著者
石原 康成 堀江 翔太 立原 久義
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101316, 2013

【はじめに、目的】腱板断裂では,上肢挙上の際に,肩甲上腕関節における求心位保持能力の低下と,それに伴う肩甲胸郭関節,胸郭運動の異常が報告されている.したがって,腱板断裂患者に対して理学療法を行う際は,肩甲上腕関節のみならず,肩甲胸郭関節や胸郭にもアプローチする必要がある.しかし,腱板断裂における肩甲骨の位置異常と胸郭運動の特徴については明らかになっていないため,機能評価と効果的に肩甲胸郭関節や胸郭へアプローチする手技の確立を困難にしている.本研究の目的は,腱板断裂における肩甲骨の位置異常と胸郭運動の特徴を明らかにすることである.【方法】対象は,当院で腱板完全断裂と診断され鏡視下腱板修復術を施行された24 名(以下RCT群)(男性14 名,女性10 名,平均年齢69 歳,49 〜 86 歳)と,肩関節に既往のない40 〜60 代の健常者16 名(以下健常 群)(男性8 例,女性8 例,平均年齢51 歳,43 〜 64 歳)である.これら2 群の,上肢挙上に伴う肋骨・胸椎運動と下垂位での肩甲骨の位置を比較し腱板断裂における肩甲骨位置と胸郭運動の特徴を検討した.測定方法は,肩下垂位と130°挙上位の2 肢位で胸部3 次元CTを撮影し,骨格前後像と側面像にて肋骨・胸椎と肩甲骨の位置を評価した.肋骨の動きは,肋椎関節を基準として肋骨先端の上下方向への移動距離を測定した.胸椎の動きは,第7 胸椎を基準として胸椎伸展角度を測定した.肩甲骨の位置は,内外転方向の位置として,脊椎から肩甲骨内側縁の距離(Spine Scapula Distance,以下SSD),挙上下制方向の位置として,肩甲骨下角の高さを,回旋方向の位置として肩甲棘の傾斜を測定した.統計学的検討にはMann-Whitney's U 検定を使用した.【倫理的配慮、説明と同意】病院倫理委員会の承認を得た上で,本研究の目的とリスクについて被験者に十分に説明し,同意を得た.【結果】RCT群の下垂位から130°挙上位までの肋骨移動距離は,挙上方向へ平均5.8mmであった.最大は第7 肋骨の9.7mmであり,第7 肋骨から離れるに従い移動距離は小さかった.健常群では挙上方向へ平均5.2mmであった.最大は第5 肋骨の9.4mmであり,第5 肋骨から離れるに従い移動距離は小さかった.2 群を比較すると,第9,11 肋骨でRCT群の肋骨移動距離が有意に大きかった(p<0.05).すなわち,腱板断裂により肋骨運動の中心が尾側にシフトしていた. RCT群の下垂位から130°挙上位までの胸椎伸展角度は平均2.4°であった.健常群では平均3.8°であり差はなかった.RCT群における下垂位でのSSDは平均60.3mm,健常群では平均68.6mmであり,RCT群で有意にSSDが小さかった(p<0.01).下角の高さと,肩甲棘の傾斜には差がなかった.すなわち,腱板断裂により肩甲骨は内転位に変化していた.【考察】本研究より,上肢挙上に伴う肋骨運動は,健常者では第5 肋骨を中心に挙上するのに対し,腱板断裂患者では第7 肋骨中心に挙上することが明らかとなり,腱板断裂により肋骨の運動中心が尾側へシフトすることが明らかとなった.また,腱板断裂に伴い肩甲骨の位置は内転位に変化することが明らかとなった.従来の報告によると,腱板断裂に伴い肩甲骨他動運動と肋骨運動が制限される可能性が指摘されている.また,肩甲骨位置異常は,肩甲骨周囲筋のバランス異常の存在を示唆している.この事実は,肩甲骨周囲での胸郭運動が制限されていることを示しており,これを代償するために,胸郭運動の中心が尾側へ移動した可能性が考えられた.【理学療法学研究としての意義】腱板断裂が、肩甲骨の位置と肋骨運動パターンに影響を与えることが明らかとなった.肩甲上腕関節のみならず,肩甲骨位置や肋骨運動パターンを考慮することで,より有効な理学療法を提供できる可能性がある.
著者
尾崎 尚代 千葉 慎一 嘉陽 拓 西中 直也 筒井 廣明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101619, 2013

