著者
橋本 多美子
出版者
長崎大学
巻号頁・発行日
2002

長崎大学学位論文 学位記番号:博(海)甲第234号 博士(学術) 学位授与年月日:平成14年3月31日
著者
古川 厚 久岡 実
雑誌
内海区水産研究所研究報告 (ISSN:04975022)
巻号頁・発行日
no.10, pp.1-19, 1957-02

アサリの成長が棲息地の底質に直接影響されるか否かを明らかにすることは,適地調査の上に重要であると同時に,仮に底質をはなれて成育するものとすれば,底質直上の各種調査が極めて困難な現在,アサリの成長に及ぼす環境要因の研究にも多くの便宜を提供するであろう。吾々は今回アサリを水中に懸垂し,所謂底質の影響を取り除き,水中の懸濁物のみにより普通干潟に棲息しているものと同様に成育するか否かを試験した。試験は1953年9月25日から10月20日迄の25日間で,その間,水温,塩分,浮泥量等について調査し,アサリについては,外部形態の成長,重量等を生のもの及び乾物について吟味したと同時に,窒素量,Glycogenの測定を行い,他の研究者の報告と対比することに依り,水中懸垂飼育の際の代謝について若干の考察を行った。その結果は大略次の通りである。試験期間中の海水塩分はclで17‰前後を示し,アサリの棲息に対して不適とは考えられなかった。水温は表層と中下層で若干(2~3℃)の差を示したが,外部形態の成長等から考えて大した影響はなかった。飼育中に見られたフジツボの附着については,なほ今後の問題であるが,附着がアサリの飼育密度に可成りの関係をもつことは興味ある所であろう。アサリの飼育密度と成長との関係は大抵逆の関係が見られたが,飼育密度を小さくすれば,懸垂飼育でもアサリは可成りの成長を示し,底土は必ずしも不可欠なものではなく,今回餌料量の指標として実施した試験管による浮泥量の測定は必ずしも成功とは考えられないにしても,餌料の多少がより本質的なものと考えられた。貝殻の増重には飼育密度は余り関係なく,成長の点を考えあわせると,貝殻形式は飼育密度に関係せず,唯々密度が小さいものは殻巾が比較的大きかった。これ等の点からすれば貝殻形成に必要と考えられる海水中の塩類は可成豊富なものと考えてよいのではないだろうか,これに反し肉質部の増加は密度により影響される傾向があり,この点肉質部の形成に役立つ餌料量は,貝殻形成に役立つ塩類ほど豊富ではなく,この点が生産の限界を現定するのではなかろうか。従って今後貝類生産の研究には有効餌料量の調査研究が必要であり,かりに干潟に棲息しているアサリ,ハマグリについても,従来の如く干出時の調査に終始せず,冠水時の問題解決が,これ等貝類の生産を向上せしめる上により重要なことであろう。水中懸垂飼育のアサリが正常な代謝を営むか否かを決定するためには,呼吸量をその他室内実験で使用される方法はほとんど使用出来ないので,肉質部の窒素量,Glycegen量の変化を測定して,従来の資料と対比し,大略の推定を行った。その結果,代謝に異状があったとは考えられなかった。
著者
岸岡 正伸 柿野 純 井上 隆彦 多賀 茂 和西 昭仁 白木 信彦 山崎 康裕 小野里 坦 國森 拓也 宮後 富博 齋藤 秀郎 鹿野 陽介
出版者
山口県水産研究センター
巻号頁・発行日
no.13, pp.25-45, 2016 (Released:2016-10-20)

2011~2013年度にかけて,山口市秋穂湾の遊休化したクルマエビ養殖池(50×100m,面積0.5ha)を用い,池に施肥することで餌料生物を増殖させながらアサリを大量育成する手法を開発するため,年間300~600万個のアサリ人工種苗(殻長2mm)を池内に収容し,実証レベルの試験を行った。研究初年度は,施肥を行った直後からアオサの急激な増殖が見られ,2ヶ月の間に池の大半を覆った。このため移植した種苗の成長,生残とも極めて低かった。また,攪水機によって流速4cm/sec. 以上になる場所が成育場所として適していると考えられた。2年目以降,種苗池入れ前に池内の大型藻類や食害生物を可能な限り除去するとともに,日常管理として週3~4回,小型の底びき網で池全体を引き回し,夾雑物を排除しながら海底を攪拌した。3~7月にかけて,毎週200kg(海水トンあたり27g)の半有機肥料を池に散布することで,栄養塩の供給と微細藻類の増殖を維持することができた。この結果,2年目以降は池内での大型藻類の繁茂が抑制され,3月に平均殻長2mmで移植した種苗は60%以上の高い生残率で急速に成長し,7月に殻長20mmに達した。施肥した試験区と施肥しない試験区を設けてアサリの成長及び生残状況を比較した。その結果,施肥による成長促進効果は,無施肥による場合と比較すると6月以降に顕著に現れた。試験期間中に,魚類の卵稚仔や甲殻類の幼生などが多数侵入・成育したが,アサリを回収するまでの間,これらの魚介類がアサリを食害した痕跡はほとんど見られなかった。最終年度は,11ヶ月の育成期間中に,1m2あたり平均3kg(500万個,15.7トン)のアサリが成育し,事業として実施するのに十分な高い生産能力を有することを確認した。生産した20~25mm貝を県内のアサリ漁場に保護放流したところ,調査を実施した3箇所の干潟で成長や生残に違いが見られたものの,母集団としての機能は果たしていると考えられた。また,試験池で生産したアサリは,肥満度の上昇する4月~6月であれば,自然浜のアサリとほぼ同じ一般成分,コハク酸,遊離アミノ酸を含有していた。
著者
矢吹 まい
雑誌
表現文化
巻号頁・発行日
no.3, pp.96-111, 2008-03

