著者
吉田 花美
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.284-291, 1960

明治より現代までの和裁書25冊の中から、大裁ひとえ長着の寸法を一覧表にしたところ、和服寸法は、明治より現代まで殆ど変化していないことを確認した。<BR>しかるに我国民の体位向上は最近特に目覚ましく、明治33年から昭和31年までの成年男女の体格の推移を見ると、男子においては身長4cm胸囲3.7cm、女子においては身長8.2cm胸囲3.2cmの増加がある。和服寸法もこれに伴って変化しなければ正しい着装は望めない。しかるに現代の和裁書の中には、明治・大正時代のそのままの標準寸法を示しているものが多い。そこで私は、和服製作にあたって誰もが、直ちに自分の体格に基づいて適正な寸法を見出すことができる基準を決めたかと考え、これについて検討した。和服に関する寸法は、体型を基にすることは勿論着装の仕方や社会の動きなどによって決められるべきであるが、先づ今回は身長と胸囲の面から考察した。今後諸賢の御批判と御意見を俟って、更に適正な方法を決めてゆきたいと念願するものである。
著者
シライシ カズユキ カガミ ヒロオ Kazuyuki SHIRAISHI Hiroo KAGAMI
雑誌
Proceedings of the NIPR Symposium on Antarctic Geosciences
巻号頁・発行日
no.3, 1989-09

We report the preliminary results of whole-rock Rb-Sr and Sm-Nd isochrons dating on granulite-facies metamorphic rocks from Brattnipene, central Sør Rondane Mountains, East Antarctica. Samples : Isotopic ratios of eight samples were measured with a MAT 261 mass spectrometer at the Institute for Study of the Earth's Interior, Okayama University. Four samples are enderbites consisting of Opx, Cpx, Hbl, Bt, Pl and Qtz with or without Grt and Kfs (mineral abbreviations after R. KRETZ : Am. Mineral., 68,277,1983). These rocks were collected within a hundred meters of each other. The other four samples are hornblende gneisses as follows : Bt-Hbl-Pl, Bt-Hbl-Kfs-Pl-Qtz, Cpx-Hbl-Pl-Qtz and Bt-Hbl-Pl-Qtz. Two of them have been slightly altered to form secondary epidote and/or bluish green hornblende. All samples crop out within 500m. The peak metamorphic conditions of the enderbites were estimated from geothermobarometry to be 800℃ and 7-8.5kb (K. SHIRAISHI and S. KOJIMA : Proc. NIPR Symp. Antarct. Geosci., 1,129,1987). The hornblende gneisses were presumably metamorphosed under the same conditions. Rb-Sr data : The ^<87>Rb/^<86>Sr ratios for eight samples are low (0.02-0.15) and no meaningful isochron can be drawn due to the considerable scattering of the data. Four enderbites, however, define an isochron of 1167±127 Ma with initial ratio 0.7040. Sm-Nd data : The ^<143>Nd/^<144>Nd vs. ^<147>Sm/^<144>Nd ratios for all eight samples defined an isochron of 999±164 Ma with an initial ratio of 0.51158. The calculated uncertainty is high because the spread of the ^<147>Sm/^<144>Nd ratios is limited. T_<(DM)> model ages (ε_<ND(0)>=+10) range between 1150 and 1300 Ma.Previous work has shown that the region was affected by a thermal event associated with plutonism about 500Ma ago. This event may be the cause of the scatter in the Rb-Sr data. Nonetheless, four enderbites, which seem to be fresh under the microscope, yield a Rb-Sr isochron whose age is consistent with the Sm-Nd age within the uncertainties. There are two possible explanations for the 1000Ma ages : crust formation or metamorphism. We tentatively interpret the 1000Ma could date granulite-facies regional metamorphism although the Sm-Nd isochron age has been thought to date a crust formation because of the immobility of rare earth elements during metamorphism. Resetting of Sm-Nd whole-rock isochrons may have been possible under the estimated conditions of granulite-facies metamorphism as discussed for the Napier Complex of Enderby Land (M. T. McCULLOCH and L. P. BLACK : Earth Planet. Sci. Lett., 71,46,1984).
著者
田原 敬 久保 愛恵 勝二 博亮
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.179-183, 2021-08-01 (Released:2021-08-01)
参考文献数
33