【はじめに】古くから諸家によって肩関節機能に関する研究がなされてきている。腱板機能訓練に関しては筒井・山口らの報告を契機に多くの訓練方法が用いられ、近年では肩甲骨の機能が注目され、肩関節求心位を得るための訓練方法が多々報告されている。しかし、肩関節の動的安定化機構である腱板を構成する各筋が肩関節求心位を保つための機能について報告しているものは渉猟した限りでは見つからない。今回、腱板断裂症例の腱板機能を調査し、肩関節求心位を保持する腱板機能について興味ある知見が得られたので報告する。【方法】2011年9月末までの2年間に当院整形外科を受診し、初診時に腱板断裂と診断された症例のうち、「Scapula-45撮影法」によるレントゲン像を撮影し、手術した症例35名(年齢60.8歳±12.7、男性19名・女性16名、罹患側 右22名・左13名)について、術前MRI所見および手術所見からA群(棘上筋単独断裂 23名)、B群(棘上筋+棘下筋断裂 5名)、C群(肩甲下筋を含む断裂 7名)の3群に分類した。 「Scapula-45撮影法」によるレントゲン像のうち肩甲骨面上45度挙上位無負荷像を用い、上腕骨外転角度、肩甲骨上方回旋角度、関節窩と上腕骨頭の適合性について、富士フィルム社製計測ソフトOP-A V2.0を用いて計測した。上腕骨外転角度および肩甲骨上方回旋角度は任意の垂線に対する上腕骨および関節窩の角度を計測し、関節窩と上腕骨頭の適合性は、関節窩上縁・下縁を結ぶ線を基準線として関節窩に対する上腕骨頭の位置関係を計測した値を腱板機能とした(正常範囲-1.11±2.1、大和ら1993)。統計学的処理は、Kruskal-Wallis検定、Mann-Whitney検定、χ²検定を用いて危険率5%にて行い、上腕骨外転角度、肩甲骨上方回旋角度、腱板機能について3群を比較検討し、さらに腱板機能については正常範囲を基に3群間で比較検討した。【説明と同意】当院整形外科受診時に医師が患者の同意を得て診療放射線技師によって撮影されたレントゲン像を用いた。なお、個人情報は各種法令に基づいた当院規定に準ずるものとした。【結果】測定平均値をA群、B群、C群の順で示す。上腕骨外転角度(度)は43.59±8.84、45.64±7.04、33.83±7.54、肩甲骨上方回旋角度(度)は10.17±13.46、0.96±5.02、24.87±22.92であり、上腕骨外転角度および肩甲骨上方回旋角度については3群間で有意差は認められなかった。腱板機能は-0.75±4.76、5.44±12.61、7.84±5.07であり、3群間で有意差は認められ(p=0.007)、なかでもC群はA群と比較して関節窩に対して骨頭の位置が上方に移動していた(p=0.0008)。腱板機能について正常範囲を基に各群間で比較した結果、A群では正常範囲に入るものが23名中10名(43.5%)であり、関節窩に対して骨頭が上方に移動しているもの、下方に移動しているものがそれぞれ26.1%、30.4%あったが、B群、C群では正常範囲に入るものが0%、14.3%であった。B群は骨頭の上方移動および下方移動を呈するものが半数ずつであったが、C群では7名中6名(85.7%)が骨頭の上方移動を呈しており、有意差が認められた(p=0.03)。【考察】腱板断裂の指標として用いられる肩峰骨頭間距離は下垂位前後像で計測し、その狭小化を認める症例は腱板断裂の疑いがあるとされているが、今回用いた機能的撮影法は肩甲骨面上45度拳上時における肩甲骨と上腕骨の位置関係を調査している。 当院では、肩関節疾患患者に対し理学療法実施時に疼痛誘発テストとして肩甲骨面上45度挙上位での徒手抵抗テストを行ない、理学療法プログラム立案の一助としているが、このテストと同一の撮影肢位であるレントゲン像を用い、腱板断裂症例の腱板機能を断裂腱によって分類して調査することによって肩関節の求心位に作用する筋が明らかになると考えた。その結果、棘上筋の単独断裂では約半数は正常範囲にあり、残りの半数および棘下筋を含む断裂では関節窩に対して上腕骨頭が上方あるいは下方へと移動するが、肩甲下筋を含む断裂では関節窩に対して上腕骨頭の上方移動が認められたことから、肩甲下筋の機能不全が肩関節求心位に大きく影響することが示唆された。また、上腕骨外転角度および肩甲骨上方回旋角度は各群間で差がなかったことから、腱板機能不全を呈する症例は上腕骨を空間で保持するために肩甲骨が様々な反応を示すことが推測でき、前回報告した結果を裏付けするものと考える。 臨床上、肩甲下筋を選択的に収縮させることによって肩関節可動域が改善する症例を経験するが、肩甲帯の土台である肩甲骨の機能はもちろんのこと、腱板機能不全に対し肩関節求心位を確保するために選択する理学療法プログラムは肩甲下筋を考慮する必要があると考える。【理学療法学研究としての意義】今回の結果から肩関節疾患症例に対しておこなわれる腱板機能に関する理学療法プログラム立案を再考する必要性が示唆された。
著者
舟崎 裕記 吉田 衛 戸野塚 久紘 加藤 壮紀 加藤 基樹 丸毛 啓史
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.459-462, 2015

