化学構造にアレン結合があるためと考えられている.褐藻を餌とする貝類のカキやホヤもフコキサンチンを多く含み,さらにアレンが安定なアセチレンとなったハロシンチアキサンチンを含んでいる.<BR>注目を浴びているフコキサンチンの生理機能の一つは発がん予防作用<SUP>1)2)</SUP>である.フコキサンチンがヒト前立腺がん細胞にアポトシースを誘導する作用は,カロテノイド類の中ではもっとも強い.また,結腸がんモデル動物に経口投与すると,前がん病変形成を有意に抑えた.作用機序は,p21<SUP>WAF/Cip1</SUP>というタンパク質の発現を促すことで,その下流のレチノブラストーマタンパク質をリン酸化するサイクリンDとキナーゼ複合体の活性を阻害し,レチノブラストーマタンパク質からの転写因子E2Fの遊離を抑えることであった.結果として,腫瘍細胞の細胞周期をG<SUB>0</SUB>/G<SUB>1</SUB>期で停止させ,腫瘍の増殖を抑えた.<BR>もう一つは宮下和夫らによる興味深い発見,肥満予防効果<SUP>3)</SUP>である.食餌フコキサンチンは,白色脂肪細胞に,ミトコンドリア脱共役タンパク質1の発現を促す.このタンパク質は,本来はATP生産に用いられるミトコンドリアの電気化学ポテンシャルを体熱として放出させる.結果としてフコキサンチンは,脂肪細胞の脂肪を体熱として消費させることで肥満を防ぐ.<BR>フコキサンチンは栄養素ではなく非栄養素である.栄養素は体内に加水分解吸収されて肝臓でエネルギー代謝されるが,非栄養素は加水分解吸収後,まず小腸細胞内で代謝を受ける.小腸細胞内代謝で官能基がグルクロン酸や硫酸抱合を受け,生理活性を示さない化学形態となり,多くは管腔側に排泄さる.したがって,非栄養素がヒト体内で機能性を発揮するか否かは,小腸細胞内でどのような代謝を受けるかによる.フコキサンチンの体内吸収率は数%であるが,小腸細胞吸収時に図1の右環のアセチル基がアルコールのフコキサンチノールに加水分解されるだけで体内吸収される.体内では一時的に脂肪細胞にとどまり,数十日ほどの体内半減期で尿に排泄される.また一部は肝臓で,左環がアマロシアザンチンAに代謝される.長尾昭彦らによると,この2つの代謝物が生理活性の本体である.フコキサンチンを生昆布量に換算して日に100kgを4週間与えても,その動物に異常は認められていない.他のキサントフィルにも過剰摂取毒性は今のところ報告されていない.フコキサンチンなどのキサントフィル類による,ヒトの生活習慣病予防に大きな期待が寄せられている.