なぜ人はノスタルジアに浸るのか : そもそも、ノスタルジア(nostalgia)ということばは、ギリシャ語のnostos(家へ帰る)と algia(苦しんでいる状態=苦痛)に由来している。つまり、故郷へ帰りたいと切なく恋焦がれるという意味を持つ。故国から遠く離れて、ヨーロッパのどこかの専制君主の軍隊に所属して戦っていたスイス人傭兵によく見られる「病気」として認識されていたこの言葉が、病理学的基盤から解き放たれ、いわば脱軍隊化、脱医学化するようになったのは、20世紀に入る直前のことである。ひとたび通俗的な用語法のなかに取り込まれてしまうと、もとの語義からの方向転換が著しく進み、今日では、「ノスタルジア」という言葉からホームシックそのものを連想する人は少なく、これを「病気」として捉える人もほとんどいない。それでは、我々が今日体験する「ノスタルジア」とは、一体どのようなものなのか。それを確認するために、ここではまず最初に F. デーヴィスの著作『ノスタルジアの社会学』を参考にしつつ、昨今の昭和ブームを語る上で欠かすことのできない「ノスタルジア」に関する分析を行ってみたい。
著者
香川 雄一
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.46-46, 2004

栃木県旧上都賀郡鹿沼町の「歳入歳出決算書」と「町会会議録」を中心とした行政資料を読み解くことによって、地方財政をめぐる政治過程が予算から決算に至るまでの金額の更正に、いかにして作用しているかを明らかにする。町制を施行した直後の明治20年代には1万人に満たなかった鹿沼町の人口は、大正期に入ると1万5千人を越えるようになる。鹿沼町では明治23年に鉄道の日光線が開通し、帝国製麻株式会社の主力工場も存在していたため、一時的な増減はあるにせよ、人口は増加傾向を示していた。とくに大正期は工場の増設による工業化を主導として、町の内部に都市化をもたらすことになった。大正9年の国勢調査による職業分類別人口を見ても、商業を抑えて工業が第一位部門となっている。工場労働力の流入など、人口が増えることによって必要となるのは住宅である。一方で若年人口の増加は義務教育体制下にあって、学校の増改築を不可避のものにすることになった。 鹿沼町における学校建設費用による財政規模の急変は決算額の推移によって裏付けられる。明治28年度は学校建設のための寄付金によって、歳入額が前年度の倍以上となる。明治35年度と36年度は校舎建築費と復旧費で決算総額が再び急増する。42年度以降も毎年多額の学校建設費が予算化され、翌年度以降の歳出増加を導いている。大正期に入っても前半はそれほど変化していないが、大正9年度以降は急激に財政規模を膨張させる。これもやはり小学校改築費用のためであり、町債によって準備された金額が大正10年度には多額の繰越金として歳入に組み込まれ、歳出では小学校改築費に使われた。学校の改築や新築といった建設費用に町の財政が苦心していたことはひとまず確認できた。財政規模の拡大により、町有財産を充実させてきたのも事実である。財政に取り組む政治過程が行政施策の方向性を定めてきたことが理解できる。
著者
李 頴
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科
雑誌
現代社会文化研究 (ISSN:13458485)
巻号頁・発行日
no.66, pp.37-54, 2018-03

China, Japan and South Korea, as neighboring countries in East Asia, have great differences in their attitudes towards history because of the differences in their education of history. Focusing on the Sino- Japanese War of 1894-1895, which decisively influenced the fate of the three countries, this paper makes a contrastive study of the middle school textbooks and teaching practices in the three countries, aiming to reveal the differences and their causes in the three countries. Last, this paper proposes some solutions to the reform of history education.
著者
岸本 久太郎 中山 真義 八木 雅史 小野崎 隆 大久保 直美
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.175-181, 2011 (Released:2011-04-22)
参考文献数
16
被引用文献数
10 22