40歳以上のスポーツ愛好家における腱板全層断裂に対して保存的治療を行った結果,症状が改善した35例,37肩のスポーツ評価法を含めた成績を検討した.断裂サイズは小8肩,中19肩,大6肩,広範囲4肩で,スポーツ種目は,ゴルフ13例,テニス5例,水泳3例,ダンス系3例などであった.平均観察期間は28カ月であった.初診時JOAスコアは平均67点で,いずれの症例もスポーツ活動を休止していた.最終観察時では平均91点となり,とくに疼痛の著明な改善が得られていた.全例が元の競技に復帰し,32例は現状のスポーツ活動に80%以上満足していたが,JSS-SSSは平均84点で,大,広範囲断裂のもの,筋力低下が残存したもの,テニスなどのオーバーヘッド競技者ではJSS-SSSは低かった.保存的治療により症状の改善が得られた症例ではスポーツ活動に対する満足度も比較的高かったが,そのスポーツ能力には,断裂サイズ,筋力,競技種目が関与していた.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1946年02月16日, 1946-02-16

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1946年03月16日, 1946-03-16

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1945年11月02日, 1945-11-02

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1948年06月07日, 1948-06-07

1 0 0 0 OA 古刀押形

出版者
巻号頁・発行日
vol.[2],

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1948年05月01日, 1948-05-01

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1946年11月30日, 1946-11-30
著者
清水 あずさ GOH Wei Huang 橋本 道尚 三浦 重徳 尾上 弘晃
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.Annual57, no.Abstract, pp.S104_1, 2019 (Released:2019-12-27)

血管の内壁に単層の組織を構成する血管内皮細胞は,血流によるせん断刺激や筋の拡張収縮による伸展刺激など複数の力学刺激を受容して,カルシウム応答などの細胞応答や形態変化を呈することが知られているが,その詳細なメカニズムはいまだ解明されていない.このメカニズム解明のために、これまで細胞外マトリクス(ECM)で構成されたマイクロ流体デバイスに内皮細胞を播種することで血管の生体内環境を模したin vitro実験系が報告されてきた.しかしながら,従来の実験系では流体せん断刺激に対する細胞応答は報告されてきたが,伸展刺激を加味した細胞応答は明らかになっていない.そこで本研究では,複数の力学刺激を再現することにより,生体内環境をより模倣したin vitro血管モデルの構築を目的とする.具体的には,コラーゲンを用いたマイクロ流体デバイスにより,流れによるせん断刺激と伸展刺激の両方を印加可能な3次元培養系を提案する.本研究では,3Dプリンタで作製した水溶性モールドを犠牲層として用いてコラーゲンで構成されたマイクロ流路を構築した.また,外部より伸展刺激を負荷することで,コラーゲン流路内に培養した細胞が伸展している様子を確認した.

