著者
松本 浩之 柳生 和男
出版者
文教大学
雑誌
生活科学研究 = Bulletin of Living Science (ISSN:02852454)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.29-41, 2014-03-01

平成25年9月に松本と柳生は、ドイツの首都ベルリン特別市の北東部にあるリヒテンベルク行政区の基礎学校 (Grundschule) と上級学校 (Oberschule) を訪問し、日本の学校のいじめにあたるモビングを予防する教育プログラムの実践を見る機会を得た。モビング予防のための教育プログラムとその実践状況を報告し、日本の学校におけるいじめのとらえ方とその対策との比較を行い、リヒテンベルク市におけるプログラムの日本の学校への導入の可能性について考察した。
著者
藤田 節子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.492-503, 2010
被引用文献数
1

近年,学術論文の参照文献に,インターネット情報の利用が増加している。Webページは更新や削除が頻繁に行われるため,インターネットからの参照文献は読者が後になって入手できるとは限らない。本調査は,2007年と2005年に刊行された図書館情報学関係学術誌4誌に掲載された論文の参照文献のうち,インターネット情報を参照した858件の入手可能性を調べた。その結果,2007年では参照されたインターネット文献のうち28%,2005年では41%が,論文の著者が記述したURLのもとでは見つからなかった。見つからなかったインターネット文献を,そのサイト内で検索したり,検索エンジンを使うと,2007年は89%,2005年では82%が入手可能になった。参照されたインターネット文献の保存,サイト運営者の適切な管理運営,著者の正確な引用と,必要十分な書誌記述が入手可能性を高める。
著者
Hayato Tanaka Susumu Ohtsuka
出版者
The Japanese Society of Systematic Zoology
雑誌
Species Diversity (ISSN:13421670)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.217-228, 2019-10-25 (Released:2019-10-25)
参考文献数
35
被引用文献数
1

In the present study, we describe two new marine species, Microloxoconcha toyoshioae n. sp. and M. sublittoralis n. sp., collected from the sandy bottom in the western part of Japan, from the depths of approximately 20 to 30 m and 50 m, respectively. This represents the first record of this genus from such depths, since all 10 previously described species are known from the beach interstitial waters. We suspect the two new species are most probably also inhabiting spaces between sand grains since they have very small body and have been collected with other common interstitial ostracods belonging to Cobanocythere Hartmann, 1959; Parvocythere Hartmann, 1959; Paracobanocythere Gottwald, 1983; Parapolycope Klie, 1936; and Psammocythere Klie, 1936. Owing to their small body and fragile carapace, previous studies might have overlooked the existence of interstitial ostracods from habitats other than beach interstitial. In addition, a key to all species of the genus Microloxoconcha is provided.
著者
大取 一馬
出版者
密教研究会
雑誌
密教文化 (ISSN:02869837)
巻号頁・発行日
vol.1983, no.142, pp.28-41, 1983
著者
山田 哲也 長谷川 裕
出版者
東洋館出版社
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.86, pp.39-58[含 英語文要旨], 2010

学校への不信を背景に導入された近年の教員政策は,(1)教員の権威のゆらぎと,(2)職場同僚関係の変化を促す方向で展開してきた。本論文は,教員文化論の視角から質問紙調査データを分析し,(1)(2)を含む教員世界の変化の中で,教員の職業上のアイデンティティ(教職アイデンティティ)とその確保戦略としての教員文化がどうあるのかの把握を試みた。分析で明らかになった知見は以下の3点である。第一に,国際比較データを分析すると,いずれの国でも教職アイデンティティに教員としての成功感覚に裏打ちされた「安定」層と,教職上の困難による教育行為・教職観の揺らぎを意味する「攪乱」層の二層があることが明らかになった。第二に,他国とは異なり,日本の教員は上記の二層のそれぞれと結びつくことがらを相対的に切り離されたものと捉え,教職上の諸困難に直面する際にその一定部分を自分自身では対処不可能と見なすことで「安定」の動揺を回避する「二元化戦略」によって教職アイデンティティを維持していた。第三に,異なる時期に実施した調査結果を比較したところ,上記の教員世界の変化が,献身的教師像と求心的な関係構造が結びつくことで教職アイデンティティを維持していた従来の教員文化が衰退するなかで生じていることが示唆された。これらの知見を踏まえ,論文の末尾では,教員世界の個別化・自閉化や現状追認志向を回避するためには教員世界の外部に学校を開くことが重要であり,そのためにも不信を基調とした教員政策を再考する必要があると結論づけた。
著者
大釜 信政 中筋 直哉
出版者
ヒューマンケア研究学会
雑誌
ヒューマンケア研究学会誌 = Japanese Society of Human Caring Research (ISSN:21872813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-10, 2014-09-30