本稿では主に注意機能の視点から雑音下聴取の神経生理学的機序について論じ, 雑音下のような聴取困難な状況で高まる心的な労力であるListening effortについて概説した。脳波や脳機能イメージングを用いた報告からは, 雑音下においてより効率的に音声を聴取するために注意機能が重要な役割を担っていることが確認された。あわせて, Listening effortについても, 注意機能や実行機能等の脳内ネットワークが関与していることが確認された。また, Listening effortを評価するための生理指標として瞳孔径や脳波が活用されていたが, それらの指標間には十分な一貫性がなく, その発生機序も含めさらなる検討が求められていた。以上より, 雑音下聴取やListening effortを扱う際には, 注意機能に代表されるような聴覚機能以外の視点からのアプローチも重要になると示唆された。
著者
與儀 ヤス子 藤村 響男 鈴木 幸一
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 = Japanese journal of leprosy (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.197-204, 2008-09-01
参考文献数
24
被引用文献数
1

1873年のらい菌発見から長い年月に渡って多くの研究者がらい菌の動物移植実験に尽力してきたが、1960年の Shepard による foot-pad 法の開発後はめざましい成果が残された。T-Rマウス、無胸腺 (ヌード) マウスのらい菌動物移植への導入、また、アルマジロ、チンパンジーやマンガベイサルの自然発症例が報告され、ハンセン病が人畜共通伝染病であることがその後のわずか十数年で確認された。増菌されたらい菌は大量菌を必要とする分野への供給に役立ち、らい菌の動物移植研究の成果はハンセン病医学に大きく貢献した。われわれがらい菌増殖用の tool として開発したコンジェニック高血圧ヌードラット (SHR. F344-Foxn1<sup><i>rnu</i></sup>) はIL-10産生能が高く、らい菌に対する感受性能が優れていた。本ヌードラット (<i>rnu/rnu</i>) に接種されたらい菌は接種部および非接種部位に肉眼的らい性腫瘤を作りながら増殖、全身化していく独特のらい菌感染像を呈すことから、ヒトL型ハンセン病患者の実験モデル動物として有用であり、同腹仔有胸腺ラット (<i>rnu/+</i>) では、らい菌感染後24時間目頃から、らい菌特異的免疫機構の成立を示唆する像が観察され、6ヶ月後には、リンパ球に幾重にも取り囲まれて、らい菌が殺菌され排除される像が観察されたことから、らい菌の宿主からの防御機構を研究する動物モデルとしてヌードラットとともに有用である。
著者
迫田 千加子 田村 和恵 佐々木 秀美
出版者
呉大学看護学部
雑誌
看護学統合研究 (ISSN:13460692)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.1-11, 2007-03

大正時代に発刊された『看護學教科書』を保有する94歳の元看護婦と出会ったことを手がかりに,戦前の広島県における看護婦養成の足跡を看護婦規則と関連させながら検証した。明治以降,医学の進歩と共に病院の整備が進み,それに伴い各地で看護婦の養成が始まった。広島県は,軍制基盤都市として栄え,全国に先駆けて,1893年(明治26年)日本赤十字社広島支部が看護婦養成を始め,1904年(明治37年)には呉海軍共済組合病院で看護婦養成が開始された。1915年(大正4年)国として初めての看護婦規則が制定され,無資格者による看護が規制された。そのことによって看護婦不足が生じ,東京看護婦学校などの簡易教育所による教育が隆盛した。広島県でも看護婦規則制定に伴い,看護婦不足が起き,講習会や簡易の看護教育でそれを補った。元看護婦が受けた教育は開業医で働きながら学ぶ方法であり,東京看護婦学校と類似した簡易教育であった。
著者
村田 奈津江
出版者
佛教大学社会学研究会
雑誌
佛大社会学 (ISSN:03859592)
巻号頁・発行日
no.45, pp.13-25, 2021-03-20

わが国の戦後の看護教育は,GHQ占領下において看護婦1)の身分や質の向上がはかられた。1952(昭和27)年には高知女子大学でわが国初の大学教育が開始となる。しかしその後の大学教育は進まず,1991(平成3)年まではわずか11校に過ぎなかった。その一方で高度経済成長期に入ると看護高等教育は私立女子短期大学で発展した。それは急速な経済成長に伴う社会変化により看護婦不足が生じたためである。その対策として,短期間での養成が求められ高等学校での養成も始まった。1990年代に入ると高齢化社会に伴う看護人材の需要や大学創設の規制緩和によって看護系大学数は急増していった。その後,大学看護教育に新たな問題が生じ,看護の本質を目指した大学教育であったが,私立大学の生き残りをかけた大学経営の一環となっている。また,看護界も学士ナースが増えることこそが看護の質の向上であると捉えているように思われる。看護大学看護教育女子教育大学教育大学政策
著者
江川 賢一
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.39-43, 2017