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1947年03月29日, 1947-03-29

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1947年02月01日, 1947-02-01

1 0 0 0 OA 官報

著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1947年03月01日, 1947-03-01
著者
大橋 恭一 岡本 将宏
出版者
日本土壌肥料學會
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.378-383, 1985
被引用文献数
1

著者らは前報で,水田転換畑におがくず入り牛ふん厩肥を1976年から10a当たり0〜8t毎作施用し野菜の収量と土壌水分環境におよぼす影響について報告したが,今回は10作跡地土壌の化学性および野菜の養分吸収について検討した.1.厩肥の連用により作土の全炭素(T-C),全窒素(T-N),置換性カリウム(K_2O),可給態リン酸(P_2O_5),全リン酸(T-P_2O_5)が増加し,それらの含有量と厩肥使用量との間には高い相関がみられた.2.作土でのリン酸集積は厩肥無施用区でも生じており,それに加えて厩肥の使用はその集積を著しく促進した.すなわち8t施用区では栽培跡地にトルオーグリン酸378mg/100g乾土,全リン酸714mg/100g乾土が集積しており,その集積量は野菜の生育に必要な最適基準よりも著しく高かった.3.野菜の栽培前および跡地土壌の置換性養分より,作土中養分量の増減を調査したところ,カリウムと異なりカルシウムとマグネシウムは減少していること,また,その減少度合いは両者で異なることを認めた.4.ダイコン,ハクサイの窒素,リン酸,カリウムの吸収量はおのおの10a当たり6.0kg,3.8kg,15.5kgと13.6kg,6.9kg,27.5kgであり,いずれの養分ともハクサイの吸収量のほうが多かった.また施用肥料の養分量に対する上記の野菜による養分の流出割合は,ダイコンで27.1〜31.3%(窒素),20.5〜25.5%(リン酸),71.1〜88.3%(カリウム)となりハクサイでは38.4〜50.4%(窒素),25.2〜33.1%(リン酸),86.6〜111.4%(カリウム)であった.5.これらの調査から,厩肥の使用は各土壌養分の増大にもとづく耕地の改善に効果的に働くが,リン酸の集積増大をもたらすため,その肥培管理の改善が望まれる.
著者
小久保 秀之 山本 幹男
出版者
日本超心理学会
雑誌
超心理学研究 (ISSN:1343926X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1-2, pp.28-35, 2008-12-07 (Released:2017-08-09)
参考文献数
13

キュウリ切片に手かざしなどの非接触ヒーリングを行うと、施術したキュウリ試料から生じるバイオフォトンの発光強度が増大する。この非接触ヒーリングの物理機序を調べるために、キュウリ試料に極微弱のミリ波を照射し、ヒーラー3名の非接触ヒーリングと比較した。また、バイオフォトンの測定には、I.I.カメラModel C2400-47、波長域280-650nmと、CCDカメラImagEM C9100-13、波長域400-1000nmを用いた。ヒーリング処理、ミリ波処理は、いずれも室温24℃で30分行い、処理後、18時間バイオフォトンを測定した。結果、ミリ波照射の影響は観察されなかった。また、赤〜近赤外線領域でキュウリ試料の発光を観察した場合は、試料の成長軸の向きによって発光強度の変化が異なることがわかった。さらに、赤〜近赤外発光強度は非常に大きいが、ヒーリング効果を検出するには実験手続きの変更が必要と考えられた。