本研究は、在宅医療現場における看護師の裁量権拡大について、訪問看護事業所サービス利用者の家族認識を明らかにすることを目的とした。 455 名の家族に対して質問票を配布し、300 名から有効回答を得た。その後、質問票に回答した家族の中から5 名を抽出し、半構成的面接調査を実施した。 この調査結果から、看護師が行う診療に対する家族の認識としては、条件付きでこれを容認できる意向や、また、この理由等が明らかとなった。そして、利用者が置かれる診療環境、家族の性別、世代的特徴といった要因に大きく左右されることのない、医療サービスに対する普遍的な価値観や経験的見地に基づきながら、看護師が行う診療に対する認識へと繋がっている旨が示唆された。
著者
Shinichi Kuriyama Naoki Nakaya Kaori Ohmori-Matsuda Taichi Shimazu Nobutaka Kikuchi Masako Kakizaki Toshimasa Sone Fumi Sato Masato Nagai Yumi Sugawara Yasutake Tomata Munira Akhter Mizuka Higashiguchi Naru Fukuchi Hideko Takahashi Atsushi Hozawa Ichiro Tsuji
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.253-258, 2010-05-05 (Released:2010-05-05)
参考文献数
27
被引用文献数
38 62

Background: Large-scale cohort studies conducted in Japan do not always include psychosocial factors as exposures. In addition, such studies sometimes fail to satisfactorily evaluate disability status as an outcome.Methods: This prospective cohort study comprised 49 603 (22 438 men and 27 165 women) community-dwelling adults aged 40 years or older who were included in the Residential Registry for Ohsaki City, Miyagi Prefecture, in northeastern Japan. The baseline survey, which included psychosocial factors, was conducted in December 2006. Follow-up of death, immigration, cause of death, cancer incidence, and long-term care insurance certification was started on 1 January 2007.Results: The response rate was 64.2%. In general, lifestyle-related conditions in the study population were similar to those of the general Japanese population; however, the proportion of male current smokers was higher in the cohort. The association between age and the proportion of those reporting psychological distress showed a clear U-shaped curve, with a nadir at age 60 to 69 years in both men and women, although more women were affected by such distress than men. The proportion of those who reported a lack of social support was highest among those aged 40 to 49 years. Most men and women surveyed did not participate in community activities. Among participants aged 65 years or older, 10.9% of participants were certified beneficiaries of the long-term care insurance system at baseline.Conclusions: The Ohsaki Cohort 2006 Study is a novel population-based prospective cohort study that focuses on psychosocial factors and long-term care insurance certification.
著者
安 智史
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.93, pp.46-61, 2015-11-15 (Released:2016-11-15)

