著者
和泉 徹彦 イズミ テツヒコ
雑誌
嘉悦大学研究論集 = KAETSU UNIVERSITY RESEARCH REVIEW
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.23-41, 2015-03-19

保育所の待機児童解消は、安倍政権における経済成長戦略の中で女性の活躍する社会づくりの前提とされ、いわば国策として全国市区町村が待機児童ゼロを目標とするように迫られている。特に都市部では、待機児童を解消するために保育所整備を精力的に進めているが、保育所の新設が周辺住民の潜在的な保育サービス需要を掘り起こしてしまい、定員は増えているのに待機児童が減らない状況が起こっている。今回、政令指定都市を対象に調査を実施し、待機児童、隠れ待機児童、保育所入所率などを確認した。調査からは、公表している待機児童から除外されている隠れ待機児童が多い実態が明らかになった。待機児童ゼロを宣言している政令指定都市のうち、新潟市は就学前児童に対する保育所入所児が過半数を超えており、潜在的需要を掘り尽くした結果であることが分かった。一方で、隠れ待機児童が多く保育サービス需要の存在を隠している自治体もあった。この調査結果を受けて、保育所整備を続けて待機児童や潜在的需要を解消するためにはどれくらいの財政支出が必要なのかを試算した。100人定員の保育所を新たに建設する場合、当初2年間に1億9千万円の補助金が投入され、3年目以降は毎年1億3千万円の運営費がかかり、待機児童は最大で40人解消できる。待機児童や潜在的需要に対してこの条件を各市に当てはめて試算している。
著者
坂井 弘紀
出版者
和光大学表現学部
雑誌
表現学部紀要 = The bulletin of the Faculty of Representational Studies (ISSN:13463470)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.13-32, 2023-03-17

ロシアの歴史や文化にはテュルクの要素が少なくない。長い歴史の中で、ロシアと中央ユーラシアのテュルクとの関係は密接なものであった。現在のロシアにおいてもそれは同様である。テュルクの人々は古来、豊かな口頭伝承の伝統を発展させてきたが、英雄叙事詩や伝説などの口碑にもロシアは現れる。16 世紀後半にはじまる、ロシアの領土拡張と異民族支配を反映し、テュルクの伝承にはロシアとの戦いが描かれてきた。ロシアの征服の様子や敵ロシアと戦う勇者の姿が歌われてきたのである。「帝国」への第一歩となるカザン征服は英雄叙事詩『チョラ・バトゥル』に描かれ、カザン・ハン国やアストラハン・ハン国、シビル・ハン国を併合する経緯は共通する「罠」によって印象的に伝えられる。プガチョフの反乱をはじめとする反ロシア闘争や第一次世界大戦時の強制徴用についても詩人たちは語ってきた。それらは、中央ユーラシア・テュルクの人々の側から見たロシア史でもある。
著者
森 銑三
雑誌
美術研究 = The bijutsu kenkyu : the journal of art studies
巻号頁・発行日
no.71, pp.26-35, 1937-11-25
著者
森 銑三
雑誌
美術研究 = The bijutsu kenkyu : the journal of art studies
巻号頁・発行日
no.72, pp.6-16, 1937-12-25
著者
佐藤 賢一
出版者
電気通信大学
雑誌
電気通信大学紀要 (ISSN:09150935)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.7-16, 2022-02-01

This paper once again introduces one traditional Japanese mathematical book, Kenki Sanpo (1683) by Katahiro Takebe (1664 - 1739). In this book Takebe solved a problem of area of segment utilizing the approximate formula for the length of arc reduced as a result of polynomial interpolation. The author poses the hypothesis to reconstruct Takebe’s formula, which the formula has close resemblance to the minimax approximation polynomial.
著者
澤田 次郎
出版者
拓殖大学人文科学研究所
雑誌
拓殖大学論集. 人文・自然・人間科学研究 = The journal of humanities and sciences (ISSN:13446622)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.1-24, 2019-03-15

本稿は前号掲載分と合わせて一八九〇年代から一九一〇年代を中心に、チベットをめぐる日本の諜報工作活動の実態を検証するものである。前回明らかにしたのは、①一八九七年から一九〇二年にかけて外務省、参謀本部のチベット関与は初歩的段階にあり、それを反映して成田安輝の活動は質量ともにレベルの高いものであったとは言い難かったが、②この点は一九〇六年から〇八年において参謀本部の福島安正の支援を受けた寺本婉雅によって飛躍的に改善、克服されたという点である。今回は③として、一九一三年から一六年にかけてラサに滞在し、ダライ・ラマ十三世の顧問をつとめた青木の情報収集は、それ以前に寺本が地ならしを行っていただけにやはり質の高いものとなったこと、ただしダライ・ラマの依頼を受けてイギリスまたは日本から機関銃の購入をめざすという青木の協力工作は日本を警戒するイギリス外務省、インド政庁の反対にあって成功しなかったことを明らかにした。
著者
平田 美紀 流郷 千幸 鈴木 美佐 古株 ひろみ 松倉 とよみ ヒラタ ミキ リュウゴ チユキ スズキ ミサ コカブ ヒロミ マツクラ トヨミ Hirata Miki Ryugo Chiyuki Suzuki Misa Kokabu Hiromi Matsukura Toyomi
雑誌
聖泉看護学研究 = Seisen journal of nursing studies
巻号頁・発行日
vol.2, pp.51-57, 2013-04

背景 子どもの権利条約において親からの分離の禁止"が謳われているが,子どもの採血場面では親が付き添う施設は少ない現状である.採血場面に親が付き添い親の助けを受けた子どもは,安心を得ることができ,親の支援を受けながら自分なりの方法で採血に立ち向かうことができる.しかし,これらはほとんどが幼児後期の子どもが対象であり,親の存在の意義が大きい幼児前期の子どもを対象とした研究は少ない.目的 幼児前期の子どもの採血場面に,母親が付き添った場合の子どもの対処行動を明らかにすることを目的とする.方法 幼児前期の子どもに,母親が付き添った場合の行動をビデオ撮影し,採血終了後,母親へ半構成的面接を行った.結果 採血前は【緊張を高める】,【周囲を確認する】,【抵抗する】,【誘導に従う】,【安心を求める】,【覚悟する】の6カテゴリーと10サブカテゴリー,採血中は【緊張の持続】,【苦痛を表現する】,【誘導に従う】,【終了を予測する】,【安心を求める】,【進行を確認する】の6カテゴリーと11サブカテゴリー,採血後は【終了を確認する】,【緊張がとける】,【満足感を得る】の3カテゴリーと7サブカテゴリーが抽出された.結論 母親が付き添った場合の幼児前期の子どもの対処行動は,採血の経過をイメージすることができないため,母親が主体的に身体的接触を持ち,具体的な対処行動を示すことで見通しを得ることができる.また母親からの賞賛は,子どもの採血に対する緊張感を早期に解くことができる.