目的:2016年10月26日に大阪で開催された第75回日本公衆衛生学会総会,日本健康教育学会共催シンポジウム「ヘルスプロモーションのための人材育成:アドボカシー能力をいかに高めるか?」を総括した.<br>内容:神馬征峰氏はヘルスプロモーションにおけるアドボカシーの概念を整理した.国際保健の成功事例から,国際組織と連携した公衆衛生アドボカシー人材育成の重要性を指摘した.春山康夫氏は2015年から実施している日本健康教育学会の研修事例から,学術団体が保健医療スタッフ・研究者のアドボカシースキルの向上を全面的にサポートする必要性を強調した.中村正和氏はわが国のたばこ対策を例に,アドボカシーにつながる政策研究において学術団体,行政および研究者によるPDCAサイクルを通じた人材育成について提言した.盛山正仁氏はバリアフリー法の成功事例を紹介し,健康政策においても研究者や学術団体が積極的に政策提言することが行政府や立法府の認識を変え,政策実現に貢献できる可能性を示唆した.<br>結語:学術団体が連携してアドボカシーへの関心を高め,積極的に政策提言し,公衆衛生分野での研究者,専門職,実践者のアドボカシー能力を高めることが急務である.
著者
角田 由佳
出版者
The Health Care Science Institute
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.86-106, 1997
被引用文献数
2

この研究は,看護婦に関する政策の歴史的展開とその効果にっいて,看護婦の労働市場に視点をおいて評価するものである。<BR>日本はこれまで,3度の「看護婦不足」問題に直面した。1度目の「不足」は第2次世界大戦終了直後において,医療供給水準の向上を企図した医療施設の整備から,労働需要が急増したことに起因する。2度目の「不足」は,入院患者に対する既存の看護要員数規定に加えて構成割合を規制し,その配置基準にしたがって診療報酬点数上の加算額いわゆる「看護料」を決める「基準看護」が1958年に制定された後に生じている。そして3度目の「不足」発生時では,1985年の医療法改正を機に病院の病床が数多く増設され,労働需要が増大している。このように看護婦の労働需要が増大するにもかかわらず,賃金率の上昇による市場の需給調整に時間がかかる場合には,市場は不均衡の状態となり,「動的不足」が発生する。しかし看護婦の労働市場は都市部をのぞいて,労働需要者が賃金率と雇用量に決定力をもっ需要独占・寡占構造となる特性をもち,労働力不足が常に起こりうる状態にある。<BR>厚生省は他の省庁とともに,「不足」問題が表面化するたびに看護婦の労働供給を増加させるべく施策をとってきた。ひとっは賃金率の引き上げや労働条件の改善といった労働力のフローを増加させる施策であり,いまひとつは看護婦養成機関の増設や定員数の増加といったストックの増大策である。これらの政策手段は,病院が常にとらえる「不足」や動的不足を削減する効果的な手段であるが,看護婦の労働市場の特性である需要独占・寡占構造にっいて,完全競争状態に向かわしめるべく修正を直接的に加える手段であるとはいいにくい。さらに厚生省は,3度目の「不足」に際しては,労働条件の改善を図って,従来のようなより高度な看護要員配置基準の設定のみならず,「看護料」の引き上げも実施しており,他の生産要素との相対価格低下(看護婦雇用への補助金効果)を通じて,看護婦の労働需要増大を捉進しているものと解釈できる。
著者
黒田 久美子 清水 安子 田所 良之
出版者
千葉大学看護学部
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
no.28, pp.45-49, 2006-03

臨床と実践の両方に雇用されているLecturer Practitioner(以下LPと略す)の英国における役割とシステムの現状を調査し,日本における看護基礎教育,臨床の場での教育への適用を考察した.個々のLPの活動は,大学,臨床の希望,LP自身のスキルや経験に合わせて個々で異なっていたが,理論と実践が統合されている実践能力の高い看護職ならではの活動であり,両者の現状をよく理解し,そこでの裁量権をもち,時間を確保できることによる教育活動の実践であった.