丸山薫(まるやまかおる)は、戦前から戦時下にかけて堀辰雄、三好達治とともに第二次『四季』を主宰したにもかかわらず、四季派の異色詩人と評価されることが多い。しかし、宇宙論的SF短編やシュルレアリストの主張するオブジェ、あるいは〝工場萌え〟の先駆といえる側面をふくむ、薫テクストの無機物への感性は、狭義の詩派の枠組みを超える詩史的な感性の同時代性と、戦前から戦後をつなぐ表現の展開の結束点に位置する側面を有している。研究史上見落とされがちであったその特質を、稲垣足穂、萩原朔太郎、立原道造、中原中也および、無機的風景詩の先駆者とされる小野十三郎や、瀧口修造、山中散生(ちるう)らシュルレアリストとの、同時代性と影響関係を中心に解明した。
著者
東川 浩二
出版者
金沢大学
雑誌
金沢法学 (ISSN:0451324X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.199-228, 2005-11-30
著者
Shota Hamada Hideto Takahashi Nobuo Sakata Boyoung Jeon Takahiro Mori Katsuya Iijima Satoru Yoshie Tatsuro Ishizaki Nanako Tamiya
出版者
Japan Epidemiological Association
雑誌
Journal of Epidemiology (ISSN:09175040)
巻号頁・発行日
pp.JE20180055, (Released:2018-09-22)
参考文献数
29
被引用文献数
30

Background: This study aimed to determine whether there are disparities in healthcare services utilization according to household income among people aged 75 years or older in Japan.Methods: We used data on medical and long-term care (LTC) insurance claims and on LTC insurance premiums and needs levels for people aged 75 years or older in a suburban city. Data on people receiving public welfare were not available. Participants were categorized according to household income level using LTC insurance premiums data. The associations of low income with physician visit frequency, length of hospital stay (LOS), and medical and LTC expenditures were evaluated and adjusted for the five-year age group and LTC needs level.Results: The study analyzed 12,852 men and 18,020 women, among which 13.3% and 41.5% were respectively categorized as low income. Participants with low income for both genders were more likely to be functionally dependent. In the adjusted analyses, lower income was associated with fewer physician visits (incidence rate ratio: 0.90 (95% confidence interval 0.87-0.92) for men and 0.97 (0.95-0.99) for women), longer LOS (1.98 (1.54-2.56) and 1.42 (1.20-1.67)), and higher total expenditures (1.09 (1.01-1.18) and 1.09 (1.05-1.14)).Conclusions: This study suggests older people with lower income had fewer consultations with physicians but an increased use of inpatient services. The income categorization used in this study may be an appropriate proxy of socioeconomic status.
著者
小山 真人
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