現在栽培されている多くのカーネーション(Dianthus caryophyllus L.)品種では,芳香性が低下傾向にある.強い芳香や特徴的な芳香をもつ Dianthus 野生種は,非芳香性品種に香りを導入するための有望な遺伝資源であると考えられる.我々は,花き研究所に遺伝資源として保持されている Dianthus 野生種の中から,芳香性の 10 種と,それらとの比較のためにほぼ無香の 1 種を選び,嗅覚的評価に基づいて 4 つにグループ分けした.GC-MS を用いた解析の結果,Dianthus 野生種の花の香りは,主に芳香族化合物,テルペノイド,脂肪酸誘導体に属する 18 種類の化合物によって構成されていた.最も強い芳香をもつグループ 1 の甘い薬品臭は,芳香族化合物のサリチル酸メチルに由来した.グループ 2 の柑橘様の香りは,テルペノイドの β-オシメンや β-カリオフィレンに由来した.グループ 3 の青臭さは,脂肪酸誘導体の (Z)-3-ヘキセニルアセテートに由来した.ほぼ無香のグループ 4 では,香気成分がほとんど検出されなかった.これらの花における放出香気成分の組成と内生的な香気成分の組成は異なっており,蒸気圧が高く沸点の低い香気成分が効率的に放出される傾向が認められた.また,グループ 1 の D. hungaricus の主要な芳香族化合物は花弁の縁に分布し,グループ 2 の D. superbus の主要なテルペノイドやグループ 3 の D. sp. 2 の主要な脂肪酸誘導体は,花弁の基部や雄ずい・雌ずいに分布した.この結果は芳香性に寄与する花器官が,Dianthus 種によって異なることを示している.本研究において,嗅覚的に良い香りで,芳香性に対する寄与が大きいサリチル酸メチルや β-オシメンや β-カリオフィレンを豊富にもつグループ 1 やグループ 2 の Dianthus 野生種が,カーネーションの芳香性育種に重要な遺伝資源であることが示唆された.
著者
奈良 信雄 村上 直巳
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

急性骨髄性白血病の治療成績は向上しているが、現在においてもなお難治性である。今後治療成績をさらに向上させるには、患者の予後を正確に予知し、個々の患者に即応した理論的な治療を行う必要がある。本研究では、白血病細胞の増殖能こちにサイトカイン遺伝子発現と予後が相関するかどうかを検討した。まず白血病細胞集団の増殖は、その中の一部の白血病性幹細胞によって維持されていることが確認された。白血病性幹細胞には自己再性能があり、その強弱が患者の予後と相関する事実が見出された。そこで、白血病性幹細胞の増殖機構をさらに検討した。白血病性幹細胞の増殖は、G-CSF、GM-CSF、IL-3、SCFなどのサイトカインによって刺激されることが分かった。その刺激効果は患者間で差異があったが、CSFの刺激効果と患者の予後には有意な相関は見られなかった。白血病細胞にはこれらのCSF遺伝子の発現している症例があった。ただし、サイトカイン遺伝子発現と患者の予後には有意な関連は見られなかった。白血病性幹細胞の自己再生能は種々のサイトカインネットワークによる制御を受けていることが立証されたが、その詳細な機構は解決されていない。今後の研究において、白血病性幹細胞の増殖機構を分子レベルで明らかにし、白血病性幹細胞の根絶を目指した治療体系の確立が重要と考えられる。

1 0 0 0 OA 緑雨集

著者
斎藤緑雨 著
出版者
春陽堂
巻号頁・発行日
1910

1 0 0 0 縮圖

著者
徳田秋聲著
出版者
小山書店
巻号頁・発行日
1946

1 0 0 0 OA 宗教哲学

著者
ハルトマン 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
1898
著者
Kai NAGASE Yukiko OISHI Kenji TSUNODA Kumi FUJITA
出版者
Asian Society of Human Services
雑誌
Asian Journal of Human Services (ISSN:21863350)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.24-42, 2019 (Released:2019-10-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

The aim of this study is to reveal the present condition of special needs education in high schools in Japan. A total of 58 high schools in Yamaguchi Prefecture in Japan participated in this study. The results show that students with some difficulty in school life were enrolled in most high schools, and students diagnosed with mental illness and students needing support for foreign nationality were enrolled in some high schools. Furthermore, the following four characteristics of the current status of special support for students with special educational needs in high school in Japan were found. First, teachers in high school tend not to assess the characteristics and difficulties of students with objective indicators. Second, many high schools have not had sufficient cooperation with organizations outside the school. Third, many high schools did not fully consider accommodation for students with special educational needs in entrance and regular examinations and evaluations. Fourth, many high schools did not perform special-needs-understanding education for other students.