1707年富士山宝永噴火の火口は、これまで富士山南東斜面にある火口列(宝永第1〜第3火口)とされ、その脇にある宝永山は宝永噴火中のマグマの突き上げによって古い地層(古富士火山の一部)が隆起したものと解釈されていた(宮地・小山, 2007,「富士火山」;Miyaji et al., 2011, JVGRなど)。しかしながら、最近の台風通過による露頭状況の改善後に現地の地形・地質を見直した結果、従来の考え方と異なる結論に達したので報告する。宝永山付近の地質と赤岩の成因宝永山の山頂近くの赤岩に露出する凝灰角礫岩(ATB)は、1)黄褐色をして変質・固結が進んでいること、2)山体の傾斜とは不調和な南西方向に傾斜し、周囲の地層と不整合関係に見えること、3)宝永山の膨らみが宝永第2火口底を変形させたように見えること、4)周囲には見られない複数の断層が観察されることから、古富士火山時代の古い地層が宝永噴火の際に隆起して地表に露出したものと考えられてきた。しかしながら、地質調査ならびにドローンを用いた近接撮影画像とそれらのSfM(Structure from Motion)解析の結果、ATBは未固結・新鮮な降下スコリア(宝永スコリア:図のHSc)と指交関係にあり、従来考えられていた不整合は見当たらない。また、ATBは、着地時の高温で周囲を焼いた新鮮な火山弾・火山礫を含む。これらの観察事実から、ATBは宝永噴火堆積物の一部と考えられる。黄褐色の変質部分は、おそらく噴火時かその直後の熱水変質によるものであろう。また、第2火口底の「変形」は、HScが風下の東側に厚く堆積したことと、堆積後の斜面移動の影響と考えて矛盾はない。なお、赤岩表面の断層群には南東傾斜と北西傾斜の2系統(走向はともに尾根の伸びに沿う北東―南西)があって共役断層の疑いがあり、隆起の可能性は残される。HScの下位には、細粒基質をもつ凝灰角礫岩(宝永噴火堆積物の一般的特徴であるハンレイ岩礫を多く含む)が宝永山の東側斜面を取り巻くように広く露出しており、第1火口によって形成された火砕丘(HCC)と考えられる。宝永噴火の給源火口と推移 宝永噴火を起こした火口は、従来の考えでは宝永山の南西に隣接して北西―南東方位に並ぶ火口列(宝永第1、第2、第3火口)であり、噴火初期の軽石(宝永軽石)の給源が第2・第3火口、以後のスコリアの給源が主に第1火口と考えられてきた(宮地, 1984, 第四紀研究)。しかしながら、実際には第1〜第3のいずれの火口の周囲にも軽石が見当たらず(第1火口の東側地表に変質した軽石がまれに見つかるが、転石状で層位不明)、宝永軽石の給源火口は不明と言わざるを得ない。 一方、第3火口の東側にU字形をした火砕丘とみられる地形があり(ここでは御殿庭東火砕丘GHCと呼ぶ)、その表面ならびに断面には灰色で雑多な岩質の巨礫を多数含む角礫岩(基質は均質で新鮮な黒色岩片)が露出する。その特徴は、宝永第2・第3火口周囲の火砕丘HCCと類似し、噴火堆積物と考えられる。GHCのU字形の北西延長上には宝永山がある。 以上のことと前節で述べた宝永山付近の観察事実に加え、宝永噴火の古記録と絵図(小山, 2009,古今書院)、宝永軽石と宝永スコリアの等層厚線図(宮地, 1984)、宝永噴火のメカニズムに関する岩石学的解釈(藤井, 2007,「富士火山」;Miyaji et al., 2011)も考慮に入れて、宝永噴火の推移を次のように見直した(1〜5が従来の考え方と大きく異なる)。1.宝永噴火は、現在の宝永山から南東に伸びる割れ目(第1噴火割れ目)の噴火として始まり、最初に宝永軽石を噴出した後、割れ目火口の南東端に火砕丘GHCを形成した。2.宝永軽石(流紋岩質マグマ)の噴火を誘発した玄武岩質マグマが、軽石に引き続いて上昇し、若干南西側にずれた場所に新たに北西―南東方位の割れ目火口(第2噴火割れ目)を開いた。3.第2噴火割れ目上に並んだ宝永第1〜第3火口から爆発的な噴火が起き(火口が開いた順序は、地形から判断して南東→北西)、火口の周囲に火砕丘HCCを形成した。4.宝永スコリアが主として第1火口から噴出し、すでにあった火砕丘(GHCとHCC)の一部を厚くおおった(図のHSc)。この際に赤岩のATBも堆積した。5.主として3〜4の結果として、噴火初期にできた宝永軽石の給源火口が埋没し、宝永山が形成された。なお、宝永軽石の元となった流紋岩質マグマの一部が宝永山を若干隆起させた可能性が残る。6.噴火の最終段階に至り、第1火口底にスパター丘HSpが形成され、最後の爆発でその山頂に小火口が開いた。
著者
加藤,謙介
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究
巻号頁・発行日
vol.6, 2006-02-28

本研究では、コミュニティにおけるコンフリクトを解消するための「対話」の特徴について、横浜市磯子区において実施されている『地域猫』活動を事例として取り上げ、検討を行った。磯子区では、地域の野良猫問題への対策として、住民が話し合いを通して猫の飼育方法に関するガイドラインを作成・遵守し、地域住民と猫との共生を果たしている。本稿では、これらの取り組みを、猫をめぐる社会問題の構築過程として捉え、検討を行った。具体的には、ガイドライン制定のための住民集会の議事録、ガイドライン制定前後に推進団体が発行したニューズレターを分析した。分析の結果、ガイドライン制定前の住民集会の議事録には、「『地域の問題』としての野良猫問題」という社会問題が構築される過程が見出された。一方、ガイドライン制定後は、『地域猫』活動を行うボランティアの紹介等を通して、周辺住民の視点が示され、『地域猫』をめぐる「問題」の再構築が行われたことが示された。